テクノ黙示録

 ストラテジーペイジの2018-2-18記事。
   J-20を実戦配備しているとか吹かしている中共だが、2017年なかば以降、殲-20の生産機数はゼロである。発表された計画値では、毎月3機が量産されねばならないのに。
 ステルス性能にも、エンジン性能にも、問題がある模様だ。
 やっぱり致命的なのはエンジン。
 2017前半に「殲20」は最低12機が支那空軍に引き渡されていると公表された。これはパキスタンにJ20を売るための嘘情報だった可能性がある。中共メディアは、パキスタンがJ-20の輸入で合意したと報じていた。
 中共は2016までは、J-31は輸出させるがJ-20は輸出させないつもりであるようにみえた。しかし2017から方針転換した。
 J-20のメーカーであるCACは、過去にパキスタンと共同でJF-17を開発してパキスタンに買わせているという実績がある。
 次。
 Atlantic Council fellow の Matthew Krull 海軍中佐による2018-2-16記事「Foreign Disinformation is a Threat to Military Readiness, Too」。
  〈ロシア軍は米艦艇を無力化できる〉といったガセを流すことによってロシアはいったいどんな得をするのだろうか?
 こうした偽情報が一部の水兵や水兵の家族によって信じられれば、それだけで、米海軍の中に、国家の命令や、上官の命令について疑いを持つ者が現れる。
 自軍や味方に対する不信が醸成されることにより、有事の際に堅確・機敏・闊達な軍隊の諸活動が妨げられるようになるのだ。
 げんざい、シンクタンクのアトランティックカウンシルや、ブルッキングズ研究所で、ディスインフォメーションに対抗する研究「ニュージアム」をやっているところである。ドイツにも参加機関がある。
 ※先日の学校乱射事件直後に、ロシアの対米世論工作の方法についてUPIが解説していたところによれば、彼らはある特定の主張に米国世論を誘導しようとは考えない。この事件のケースでは、「もうこんな国はダメだ」という銃規制賛成の論陣と、「銃器武装は絶対に必要なんだ」という正反対の論陣の双方に同時に幾万もの、工作員認定をされ難い文章の投稿を流し込む。それによって米国社会を分断し、あるいは、すでに米国社会は分裂しまくっているという印象を作為できたならば、作戦は成功なのだ。


ナノなのだ。

 ROBERT BURNS AND VLADIMIR ISACHENKOV 記者による2018-2-14記事「US, Russian officials dispute reports of Russian casualties in Syria」。
   シリアのノモンハン事件(2018-2-7)は、とんでもない規模の一方的な袋叩きだったようだ。
  現地米軍によると、敵(ロシア軍)がまず、ユーフラテス東岸の「Deir el-Zour」省において、大砲と戦車砲によって攻撃してきた。それに対する反撃だったと。
 中東の米空軍司令官(カタールに所在)のジェフリー・ハリジアン中将によれば、たしかに大空襲で応じたと。
 3時間以上にわたり、F-15E、B-52、AC-130、アパッチ、リーパーが地上を攻撃し、ついで地上からも榴弾砲、迫撃砲、ロケット砲、戦車砲で反撃した。
 この空爆だけで、侵攻軍の戦車と野砲は多数、破壊されたという。
 ※アサド=モスクワは、シリアのユーフラテス東岸地帯が、イラクに合併されるか、クルドの国家になってしまうことを恐れているようだ。
 不確実情報としてロシア国内では、200人の露兵が死傷したという話が飛び交っている。
 すくなくも4人死んだことについては現時点で確認されている。
 ※米国務省とCIAが「露兵だとは確認できていない」「違う国籍の傭兵じゃないか」などと火消しに必死なのは、現地の軍隊の間では相互の憎悪が前々から昂進しているので、この「事件」がすぐに「事変」規模へ発展しかねないからだろう。


