消防隊が、「壁ぶちやぶり爆薬」を随意・随時に使用できる法制度を至急、整備せねばなるまい。

 STARS AND STRIPES の2017-2-17記事「Report: Russia suspected in ‘fake news’ attack on German troops」。
   独『シュピーゲル』誌の報道によれば、ロシアは常套の「フェイク・ニュース」でリトアニア駐留のドイツ軍の評判を悪化させようと工作しつつあり。ネタはいつもながらの「少女レイプ事件」。火の無いところに煙を立てる。
 リトアニアに駐留しているNATO軍は独軍だけではない。が、独軍が最多なので、でっちあげニュースのターゲットとなる。
 NATO軍は、ポーランド、ラトヴィアにも駐留している。ただしそっちは独軍主軸ではない。
 嘘ニュースのコピペ拡散工作はEメールによって一斉になされた。2-14に。
 リトアニア警察が確かめたところ、被害者もなければ、目撃者もなかった。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-2-17記事。
  露軍こそチェチェンで三光作戦を絶賛展開中である。
 ローマの格言。敵地を無人の荒野と化してしまうこと。それを平和と呼ぶのだ。
 アサドも、それを応援するロシアも、焦土作戦主義。敵性市民への国連エイド物資搬入は許さない。
 さいしょ、チェチェンが分離独立を唱えたとき、露軍は遠慮がちに西側戦法で鎮圧しようとして失敗した。1994から96にかけて3万5000人は殺してやったがたが。そしていったん撤収。
 ところがイスラムチェチェンが策源となって南ロシアにいろいろ犯罪遠征するものだからモスクワは1999にスペツナズ主体で捲土重来。
 この時点ではロシア系住民は域外に逃れていたので、住民区別の問題には悩まずに済んだ。露軍はコーカサス方面ではイスラム系住民を容赦なく殺して一定の成果をおさめつつある。
 ※宣伝戦の渦中に有益情報を求めようとする者は、英文記事の書き手の「ステイタス」に注意することだ。かつて閣内に列していたのに、その後は鳴かず飛ばず、シンクタンクとか地方大学内でくすぶりつづけ、「リヴォルビング・ドア」をくぐれなくなったロートル研究員。こんなのがゴマンといるのがアメリカだ。そのなかには、中共工作員からのカネに転んで反日記事を英文ネット記事空間にUPするように落ちぶれる者もいるのだ。瞬時にその臭いを嗅ぎ分けられる嗅覚を養って欲しい。


NSAが電話を録音しているのが当然なのに、弁えもなく外国大使と話し込むような男が過去に軍情報の元締めを任されていたとは……。

 Gordon G. Chang 記者による2017-2-15記事「Pyongyang is experienced at begging, borrowing and stealing weapons materials」。
    「北極星2」は「KN-11」ではない、という異説が、複数の専門家から飛び出している。
 じつは中共の「巨浪1」じゃないのか、というわけ。
 ただし、もともと「KN-11」は「巨浪1」と寸法が類似しているのである。
 どちらも二段式だし。
 ひとつハッキリしていることは、北鮮は独自に固体燃料を開発できたはずがない。
 ロシア製かシナ製を参考にしているのだ。イランとパキスタンも疑われる。
 ※CSのサバイバル番組のホスト(ぜったいに寄生虫にやられていると疑われる元SASのイギリス人)とオバマ大統領がアラスカで競演した珍エピソードのとき、大統領は自己位置を特定されてしまわないように携帯電話を持つことを禁じられている、とオバマ自身が語っていた。まあNSAがフリンの阿呆ぶりに愛想を尽かし、大手新聞にリークして指導部から去らしめたのだろう。
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 Malcolm Davis 記者による2017-2-16記事「The RS-28 Sarmat and the Future U.S. Nuclear Triad」。
   このごろのロシアの叫び。新重ICBMの「RS-28」は、テキサス州ぜんぶとかフランス1国ぜんぶの面積を破壊できるのだぞと。しかも南極廻りで発射して届かせられるぞ、と。
 だが米国の両岸にある早期警戒レーダーは、南からのRV飛来も探知できるので、とりあえず、隙は無い。
 米国はレーガン時代に構想したように、地上機動式のICBMを考えざるを得まい。さもないとラーンチオンウォーニングを強いられるから。
 トライアドをディアド(二本足)にまで削減してしまえば、ローンチオンウォーニングのプレッシャーはなくなる。すなわちもうSLBMと、B-21爆撃機×100機だけで行く。
 と同時に米国は、国内の「指導者」セットを敵の第一撃から確実に守れるような備えを構築しておかなくてはいけない。※そのためにB-21を改造してエアフォースワンにするのか。
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 Przemysaw Juraszek記者によるストラテジーペイジの2017-2-16記事。
  2000年に活動休止させた沿岸砲兵大隊1個をスウェーデンは2016後半に復活させた。
 といっても大砲ではない。車載の地対艦ミサイルである。トラック1両に4基、積まれている。そのトラック3台で、1個大隊。
 ミサイルはドイツと共同開発した「RBS15」で、射ち放し式。80年代前半から装備している。いまは最新の「Mk3」型。
 この派生型は、フィンランド、ドイツ、ポーランドの艦艇にも搭載されている。地上目標も狙える。グリペンから空対艦ミサイルとして発射することも可。
 全長4.3m、自重630kg(空対艦)~800kg(地対艦・艦対艦)。
 径500ミリで、レンジは200km強。
 弾頭重量は200kg。
 ※島嶼の波打ち際の味方部隊まで弾薬を無人で送り届けてやる、現代版の「DUKW」のようなロボットは可能だろうか? ひとつハッキリしていることは、「乾舷」が岸から見えてしまっているような低速移動物体は、ATGMの餌食でしかあるまいということ。装軌にするにしろ装輪にするにしろ、無輪の大発型にするにしろ、「乾舷」があったらもうダメだ。どうしたって「半没艇」のコンセプトにする必要があるだろう。荷物が重いから、モーターボートのように「速力」で敵丸をかわすというわけにいかぬ。さりとて乾舷と天板の「装甲防護力」を強化しようとすれば「余裕浮力」の要請と矛盾してしまう。これはデザイン上・コスト上の「負のスパイラル」を約束している。だから結論として「ステルス」にするしかないはずだ。半没艇にすれば、完全なステルスになる。低速でも、みつからなければ安全だ。水際地雷に触れても、無人だから人は溺死しない。敵が厳重に警戒をしている海岸正面では、レーダー反射と赤外線輻射で「囮」になってくれる無人の「発砲スチロール・ボート」でも放てば、敵ATMはそっちに吸引される。最前線の島嶼まで弾薬を推進輸送する任務の安価な無人半没艇は、違法リグを爆破除去するための自爆ロボットにもなってくれるだろう。


