「意図」だけ較べると、損得度外視で東京に核を落としたい国は韓国だけ。北鮮も中共も損得ずくだからその選択は今ありません。

 Emanuele Scimia 記者による2017-4-9記事「Mixed signals for China, India from Russia’s S-400 in Syria」。
   シリア政府軍は、S-400を布陣展開済みだとされていた。
 ロシア製の地対空ミサイルのS-400は、最大射程が400kmで、その警戒レーダーは、飛来する敵ミサイルを最大600kmから探知できると吹かされてきた。
 しかしシリア政府軍はこのたび、沖合い数百kmの2隻のアーレイバーク級駆逐艦から発射された59発の低速巡航ミサイルに対して、ただの1発のSAM発射もできずに、シャイラット空軍基地はその全弾を喰らった。
 この陸地攻撃型トマークは射程1600kmである。
 米軍はEA-18Gグラウラーという強力な電子妨害専用機を有しているが、それでもS-400に対して万能ではないだろうと懸念をして、ホワイトハウスはトマホークを選択したのだ。
 つまり見方によってはS-400はその価値を大いに立証した。もしS-400がシリアに持ち込まれていなかったなら、米国は最初から有人機による空爆を加えたに違いないからだ。
 これは、S-400をロシアから買っている中共とインドの将軍たちにとっては、良いニュースだろう。
 ※日本のマスコミはもうじき戦争だ戦争だと盛り上がっているみたいですけど、正直、わたしはガッカリしています。というのは、B-1を飛ばしてみせたり、空母群を集中したりというデモンストレーションは、こと「対北鮮」に関しては、「アメリカはもう何もしないことに決めた」ということとまったく同義だからです。本気の場合には、1994年に実行されかかったように、西日本の飛行場に夜間にステルス機がこっそりと運び込まれるでしょう。今回ヒラリーがトランプを褒めたと伝えられました。それにも歴史的経緯があります。「ブラックホークダウン」事件のあと、時のクリントン大統領は、爾後はもう生身の米兵は紛争地へは送り込まず、対イスラムではひたすら海から巡航ミサイルだけを撃つだけ、対北鮮では実質何もしない(日本政府にBMDを次々と押し売りする傍ら、北鮮問題の解決責任は北京にあると口先で言い募るのみ)という「CMトリガーイッチ」路線に転換し、一部の人々はこれを臆病者の責任放棄政策だと非難しました。新聞見出しとTVフッテージは派手にできるが、トマホークで吹っ飛ばされるようなマヌケな敵要人は、いないのです(ビンラディンも軽症だった)。そのクリントンと同じ臆病路線をけっきょくトランプだって選んだわけです。ヒラリーは「お前さんもこれでわかったろ?」と言いたいのです。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-4-11記事。
   3月21日、イランがロシアを非難している。それによると、ロシアはイスラエルに対して、シリアに布陣しているロシア製防空ミサイルのIFF(敵味方識別無線コード)をこっそり教えているという。
 なぜこれに気付いたか。シリア兵が、ロシア人には黙って、IFFコードを変更したところ、急にイスラエル機をよく探知できるようになったのだという。
 イスラエル空軍は22日までに断続的に4度の空襲を加えた。
  ※イランに支援されたアサド政府がイラン製のSSMをヒズボラに供給しているので、イスラエルは空爆でそれを片端から破壊しているのである。ちなみにイスラエルとロシアの間にもこうした空爆に関する通知&不干渉協定がある。
 3月25日、シリア政府はロシア外務省を経由してイスラエルに対し、対シリア空襲を続けるならば弾道ミサイル数百発をイスラエル領土に撃ち込むと文書で警告した。
  ※警告もなにも、ヒズボラはイランから手渡されたSSMをシリア領内からイスラエルへ発射する気満々なんですから。