米露戦争が先週から始まっていた……。シリアのノモンハン事件。

    STEPAN KRAVCHENKO, HENRY MEYER AND MARGARET TALEV 記者による2018-2-13記事「US strikes said to kill scores of Russian fighters in Syria」。
  米軍がシリアでいちどに100人以上のロシア兵を戦死せしめた模様。
 2月7日、ユーフラテス川の東8kmで、諸兵種連合の1個大隊規模のアサド=ロシア軍が、米軍とクルドの同盟軍に向かって発砲しながら前進開始。
 敵は戦車、多連装ロケット砲兵も伴っていたが撃退された。
 この場所は Deir Ezzor 地区といい、石油とガスが埋蔵されている。敵はそこにこだわっている。
 ロシア兵は名目上はアサドが雇った傭兵という。200人以上いた。
 米軍発表によると露兵を100名は斃した。そしてその二、三倍は負傷させた。
 この攻撃は、現地ロシア軍の指揮系統からの命令によるものではなかったことが、事件後に確認されたという。つまり傭兵の暴走?
 米民間軍事会社「ブラックウォーター」のロシア版があるのだ。「アカデミ」という傭兵供給会社だ(以前は「ワグナー」と称していた)。アサドはそこから露兵をレンタルして、石油・ガス施設を守備させている。見返りとして、石油採掘権を譲与しているという。
 しかし2-7事件の傭兵の実態は解明されていない。イランが動かしているという説もあるが、とにかくロシア人/ウクライナ人であることは確か。
 米軍は、反撃の際、航空機と砲兵も投入した。
 そして米軍とクルド軍には一人の負傷者もなかったという。
 露軍の車両と歩兵がUターンして西に逃げ出したので、追い撃ちはしなかったと。
 ユーフラテス川が米露両軍の暫定境界線となっている。しかるにアサドとしては Deir Ezzor 東部の埋蔵資源を担保にして国家の財政を立て直したい。だから越境して攻め込んだのだろうが、もののみごとに失敗した。
 ロシア国防省の公式発表。シリア人戦士25人が負傷したと。
 ロシアの傭兵隊長に電話で取材したところによれば、彼の部下が数十人、セントペテルスブルクとモスクワの病院に入院している。
 傭兵のほとんどはロシア人と親露系ウクライナ人で、いずれも元軍人。ウクライナ戦線で実戦経験があるともいう。※つまりクリミア切り取りで暗躍したスペツナズ工作部隊じゃないか。
 反プーチンの政治家、グリゴリー・ヤヴリンスキーのツイッター書き込み。ロシア人が死傷しているというのに、参謀総長や軍の司令官はなぜ国民に対して説明もしないのか。
 ※鎧袖一触の赤恥。プーチンは五輪どころじゃないのだろう。