軽のパワーではN-Boxが一番だという意見を某若い整備士さんから聞き、更に贅沢に悩みちゅう。5刷もかかったしカネに糸目はつけん!

 島松補給処の見学ツアーに行ってきました。
 なんでツアーがあるのかなと思っていたら、これは募集広報活動の一環のようですね。えっ、いつの間にやら「募集難」かよ!?
 そこでひとつお手伝いしようと思いました。
 北海道でブラック企業に就職してしまい、もっか苦悩中である26歳以下の男女諸君! 
 今日このタイミングなら3月の試験に間に合うから、本日中に最寄りの「地本」(自衛隊の募集機関)へ電話をして、「自衛官になりたいです」と頼んでみ。「奨学金の借金」がある人でも大丈夫。まずは相談することじゃ!
 PKO派遣=かけつけ死 という左翼宣伝のおかげで今まさに「入隊競争率ゼロ」状態なのである。だから、キミが「情報強者」ならばとつぜんに面白い人生が啓けるわけよ。
 そもそも海外派遣は、兵隊(陸士や陸曹)が希望しなければ、行く可能性などゼロなのだ。幹部=将校になると選択の自由がなくなるが、下っ端には、派遣に加わるか加わらないかの選択の自由があるのである。厭なら、ずっと国内勤務なので、災害派遣の心配だけしとりゃええんじゃ。「かけつけ」もへったくれもあるかい。
 したがって、もし今後、日本国内で戦争が起きぬ限り、キミがイスラム軍などと鉄砲で撃ち合う蓋然性は、限りなく少ない。はんたいに、キミの学歴がたとい「中卒」(高校中退)にすぎなかったとしても、二等陸曹になるころには、キミの年収は日本のサラリーマンの全国平均年収を超えることは確実なんである。
 家賃や諸物価の高い東京でならばともかく、北海道では、キミは壮年時の収入と老齢年金の点で「勝ち組」となれる。その年収をもらいつつ「夜学」に通って大卒資格を取ってしまうことも可能。それならば奨学金由来の負債も生じない。それどころか若年時から2年ごとに100万円づつ貯金も増やして行ける。
 このように、天国と地獄は、情報強者か情報弱者かで別れてしまうのだ。
 サヨクと大手マスコミの嘘宣伝を疑って、部内者の口コミ情報をネットで収集せよ!
 まあ、士から曹に昇進したあと、つまり入隊してからだいたい6年以上も後では、九州~沖縄方面への数年間の転勤は必ず命じられるだろう。このシフトについては曹は拒否できない(米ソ冷戦時には逆に九州の陸曹がどんどん北海道に送り込まれてきた。そのまま北海道住民になった者も多い。なお、沖縄でシナ軍や韓国軍と戦争するのが厭だという者は入隊してくれなくていいから)。
 そして曹から三尉への昇進までは目指さないという道を選んだとすると、たぶん54歳で退職になるから、家庭内の粗大ごみになりたくなくば、その直後の再就職のことは早めに計画しておく必要はあるだろうが……。とにかく今日中に電話しなさい。キミが27歳になっちまったら、あるいは来週になったら、このドアは閉じる。
 次。
 Hope Hodge Seck 記者による2017-2-14記事「Marines’ Afghanistan Task Force Will Deploy with Quadcopters」。
  米海兵隊はオフザシェルフのクォッドコプターの採用に傾いている。市街戦用として。たとえば「インスタント・アイ」。メーカーは、フィジカルサイエンセス社。重さ1ポンド。滞空30分。
 海兵隊はこれをすべての小銃分隊に装備させたがっている。状況警戒と脅威監視の用途に。
 空軍がF-35の得た情報を後続の第四世代戦闘機に分けてやるように、海兵隊でも情報環境を「第五世代化」させる。最前線の一分隊の得た敵情を、全中隊、全大隊、全連隊、全旅団で共有できるようにしたい。
 ※米海兵隊の方針はそのまま陸自の方針として押し付けられる流れがあるから、関係者は目が離せませんね。
 次。
 島松で聞いた雑ネタいろいろ。(ソースは部内者とは限りません。)
 MCV=例の「16式」とかいう装輪戦車。あれで内地の陸自の74式TKは全部更新される。
 F-35案件を抱える空自がこのうえにTHAADまでも買うのは三幕の予算配分比率の伝統破壊となるので、とても無理があるが、もし陸自のホーク部隊の一部をTHAADで装備更新させるという「ウルトラC」を使えば、「F-35を空自、イージスを海自、THAADを陸自」というバランスのよい予算配分ができることになる。ホーク部隊もホーク用地も全国にたくさんあるので、抗堪性を発揮しつつ、将来の脅威変動に応じて必要な都市を防禦することもできる。ペトリ基地の少ない空自ではそうはいかぬ。
 105SPは、浮航ができる自走砲だったのに、なんで廃止されてしまったか? とにかく射程が短すぎた。いまどき重迫撃砲でも1万mくらい届くのに、それより短いのでは「対砲兵戦」でやられるだけ。それと、砲兵は「弾薬」の輸送がとにかく大変。SPを離島に送り込むことができても、大量の弾薬を離島に補給するのは生半可なサポート体制では実現しようがない。だから、高性能な155SPだって、対支戦争には使い勝手が悪すぎて出番なし。地対艦誘導弾のような「弾薬」自体の継続推進補給がラクな火器でないと、離島へは持ち込みにくい。
 そこでわたしは考えた。じつは昭和20年の硫黄島攻防でいちばん活躍しているのは、沖合いに浮かんだ改造輸送船にのっけた中迫(107ミリ)なのである。これで、夜間でも島の上の日本兵の移動や集結や展開は、まったく不可能になってしまって、日本兵はひたすら地下洞穴内に逼塞するだけになっちまったのである。
 ならば、重迫もしくは81ミリ軽迫を「半没艇」の中層デッキに搭載し、その半没艇の底には無動力の転輪をとりつけて、ふだんは陸上にウインチで引き揚げて「駐車」させておける装備とすれば、アイテム名目を陸自の「牽引砲」の扱いとできるわけである。もちろん陸地では「牽引」により機動させることもできる。
 半没艇は、離島に侵攻した敵軍のもっている装備では、いくら近くても探知のしようがない。つまり「ステルス」。対戦車ミサイルも対艦ミサイルも、照準のつけようがない。まして、夜間では。
 これで離島をぐるりととりかこみ、砲撃の「キュー」は無人機から出すようにすれば、24時間ひっきりなしに、島の上を火制できるだろう。
 海自や空自の協力が一切得られない最悪の場合でも、この装備があれば、敵による離島の占領を固定化させてしまうおそれはなくなる。
 15Hに投資している場合じゃないと思うのだが、如何だろうか。