断熱革命

 Hope Hodge Seck 記者による2017-4-5記事「These ‘Swimming Bullets’ Can Obliterate a Target Underwater」。
        ノルウェーのDSGテクノロジー社は米海軍に、12.7mm以下の火器から普通に発射できる水中弾「CAV-X」を売り込み中だ。
 CAVとはもちろんキャヴィテーションの略。
 タングステン弾芯を銅で被甲してあるが、形状と質量が絶妙に調節されており、水中突入時にちょうどよい泡が生じ、それに包まれることによって水の抵抗を最小限にしながら突き進む。
 陸上での有効射程2200mといわれる12.7mm弾の場合、水中をさらに60mも進んでくれる。これは、ヘリコプターから視認できる潜水艦をも攻撃できることを意味する。
 7.62ミリ弾なら22m。5.56ミリ弾なら14mだ。港湾警備艇の乗員たちには重宝だろう。
 次。
 ケミカル工業系の学会誌の『Chemistry & Chemical Industry』(日本語)の2017-2月号の、「シリコーン系のエアロゲル」の特集記事。
 これは1931年に米国で発見されている素材で、可視光線を歪み無く透過させる一方で、熱伝導率が空気よりも小さい(固体物質中では最も低い)。
 家庭の窓や壁や天井用としては理想的な断熱素材たり得る候補物質だ。
 遺憾ながら物理的な応力には弱くて、大きくすると自重でも壊れてしまうほどに脆い。その欠点がながらく克服されなかったのだが、そろそろ問題の解決に近づいているようだ。
 もしもそうした弱点がなくなり、やがて安価に大量生産されて、たとえば窓ガラス代わりに普及すれば、住宅の断熱性は格段に改善され、理想的な省エネ住宅ができる――などと特集記事では書かれているのだが、兵頭おもうに、どうして日本の科学者の発想はこんなに小いせェんだ?
 この素材が「農業革命」に結びつくということに、どうして誰もピンと来ないのだ!?
 この新素材でビニールトンネルを織り出せるようになれば、北海道の荒地でサツマイモが栽培できるではないか。
 それで日本のカロリーベースの食糧自給率は100%を達成してしまう。しかも、国全体では石油を大幅に節約しながらである。
 逆に南国の低地で高原野菜も栽培できる。(長野県のハウス農家には Bad News か……。)
 ビルの断熱材としてこれが普及すると、ビルのクーリングのために冬以上にたくさんの石油を燃やすという、これまでの都市部での悪循環を止めることができる。
 これは年中クーラーをガンガン効かせている天下のヒートアイランド国家サウジアラビアにとってはじつに朗報となるのだから、サウジの大金持ちたちに投資させることも考えたらいいぢゃねェか。
 商店街の「モール」や商業ビルのエントランス部分が、この素材の屋根材と壁材によって、冬は寒くなく、夏は暑くなく、光だけが充溢した空間となる。
 乗用車の断熱材に使えば、クーラーを回すエネルギーは節約される。日本にはますます石油は要らなくなる。
 夕方に風呂を一回沸かすと、それは深夜までも冷めなくなる。
 冬服と冬靴を、おそろしく薄手にできる。もちろんダイバーのドライスーツも。「人間トド化」計画……とでも呼ぼうか。
 もちろん話はそんなレベルでは終わらない。この素材で、災害避難村用の「テント」をこしらえればどうなるか? それがそのまま、普通の木造住宅と遜色のない断熱性を発揮してくれる。ということは、周年、そこに居住しても、寒暑をしのぐ上で、なんの不便も感じないで済むのだ。
 北海道の厳冬期の雪原中で、ロクな暖房設備もないのに、気楽にテント生活が送れるようになる。
 世界には、「ホームレス」はありえなくなるのだ。
 ……ようこそ、ビニールシート御殿へ……!
 夢のマイホームが幕舎では格好悪すぎるという方々には、薄いベニヤ板とこのシリコンアエロゲル膜のコンパウンドがオススメだろう。見た目は豪邸だがじつのところはガレージレベルの造作で(したがって地震で圧死するおそれ無し)、快適そのものの平屋が数百万円くらいのポケットマネーでドーンと建つのだと想像してみ。
 太陽黒点が急にゼロになっても、この素材があれば人類は氷河期を生き残れる。
 誇張抜きに、こういうのが「世界を救う技術」ではないのだろうか。
 ※中学時代に、「鑑識の結果が出ました!」「何だった?」「乾燥剤シリカゲルです」……という『大陽に吠えろ』コントをやっていたのを急に思い出しましたわい。


Micro-Phalanx が、できるはずだ。

 STARS AND STRIPES 紙の2017-4-4記事「Army’s third-arm gun mount aims to lessen burden of heavy weapons」。
   炭素繊維複合素材で重さ4ポンド未満の「機械の第三の腕」が防弾ヴェストから延びて兵士のM4カービンを支えてくれ、反動も吸収してくれる。兵士は本来の両腕で、もっと他の仕事ができる。
 そんな、人間とロボットアームの融合を、米陸軍がメリーランド州アバディーンで研究中。
 ※まさにわたしが『自衛隊無人化計画』(2009)で書いていることを、ようやく米陸軍が後追いリサーチし始めた模様。
 次。
  Franz-Stefan Gady 記者による2017-4-4記事「US Navy Buys 17 Advanced Sub-Killer Planes Armed With Flying Torpedoes」。
    潜水艦を攻撃するMk54魚雷に滑空翼をもたせて、P-8Aが高度9100mから投下し、GPS誘導によって狙ったところへ正確に着水させる。そんなシステムを2020年までにボーイング社は実現するつもり。
 ソノブイはもっと多数必要だし、ソノブイ信号を機上で解析するコンピューターの性能も増強する。
 P-8が低空に降りなくなれば、敵潜水艦はもうP-8からマークされていることを察知するすべがない。
 ちなみにP-3オライオンは、対潜魚雷を投下するためには高度100フィートまで降りる必要がある。
 ※水中の潜水艦から発射できる有線誘導の対空ミサイルをドイツが販売開始したので、対潜哨戒機側もうかうかしていられない。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-4-4記事。
   過ぐる 3-1に「アトラス5」ロケットで軌道投入されたNROの衛星は「イントルーダー12」とよばれる海上監視衛星であった。もちろん秘密だが、観測マニアたちはすぐにつきとめるのである。
 ※習近平の訪米前にシナ海軍はまた北米近海で何かブラフをやらかすつもりかもしれない。それをバッチリ監視してやるというわけか。3月打ち上げならそろそろ調整も完了だろう。
 高度1000km~1100kmで合計2~3機を編隊周回させ、外国海軍の艦艇や航空機が洋上で発する電波をキャッチするELINT機能を発揮する。
 複数機から標定することで、電波の発信源座標も絞り込まれる。
 三機編隊の対艦艇用ELINT衛星の初代は「Parcae」といい、1976年に運用開始した。
 二代目が「イントルーダー」で1990運開。
 1996に「イントルーダー4」が投入された。
 2001の「イントルーダー5」は新機種だと見られた。というのは、三機ではなく二機編隊だった。標定性能が向上し、三機は必要なくなった。
 2007の「イントルーダー8」以降は、「アトラス5」が打ち上げ機に使われている。
 「イントルーダー12」は1機が3トン。「アトラス5」は低軌道なら29トンまで投入できるから、2機を同時に投入するのは容易である。
 ※6トンではペイロードが余り過ぎる。たぶん他の重量級の軍用衛星も詰め込んでいたのだろう。
 この「アトラス5」は、ロシア製のRD-180というブースターを使っているのが問題視されている。近い将来には純米国製の「スペースX」などにより代替されるであろう。
 「イントルーダー」と一緒に海洋監視しているのが、1978以降の「ラクロス」である。こちらはレーダーによって、洋上の敵艦隊の動きを見張る。
 ※ということは3-1に同時に放出されたのは、重量級且つ最新型の「ラクロス」なのか? ラクロス1機とイントルーダー2機による3機編隊か?


