次のおみくじはプチ吉か?

 ストラテジーペイジの2019-12-29記事。
   2019年の前半、中共は、通常型空母×4隻の次は、核動力空母だとフカしていた。
 ところが2019年末、この計画が消えたことがアナウンスされた。

 理由の最大のものは、米国の関税制裁措置によって、米支間貿易がシュリンクしたこと。
 対米輸出は23%減少した。しかし元の対ドル・レートの下がり巾から分かることは、米国から中共へ流れ込むドルは30%近くも減少している。

 それがどうして空母軍拡と関係するのか? 石油コストである。

 空母1隻を就役させると、その護衛には新たに10隻の水上艦船が必要となる。それら護衛艦船は核動力ではないので石油を消費する。だから10隻のうちの半分近くは、艦隊が消費する軽油を運搬する補給用の艦船。その補給艦船もまた、軽油を消費し続ける。その維持費を捻出できなくなると見通された。

 元の価値が下がって行くということは、輸入する原油がどんどん値上がりするのと同じことなのである。中共はいまや、世界最大の原油輸入国なのだ。

 ※空母を核動力にしても搭載機は灯油を消費する。その灯油を補給する艦も随行しなければならない。

 第二番目の理由は、技術の未成熟。パクリ模倣の限界が、空母を構成する要素のあらゆるレベルで痛感されている。

 第三番目の理由は、南シナ海の砂盛島の維持コストが馬鹿高いことに、中共の幹部がようやく気づいた。
 そこに砂盛島が造れるということは、そこは非常な浅海面なのである。
 砂盛島に軍隊を駐留させたら、巨大補給船によって物資を定期的に送り届け続けねばならない。
 しかし、浅い海面の上を巨船が通航するためには、不断の浚渫が欠かせない。この浚渫は永久に続けねばならず、コストには際限がない。コストの主なものは、これまた、船舶用の燃料油である。しかし輸入石油は、元安により、値が上がった。

 これまで行なってきた浚渫工事の継続維持のために今まで以上の予算(燃料費)をとられてしまうことから、新たな浚渫工事=砂盛工事などはできなくなり、計画がキャンセルされている。人工島を、増やせなくなったのである。

 ※悩ましいのが燃料タンクだろう。ふつうは地下に建設するものだが、いきなり海面下になってしまうので、敢えて工事するとなったら工費が天文学的。旧帝国海軍のトラック島では地上タンクの容量が足りず、油槽船を洋上タンクとして繋留していたのが、いっぺんの空襲で全部沈められてしまった。

 第四番目の理由は、若年人材の確保難。新たな軍艦に配乗させる、使えるレベルの若者を、シナ海軍はもう集められなくなった。
 一人っ子政策が撤廃されても、人口増の伸び巾は減り続けている。

 ※水面が浅いということは、沈底機雷=クイックストライクが大いに有効になるということ。砂盛島基地は、有事には、海上からの補給がまったく途絶えてしまうわけだ。


夏の靴がまだ使えるとか、天国かよ

 Joel Gehrke 記者による2019-12-26記事「Cutting each other’s throats: Allies fear Russia will annex Belarus to save Putin’s life」。
     クレムリンは一枚岩ではない。対立する複数の派閥がある。いまは、プーチンが、その派閥同士を抗争させている。しかしもしプーチンが権力の座から離れれば、今度はプーチンが喉を切り裂かれる。そんなバランス。

 ベラルーシの元首のルカシェンコは既にプーチンと、合併の基本合意を交わしている。2020年は、ロシアとベラルーシの合併が実現するかもしれない。ベラルーシ国民は、それが貧乏への道だと察している。

 プーチンには動機がある。ベラルーシを吸収併合してみせれば、その手柄により、じぶんのロシア国内での落ち目の権威がまた浮上するからだ。

 もしベラルーシがロシア領に変わると、ロシアの飛び地であるカリニングラードとベラルーシの間の巾50マイルしかない狭い陸上回廊は、いとも簡単に遮断できるようになる。すると、ポーランドとバルト三国の陸上接続が断たれるので、バルト三国をNATOは防衛し難くなる。
 つまりロシアがバルト三国を再併合するためには、まずベラルーシを併合しておくのが、地勢上も、合理的な順番なのだ。