異常気象こそが要想定現象となり、「平年並み」こそが異常となる近未来。備えはできているか?

 Michael Peck 記者による2017-2-12記事「Belgium: The Next Missile Defense Superpower?」。
   ベルギーが、大気圏外でロシアのBMを迎撃できる艦載ABMを構想しているという。もし完成すれば、西欧州製としては最初のABMになる。
 それを今の『M』級を更新する予定の次のフリゲート艦から搭載したいという。その艦自体はオランダとの共同開発だ。
 このABMは、アラスカと加州に計44基あるGMD、もしくは、米海軍の33隻のイージス艦から運用しているSM-3の同格品になる。
 ミッドコースでヘッドオン衝突によって迎撃する。RVが大気圏に再突入する20分前のタイミングで。
 ※このニュースを聞いてロシア人はどう思うか。B61爆弾をそのミサイルに搭載し、F-16ではなく、水上艦積載BMによってモスクワに報復する気なのだと考える。これが、ロシアがBMDを忌み嫌う理由だ。
 いまNATOにはどんなBMDがあるか。トルコには米国製の早期警戒レーダー。英国には英国製の早期警戒レーダー。スペインのロタ軍港には米イージス艦が常駐。ポーランドにはイージス・アショアー配備予定。オランダとデンマークには、軍艦のレーダーでBMを見張る計画あり。
 欧州は警戒レーダーは作っても迎撃ミサイルはつくっていなかった。
 資金はあるのか? ベルギーは2030年までに、年に90億ユーロ=100億ドルを国防費に投ずるとしている。
 しかるに米国はGMDについてだけでもこれまでに400億ドルも使ってきたのである。競争になるか?
 ここから考えると、どうもベルギーはSM-3を買う気じゃないか。
 ※もしこの記者の予想が当たるのなら、スタンダードミサイルのパーツを製造している三菱重工&三菱電機にとっては大朗報。アメリカ経由で欧州に売れるなんて理想的じゃないか。もちろん日本はこれからTHAAD(射高150kmに過ぎず、射距離2000km未満の短距離弾道弾にしか対応できぬ。ムスダンすら迎撃できるかあやしく、東風21なら絶対無理)なんていう欠陥不良品を買わされている場合じゃない。スタンダードミサイル系列にもっともっと集中投資することが日本にとってもアメリカにとっても西欧にとっても好ましい。大局的に見れば、日本が欧州を救ってやることになるのだから。
 次。
 ストラテジーペイジ の2017-2-13記事。
  昨年8月いらい、トルコ軍の「レオパルト2A4」戦車はすでに8両がシリアでATMにより撃破された。
 他に、1両の米国製「M70T」もやられた。※M60改のことか?
 トルコはレオ1のときからドイツ製戦車ユーザー。レオ2が冷戦後にダンピング輸出されたので354両も買っている。
 2003のイラクで米軍のM1戦車×4両が、ロシア製の対戦車ミサイル「コルネットE」で擱坐させられている。
 自爆させられたM1もある。敵手にわたさぬよう。
 イラクでは、M2ブラドリーの25ミリ機関砲から発射された劣化ウラン弾が、M1戦車の背面装甲を貫徹してエンジンを破壊したケースがある。仲間撃ちの誤射。※とうぜん、夜間でしょうな。
 RPGはM1に対してほぼ無力だが、唯一、油圧パイプに命中した場合のみ、動けなくしてやることができたという。※ゴルゴ13にとっての耳寄りニュース。
 2005年までにM1戦車は1100両がイラクに持ち込まれ、そのうち7割が戦闘に参加し、1100両のうちの7%は船で米本国へ送り返して修理する必要がある程度のダメージを蒙った。
 90年代デビューのコルネットは射程が5kmもある。自重8.2kg、発射機は19kg。
 メルカバも側面を狙われるとコルネットにやられる。
 2003年から2005年のイラクで、4400人の戦車乗員が戦死している。その三分の二は、ターレット天蓋ハッチから、首もしくは肩より上を出していたことが原因。
 戦車を喪失する原因の第一は、WWIIいらい、地雷と爆弾であるという。※この記者は匿名だがおそらくはイスラエル人。
 トルコがこのたびシリアで喪失したレオ2のうち1両は、自爆トラックにやられた。これが西欧軍ならば戦車回収車ですぐ回収するだけなのだが、トルコ軍にはその能力がなく、戦場に遺棄したか、自爆措置をとった。
 2014年のイラクでは、140両投入された米軍のM1のうち三分の一が大破全損している。
 2010年から2012にかけてイラク政府軍に140両の「SA」型M1が売られている。その一部はISに鹵獲されたので、米軍が航空攻撃によってみんな破壊せねばならなかった。
 イラクに売った140両のうち三分の一以上は、ISの攻撃によって損壊している。イラク軍は戦車をまとめて使わずに、歩兵部隊に分属させて接近戦闘のサポートをさせる。だからISの重火器が届いてしまうのだ。
 ※コルネットは射程が5kmもあるので、米軍も安全な間合いのとりようがないわけだ。主砲射程の外側から飛来するんだから。
 サウジ軍はM1A2Sを数百両、イエメン戦争に投入しているが、やはりシーア派ゲリラによって数両が破壊されている模様である。
 イランは、すくなくとも5両のサウジ戦車が喪失したと報道している。フーチは2両を鹵獲したと主張している。ただしその2両はサウジ空軍が破壊してやったようだ。
 ※サウジ向けM1には劣化ウラン鈑金の中間装甲は入っていない。


『WP』紙に刺されてM・フリンが失脚5秒前なのでトランプ氏もアジア対策どころでなくなり、うわの空会見になりましたな。

 Dave Majumdar 記者による2017-2-11記事「Will the U.S. Navy Build ‘Light’ Aircraft Carriers (Armed with Stealth Fighters)?」。
     このたびのCSBA提言の注目ポイント。非核動力の5万トン前後級空母=CVLを建造せよ。
 そのCVLを、上陸作戦艦隊ARGと協働させるべし。ロシア軍がバルト三国へ侵入しても、これがあれば海から介入して防げるから。
 ※まさかA-10を艦上機化して海からCASさせようっていうんじゃ……?
 5万トン前後級ということは、ようするに、1991に除籍された『ミッドウェー』〔CV-41=45000トン、1945完成〕と同じサイズである。あれでいいんだ、と。
 重いAEW機であるE-2Dをカタパルトで発射できるというだけでも、意義は大きい。
 ※その小型空母をどうやって地対艦ミサイルから守るのかの、これが説明というわけだろう。SM-6を随伴艦からふんだんに発射させる。
 CSBAの目論見では、CVLにはF-35Bを20機積ませる。
 ※カタパルトもアレスティングワイヤもあるのになぜB型なのか。そんなに収容時の軽油消費を抑えたいのか? F-35ではCAS能力が物足りないのは誰が見てもあきらか。A-10改とすることで初めて筋は通って来る。