VX基礎知識

 Dan Kaszeta 記者による2017-2-27記事「VX Nerve Agent: Frequently Asked Questions」。
   神経剤には、G系統とV系統がある。
 前者には、タブン、ゾマン、サリンあり。
 後者には、VX、VGあり。
 すべての化学兵器をアルファベット2字であらわすことにしたのは、NATOである。
 たとえば マスタードガスはHDである。
 Vがヴェノムから来ているというのは都市伝説だろうと思われる。
 蒸気圧〔ヴェイパー・プレッシャー=蒸発のしやすさの目安〕値は、とても低い〔=ほとんど蒸発しない〕。そして沸点は高い。
 ほぼすべての「毒ガス」は普段は液状である。ナーヴ・ガスという言い方も間違いである。神経剤(~エージェント)と呼べ。
 VXは分子量が大きい。重い。なかなか揮発するようなものではないのである。
 揮発しないから、戦場では、持続性である。
 トキシンは生物毒について言う。VXはトキシンではない。
 VXの基本性情は、米軍野外マニュアル『3-11-9』に2005年から公開されている。
 VXは油状で、シロップのような液体である。これが凍ってしまうような場所は、おそらく冬の南極点だけであろう。
 沸点は非常に高く、その化学分子構造が破壊される温度以上である。すなわち、陸上で普通に加熱しても、決して気体状に変えることはできない。
 色も臭いもない。
 しかしごくわずかずつ蒸発はする。その気体は空気より9倍重たい。
 おそらく、床にVX剤をぶちまけた室内を人が歩いて通過しても、呼吸によって致死量のVX剤を吸い込むことにはならないだろう。そのくらい揮発しない。
 ※いっぽうサリンは揮発性なので、話がまるで違ってくるから、混同せぬこと。
 VX剤を液状のまま微粒子にして大気中にスプレーすることは可能である。そのようなエアロゾルとすることで、VXは初めて兵器になるのだ。
 引火性ではないので、砲弾や爆弾に仕込んでアエロゾル状に飛散させることが可能。腐蝕性ではないので、不純物が混じっていなければ、プラスチックやガラスや金属の容器に詰めたまま長期保存してもよい(米軍は1960年代に製造したものを今も保管していて、それはいつでも使用できる)。爆発性もない。
 いちど撒布されたVXは、除染しなければ、何ヶ月もその場に残り続ける。
 VXで人を殺すには、スプレーした微粒子を呼気として吸入させるか、皮膚や目に直接塗布するか、飲食物に混ぜて嚥下させる。
 液状のVXが皮膚に付いた場合、数分から数時間で作用があらわれる。
 その場合、瞳孔収縮は、早期の段階では起こらない。
 もしエアロゾルを吸入した場合、作用は数秒から数分で生ずる。
 VXを発見したのは、英国の化学メーカーICI社の科学者たちであった。
 アミトンという類似成分の新殺虫剤が、人にも危険であると、発売の直後に知られたのだ。
 英政府はこの化学剤について米国に通牒した。そして米国でVXは兵器化された。
 米軍は、マスタード糜爛剤の代りに、このVX神経剤が使えると考えた。どちらも戦場を長期間汚染して、特定エリアへの敵軍の進入をためらわせるのに役立つ。
 あるいは、敵軍のAFVが作戦前に集結している場所に撃ち込めば、敵の攻撃発起直前にその全車両を長時間、使用困難にしてやれる。
 米国での製造はインディアナ州ニューポート市にて、1962年から68年までなされた。純度の高いものを量産するのは大変だった。
 VXは高純度のものをつくるとなると難しい。低純度のものはイラクでもオウム真理教でも作れるのだが、それらは長期保管ができない。
 ソ連のVXは、米軍のVXとはほんのわずか、組成が異なる。
 サダムフセインのイラク軍は、1980年代、地対地ミサイルの弾頭にイラク国産のVXを充填してイランに向けて発射したことがある。
 オウム真理教は1994~95にVXで三回人を襲撃し、うち一名は死亡している。
 米軍の投下式VX爆弾は「ビッグアイ」という。
 米軍は「VX地雷」も有している。踏むと起爆してスプレーが飛び散る。
 精巧に設計されたVX兵器によるエアロゾル撒布の威力は、米軍が羊6000頭をいちどに殺した実験で示されている。
 しかし反化学兵器キャンペーンの影響を受けて、米軍はVX貯蔵ストックの大半を廃棄処理している。
 もしVXに身体を暴露してしまったら?
 まず気道を確保。クリーンな空気が吸えるようにしてやる。
 専門処置をすぐに受けられない場合は、とりあえず石鹸水で洗うことが推奨される。