晴れ。あまり寒くない。冬至は過ぎたし、めでたい。

 Joseph Hammond 記者による2019-12-20記事「Russia, Japan Play Role In Philippine “Helicopter Wars”」。
    比島軍が保有するUH-1Hの多くは、ベトナム戦争の終結で余剰になった米軍の古いモスボール機体が後年に供給されたもので、さすがにガタが来ている。
 カタログ上は、80機あることになっている。

 日本は9600万ドル強のHU-1の部品を比島に無代進呈した。これによる10月、7機のヒューイが復活して飛べるようになったと比島政府はアナウンスした。

次。
  Oriana Pawlyk 記者による2019-12-23記事「F-16 Shoots Down Drone in Test for New Cruise Missile Defense」。
    BAEシステムズが安価な対巡航ミサイル用のAAMとして開発中のAPKWSの試射が成功。AMRAAMが1発85万ドルもするのに比し、APKWSはタッタの3万ドルである。これをF-16なら14発、吊るして飛べる。誘導はターゲティングポッドから行なう。ミサイルの径は2.75インチである。


フクロのネズミ

 JOSEPH DITZLER 記者による2019-12-19記事「African rats help turn Cambodian minefields into rice fields, for peanuts」。
   アフリカ大袋ネズミ(ホリネズミ)を手馴づけて地雷を探知させる試みがカンボジアで成功しつつあり。ベルギーの、それ専門のNGOが出張している。

 このフクロネズミ、地雷だけでなく土中の不発弾も嗅ぎ出してくれる。

 フクロネズミの鼻は、金属に反応するのではない。爆薬のケミカル成分を探知して、ハンドラーに知らせてくれる。だから、金属探知機にひっかからない地雷やIEDも、このネズミの鼻はのがれられない。

 1979年から2017年まで、残留地雷と不発弾によって、2万人近いカンボジア人が死亡し、4万5000人が負傷。だいたい半数は子供。

 60年代から70年代、米軍だけでもこの国に270万トンの爆弾を投下した。そして今日までに米国政府は、カンボジア領内の不発弾処理のために1億1400万ドルを支出している。

 このNPOは世界中からの寄付で成り立っている。米国内からは、2015年~17年に、190万ドルも醵金された。

 大ネズミは何が好都合かというと、小さいので対人地雷を起爆させない。餌は、世界中のどの市場でも手に入る、りんご、バナナ、トマト、ピーナッツでOK。
 これに比べると、地雷探知犬の方が高コスト。ドッグフードは僻地の商店では売ってない。

 訓練に要する期間も、犬は1年かかるのに、ラットは8ヶ月で仕上がる。
 ラットの寿命は8年なので、現役として使える期間は5~6年である。NPOでは、年齢が6歳になったところで、リタイアさせるようにしている。

 NPOは、タンザニアで野生の親ネズミを捕獲して、施設で子ネズミを繁殖させる。その子ネズミをトレーニングするわけだが、仕上がり成功率は93%だという。

 カンボジアの現場では、ネズミは朝の6時から働かされるが、9時半になるとその日の仕事は終わりだ。日中はとても暑くてダメなのだ。

 1区画を2人のハンドラーが担当する。投入するラットは常に1匹。そいつが疲労する頃に、別な1匹を投入して作業を継続して行く。
 ネズミが丸1日遊んでしまうのはよくないので、必ず、すべてのネズミが1日に1回は作業するようにローテーションを組む。

 ネズミがハンドラーに警報した箇所には小旗を立てておく。あとで地雷処理班がやってきて、片付けてくれる。

 ネズミたちも、7日に1日はお休み。スイカ、甘蔗、トウロモコシ、人参を与えて、ねぎらってやる。


積もらない冬はなんとすばらしいのか

 Sandra Erwin 記者による2019-12-20記事「Trump signs defense bill establishing U.S. Space Force: What comes next」。
    トランプが宇宙軍を創設すると言い出したのは2018年6月だった。それが実現された。

 連邦下院は2018年に「スペース・コープス」を創設しようとしたが、法案は不稔。

 こんご、何が起きるか。
 まず、空軍傘下だった「空軍宇宙コマンド」は解散される。
 そこに所属した軍民約1万6000名は、「U.S.スペース・フォース」へ移籍となる。そのうち6400人はシビリアンの軍属。

 新設の宇宙軍では、陸軍の参謀総長に相当する役職名が「チーフ・オヴ・スペース・オペレーションズ」となる。宇宙軍作戦部長。
 この部長は、2020-12から、統合幕僚本部の一員に加わる。