全長だけ大きい『いずも』の重さが『ワスプ』の半分なのは何を意味するか考えれば、F-35Bを艦尾に1機でMaxだと悟れる筈。

 ADAM MAJENDIE, KRYSTAL CHIA 記者による2018-2-11記事「In the global game of hide and seek, the drones are winning」。
  シンガポールのエアショーはドローンだらけだった。
 いまレースが進行中なのは自動操縦革命。
 昨年、タレス社が買収した英国の「アヴェイラント」社。同社はゲームキーパーというホログラフィック・レーダーを開発した。角砂糖サイズの物体を5km先から探知できると主張している。スキャンド・アレイ・レーダーの一種。
 ベンチャーの「スペクトロニク」社の宣伝。同社の燃料電池を使えば、無人機はリチウム電池の10倍のパワーを利用でき、しかも、燃料補充は数分で済む、と。
 次。
 このごろ座った姿勢で老眼鏡をかけて読書していると、どうも眼が疲れてきて集中が続きません。
 ひきこもり生活者の不健康をいささかでも改善し、なおかつ資料読みの生産性を、若年時並に高めるにはどうしたらよいだろうかと悩んでおりました。
 そこでこのたび、室内で立ったままで書見ができるように、キクタニ製の譜面台 オーケストラ用 OMS-01 ブラック というのを通販で取り寄せてみました。これが久々の大当たり。
 書籍見開きページ中央表面までの床からの高さを最大120cmにできます(実測)。
 安定性も十分。
 つまみやノブによるネジ締めもしっかりできています。
 バネの力が絶妙のフレキシブルなページ押さえには賛辞を献呈したい。
 驚いた発見。
 これに比較的に小さい活字がびっしり組まれた四六版ハードカバーを載せて読んでみますと、なぜか老眼鏡が要らないのだ。
 座位では、頭と書籍との距離や角度をフリー調節できない。だから疲労していたのだと悟りました。立姿なら、人間のほうで、自在に加減や変更ができるわけです。
 照明は、シーリングライトをLEDの明るいものにしておけば、他に何も要りません。スタンド灯が要らない。(まあ床から120cm以上ですから……。)
 ところで、さらにこれでもあきたらず、立姿で、しかもじゃっかん上目遣いで読書がしたくなったなら、それは器具を自作するしかありません。
 ぶら下がり健康器の垂直支柱の背面に、ホームセンターで入手できる金属製と塩ビ製のパイプ押さえクランプを2個、ナットとボルトで組み合わせて固定すればいいのです。高さ150センチオーバーの、簡易ながらもガッチリしたブックスタンドができます。
 ただしページ抑えは無いので、それは文房具の大型クリップ(ピンチ)を噛ませなければなりません。
 ちなみにわたしはベンチ付きのぶら下がり健康器のそのベンチ部分に、別な安物健康器具である「ワンダーコアもどき」(不用品)を据え、それを快適な背当てとして、PC作業をしています。ぶら下がりバーの高さは、座った状態から手をおもいきり真上へ伸ばせば、指先が触れるぐらいにしてあります。この高さですと、垂直支柱が25度でオーバーハングしている最上部の曲がり角が、ちょうど書籍の背に当たってくれるようになります。
 さらにPC用の机の下には、簡易型のペダル漕ぎ運動器。これだけはまだまだ改善の余地があると感じています。その話はまたいずれしましょう。
 次。
 ストラテジーペイジの2018-2-10記事。
   米海兵隊が「外人部隊」の編成に乗り出す。
 といっても海外で募集するわけじゃない。米国内には、米国籍をもっていない若者が仰山居る。その人的資源を狙うのだ。
 2001から2010年までを均した統計で、米国には2.2%の非米人が住んでいるのだが、米軍内では、その比率は4%である。
 しかし海兵隊構想は、非米人を主力にする特別部隊を創設しようという点がこれまでと異なる。
 部隊は、非正規戦連隊IWRと称し、4200人のうち3000人は特定海外戦域の言語を理解する非米人兵士とす。ただし軍曹(E-5)以上は米国籍の海兵隊員で固められる。
 応募してくれた兵隊は、まず英語訓練学校に送り込み、その後、新兵教育キャンプへ。ここまで2年。
 さらにIWRで3年。
 その時点で市民権獲得の資格も生じている。
 ところでこういう試みをすると敵国は、その制度を利用してスパイをもぐりこませようとする。そのスクリーニングが難しい。
 2001~2010に米軍は7万人の新兵を受け入れた。その5%が、米国市民権を持たない外国籍人であった。
 これらの新兵のモチベーションは非常に高い。新兵訓練課程で脱落する者も少ない。入隊3年後で比較すると、米国籍兵は72%しか残留していないが、非米国籍兵は84%が軍隊にとどまっている。
 ここに海兵隊のリクルーターは目をつけた。
 南北戦争中だって、北軍兵士の2割は、米国籍を持っていなかった。それでいいのだ。
 ちなみにバチカンのスイス傭兵は、全員がカトリック教徒である。
 ※地本が知っておかなくてはならないこと。高校には進路指導セクションがある。その中は、「進学」と「就職」に分かれる。防大進学を勧めたいのならば「進学」の先生に頼まねばならぬ。二士を採りたいのなら「就職」の人に頼まねばならぬ。ただし、キーパーソンは必ず教頭先生である。校長ではない。ここを絶対に勘違いしてはいけない。教頭は必ず職員室に居る。まずその人に資料を渡して話を通ずること。そうしないかぎり、資料は捨てられておしまいなのである。
 ※昔と違って今日の自衛隊で取れる大型免許は「自衛隊限定」。退職後に大型車に乗りたければ、あらためて私費で教習所の試験にパスする必要がある。こうなってしまったのも、退職自衛官の交通事故が多かったからだと。
 ※海保の人は退職したらすぐに水先案内人になれる。その資格を与える機関なのだから話も早いわけだ。しかし海自の人は、何十年勤続していても、シャバの船舶関係の免許は特についてはこないから、そこのところはよく考えねばならない。


新刊ご紹介

 並木書房さんから、ゴードン・ロットマン氏著、床井雅美氏監訳、加藤喬氏tr.の新刊『AK-47ライフル』を頂戴しましたので早速拝読。
 原著者はM-16系と比較してAK-47系列を高く評価しています。
 各種の実包の細かい違いとスペックが網羅されているところ、資料価値が高い。
 東欧で戦後も鉄薬莢を広範に使っていたのだとは知りませんでした。
 床井さんが原著に書いてない情報を補足しているところは例によって貴重です。
 米軍の兵隊用のM-14はフルオートができない仕様になっていたとは知りませんでした。
 カラシニコフ氏の前半生についての大きな謎、「捕虜のドイツ人技師からどのくらい助けてもらったのよ?」には、今の段階でも最終回答が出ちゃいないようだな、と感じました。
 シュツルムゲヴェールと内部システムが違っていることは、ドイツ人の設計関与がなかったことを保証しませんからね。
 設計した本人、開発の陣頭指揮を執った本人しか語り得ないエピソードがあるはずです。別に寸法や素材や加工の秘密なんかをバラす必要はない。国家にとって無難な、しかし外人には興味深い体験談を、昔話として、いくらでもできるはず。本人は西側のインタビュアーに対してそれらを語る機会がいくらでもあったことが本書からもわかる。ところが、そうしたエピソードが本人の口から自然にアドリブで飛び出すことはなかったようです。本人はそれを強く自戒していたんだと疑える。
 削り出しの自動火器にしか過去に関与してこなかった叩き上げの工員が、いきなりプレス加工指向の簡易量産の、公差最大の自動小銃をデザインできるとは不思議千万。
 設計も開発も、StGの経験をたっぷり有するドイツ人チームがやったんでしょう。
 カラシニコフ氏は、戦後ソビエト=ロシアの国家威信発揚の宣伝塔キャラにまつりあげられたのだろうとわたしは疑います。農民/労働階級出身の一介の工員が国家英雄級の偉業をなしとげたことに、マルクス主義国家は、しておきたかった。グラスノスチ後のロシア軍も、その神話遺産は維持したかった。だとしたら本人も死ぬまでそのキャラを演じ、神話を守り続けるほかになかったのだろうなと拝察しました。
 カラー写真満載で¥1800円+税。