トマホーク巡航ミサイルの飛翔速度は880km/時。1300km飛ばすにも1時間半、2200km飛ばすには2時間半がかり。

  Thomas E. Ricks 記者による2017-3-28記事「Book excerpt: Defense Secretary Mattis discusses his favorite books, and why」。
   マティスへのインタビュー記事。
 俺(マティス)だけじゃない。海兵隊の現役当時、俺が仕えたすべての上官は「読むべき本のリスト」を持ってたね。そして俺が、そんな本は重要じゃないと判断してそれを読まなかったりすると、上司たちは怒るのが常だったね。
 シャーマンやマルクス・アウレリウスについて、それから、ネルソン・マンデラの自伝『Long Walk to Freedom』……。興味あることはすべて読んできた。人間の本性というものを書籍から学ばせてもらった。おかげで、敵の行動が一瞬不可思議に見えても、それには悩まされないのである。
 一介の武辺、部隊指揮官として人生を終えられるのならばともかく、民主主義政権下のプロ軍人は、出世するにつれて、軍隊外の世界と交渉を持たねばならぬ。そのさい、戦場でのテクニックに詳しいという以上の、大人の世知が必要になるのだ。
 マンデラがバーミンガムの獄中でどんな手紙を書いたか、シャーマンが敵前でディレンマに直面したときにどうしたか、スキピオ・アフリカヌスはいかにして勝利することができたか〔シャーマンとスキピオについては、マティスはリデル・ハート著で読んでるらしい〕。
 これらを承知しておくことは、人間の政治的欲望について了知できるということ。それが非軍人の大物指導者たちの意向と軍事作戦との折り合いをつけさせねばならぬときに役に立つ。この教養が、世界を野蛮から遠ざける高度な「戦略」を生むのだ。
 古代戦でも現代戦でも変わりなく、戦場はえてして、人間が最も原始的・本能的な野蛮を発揮するステージとなる。いやしくも将校ならば、そこに十分に詳しくなくてはプロ軍人として頼りない。
 しかしそのレベルの専門知識だけで満足していてはならぬ。敵をメチャクチャにやっつける方法を国家指導部に提案するだけではダメなのだ。高級将官としては、それではあまりに未熟である。
 古代でも現代でも、偉人たちは、その野蛮な無秩序から「よりマシな平和」を再構築するのにいちばんよい戦略とは何なのか――を考えてきたのだ。
 書籍には、それが書いてあるのだ。
 戦術レベルで実戦とはどんな具合かを教えてくれる本としては、そうだな……。
 M.M.Kayle著『The Far Pavilions』。
 Guy Sajer著『The Forgotten Soldier』。本書からは、部隊指揮官は部下の兵卒たちから報復されることがあるんだぞという戒めを得られる。
 Nate Fick著『One Bullet Away』〔わが身をスレスレにかすめて飛び去った敵弾〕。
 Alistair Horne著『Savage War』。
 E.B.Sledge著『With the Old Breed』。
 師団幕僚以上の者は、グラント将軍の回想録『Memoirs』や、スリム著『Defeat into Victory』を読んでおけば、間違いは犯さない。
 コリン・グレイ著の『Fighting Talk』『The Future of Strategy』の2冊も良い。
 Williamson Murray著『Military Innovation in the Interwar Period』。
 Tony Zinni著『Before the First Shot Is Fired』。
 H.R. McMaster著『Dereliction of Duty』もオススメである。
 コリン・パウエル著『My American Journey』。
 マルクス・アウレリウス著『Meditaitons』。
 Steven Pressfield著『Gates of Fire』やマンデラ自叙伝からは、われわれが取り組まねばならぬミッションなんて先人の苦闘に比べたら大したことないと学べる。
 デュラン夫妻著『The Lessons of History』または、Ron Chernow著『アレグザンダー・ハミルトン』も同様。
 国防長官の重責について体験したくば、ゲイツ著『Duty』が必読だ。
 要するに、日の下に新しいことなどありはしないのだ。すべては先人がもう体験済みなのである。
 もしLucas Phillips著『The Greatest Raid of All』を読んでない海兵隊員がいたら、すぐに読むべし。WWII中にフランスのサンナゼールにあったドライドックを破壊した作戦の話だ。戦艦『ビスマルク』はそれ以降は出撃ができなくなった。メンテナンスできる軍港設備が消滅したので。
 これは、戦争の戦略と作戦と戦術コストのバランスをどう考えるべきかの好資料である。
 Andrew Gordon著『The Rules of the Game』は、トラファルガー海戦時のネルソン提督と、百年後のユトランド海戦時のジェリコー提督とを比較して、後者の通信についてのひごろの取り組みが不十分であったために英海軍の決定的勝利は逃されたと示唆し、サイバー時代の今日の通信部門への教訓を与える。
 国家レベルの話としては、タックマンの『愚者の行進』『8月の砲声』、ポール・ケネディの『大国の興亡』、キッシンジャーの『外交』『世界秩序』。
 初陣で倫理問題に直面するときがある。そんなときに役立つのは、Michael Walzer著『Just and Unjust Wars』や、Melham Wakin著『War, Morality, and the Military Profession』。
 1950年の朝鮮半島で大苦戦した第一海兵師団について、Gail Shisler女史が著した『For Country and Corps: The Life of General Oliver P. Smith』は、キミ自身が著作する場合のひとつの見本だと思う。
 蔵書が数千冊にもなると、転勤のたびに車で運搬するのにうんざりする。そこで処分を余儀なくされるのだが、わたしは地質学(geology)の本全部と、いくつかの軍事書、そして米国西部の歴史について書かれた多数の本は、手元に残している。


来週のいまごろはわたしもワゴンRのオーナーなのでR!

 従来、来函される方々には、空港か駅でレンタカーを借りていただいて、それにわたしが同乗して近郊観光を致すというパターンでしたが、爾後は、「マイカー」にて直接にご案内ができるのでR!
 なぜハスラーにしなかったか? 最先端のセンサー&安全装置が段違いなのでRた!
 わたしはもう18歳から四輪を運転していますので、いくら目が衰えても心眼と身体記憶でなんとかなると思ってた。しかしそれは間違いであると自覚しました。老人は今やハイテクの安全メカトロニクスに頼らねばならんのでR!
 いや、もっと単純にマニュアル車にしちまえば、まず誤発進とかあり得ないんですけど……。それだと女房がいざというときに転がせねぇ。
 本当は、ボケ防止のためにもMTはもっと肯定的に見直されるべきだと思っています。法令で「俊敏運転テスト」に落ちた老人は「MT強制」としてもいいんじゃね? そうなりゃ、少子化で左前の教習所はまた小金持ちの老人たちからカネを取れるようになるし、社会もハッピーでしょ?
 今年の夏は「車中泊」を研究しようかと思っています。たぶん一回で懲りるでしょうが……。
 田舎では、自動車は、身を助けるだけでなく、社会を救うことができるはずでR。
 これからメーカーに期待したいのは、「天井が頑丈なファミリーカー」。真上からの応力に強いクルマなんて、誰も考えてないでしょう。しかし近未来にはそれが需要されるようになる。予言します。
 後部スペースに搭載する超小型自転車も物色中。過去3台の経験から、わたしは折り畳み式自転車を、グレードにかかわらず肯定評価しませんので、アルミ製ママチャリ。
 そのクラスだと、丸石自転車の14kg台というのが、いちばん軽いのかな? 変速なしが、好みです。
 次。
 フォックスニュースの2017-4-1記事「Russia develops hypersonic 4,600 mph Zircon missile」。
   ロシアは「3M22 ジルコン」超音速巡航ミサイルを仕上げつつある。マッハ5で、250マイル飛ぶ。その距離をなんと3分15秒で翔破してしまう。
 全重5トン。まだ軍艦からの対艦試射はなされていない。その洋上テストは来年を予定していたが、まきあげて、この春にやっちまうという。
 いわゆるスクラムジェット。タービンのようなメカニカル部品が少ないラムジェットは、故障の心配が少なくてよい。
 しかし実用化は2020年ではないかと専門家。
 米国や中共も同じようなものをそれぞれ研究中。
 こんなミサイルが普通となれば、「空母」はいよいよ使い辛い道具になる。洋上をウロウロしている大型艦など、将来は生き残れなくなるだろう。
 インドが開発中の「ブラモス2」は、ジルコンと同じスクラムジェット技術を採用している。
 ※4月4日売りの『SAPIO』にもご注目ください。わたしがまた面白い記事を寄稿しました。「敵地攻撃」といえば「トマホーク」しか考えられないニワトリ・レベルの頭脳しかないオッサンたち(いや、オバサンもいるな。若干名)は、特に必読でR!