 宇宙軍の総司令部=軍令部はペンタゴン内に60日かけて構築される。「オフィス・オヴ・ザ・チーフ・オヴ・スペース・オペレーションズ」。

 次。
 Rebeccah L. Heinrichs & Tim Morrison 記者による2019-12-20記事「Put US Post-INF Missiles into Production」。
    来年以降、米国は、中共と対峙中の同盟国=日本に対し、INF兵器の共同開発を呼びかける可能性がある。
 すなわち日本が国内で製造する中距離ミサイルならば、それを自国内に展開するのに抵抗はないだろうからである。
 米軍の中距離ミサイルを西太平洋諸国に配備させてくれと言っても、すんなり受け入れる国はほとんど無いが、共同開発の体裁を取ることにより、その敷居はなくなる。

 ※この記事の興味深い点。まず、韓国のかの字も出てこない。想定対象外ということか。しかし日米が合同でINFを開発したら、韓国が黙っていないという想像が、この2名の記者には働かないようだ。ハドソン研究所やNSCに所属していながら、アジアについてはアマチュアらしい。次に、米軍が日本に配備したいINFは、純然「非核」のものだけだという。にもかかわらず、それによって、中共とロシアをまきこんだ新たな軍備管理協議の気運が生ずるはずだという。脳内お花畑かよ。軍備管理ばかりず~っと専門にしていると、こんな頭になっちまうのかもな。


「スマート名無し」の時代

 Angela Chen 記者による2019-12-20記事「This startup claims its deepfakes will protect your privacy」。
   イスラエルのベンチャー企業「D-ID」社は、ユーザーの顔の動画映像を自動的に微修正し、他者による「顔認識ソフト」による追跡・同定を逃れることができる「アバター作製ソフト」を開発した。

 たとえば眉毛が太くなったり、口鬚が追加されたりするのである。
 動きやしゃべりはそのままである。

 これをどう使うのか。
 たとえば企業はじっさいの店頭で撮影された消費者たちの人物動画をこのソフトによって顔面加工し、「個人が特定されることがない、名無しのサンプル」とすることによって、堂々と、顧客の行動解析のためのビッグデータ素材として使うことができる。

 ここまでしても、欧州域内では問題がある。
 EUの「GDPR」(=個人情報扱い規則)は、個人に関するデータを分析することでその個人の「人種」を推断することも、当人にあらかじめハッキリと許可を求めて同意を得た上でなくば、プライバシー侵害であるので違法だとしているのだ。

 GDPRに、欧州で商売している企業が違反すれば、その企業の売り上げ高の4%もしくは2000万ユーロのどちらか高い方が罰金として徴収されてしまう。

 次。
 Karen Hao 記者による記事「A US government study confirms most face recognition systems are racist」。
   米国工業規格院NISTが、たくさん市販されている顔認識ソフトのアルゴリズムを調査したところ、米国において、警察から、犯人ではないのに犯人とされてしまう危険が最も高いのは、黒人女性であるとわかった。

 また、アジア域で開発されたソフトと比べて、非アジア圏で開発された顔認識ソフトは、東洋人の顔識別を間違う率が10倍から100倍もあるとわかった。

 次。
 ストラテジーペイジの2019-12-20記事。
     イラン軍は、艦艇から垂直に発進できる固定翼無人機を採用した。中共の「SD40」の模倣品。イランでは「ペリカン2」という名称をつけた。

 「SD40」は最初から市販されている民生機ゆえ、欲しければ誰でも購入できる。
 そして中共ではこれを軍があとから採用した。2019年に南シナ海で、駆逐艦のヘリ甲板から「SD40」が運用されていることが確認された。

 このUAVは、自重40kgで、あきらかに最初から、小型警備艇上で運用することを売り物とするキャラクターだった。

 ※開発時には軍民共用のお墨付きはいただけなかったが、設計者としてはデュアルパーパスを狙っており、市販後にめでたくもデュアルユースになったという例か。

 「SD40」は、クォッドコプターと、固定翼プロペラ機のハイブリッドである。
 三胴形状。中心胴が大きく、左右胴は小さい。4つのローターは、左右胴に付いている。
 離着艦時、クォッドコプターを駆動するエネルギーはバッテリー電池。
 固定翼での水平飛行モードでは、ガソリンエンジンが中心胴のプッシャープロペラを回す。