いつのまにか雪祭りの「真駒内会場」が無くなっていたでござる。

 Sydney J. Freedberg Jr. 記者による2017-2-10記事「414 Ships, No LCS: MITRE’s Alternative Navy」。
   シンクタンクMITREの提言。米海軍には355隻ではなく414隻必要だ。いまは274隻だが。
 これはその前のCSBAの提言よりもラディカル。
 2シンクタンクで共通の主張もある。
 『アメリカ』型強襲揚陸艦は、非核動力の小型空母にせよ。
 LCSはキャンセルし、新フリゲートを充当しろ。
 マケイン軍事委員長の私案は、CSBA提案の方に近い。
 MITREは、LCSの代わりとしては、ドイツの『F125』型フリゲートが良いとしている。 ※CSBA提案はスウェーデンの沿岸警備艇を推す。どっちも、LCSはどうしようもないという点では完全一致。日本の防衛省と海幕だけが、これからそのLCSを模倣しようとしているのだから、どうしようもなさ二乗倍。
 MITREは、正規空母の建造をスローダウンし、むしろ艦上機の充実に予算を配分するのがマシだとする。使える艦上機が足りていない空母なんて無意味だからだ。機種としては、F-35Cは見込みが無いので「F/A-18 E/Fスーパーホーネット」を増産すべしとする。
 CSBA提案に近い提言は、今日の艦隊があまりにも高額で少数の高性能防空ミサイルに依存しているということ。そこでMITREは主張する。もっとバカスカ発射できるものでなくては防空網は破られる。となったら解法は、5インチ砲を高性能化することしかない。艦砲の初速と射程と終末誘導を劇的に改善して艦対空ミサイル代わりにできなくてはならない……と。
 MITREは、90年代の「アーセナルシップ」の焼き直しも提言している。マガジンシップ=「MG(X)」――弾庫艦――と称す。この安価で大量の軍艦を、ハイローミックスのローとせよ、と。
 さらにMITREの提案。パーシング・ミサイルを海軍用に復活させよと。もちろん非核で。
 ※日本にはロクな軍事シンクタンクがないので、兵頭二十八が「ひとりシンクタンク」の機能を果たしているというのが現状だ。米国のシンクタンクよりも早く、ソロプレイヤーとしてこの提案をした『日本の武器で滅びる中華人民共和国』、まだ読んでいない人は急いでお確かめください。
 センサーとなる高額軍艦(少数)と、弾庫となる低額軍艦(多数)を、ハイローミックスすればいいのだ。後者は、艦載パーシング・ミサイルと、超長射程5インチ法で武装。前者はイージス。
 ※この考え方は「空軍」でも有効である。「ステルス戦闘機」というのは概念矛盾なのである。戦闘ではなく、センス&キュー出し仕事に限定するのなら、純国産の低出力(低赤外線・良燃費)エンジン搭載で、垂直尾翼を廃した真のステルス・センサー機(複座のミニAWACS)ができる。それとアーセナル・プレーン(第四世代戦闘機、もしくはミサイルキャリアー化したP-1改)を組み合わせるのが、日本の最善解だ。今月25日発売の徳間書店の新刊で、詳しく論じています。「複座零戦」の話は、この提案のための予備論文だったのだ。わかってくれたかい?
 MITREいわく。年にSSN×2隻の建造ペースは維持しつつ、AIP潜も米国は量産するべきである、と。
 ※これは政治的ゲーム・チェンジャーになるね。いちばん大弱りなのは台湾だろう。潜水艦を調達しない理由がなくなっちまうので。しかしトランプにとっては追い風提案だ。西独型の潜水艦のライセンス生産ならば、バカでかい乾ドックは必要じゃないから、中小造船所が参入できる。このMITREはドイツ企業の「トロイの馬」だと私は直感する。
 米海軍は、古い『LSD』級揚陸艦を、新揚陸艦『L(X)R』(サンアントニオ型を小型化した感じ)で代替せんとしている。しかしMITREは、そんなものよりも、カタマラン船形のEFT(JHSV)か、『ワトソン』型改の方がマシだと主張する。
 駆逐艦と巡洋艦だけを数えると、今、米海軍には84隻ある。米海軍はそれを104隻にしたいと言っている(それも含めて355隻)。CSBA提案は、74隻にしたいと言っている。MITREは、84隻にせよというのである。
 フリゲート艦は、海軍は52隻にしたいと言い、MITREは46隻にせよといい、CSBAは71隻にせよという。
 CSBAはコルベット級についてはMITREよりも「無人艦」により期待を寄せている。
 ※久々に「さっぽろ雪祭り」の大通会場を見物した。「たくぎん」が消滅する前の豪華絢爛さは、もう無いのだね……。ウチのこどもは縁日気分で「たこやき」喰いツアーをしていたが、わたしゃこれじゃいかんと思いましただよ。三沢の米海軍が律儀に出展していた小品が眼に留まりました。
 次。
 GILLIAN WONG 記者による2017-2-11記事「Pentagon says US, Chinese air encounter unintentional」。
  中共のAWACS機がスカボロ礁近くまで来ていて、P-3Cの直前を距離1000フィートで横切ったので、P-3Cは即座旋回を余儀なくされた。
 ※米政府は火消ししたいようだが、どう説明したところで、これは「挑発」だろ?