「読書余論」 2017年4月25日配信号 の 内容予告

▼トニー・シュウォーツed.、相原真理子tr.『トランプ自伝』1988、原1987
 ※家賃の取立てや、ビル建築発注のノウハウを、若き日のトランプ自身が語ってくれるという奇特な本。日本の不動産事業関係者は必読だと思う。
 トランプの昼食はトマトジュース1缶。とにかく時間がもったいないので外食は基本的にしない。それどころか昼食そのものを省略してしまうことがよくある。
 私はデイヴィッド・レターマンのTVショーを見るほど遅くまで起きていることはまずない。
 50戸を管理するのも、1200戸を管理するのも、労力はほとんど変わらない。 トランプは酒を飲まない。そして何もせずにただ坐っているのは苦手だ。
 望む入居者は、収入が少なくとも家賃の四倍あり、清潔で、隣人と問題を起こさない者。黒人でもいい。生活保護受給者だけは、白人だろうと断る。
 誠実さのかけらもないくせに、自分がいかに高潔な人間であるかを宣伝してキャリアを築き上げる「尊敬すべき」人物たち――をトランプは大嫌いである。
 他の人がみな去ってしまったあともひとり病床にとどまり、文字通り死ぬまで付き添ってくれるような人物こそが真の味方である。
 悧巧な契約。私は1千万ドルでホテルを買い取る「オプション」を所有する。ただし、税の軽減が認められ、銀行融資を受けることができ、パートナーとして適当なホテルが見つかれば、という条件付きで。したがって、すべての要件が整うまで、購入は見合わせられる。
 機械のような人間とのビジネスをトランプは嫌う。たとえ殺人狂でも、真の情熱をもった相手と交渉するほうがまだましだ
 日本人との商売はやりにくい。1ダースものグループでやってくる。2~3人を納得させることはできるが、12人全員を納得させることなど誰にもできない。
 日本は何十年もの間、主として利己的な貿易政策でアメリカを圧迫することによって、富を蓄えてきた。「アメリカの政治指導者は日本のこのやり方を十分に理解することも、それにうまく対処することもできずにいる。」
 トランプにいわせれば、世界最大のカジノはニューヨーク株式取引所。
 土地買収交渉のコツ。敷地全体を取得できる場合にのみ、個々の区画を買い取る、という条件を認めさせること。これによって、最後の区画の所有者に居座られて構想が破綻する転帰は防がれる。
 大規模なプロジェクトの予算が大幅に超過する理由は、工事の途中で手直しするから。工事を始めてしまったあとから委員会などに細部についての文句をつけさせないようにしなければならない。
 冷却塔は、ビルの一番高いところではなく、七階くらいに設置すると、全体の工費を大幅に節約できる。なぜならタワー全体の完成よりもずっと早く、エアコンのための配管や電気工事を始めることができるので。
 事前にできるかぎり完全な設計プランを作成する。そして請負業者に詳細な見積もりを出させる。最初の図面が不完全だと、業者は最初は低く見積もっておき、あとからプランの変更点ひとつひとつについて加算請求をするという作戦に出るから。
 難民の話を聞いて同情し、空いているアパートに入れてやろうといった慈善心に衝動的に身を委ねてはいけない。というのは、たとえ一時的にでも誰かをアパートに入居させたら、後で立ち退かせるのは法的に至難なのだ。
 1984頃、トランプは、建築におけるポストモダンの波に気がついた。トランプはそれが嫌いである。
 難しい判断を一時のばしするための「ナントカ委員会」以上にトランプが嫌いなのが、マッキンゼーなどの外部コンサルタント会社。
 競争入札を失敗させないためには、入札者全員に対して過去の実績を提示させるべきである。過去にちゃんと期日や予算を守ったかどうかが肝心だ。NY市の事業ならば、過去に同市の事業で優秀な仕事をした業者は、将来のプロジェクトでも優先されるべきだろう。
 トランプは、豪州に、世界第二(タージマハルの次)のカジノを経営しようかとも考えた。しかしNYから飛行機で24時間もかかる場所で事業はできないと悟って、やめた。ニューサウスウェールズ政府が落札者を発表する直前に、入札中止を通知した。
 1987-1、ユーリ・ドゥビーニン駐米ソ連大使から、書簡によってモスクワに招待される。7-4に、イヴァナ、彼女のアシスタントであるリーザ・カサンドラ、そしてノーマとともに、モスクワへ。国営ホテルのレーニン・スイートに泊まり、ホテルの候補地を数箇所、見学した。いくつかは赤の広場の近くにあった。「この商談に対するソ連政府の意欲には感銘を受けた」。
 訳者あとがき。1987時点でイヴァナは、あと10年たって51歳になったら大統領選挙に出馬しないとは言えぬ、と語った。
▼ノーマン・モス著、上田・田中tr.『神を演ずる人びと――水爆の開発と核戦略家』原1968“Men Who Play God”、S44-7pub.
 ※「もっと早い時点で読むべきだった」と悔やまれるような古い文献は多々みつかる。これもそのひとつだが、現実には、手当たり次第にとことん多読をしない限り、どの資料を後回しにするべきかなんてこともわかるわけがない。というわけで、若い人たちはせいぜい「読書余論」を活用して欲しいのだ。
 米第六艦隊を数年前に取材したとき、空母上には、いつでも核爆弾を抱いて発進できる準備のできている待機機が2機ある、と説明された。それは銃を持った水兵が警固しており、機体下には、長さ4mほどの細長い魚雷形の爆弾が、だぶだぶした茶色の袋に包まれた状態で取り付けられていた。
 これが、ホンモノの水爆との出会いだった。
 米国の原子力委員会は1955-2、死の灰の影響についてリポート。煉瓦もしくは石造りの家の中にいれば、受ける放射能は50%減る。地下室なら90%減る。
 SACのB-52からは、射程700マイルの「ハウンド・ドッグ」を放つ。