 全長3.7m。最大速度180km/時。巡行100km/時。ペイロード6kg。

 滞空6時間可能。高度5000mまで上昇できる。通常は1000~3000m。

 「ペリカン2」は「SD40」より小さいようだ。コンセプトは同じ。
 いろいろな部品は、国内製ではなく、世界中から趣味用UAVを調達してバラしたもののようだ。

 「SD40」類似のUAVは、じつは、もうすでに、世界各地で漁船が使いこなすまでになっている。魚群を空から見張るのである。

 米海軍は、双胴の高速フェリーである『スピアヘッド』級輸送艦から運用できるUAVとして、自重37.3kg=82ポンドの「VBAT」をテストしている。全自動で、重さ3.6kg以下の小荷物を、指定したところへ往復して届けてくれる。
 こちらは離着陸専用のローターは持たない。ガソリンもしくは灯油で駆動するプッシャー式のプロペラを収めたカウリングが、セグウェイのように絶妙に機体姿勢のバランスを保たせることで、垂直離陸→水平飛行→垂直着艦を実現する。

 VBATは72kmまでならばビデオ画像をライブで電送できる。それ以遠のときは、画像をメモリーに録画して艦まで持ち帰る。
 飛行距離は630kmである。

 滞空時間は、時速80kmで巡行した場合、8時間(燃料には帰還時にさらに1時間分の安全余裕がある)。

 VBATは全長2.4m×ウイングスパン2.74m。運搬時はコンテナに分解収納する。

 海上に48km/時の風が吹いているときでも、離着艦は可能。
 メーカーのマーティンUAV社は、ペイロードを45kgに増強した拡大型もすぐに造れると豪語している。その場合、自重は310kgになるという。


積雪再開。

 ストラテジーペイジの2019-12-19記事。
  露軍は年末までに20両のT-14戦車(量産型)と、4両の戦車回収車BREMを受領する。
 ようやく、量産に移行したわけだ。

 いままで、電子系の完成度が低くて、試行錯誤が続いていたという。なにしろ乗員は車体の低いところにおしこめられるため、カメラなどの電子器材に頼らずしては車外監視ができないのだ。それには絶えず給電も必要である。

 乗員はけっきょく3名になった。そして乗員だけを防護するカプセルの内部に、トイレが設けられた。

 まだ大量生産にはほど遠い。2021年末でも総計40両ではないかという。

 初期ロットの生産ペースを低調にしておき、発見された不良箇所の改善を並行して進めるのだろう。

 開発したメーカーであるクルガンマシュザヴォド社は2016年にいったん倒産したゾンビ企業である。いまは巨大農機メーカーCTPの傘下にとりこまれている。

 ク社はもともと1950年創立のクレーン・メーカーであった。
 それが、砲兵牽引トラクターに手を広げた。
 1960年代には、BMPの筆頭生産工場に。

 2014にウクライナ侵略をやらかしたロシアは西側から貿易ボイコットを喰らった。冷戦終了とともに業績不振だったク社の先行きは非常に危くなった。そこで社運をかけてみたのが、T-14とT-15(歩兵戦闘車)の自主開発だった。

 ロシア政府も金欠でク社に大量発注など無理だった。しかしロシアは依然として軍事先進国であるという対外宣伝には恰好の材料なので、T-14計画を潰さない程度に政府がつなぎ資金を貸し出すことに……。これでク社とCTPの負債が甚だしく膨脹したのは無論である。


薬莢が自動的に回収されて現場に証拠を残さないオートマチック拳銃が、専制主義国内で開発されないのは、不思議である。

 JOHN VANDIVER 記者による2019-12-18記事「Turkey breaches airspace of Greece 40 times in a day, triggering mock dogfights between the NATO allies」。
     トルコとギリシャはエーゲ海の領土境界をめぐって対立があり、恒常的に領空侵犯機とスクランブル機との間の擬似空戦が発生している。ギリシャが実効支配しているエリアをトルコが承認していない。
 ※韓国は《第二のトルコ》なので、米国が双方にどのように関与しているかを観察していると、いろいろためになるだろう。

 次。
 Charlotte Jee 記者による2019-12-18記事「How one city hopes language monitoring can help it defeat hate」。
     チャタヌーガはテネシー州で四番目に人口が多い都市。ざっと18万人。