2月8日に加州から「ミニットマン3」の試射。これは中共に対する「脅し返し」だ。

 Anthony Capaccio 記者による2017-2-8記事「Lockheed Hit by U.S. Air Force for More GPS III Satellite Flaws」。
      ロックマートが「GPS III」のキーコンポーネンツを下請け発注していたハリス社がイカサマ試験結果を上げていた。ロックマートの管理能力が、空軍の宇宙計画部長の少将から問われている。
 計画では今月末に初号機(ぜんぶで32機予定)を納品することになっていたのに、34ヶ月もの遅延が確定した。新GPS衛星1機の値段は5億2800万ドルである。
 空軍は、まだ発注を出していない最後の22機については、ボーイングやノースロップグラマンとの競争入札にした方がいいかも、と思っている。
 問題の部品とは、セラミック・キャパシターである。
 このキャパシタが、故障を起こす前にどのくらいの時間、機能してくれるかのテストを、ハリス社は2010年までに了えていなくてはならなかった。
 空軍が承知し得たところでは、2016-6から2016-10までハリス社が実施した追試は、最初の3機の衛星に組み込まれて調子がよくないキャパシタとは別なキャパシタ製品を使ったインチキであった。
 この衛星、超過コストが発生した場合は国防総省がそれを負担しなければならないという契約になっている。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-2-9記事。
  韓国が90発の空対地巡航ミサイル「トーラス」をドイツに追加発注した。射程500kmのバンカーバスター。
 すでに170発が2013年に発注されており、納品は2016後半から始まっている。それに追加で。
 ※500kmという射程は韓国領空から北京までは届かないが上海には届き、山東半島などはまるまるカバーできる。竹島の手前から発射しても若狭湾の原発建屋の燃料貯蔵プールを破壊して西日本を「フクシマ化」してしまえる。隣のキチガイ国がこんな凶器を買い溜めているのに日本のASMが射程100km台でいいわけないだろ。
 トーラスは独・端が共同開発した。ドイツとスペインでは2005年からトーネイドやEF-18に搭載されている。自重1.4トン、高度35mの超低空を飛翔する時速は1100km。
 もともと韓国は40発の米国製SLAM-ERを買っていた。射程200km。
 しかし韓国はこの射程では満足せず、もっと長射程のJASSM巡航ミサイルの輸入を希望したのだが、ペンタゴンが承諾しなかった。
 ※古い記事で補足すると、かたやポーランドは米国からJASSM-ER を70発も買うオーダーができている。まず2014に40発のJASSMを発注し、それは2016から納品が始まっている。こいつは射程400km。母機はF-16だ。単価2万6000ドルのJDAMを滑空させるのが、単価46万ドルのJSOWであるが、それを400kmまで射程延長したのがJASSMで、単価は100万ドル。射程延伸のER型は100万ドル以上とされる。倍額にはならない。JASSMは、重さ2300ポンド=1045kg。1000ポンドのJDAM+ロケットモーター。だから実質は500kg爆弾。米空軍は、シナ本土空爆の準備としてJASSMを5000発、欲しいと思っている。しかし議会は渋い。なにせ、同じ重さのJDAMの10倍の単価になっちまうのだ。直径の小さい、250ポンドの地下貫徹爆弾のGPS誘導型は、単価7万5000ドルで済む。とはいえ、防空力の充実している大面積の国を空爆するには、JASSMしかない。JASSMは終末誘導は赤外線画像により、標的を3m以上外すことはない。外形はステルスになっている。
 しょうがないので韓国はドイツからトーラスを買うことに決めた。ただし米国製のストライクイーグルからトーラスを運用するためには、母機に相当の改造をしなければならず、余計な費用が必要になるが、それでもかまわぬとした。韓国軍のストライクイーグルからトーラスを運用するための工事は2017半ばまで完了しない。
 トーラスの弾頭は500kg弱で、やはりバンカーバスター機能がある。トーラスの単価は1200万ドルである。
 トーラスは地形マップを元に地形照合しながら飛び、最後の段階では赤外線イメージで目標建物に突っ込む。誤差3m。コンクリートを6m侵徹できる。
 ※2017-1月24日に満州の「東風41」映像報道でトランプ新政権に「初脅し」をかけた中共に対して、はたしてトランプ政権はどのような「初仕返し」をしてみせてくれるのかを注目していたところ、2月8日にクェゼリン海域に模擬RVを着弾させた。それをやると同時に習近平に対し紳士的調子の書簡を与えた。すべてタイミング計算されたシンクロ演出だ。24日の報告を受けてこれらを決心して計画してICBM発射を実行するまでにトランプチームは2週間かかったわけである。さて次の北京の脅しは何で来るか? こうした米支核対決の裏事情を知りたい人は、今好評発売中の『日本の武器で滅びる中華人民共和国』(講談社)を読んでくれい!