 フェイル・セーフ線。爆撃機はその線までは進むが、その線を越えるためには、ヴォイスの暗号を受信しなければならない。映画の『フェイル・セーフ』はこの点でリアルではない。
 どれほど、全面戦争を確信できるような状況であっても、この暗号が受信できない限り、爆撃機は引き返せ。というのは、ミッションを担当している爆撃機は多数あるので、1機の「無線故障」による引き返しは、大したことではないのである。
 1メガトン水爆は、高度1600mで爆発させると、火球が地面に届かない。これが典型的な都市攻撃。
 1960年代前半、NATOはMLFを構想した。弾道ミサイルを搭載した水上艦を共同運用するというもの。多角的核戦力。しかしシミュレーションの結果、この水上艦がソ連潜水艦から肉薄された場合、先制的に核爆雷を使用する誘惑に艦長は勝てないとわかった。
 ストロンチウム90は、老人の骨には集らない。骨が生成されにくい年齢なので。よって、放射能汚染された食品は老人用にまわすべし、というのがカーンの説教。
 汚染放射能で老人が発ガンする前に、その老人は寿命を迎えるはずである。
 最も安全な食品は妊婦と子供用とせよ。
 フォールアウトのうち、ストロンチウム90が注視されるわけは、カルシウム、すなわち人の骨に吸収されるから。骨の中からベータ線を出されてはたまらない。白血病や骨癌になってしまうのだ。
 ストロンチウム90は牛乳の中にも入る。そこから子供が生成する骨の中に定着してしまう。これが最も懸念される事態。
 家畜の肉は、ストロンチウム90で汚染されることはない。骨と乳だけがあぶない。
 ハーマン・カーンの理論。ブラックモスレムは白人を憎めと教えている。ところが、麻薬の濫用をやめられる率は、ブラックモスレムの場合90%で、白人医師と同格。ブラックモスレムでない黒人は、5%しか麻薬から立ち直れない。ゆえに米国社会はブラックモスレムを肯定すべきであると。
 カーンいわく。すべての情況を数学的に解析することはできない。その好例は、183人の手兵でインカ帝国を征服してしまったフランシスコ・ピサロ。今のどんな分析式をつかっても、たとえインカ側が間違いの限りをつくしても、なおピサロには勝つ可能性がないと答申されるだろう。
 カーンいわく。ヒッピー現象はどう説明されるか。アメリカ人の潜在意識の中に、働かずにぶらぶらすることへの罪悪感が強い。これにうちかつためには、体制に反対しているとかのもっともらしい理屈をつけるしかなく、しかも、それでもまだ足りないので、マリワナやLSDに頼るのであると。
 チャールズ・ヒッチは、資源配分の問題にコスト分析の新しい手法を適用した。超音速のB-70爆撃機はソ連の比較的安価なSAMで無力化されてしまう。だからそんなものを開発するよりも、低速爆撃機の数をもっと増やし、航空機用のコンピュータに資金を投ずることの方が合理的である、と。
 これに空軍インサイダーはまったく意表を衝かれた。彼らの伝統価値観では、飛行機がどこまでもより速く進化し続けるのはあまりにも当然だったのだ。
 キューバ危機時代、ソ連には75発のICBMがあり、米国には200発あった。
 ソ連から亡命してきたオレグ・ペンコフスキーによれば、ソ連のミサイルの命中精度には疑問があった。
 ソ連の強みは、800基以上あったIRBM。そのうち70発をキューバに展開しようとしたのだ。ICBMで甚だしく劣勢だったから、いっきょにそれで追いつこうとしたのである。
 ソ連は、東欧の衛星国にはいちども核ミサイルを配備せず。おそらく核兵器が奪われることを心配しているのである。
 だからこそ、キューバ危機の初め、国務省の者たちは、キューバに核ミサイルが持ち込まれたとは信じられなかった。
 ソ連はキューバに2万人の将兵も送り込んだ。これは核兵器をキューバ人に奪われないためのガードマンだった。
 ソ連のニコライ・タレンスキー大将。ソ連の雑誌『国際問題』に寄稿していわく。「侵略目的のために攻撃手段を使おうと意図する側だけが、対ミサイル防禦システムの創設と改善を遅らせようと望む。」(p.255)。
 ABM論争当時、ABMに投じられる1ドルの努力は、ICBMに投じられる10セントによって帳消しにされる、と言われた(p.281)。
 ※「3F構造の水爆」は、きょうびは全く流行らないのだが、宇宙空間で炸裂させるABM用とするならばフォールアウトを無視できるので、安価で大威力のABM弾頭として、むしろうってつけだろう。また、敵の核兵器を狙って最初から地表爆発させるつもりの核弾頭にも、天然ウランのタンパーを使うことには合理性があるだろう。というわけで、「汚い水爆」はまた復活するのではないか?
▼宮田新平『「科学者の楽園」をつくった男 大河内正敏と理化学研究所』2001-5
 1983刊の『科学者たちの自由な楽園』を文庫化したもの。大喜多藩主の息子が日本の民間の造兵学をリードした。武見太郎や田中角栄など、かかわった人物のひとりひとりがすべて面白い。仁科研人脈について理解するためには、次の保阪本よりも先にこちらを読んでおくのがよい。
 大河内が戦後に書いたもののなかに、久我山高射砲の嘘話がある。B-29を十数機おとしたのでついにその上空は避けられるようになったとか。
▼保阪正康『日本の原爆 その開発と挫折の道程』新潮社 2012-4
 戦前の日本指導層が核兵器についてどこまで承知していたのかに興味のある現代人にとっては、これが最初に読むべき1冊だろう。しかしその要点だけを速攻で知りたい人は、こちらでどうぞ。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
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フランスはお荷物「新古車」の『ミストラル』をアジアのどの国の海軍に売り飛ばしたいのだろうか?