マカオのオカマ

  Michael J. Hennelly 記者による2018-2-8記事「Fire One, Fire Ten: Implications of the Torpedo Scandal of World War II」。
         1943-7-23に独航していたタンカー『図南丸』を狙った米潜『ティノサ』(SS-283)。
 魚雷15本を発射。12本が命中。ただし爆発したのは1本のみ。
 タンカーは沈まずに逃げ、若いティノサ艦長はパールに戻って潜水隊司令部に怒鳴り込んだ。
 「マーク14」魚雷には3つの欠陥があったのだ。
 しかし本国の兵器本部は、問題は欠陥魚雷にはなく、艦長や水兵の無能にあるのだと主張。
 米海軍艦艇のうちたった2%だけが潜水艦だった。しかし太平洋戦域では日本の艦船の半分以上をその2%の潜水艦が沈めたのだ。
 「マーク14」には、深度調定器、磁気爆発尖、触接爆発尖が備わっていた。そのすべてが欠陥品だった。
 対日開戦するまで誰もその欠陥たる事実を認識していなかった。
 WWII前の世界は大恐慌時代である。そんな超デフレ時代に、「マーク14」は1本1万ドル以上もした。当時、新車の値段が700ドルである。
 必然的に兵器局は、魚雷の試験を非消耗的な流儀とさせた。同じ練習魚雷を何回も利用するのだ。
 潜水艦長は実用魚雷による発射訓練は一度もさせてもらえなかった。
 真珠湾攻撃から5時間以内に、米海軍作戦部長は「無制限潜水艦戦」を発令した。日本の商船も容赦なく沈めろというもの。
 じつは米海軍は戦間期、潜水艦隊によって日本列島をブロケイドするという想定は研究したことがなかった。
 水上艦隊の前衛哨戒をさせることばかりを考えていた。
 開戦してみてわかったこと。平時に勤務評定の高評価な艦長が戦時に有能とは限っていないこと。そこで最初の1年のうちに3割の潜水艦長たちが無能の故をもって交替させられた。
 1942の1年間で米潜は100隻以上の日本商船を沈めたが、魚雷の欠陥もあきらかになった。
 1942の夏に太平洋艦隊では、本国の兵器本部の異議を無視して独自に魚雷の徹底試験を開始。1943には、件の三箇所が欠陥なのであることをつきとめ、独自にそこに修正を施した。
 1943-9-30に出撃した米潜『バーブ』は、改善された触接爆発尖をマーク14に取り付けていた。これ以降、米潜の撃沈成績はうなぎのぼり。
 教訓。潜水艦用の魚雷の欠陥修正については、米海軍の中央集権機構は役に立たなかった。
 WWIIでは、米国には三艦隊があった。大西洋艦隊、太平洋艦隊、南西大西洋艦隊である。それぞれが司令部を有す。
 潜水隊司令部はその三艦隊司令部に分属し、最高位の潜水艦指揮官はワシントンには所在しなかった。これが潜水艦に関する諸改革を遅らせた。三つの潜水艦隊相互の情報共有もできなかった。
 次。
  Hans Ruhle 記者による2018-2-8記事「The New U.S. Nuclear Posture Review: Return to Realism」。
      もし米本土の原発にサイバーテロをやられたら、その報復として核攻撃することもあり得る。これがこんどのNPR。
 フランス政府もすでに、国家が後援するテロ攻撃を受けたときには核で反撃することもあると宣言をしている。
 なぜB-61を近代化(ダイヤルで低威力化したり地中貫徹もできるようにしたり)すると核戦争が起き易くなるという者がいるのか。航空機から投下する爆弾であるB-61は開戦奇襲に使えるようなシロモノではない。
 大規模なテロ攻撃等に対して、巨大水爆ミサイルと通常兵器の間にもうひとつかふたつの反撃や懲罰のオプションがありますよと平時から強調しておくことにより、敵は大規模なテロ攻撃や、周到に準備した通常兵力侵略戦争をしかけようとは思わなくなるのだ。