今月末の徳間書店からの新刊にご期待ください! 講談社+α新書には4刷がかかりました。これでクルマ決定。

 ストラテジーペイジの2017-2-8記事。
  ノルウェーは、手持ちの56機のF-16Cを、転売ではなくスクラップにすることに決めた。2022年までに。
 これは52機のF-35でリプレイスするつもり。最初の1機は2017後半に届く。
 その52機は2021年に揃うので、F-16はいらなくなる。
 F-35のメンテナンス状態監視用の米本国直結ソフトをALIS (Autonomic Logistics Information System) という。
 イスラエルだけはALISを拒絶するつもり。
 ALISが集めたデータはぜんぶ米国へ直送されてしまう。
 しかしそのデータの中には、使用国において、法的に保護されている秘密情報もあるはずなのである。
 ロックマートはF-35の部品を、全米の435区の連邦下院議員選挙区内の工場にわざと分散的に下請け生産させている。議員たちがロックマートには逆らえないようにするために。
 ※企業献金を受けていないトランプだけがロックマートに高飛車に出られる。
 ALISがこれらの本当は必要もない小工場にまでネット接続されているということは、そのうちの最も弱い端末を敵国スパイがハックできれば、全世界のF-35を危険に曝してやることができるわけである。そのデータ通信は、同盟国軍のF-35の機内コンピュータに常時アクセス可能なので。
 このシステムがハッキングに脆弱であることは事前に分っていたが、政治が優先されて、残されている。
 敵国は、このネットに侵入できれば、世界のすべてのF-35が、1機1機、過去に何をしてきたか、この次に何をしようとしているのかも、把握できてしまうのである。
 欧州でもノルウェーくらいF-16をよく使ってきた軍隊は無い。1機の平均飛行時間はすでに1万時間を超えているのである。
 現在、ノルウェー軍のF-16は、年に140時間、平均して飛んでいる。
 これは、中古商品とする場合に、ノルウェーのF-16には魅力はないことを意味する。日々年々のメンテ費用が、かかりすぎる段階にさしかかっているからだ。
 いくらC/D型でも、こんなものをセコハン市場に出しても買い手はつかない。世界には、もっと蓄積飛行時間が少ないF-16がたくさん売りに出されているから。
 ノルウェーが最初に72機のF-16AM型を買ったのは1980年代前半。オランダ国内でライセンス生産された機体である。それを90年代後半にブロック50にアップデートした。
 いまから10年前、ノルウェー空軍は、そのF-16Cの主翼を総取っ換えしないと2020年代までは飛ばせられないと察した。
 その主翼更新工事の途中で、機体の他の部分にもいろいろとマズい疲労が蓄積されていることが発見されている。
 中古を売るにしても、それには米政府からの正式許可が必要なのだ。米国の技術満載だから。またノルウェーの政治家は堕落しておらず、買ってくれるならば誰にでも売ろうということには決してならない。腐っていないまともな国家だけを選ぶ。となるとますます商談の見込みは薄い。
 ソ連はミグ21を1万機以上製造した。米国はF-4を5000機以上製造した。しかし冷戦が終わると、戦闘機需要は激減した。そんななかでF-16は500機近く量産され、24ヵ国に採用された。
 いまある国がF-35を買おうと思ったら1機につき1億ドルかかる。しかしF-16ならば、その半額で、アムラームによる空戦をさせられる。
 ※ハスラーがいいと思っていたが、ワゴンRの新型の燃費がまたイイので悩みちゅう……。ちなみに北海道では4×4はデフォルト必須です。またこれからの福祉時代に2ドアはあり得ない。だから泣く泣くジムニーは除外。18歳で免許取ったときからの夢だったけど……。