 2015-7-26に24歳のイスラム教徒が米軍基地内で銃を乱射し、4人の海兵隊員が死亡した。この犯人はアルカイダのオンラインプロパガンダによってそそのかされていた。

 アンチイスラムの宗教的ヘイトクライムがそれから急増し、チャタヌガ市はその種の犯罪件数が全米第9位になった。テネシー州内では、2017年以降、1位。

 そこで先月、市当局は、ヘイトスピーチを見聞した市民はそのことを当局にタレこんでくれ、というキャンペーンを始めた。

 カナダのトロント市には「Hatebase」というNPOがある。世界最大のヘイト語データベースが構築されている。特定集団の名誉を貶める言説が、網羅的に収集され、単語は、その差別度に関する註釈付きでソートされている。

 地方行政当局がこのデータベースを利用するのは無料である。

 チャヌヌガ市は、市民の間である用語が多数使われるようになることと、ヘイト暴力が実際に行なわれることとの間の相関に、関心がある。
 すなわち、特定集団を人間扱いしない表現の発信量の趨勢から、殺人などの暴力犯罪が次に現実化しそうな地区を統計学的に絞り込めると期待する。

 互いの部族が武装していて、その部族間の殺しあいがよく起きる、ケニア、ウガンダ、ビルマ、イラクでも、言論ビッグデータのモニターを通じたこの予測法が有効で、当局にとっては早期警報の代わりになる。


超暖冬。

 Lawrence Freedman 記者による2019-12-17記事「Michael Howard: A Reminiscence」。
  英訳版としての決定版である『戦争論』(クラウゼヴィッツ)の共訳者のひとり、マイケル・エリオット・ハワードは11月30日に死去した。97歳。
 記者は1972年にオクスフォードの博士課程に進み、そのときに指導教官のハワードに初めて会ったのである。最後に会話したのはほんの数ヶ月前であった。

 1972時点でハワードは50歳前だったが、普仏戦争の研究書等により、軍事史をまじめな学問分野に引き上げる活動が実を結んでいた。

 典型的なブリティッシュ・エリートだった。パブリックスクールはウェリントン。WWII前に所属したのはコールドストリーム近衛連隊。戦中にしめした抜群の勇敢さに対して軍事十字勲章。それからオクスフォード大学。

 オールソウルズ・カレジの教授の部屋は、1438年に建てられた学舎の中にあった。
 それに対して当時23歳のわたしは、軍事経験といったら、ベトナム反戦デモに参加したことぐらいであった。

 ハワードは『大尉にして教授』という回顧録を残している。60年代に米国の大学に留学したことを、彼は後悔していた。そして米国人よりも英国人に教えたがっていた。だが冷戦期のハワードの教え子たちのほとんどは米国人たちだった。そんななかで、わたしは稀な英国人だったので、彼から贔屓にしてもらえたのである。ちなみに関心分野は、核に関する政治決定過程。

 記者は大学院に2年いただけで、ヨーク大学の教官職を得た。そこはマルクス主義政治学の牙城であった。

 ハワードは、英国首相(マーガレット・サッチャー)が聴講した、ただひとりの歴史学者である。※おそらく軍備管理に関する話。

 ハワードは大学では博士号をとらなかった。ハワードは、軍事評論家のバージル・リデル・ハートに私淑していたのだ。リデルハートは大学ポストを得たことは生涯一度もない。したがって、学生時代のハワードには指導教官がいなかったわけである。
 オクスフォードはしかし、ハワードの出版業績に対し、あとから文学博士号を授与している。

 ハワードはリデルハートを「賢人」と表現していた。
 ハワードも間違いなく賢人だった。

 ハワードは、共通のバックグラウンド、言語、文化をもつ政治エリートによる政治を好んでいた。米国政治がアイヴィーリーグの白人に領導されているのも何の問題もないという立場。しかし記者はユダヤ人なので、それについてだけは賛成しかねた。

 オールソウルズは、英国の貴紳クラブの中でもとびきりの閉鎖的クラブを維持している。そのディナーに記者は、招かれた。ハワードは、連隊史の共同執筆者であるジョン・スパローの隣に、わたしを座らせた。すばらしいワイン、執事たち……。ただし、女は一人もいない。スパローは、強度の女性嫌悪主義者として有名であった。
 酔うほどにスパローの毒舌は強烈になり、それを聞かされているわたしの表情を観察してハワードはニヤニヤしていた。