よゆうチューブ

  Levi Maxey 記者による2018-2-7記事「China’s Fourth Industrial Revolution: Artificial Intelligence」。
   2014年いらい、中共で発表されたディープラーニング関係の学術論文数は、米国内のそれを上回っている。絶対量はどんどん増えている。
 内容の質は保証しないが、意欲だけはこの通りだ。
 ※一般家庭のPCから海外の科学雑誌データベースにアクセスしようとしても、国家によって通信を遮断されてしまう。そんな中共の情報インフラ下で、数だけ量産される「学術論文」とは何なんだ?
 2017-3に百度が中心になってディープラーニング国家技術研究所を設立した。
 関心分野は、顔イメージや人間の音声の識別、バイオメトリックIDなど。
  ※中共はAIを10億の国民の監視に使いたいのだろう。『パーソン・オブ・インタレスト』の視過ぎとしか思えんところがあるからな。
 オバマが2016にAI革命を後押しする政策を打ち出したのに刺激されて中共は2017-7に、「2030年までに中共がAIで世界を牛耳る」との構想を打ち出した。
 2017前半に習近平は、「軍民融合開発委員会」を立ち上げさせた。
 2017-12の広州市エアショーで1000機以上のマルチコプターがスウォーム展示された。今日まで、数では世界最大。
 その前の6月には119機の固定翼ドローンを一斉飛行させている。
 中共サイバー機関は2015-6に米公務員200万人分のプロファイルを抜いている。
 AIで分析すれば、この個人情報のビッグデータから、北京の手先として転んでくれそうな属性がピックアップできるはずである。
 ※借金歴、渡航歴、性癖、趣味、離婚歴、本人犯罪歴、身内の起こした事件歴……。
 次。
 Kendall Hoyt 記者による2018-2-6記事「How World War II Spurred Vaccine Innovation?」。
  南北戦争中、戦死者の2倍の病死兵があった。
 米西戦争では、戦死1人に対して病死兵数は5人にのぼった。
 WWI 最終年、1918の致死的インフルエンザ流行でも、在欧米兵の半数が罹病して大損害。
 WWII中に米国は10種類のワクチンを用意した。D-dayに大至急で間に合わせたのがボツリヌス・ワクチン。ドイツがV-1号にボツリヌス菌を充填しているという誤った情報に基づいた対策だった。
 日本本土上陸作戦の準備として、日本脳炎ワクチンも量産した。
 じつは製薬会社に言わせると、ワクチン製造というのは全く儲からない。これは社会奉仕だと彼らは割り切らねばならないレベル。
 しかしWWIIでは民間の製薬会社が政府に奉仕的に協力してくれたので乗り切れた。それがなかったら、たとえば梅毒などが全米に大蔓延していた。
 この関係は現在でも非常時に必要とされるはずである。
 近年のパンデミック。
 SARSが2003、鳥インフルが2005、豚インフルエンザが2009、エボラが2014。……次も必ずあるはずだから。
 次。
 ストラテジーペイジの2018-2-7記事。
  2018-1にドイツ政府から発表。リビアに最後まで残っていた神経ガス(サリン)用の原料500トンがついに破壊されたと。
 じつはそれ専用の特別プラントがドイツ国内に建てられていて、そこで2017-11に作業完了したのだ。
 サリンとマスタードガスの毒ガス工事の場所はトリポリ港から770kmも内陸であった。
 ストックされていた原料の化学物質は、そこからひそかにリビアの港まで輸送され、さらにこれまたひそかにオランダの特設タンカーによって2016-8に欧州に向けて搬出された。
 化学物質の総量は850トン。
 これらの処理作業には5年かかった。とにかく秘密を保持しないとテロリストに目をつけられるのでたいへんだった。
 2014年前半には、米国から可搬式焼却炉をたずさえた秘密チームがリビアに派遣され、化学爆弾をひそかに処理している。