  Sean M. Castilla 記者による2017-3-25記事「On the Likelihood of Large Urban Conflict in the 21st Century」。
         2世紀前、世界人口の3%だけが都市域に暮らしていた。だが今、世界人口の半分は、都市域に住んでいる。
 このトレンドが続くと仮定すると、2050年までには、世界の人口の70%以上が、都市民だということになろう。
 そしてその振興メガシティのほとんどは、サブサハラ地域に集中するはずである。
 今日、メガシティが世界の経済活動の14%を稼ぎ出している。
 将来のそれらのアフリカ無法地帯の新メガシティが、既製メガシティほどに経済発展や社会安定に貢献できるかどうかは疑問とするしかない。
 とはいえ戦争は政治である。政治は人々の暮らすところで動く。将来戦争はどこかのメガシティが戦場になるのだと覚悟すべし。


ロシアは水面下で「対中共・米露連合戦争プラン」をトランプ政権に提案しているものと推定される。

 Steven Pifer 記者による2017-3-21記事「Multilateralize the INF problem」。
   INF条約は、射程が500kmから5500kmまでの地上発射式の弾道弾と地上発射式の巡航ミサイルを米ソに禁止した。1987年に調印され、1991年半ばに全廃は実現している。
 ロシアはこれに違反する地上発射式巡航ミサイルの試射を2014年から開始。そのときはオバマ政権がこのニュースが炎上しないように努めた。
 しかしとうとうこのたび、露軍はこいつを実戦配備したとワシントンが認めた。
 これを承けて連邦議会内の共和党員たちは、米国もただちに地上発射型の中距離核ミサイル(弾道ミサイルと巡航ミサイル)を製造せよと叫び出している。
 そうなるとはっきりさせねばならぬことが2つあるだろう。
 ひとつ。いまの制限された米国国防費枠の中でそれは可能なのか?
 ふたつ。NATOの欧州諸国や、日本や韓国は、それら地対地核ミサイルの自国内展開を認めるだろうか?
 ロシアがこのたび配備したGLCMは「SSC-8」というコードネームで、射程は2000kmだと推測されている。
 こいつをカリニングラード〔最西端のロシア領土〕から発射すると、アイルランドから南仏まで、楽々と核弾頭が届いてしまう。
 シベリア東部から発射すれば、東京にも、北京にも到達する。
 ※この記者は核不拡散のプロなのだが、米国中心主義の御仁らしく、肝心なことに想像力が働いていない。ロシアはとっくに空中発射式の空対地巡航ミサイルで全欧と全日本列島は攻撃できるのだ。SLBMもある。高速で飛翔する弾道弾ならばともかく、旅客機並のスピードの巡航ミサイルでは、いまさら欧州にも日本にも特別な危険など加わらない。この新兵器の注目点はあくまで「対支」なのだ。SSC-8がほんとうに2000km飛ぶのだとしたら、北京に対しては、イルクーツク以東のモンゴル北側国境帯のどこからでもロシアはこれを届かせることができるわけだ。それを中共側としては先制破壊しようがない。もっと重要なこと。モンゴルの北側から、中共の核弾頭の一括貯蔵庫である「22基地(太白山)」まで届くのだ。中共の核ミサイルは普段は核弾頭を装着していない。巡航ミサイルが亜音速だといっても、その発射を探知したあとから「22基地」から核弾頭を持ち出そうとしても、もう間に合わない。水爆の連打で交通運輸も通信も麻痺するからだ。おそらくこの核巡航ミサイルは、INF当事者ではないのをいいことに勝手な中距離弾道弾軍拡を続ける中共に対する絶妙の回答となっているのだろう。そうだとすればアメリカは本音では反対もできないという、ロシア発の高等政治なのかもしれない。やはりフリンのような小者ではロシアの相手はとても無理だったかにゃんたらりん。
 じつはソ連は極東の最も東北域の陸地には過去、一度も核兵器を展開したことがない。
 ※そこには交通と通信面でとても不便な条件があるからだ。とすれば米国はアラスカから戦略的にも戦術的にも攻勢に出るというオプションを持つわけだ。極東ではロシアはウラジオなど沿海州の南部にも核兵器を置きたくない。おそらく満州からの歩兵攻撃には弱いからだ。コムソモリスクナアムーレの近くの Selikhino という基地が、極東の陸上核拠点らしい。
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 Kris Osborn 記者による2017-3-24記事「Army Pursues Precision-Guided Upgraded Shoulder-Fired Weapon」。
   DARPAはカールグスタフから誘導式の対戦車弾を発射させたい。
 名付けて大量圧倒撃滅弾薬(MOAR)。
 口径84ミリながら、カールグスタフは、最大で1300m先の目標を打撃できるポテンシャルを持っている。最先端のシーカー技術を結合させれば、その距離で移動目標も撃破できるはず。
 もともとそのシステムは、歩兵携行型の対戦車ミサイルの「ジャヴェリン」よりも軽い。
 米軍が採用しているカールグスタフの型番は「M4」だが、次のタイプではこれをもっと軽量にしてやるべく、チタニウム合金でこしらえることが検討されている。
 1990年代前半登場の「M3」カールグスタフは重さが22ポンドあった。2014年導入の「M4」はこれを15ポンドに軽減した。しかし、さらに軽くできるはずだ。
 鋼鉄でありながら、普通の鋼鉄より密度が半分(したがって比重も半分)という素材がある。さらに砲身部分の内張りのパターンを改善。外張りのカーボンファイバーも効率化する。
 CASに頼らずに、カールグスタフだけで、頑丈なビルの内部にたてこもる敵ゲリラを掃討してやりたい。そのための壁貫徹弾薬も充実させる。
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 ストラテジーペイジの2017-3-25記事。
   ロシアは海軍予算の配分を、SSBNの新造へ集中している。
 そのあおりで、SSNとSSGNは予算カットされている。新造はさせずに、既製艦のリファービッシュで凌ぐつもり。
 冷戦中、米海軍のSSNは、ロシアの沿岸領海22km域内にこっそり潜航して諜報活動し、また気づかれずにそこから立ち去るという「訓練」を反復していた。米ソの潜水艦の技術格差は当時も今も圧倒的である。
 ロシア海軍は、潜水艦から発射させる旧来の長射程の対艦ミサイルを、2017年からどしどし、最新型の「3M54」(別名 SS-N-27、もしくはシズラー、もしくはクルブ、もしくはカリブル)に換えていくことを決めた。
 名称によって混乱させられるけれども、要するにその本質は「トマホークスキー」なのだ。
 すでにこのトマホークスキーは、インド、ベトナム、アルジェリア、中共の潜水艦用対水上艦兵器として、ロシアから輸出済みである。
 ちなみに、クルブは、カリブルよりも性能を落とした輸出専用バージョンである。
 インドはロシアから買ったキロ型の非核動力潜水艦『シンドゥヴィジャイ』からロシア沿岸で2010年にこのクルブを6回試射したものの、非常に調子は悪かったと伝えられている。
 「3M54」は公式には2012年からロシア海軍が運用している。そしてシリアにおいて、水上艦や、航空機からもカリブルを発射してうまく飛ぶことを露軍は世界に証明した。
 トマホークスキーは自重が2トン。径533ミリ(21インチ)の魚雷発射管から打ち出せる。「3M54」の弾頭重量は200kgである。
 対艦用だとレンジは300kmとなるかわりに、終末スピードが時速3000km。
 対地用だと、終末加速をしないかわりに、弾頭重量が400kg。
 ロシアのトマホークスキーは冷戦末期には「3M14」として開発途中にあり、2001年に対地用が完成した。しかし対艦用に使える「3M54」が仕上がるまでにはそれから10年も必要だったわけである。