 1972年、わたしはマイケルの私邸に招かれ、そこで、発見した。
 マイケルは、ゲイであった。

 邸内には、ホモセクシュアル用の客人棟と、へテロセクシャル用の客人棟が、別々に存在したのだ。

 英国では、ほんの数十年前まで、ホモは、それじたい「違法」であった。

 マイケルの生涯の伴侶は、マーク・ジェイムズであった。このふたりは1950年代から、当局から訴追される危険を冒していた。

 ハワードとスパローも、コミンテルンならぬホミンテルンの使命感によって連隊史を著したのだ。

 だからハワードの遺作(来年刊行されるはず)のエッセイ集のタイトルが『誇りとともに戦いて――米軍におけるLGBT』であることに、諸君は驚いてはいかん。

 ハワードは秘書を使わなかった。彼の手紙/eメール には、要点しか書かれない。「承知した。月曜日だな。マイケル。」といった具合だった。

 次。
 ストラテジーペイジの2019-12-17記事。
 中共は、米国とはべつの経済圏をつくって自立するつもりだ。米国が支配する銀行決済システムのSWIFTからは抜けて独自の決済システムを構築する。コンピュータOSも、ウィンドウズの対抗版を独自につくる。ソフトウェアだけでなく、演算チップも、米国特許を使わないものを独自につくる。
 まあしかし、これらは短時間では無理だろう。

 シナ版のSWIFTは、もうある。CIPS(クロスボーダーインターバンクペイメントシステム)と称する。これはロシアのSPFS(システムフォートランスファーオブフィンシャルメッセージ)と連結する。

 SWIFTは1974年からあり、1万以上の金融主体が加盟している。
 中共=ロシアのシステムの加盟者はまだ500未満。しかしインドが加盟を検討している。

 中共は90年代の日本の二の舞を恐れている。土地バブルがはじけると、人民は怒り、現政権を転覆させてしまう。あのバブル崩壊さえなくば、日本では政権交替など起きなかったのだ。
 中共の場合、民主的選挙制度は無いから、暴力で政権が転覆させられることになりそうだ。

 中共の海洋調査船がアンダマン諸島近海を徘徊していたのでインドは強制的に退去させた。12-4報道。

 パキスタンでセックススキャンダル。中共の犯罪集団がパキスタン人の女たちを騙して中共領内に連れ出し、シナ人の独身男と強制結婚させていると。

 独身男たちは6万ドルを犯罪集団に支払う。犯罪集団は、働き口があるといって女たちを騙す。

 この強制結婚に従わない女は、内臓取りに回される。

 いくつかのケースでは、貧民層の両親から、ギャングが10代の娘たちを購入している。その単価は1000ドルから2000ドルだという。

 パキスタン人のジャーナリストは、すでに629人の被害者を確認した。しかしパキスタン当局がその報道を規制しているので、ネタは西側メディアに持ち込まれ、そこから世界に知られた。※日本ではこの報道はまだ無いようだが……。

 腐敗しているパキスタンの司法は、この人買いの容疑で逮捕した31人のシナ人に5月に無罪を言い渡した。裁判で証人に立とうという者がひとりもいなくなったのだ。それでパキ人民が怒っている。

 中共では一人っ子政策の期間中、堕胎によって女子が間引かれ、出生男児数は出生女児数の2割増しである。

 民間衛星が発見したもの。中共軍は、全長32mから85mの繋維式ヘリウム飛行船にレーダーを搭載したものによって、南シナ海の砂盛島周辺を監視させはじめた。12-1にあきらかにされた。

 繋維式だから飛行船というより気球だが、外見は飛行船である。繋維高度は最大5000mになるという。
 ケーブルにより電力が給電される。最長で30日間、昇騰させておける。
 単価は500万ドル以上だろう。

 ヨルダンは中古のAH-1F攻撃ヘリを2機、年末までにフィリピンに売り払う。スペアパーツなど全部まとめて100万ドルというお値打ち価格でだ。メンテナンス訓練要員も、その値段の中から、比島に派遣される。

 フィリピンは2018年にロシアから軍用ヘリを買おうとしたことがあるが、国連制裁がロシアにかかっているので、あきらめた。

 カナダも輸送ヘリの対比島輸出をあきらめている。こちらは、ドゥテルテによる対イスラムゲリラのやり方が過激すぎるというのが理由。

 それでフィリピンはトルコから「T129」攻撃ヘリを10機買いたいと打診していた。
 米政府は、トルコの商売を邪魔するために、AH-1W/Zの中古機の転売を、このたび斡旋したのだ。