陸自アパッチに暗視装置やレーザー等を後付けするという話が昨年5月。フォートアーウンで未明に正副2人死ぬ事故が今年1月。

 ウロ覚えで申し訳ないのだが、複座のヘリコプターが「空中でエンジン停止した」場合を仮想した訓練をやるときに、事前に正副2人の間でよく打ち合わせができていないと、パワートレインのリレー復旧時にメインローターに伝えられるトルクが異常に強くなりすぎて事故になると、どこかで読んだ気がした。いまじぶんのPCを検索してもそのテキストが出てこなくて、もどかしい。
 次。
 提案。
 高速の緊急路肩停車時に手前に置く三角表示板は、どうせ重いのだからウエイト部分を電池にして、スイッチひとつで白色の作業灯火にも切り換えられるようにすれば、買い手の「お得」感がUPするにちがいない。
 表側が赤の点滅警告LED、裏側が白色照明用LED、とするのでもよかろう。
 電源は、容量の過半はシガレットライターから充電ができる充電池として可いが、それが知らぬ間に完全放電してしまっていた場合でも機能するように、単1電池×1本とか単2電池×1本とか単3電池×1本でもじゃっかんは点灯するようにバックアップの電池ボックスと給電切換回路もしつらえておくと尚善いだろう。
 次。
 Kyle Rempfer 記者による最近記事「Not just for Hollywood anymore: SOCOM seeks long-range facial recognition, other next-gen tech」。
       SOCOMは、あらかじめ「お尋ね者」(ゲリラの幹部)の顔データを入力しておくと、数百m離れたところからでも、群集の中のその本人を見つけ出してくれるAI双眼鏡を、メーカーに開発させようとしている。
 有効距離は理想的には1kmだが、最低でも350mの距離から顔を見分けて欲しい。
 顔データは、双眼鏡をオンラインにすればすぐアップデートできるようにもしなければならない。
 またSOCOMは、地下空間や水中など、GPS電波を期待できない場所でも自己位置や精確な時刻を知るために、量子通信を利用する技術も模索している。
 次。
 ストラテジーペイジの2018-2-5記事。
   韓国の漢南〔?〕造船所は、インド海軍が欲する24隻の掃海艇を受注しようと14年間努力してきたが、とうとう諦めた。交渉開始が04年である。
 2014年時点で、ゴアの造船所にライセンスを売るという話になりかけたのだが。
 韓国人が受け入れ難かったのは、何か不具合が生じたならぜんぶ韓国の費用ですぐに直しますよという一札を契約文面に明記してくれというインド側からのあつかましい要求。それでは周知のインド側の腐敗や無能による故障や自損もぜんぶ無代修理責任を押し付けられてしまう。
 つまり14年間、高い授業料を払い、韓国人も、インドに武器を売って儲けようなどとは思うなという正しい教訓を得たわけだ。
 商談の対象だったのは、885トンの非金属船体の掃海艇。
 72人乗り。30ミリ自動砲×2門。
 インド海軍は、東海岸に8隻、西海岸に16隻の掃海艇が必要であると計算している。すべて港湾の前面の掃海のため。
 この市場をめぐっては、イタリアのインターマリン社、スペインのナバンティア社、米国のロックマート、ドイツのティッセンクルップ社も、掃海艇をインドに売り込んでいた。現有の掃海艇はすべてロシア製である。