重さ200グラム超でも、テザリング運用するマルチコプターなら規制適用外とせぬと、日本企業は大市場を逃すだろう。

 Harriet Agerholm 記者の記事「British warships are ‘so noisy’ Russian submarines can hear them 100 miles away」。
   英国防省で要職についていたことのあるクリス・パリー海軍少将が『サンディ・タイムズ』紙に暴露。
 英国の『45型』駆逐艦は、エンジンの振動が大きすぎて、その騒音はおそらく遥か遠くのロシア潜水艦にまで丸聴こえである。
 艦長たちは、すべてのハッチに木製の楔を咬ませて、振動騒音を抑制せねばならないほどなのだ。
 冷戦期を通じて軍艦のノイズ軽減は最も注力する価値がある技術目標のひとつなのに、イギリス人はそれをすっかり忘れてしまっているというわけだ。
 『45型』は2009から就役開始している。今や、ディーゼル発電機を交換せねばならない。それには船の横腹に大穴を開ける工事が必要だが、その費用として10億ポンド、工期は9年もかかりそうだ。
 英国防省のいいわけ。この艦は防空巡洋艦であるから、音響ステルス性は重視しなくてもよかったのだ、と。
 2005年にアフガニスタンでの必要が叫ばれた英陸軍の「ワッチドッグ」無人偵察機×54機。12億ポンドをかけて、今ようやく就役?
 ※英国もドローン開発には理想的とは言えぬ厳重規制国なのだ。それにつけてもクォッドコプターの玩具を最初に完成したフランス人は偉いよ。自然界の飛翔生物に全く似ていないんだから。さすがはデカルトの生国。
 次。
 Hemal Shah 記者による2017-2-4記事「The US-India-Japan Trilateral: Economic Foundation for a Grand Strategy」。
   日本とインドと米国をあわせると、世界人口の25%、そして世界GDPの35%になるのである。
 三国間の貿易額は4000億ドル。ところが米支の2国間貿易は、それだけで6600億ドルである。
 これではいけないので、インドと米国は、2国間の将来の貿易額として1000億ドル~5000億ドルといった目標を設定すべきである。
 米印首脳会談は、今年の夏にデリーで予定されている。
 日印間貿易も、いまは150億ドル前後だが、もっと増やさねばならない。
 日本はデリーとムンバイの間に工業地帯を開発してやった。ここに米企業が来るべきだ。
 ムンバイとアーメダバード間の高速鉄道は日本が受注した?
 ※インド最大の癌は低カースト向けの小学校教育が腐り果てていること。これをなんとかしないかぎり人々の幸せなどない。そこに投資した者はインドで聖人になれるだろう。あれだけ人口があれば、すべての貧村に1人ぐらい、天才的児童がみつかるはずだ。あくまで低カースト対象に、それをピックアップして特待教育を施せ。それを日本の私企業がやれ。場所によってはその学校はイスラムテロの襲撃目標にもなるから、要塞の中に築かれねばならない。
 次。
 記者不明記事「Australian army chief to meet Indonesian military leaders after spat」。
  インドネシア国軍のことはTNIという。
 豪軍内に、インドネシア語習得コースがあるのだが、そのテキストの中になんともまずい記述があることが昨年、インドネシア人にバレてしまい、両軍関係は冷え切っている。
 具体的には、東チモールが心配だとか、インドネシアのパプア領は分離独立すべきであるとか、インドネシアの独立原則である「パンカシラ」に対する嘲笑だ。
 さすがに豪軍はこの騒ぎいらい、その教材の使用を停止させている。
 東チモールでインドネシアの特殊部隊が非イスラム系住民の弾圧をやっていると豪州政府は1999に非難し、それいらい、両軍の合同演習もストップしている。