暖冬を歓迎したい

 Edward Wong and Julian E Barnes 記者による2019-12-16記事「US secretly expelled Chinese officials suspected of spying after breach of military base」。
    この9月後半に、駐米のシナ大使館から2人の外交官が国外追放されていたことが判明した。

 うち一人はまちがいなく、外交官のフリをしていた情報機関員であった。
 ヴァジニア州にある機微な軍事基地〔ノーフォーク海軍基地〕を自動車で流しながら偵察していた。怪しまれて逃走したが、基地の消防車に行く手を塞がれた。

 米政府が初めてシナ外交官を追放したのは1987年のことであった。

 数年前から中共政府は、米国人外交官がシナ国内を旅行するときに厳しい制限を課している。それで、相互主義により、米国政府も、シナ外交官が勝手気侭に米国内を旅行できないように制限を課している。中共は、それはウィーン条約違反だとほざいている。

 ノーフォークには海軍のシール部隊の「チーム6」の司令部がある。

 中共外交官は観光旅行を装い、車に女房を乗せ、基地の正門から堂々と進入しようとした。しかし衛兵は、男が許可証をもっていないことを確認し、敷地内で転回して出て行くように指示した。
 しかし外交官はそのまま中へ進んで行った。
 そこで消防車が車の行く手を阻んで男を引きずり出した。
 この外交官は英語がわからないフリをした。

 こうした行為の目的は、米軍施設のセキュリティの厳密さをテストすることにある。
 テスト役をやらされた男は、情報機関の下っ端である。
 もし、この下っ端が堂々と進入に成功したなら、次は、もっと有能な情報機関員の真打が派遣され、先に成功したパターン通に倣って、この基地に入り込んでやろうという段取りなのだ。

 次。
 ストラテジーペイジの2016-12-16記事。
  ドイツ軍は196両のミニミニ戦車「ヴィーゼル」を保持しているが、これをアップグレードするという。

 有人の装軌式戦闘車両としては、ヴィーゼルは世界最小である。
 重さも、だいたい2.5トンしかない。これは、現在の米軍の装甲型のHMMWVよりも軽いのである。
 したがって防弾は、7.62mmライフル弾までしか考えていない。

 ヴィーゼルは1993年に生産終了するまで、343両が造られた。

 1993からドイツが活発化させた、国連の平和維持活動に、この車両はとても重宝することが発見された。というのは、あまりにも履帯の接地圧が小さいので、対人地雷も対戦車地雷も爆発させずに通行することができたのである。

 4輪はいわずもがな、6輪や8輪であっても、タイヤの接地圧は、履帯の接地圧よりも遥かに高い。かたや装軌式は、重戦車であっても、人の足の裏よりも接地圧が高くなることはない。それが全体として軽量なのだから、極限まで接地圧は小さくなる。

 最初はソマリア、ついでバルカン半島で、ヴィーゼルのこの特殊な能力が確認された。2002からはアフガンへも搬入され、そこで10年近く、活躍もした。

 このたび、8550万ドルをかけて装甲と通信設備を改善する。これによりますますゲリラの地雷に対しては安全となり、2030年まで寿命が延びるという。

 ヴィーゼルの対戦車型は数が少ない。そのミサイルも、TOWから、MELLS(イスラエルのスパイクLRのライセンス品)へ換装されるともいう。ただし、いまどき陸上車両からATMを発射するのは流行らない。ウィーゼルの基本型は、20ミリ銃塔型である。

 リファービッシュは2022年に完了予定。

 ウィーゼルの寸法は、高さ1.9×長さ3.55mである。
 CH-47の機内に2両を搭載できるのだ。

 エンジンは5気筒・87馬力のフォルクスワーゲン製ターボディーゼルである。

 アフガニスタンではラインメタルの20ミリ機関砲搭載型のウィーゼルが活躍した。2km先から正確な射弾を送ることができ、ゲリラはてきめんに士気阻喪したという。

 ヴィーゼルは輸出されたことはなく、ユーザーはドイツ連邦軍だけである。

 アフガニスタンに送られたウィーゼルの一部は、武装を撤去して、対地雷レーダーを装備した。それと、無線操縦できる地雷原啓開装甲車「マインウォルフ」がコンビを組む。