ぶらとん

 COREY DICKSTEIN 記者による2018-1-31記事「Personal phones could be banned at Pentagon as result of Mattis-ordered review」。
 まだ公式発表されていないマティスの決定。「フィットネス・トラッカー」、政府指定の機種ではないスマホ、タブレット類を、ペンタゴン内の機微エリア内に持ち込むことを禁ずる。
 ペンタゴンビルには30万人もの人間が出入りする。建築工事の作業員も含めて。
 ホワイトハウスでも、1月から、職員が携帯電話を持って西ウイングに立ち入ることを禁じた。
 これを主導したのはジョン・ケリー首席補佐官である。ケリーは元、海兵隊の四つ星大将で、マティスの同僚として長かった。
 先週の衝撃。「フィットビッツ」のようなウエアラブルなトラッカーのおかげで海外基地周辺での米兵の動線がバレバレであると。マティスはその報道の前からGPSトラッカー類の所持禁止を考えていた。
 次。
 TIM JOHNSON 記者による2018-1-31記事「North Korea is barely wired, so how did it become a global hacking power?」。
  後進国たる北鮮がなぜサイバー戦のイニシアチブをとっているのか?
 プリシラ・モリウチによると、北鮮のサイバー要員は、小学生時代から選抜される。数学の才能のある児童は特別な中学に集められる。教育を通じてさらに絞り込まれつつ、やがて2つしかない大学(金日成大学と、キムチェク技術大学)に送り込まれる。そうやってパイプライン状に工作員を製造しているのだ。
 卒業すると「総偵察部」の「121局」に身分が移る。
 有望な新人ならばさらに海外で研修させられる。まずは満州の瀋陽市。特急で1時間しかかからない。
 そこに北鮮資本で建設したチルボサンホテルがある。研修生はそこに逗留。同ホテルは北鮮産偽グッズの取引拠点にもなっている。
 特別に優秀なハッカーは中共以外で海外研修させられる。インド、インドネシア、ケニア、マレーシア、モザンビーク、ネパール、ニュージーランドに拠点がある。合法的なレストラン事業などが隠れ蓑として用意されている。
 北鮮ハッカーは総勢で3000人以上、6000人以下だろう。
 SWIFTとよばれる国際金融オンライン決済の使い方に習熟しないと、たとえばバングラデシュの銀行から大金を盗み出すといった作戦はできない。
 北鮮ハッカーは、バングラ中央銀行になりすまし、バングラからNYCにあるFRBに対する送金リクエストメールを偽装し、10億ドル以上の資金をフィリピン内の口座へ移させようとした。FRBはいくつかの偽メールは拒止したものの、まんまとチェックをすりぬけたオーダーもあり、バングラ政府は8100万ドルを失った。2015から2016にかけて。
 同様に、ポーランド、ベトナム、メキシコの銀行も、SWIFTを利用したなりすましオーダーによって、北鮮ハッカーに大金を盗まれた。
 北鮮ハッカーは、韓国内のATMをハックすることで、現金を引き出している。
 また、ロンドンとソウルでは、暗号通貨の詐取もしていることが分かっている。※コインチェックの換金も五輪開催中の韓国内でなされるのではないか。外国人出入りが激増し、あらゆる監視が行き届かなくなり、外交行李で堂々と札束現送もできるのだから。
 北鮮ハッカーは2017-2には、ソウル市にある「Bithumb」から700万ドルを詐取した。
 ソウル市内の「Youbit」はそれに続いて合計7000ビットコインを北鮮によって盗まれ、しかも2017-12に再びやられた。
 2017-9には、「Coinis」がビットコインを盗難された。その金額は公表されていない。10月には、他の10箇所の仮想通貨交換所に対してハッカーが侵入を試みている。
 過去に一度、モリウチは、北鮮のハッカーが盗んだビットコインで商品またはサービスを購入した痕跡を探知した。残念ながらその商品が何なのかまでは分からないのだが。
 北鮮サイバー部隊が初めてその能力を示したのは2013のことだった。韓国のテレビ局がやられた。
 ソニーピクチャーズがやられたのが2014年だった。
 ワナクライばらまき騒ぎは2017-5-12のこと。
 2017-9には北米の電力網の弱点を、北鮮ハッカーが探り当てようとした。
 2018-1にオンタリオ州が、北鮮ハッカーがトロント市の「メトロリンクス」のシステムをハッキングしようとしたと非難した。