LRASM(長射程対艦ミサイル)は、レンジ200海里、弾頭1000ポンドで、F-18とB-1Bには来年から積まれるが、亜音速。

 Jeff Schogol 記者による2017-3-23記事「New amphibious landing tactics and technology」。
   ロシア軍やシナ軍が守備する敵海岸にも押し寄せることができる技術をこれから海兵隊は考えるという。対テロ戦争は一段落したので。
 リモコンの水陸両用車などが提案されている。
 今日ではイエメンのフーチ・ゲリラのような連中ですら地対艦ミサイルを保有し、リモコンの特攻ボートや爆装ドローンを操縦できる。これをどうかわすか。
 真の上陸点とは違う海岸に敵の守備隊をひきつけてやるために、無人の航空機や潜航艇や水陸両用車両をリモコンでスウォーム運用して陽攻させる技法を検討している。
 ※有人の水陸両用車の課題は明らかだと思う。まず、乾舷高は文字通りの「ゼロcm」にしないと着上直前のサバイバビリティーなどもはや期待はできない。したがってリモコン銃塔も廃止すべきで、そのかわりに天板ツライチとなる埋め込み式のグレネードランチャーのような曲射固定火器を新開発するしかない。かつまた、海上で車体に破孔を生じた場合に全乗員が迅速安全に車外へ脱出して溺死を免れ得る、上手い方法を何か発見しなくてはならない。それらが難しいと言うのならば、有人の水陸両用車などスッパリと諦めることだ。ヘリの方が百倍、気が利いている。
 次。
 Matt Cox 記者による2017-3-23記事「Army Eyes Dual-Rotor Drone for Casualty-Evacuation」。
     チヌークを小型にして無人化したような「DP14 ホーク」は、重さ430ポンドまで運搬することができ、機内に6フィート×20インチの荷室空間がある。滞空は2時間強、可能。
 ※20インチといえばママチャリの車輪径。よって怪我人×1人を寝かせて収容できるのである。
 巡航速度は82マイル/時。風速46マイルの横風にも耐えられる。
 将来はこれで最前線から負傷兵を後送させるであろう。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-3-24記事。
  中共軍は「殲20」が部隊配備されたと吹かしているが、甚だ、怪しい。
 殲20は、諸元上は、米空軍のF-20ではなくてF-15Cに近い。
 特に翼面積。
 F-22の翼面積はF-15より25%も大きいのだ。ところが殲20の翼面積はF-15と同じである。
 エンジンパワーは、F-22はF-15より65%増し。殲20はF-15と同じにすぎない。アフターバーナーはある。
 殲20は真正面に対してのみステルスで、他方角からはまるみえである。
 これらから判断すれば、中共軍は殲20を量産機どころか、未だプロトタイプとすら位置づけてはいまい。そのずっと前の段階である開発研究機にすぎないものだ。つまりこれから時間をかけて、形状もスペックも修正される。そう考えるのが合理的である。
 戦闘機に要求されるレーダーと電子装備は特別である。中共工業界はそれを用意できていない。
 だから現状では、殲20は、かつてのF-117と同様に、「ステルス軽爆撃機」としては使えるが、「ステルス戦闘機」としては、看板に偽りがある機体であり続けるだろう。