「読書余論」 2018年2月25日配信号 の 内容予告

▼ヒューバート・L・ドレイファス著、黒崎・村若tr.『コンピュータには何ができないか――哲学的人工知能批判――』原1972、改訂版1979、邦訳1992
 人間が環境を持続的に、しかし分析なしに支配できるのは、身体のおかげなのである。
 成人が常識を持っているのは、彼が身体をもち、技能を通じて物質世界と相互作用し、ある文化へと教育されるからだ。
 もしわれわれの膝がフラミンゴのように逆向きに曲がるものだとすれば、椅子は座るための道具ではなくなるだろう。
 著者は、反形式主義者であり、反機械論的な確信を有する。テーゼの多くは、ウィトゲンシュタインに負う。彼は言った。人間のふるまいを規則によって分析するのは無理だ。なぜなら、その規則には事情斉一条件が必ず含まれる。他の事情が等しいならば、というやつが。ところが、他の事情が等しいとはどういうことなのか、決して誰も定義することなどできぬ。その定義はきっと無限退行に陥る。
 われわれ人間は、われわれとは何であるのかについての感覚をもっている。その感覚をわれわれは、決して明示的に記述することはできない。しようとすれば無限退行にはまるだけ。
 ホッブズは、思考の統語論的概念(形式的概念)が計算であると明言した最初の人物。
 一般問題解決システム、略してGPS。これは1957にまずニューウェルとサイモンによって試みられた。
 ニューロンが、オン/オフ・スイッチとして働くという前提が、おかしい。おそらくそれは妥当しない。
 ヴィトゲンシュタインの弁証法的な批判。
 有意的な振る舞いはすべて規則的であるはずだという前提を仮に立ててみる。
 その規則を適用する際に使用する規則は何か。
 さらにその規則を適用する際に使用する規則は何か。
 ……こう考えれば、誰でも「規則の退行」の無限性に気がつくだろう。
 知能が解釈すべき事実をもつためには、その知能はすでに状況に中になければならない。
 プラトンは規則的基準を捜した。身体は、知性や理性の妨げだと見た。この考え方の延長線上にデカルトも位置する。
 なぜ人間の生活形式がプログラムできないか。
 われわれは身体をもっているおかげで、特定範囲のチェックをバイパスできる。
 コンピュータ中心主義的なパラダイムがわれわれの社会にもし定着すれば、人々は、自分たちもAIの一種だと考え始め、人々は、機械に似てくるだろう(p.479)。
 人間が事実の源。
 人間が、事実かどうかわからない世界の中で生きていく過程でみずからを想像し、事実からなる世界を創造する。
 そしてその人間は、身体的欲求の満足のために、身体的能力を用いている。そのような存在が組織しているのが人間の世界。
 この世界は、人間以外の他の手段によっては、獲得できない。
▼レイ・カーツワイル著、井上健監訳『ポスト・ヒューマン誕生――コンピュータが人類の知性を超えるとき』原2005、訳刊2007-1
 ファインマンは、原子単位でカスタムできる合成物を予言した。化学者が指示するとおりに物理学者が原子を配置すればいい。それによって化学と生物学の諸問題は解決に向かう。
 ファインマンよりはやく、フォン・ノイマンは1950年代に、万能コンストラクター装置をベースとする自己複製システムのモデルを提示した。コンピュータがコンストラクタに指示を送り、コンストラクタはコンピュータと自分の複製を作り出す。
 人血中のブドウ糖と酸素の反応から理論上は100ワットの電力が生産できる。シドニーの新聞は、これが映画『マトリックス』のヒントだと書いた(pp.311-12)。
 2010年代には、インターネットで受信した画像がヒトの網膜に直接投影されるようになるだろう。
 陸軍は、頭蓋骨を震動させて音を伝えるヘルメットをすでに実験している(p.403)。
 合衆国陸軍はすでにあらゆる非肉体的な訓練をウェブ・ベースの教育を利用して行なっている(p.438)。
 カーツワイルは、この宇宙では高等知性は地球にしかいないと信じる立場。
 計算とは存在そのものなのだ、と言った者あり(p.447)。
 著者いわく、「知能は宇宙よりも強力だ」(p.481)。
 知能は、重力も、他の宇宙の力も克服し、宇宙を思うとおりに作りかえる。「これが特異点の到達点である」(p.481)。
 フォン・ノイマンは、空軍戦略ミサイル評価委員会の委員長であり、また、核戦略に関する政府アドバイザーでもあった。キューバ危機以前、彼は、核戦争のアルマゲドンの発生確率は100%近いと見積もっていたという(p.541)。註によれば、それは1979年の本の中で紹介されている。『The Nature of the Physical Universe』所収の「The Place of Facts in a World of Values」。寄稿者はH.Putnam。
 数学では、シンギュラリティはどんな限界をも超えた値である。要するに、無限ということだ(p.590)。
 物理学はこの言葉を数学から借用した。特異点とは、「理論的に大きさがゼロで無限の質量密度があり、したがって無限の重力がある点を指す」(p.592)。
 チンパンジーの親指は弱い。捧を振り回すことはできるが、取り落とすことが多い。人間だけが、四指のすべてを親指の先にあわせることができる。完全拇指対向性という。300万年前のアウストラロピテクスにはこれがあった。だから遠くに速く石を投げられた。
▼カーツワイル著、NHK出版ed.『シンギュラリティは近い[エッセンス版]』2016-4
 ※上掲の2005初版を2007-1に全訳した版を短縮したもの。
▼スティーヴン・ベイカー著、土屋政雄tr.『IBM奇跡の“ワトソン”プロジェクト――人工知能はクイズ王の夢をみる』2011-8
 ※原題「Final Jeopardy ――Man vs. Machine and the Quest to Know Everything」 2011年。
 デミス・ハサビスいわく。2008年だけでも、脳や神経科学分野の研究論文は5万本も発表されている。2005年より以前の神経科学などは時代遅れ(p.216)。※これはつまりカーツワイルの2005年本に対するあてつけか。
 診断エンジンの長所は、理解の深さではなく、視野の広さにある。そして、視野の狭さこそ人間の弱点にほかならない(p.251)。
 シカゴには大小二つの空港があり、大きい方は戦闘機パイロットのブッチ・オヘアの名がついている。小さい方はミッドウェー海戦から名がとられている。
             ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
 過去のコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
http://www.budotusin.net/yoron.html
 で、タイトルが確認できます。
 電子書籍ソフト対応の「一括集成版」もできました。詳細は「武道通信」で。
 「読書余論」は、2018年6月25日配信号以降は無料化されます(購読者登録だけが必要)。これから数ヶ月分の購読料をまとめて振り込まれる方は特にご注意ください。詳細は「武道通信」で。
 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
sugiyama@budotusin.net
 へどうぞ。