Militia を組織して某州空港を取り囲めという grass roots が沸いてくる予感……。アメリカで内戦じゃ~~!

 Sebastien Roblin 記者による2017-2-4記事「Russia’s IL-2 Sturmovik ‘Flying Tank’」。
 陸軍の電撃戦に直協する攻撃機の先鞭をつけたのはユンカース87シュトゥーカである。しかし低速で、地上火器から射たれやすい。そこでセルゲイ・イリューシンは、装甲された対地直協機を考えた。シュトゥルモヴィクである。
 ただし鋼鈑をボルトで貼り付るという装甲ではなかった。座席より前方のバイタルパーツ(エンジン、ラジエター、燃料タンク)を囲むモノコックボディそのものをスチール鈑でこしらえ、他の部分、すなわちボディの後半部や主翼は木材合板としたのだ。
 試作された単座の「イリューシン2」は、自重1万ポンド弱になった。シュトゥカが7000ポンドだから、ずいぶん重い。携行できる爆弾の重さはシュトゥカと変わらぬ1100ポンド。速力はややシュトゥカを上回った。
 固定武装は20ミリ機関砲と7.62ミリ機関銃を2門づつ。
 コクピット周りの鋼鈑厚は5ミリから12ミリ。
 キャノピーの防弾ガラスは、厚さが6センチもあった。
 イリューシン2はバルバロッサ作戦の緒戦(1941-6)から投入されている。すぐさま、それが小火器AAに対しては万全であることが知られた。
 ただしドイツの戦闘機に後方から射たれたときに、どうにもならなかった。シュトゥルモヴィクは、10回出撃するごとに1機喪失するという損害率だったが、1943年にはやや向上し、26回出撃するごとに1機喪失するペースになった。
 最前線にあったソ連第四飛行連隊の65機のシュトゥルモヴィクのうち55機は最初の1ヵ月で消えた。それから2ヵ月かけてイリューシンの工場はウラル山地まで疎開。その間、生産は止まった。
 WWII中に6万6000機もの「イリューシン2」が作られた。過去、これよりたくさん製造された航空機は「セスナ172」だけである。軍用機では、歴代世界第一位なのだ。
 スターリンは、前線パイロットから、シュトゥルモヴィクを複座にして戦闘機に対し自衛できるようにして欲しいという手紙を受け取ると、それを実施させた。
 これが「イリューシン2M」で、1942から製造されている。
 旋回機関銃は単装のUBT 12.7ミリだった。
 同時に、主翼の20ミリは23ミリへ強化された。この機関砲は初速も20ミリより大である。
 シュトゥルモヴィク用の機関砲としては複数の候補銃が試されている。そのひとつを設計し、不採用となったヤコフ・タウビン技師は、「劣悪な兵器を製造させようと企んだ罪」により、銃殺された。
 シュトゥルモヴィクの後部ガナーの死亡率は、パイロットの4倍であった。後席には防弾鈑が無かったのだ。
 また、全重が増えたことで速力も落ちている。
 イリューシン2のパイロットの中から複数の「エース」が出た。ドイツの低速の輸送機、爆撃機、連絡偵察機などを撃墜することができたからだ。
 なにせ6万機だから、女のパイロットも珍しくはなかった。アンナ・ティモフェイェワ・エゴロワは243回出撃して、1944-8にAAで撃墜された。生きて捕虜になったので、対敵通牒の嫌疑をかけられている。
 スターリングラードに対する独軍の経空補給がうまくいかなかったのは、シュトゥルモビクのせいだ。72機の輸送機がスカルスク飛行場で駐機中に破壊された。空中で撃墜された輸送機も多い。
 シュトゥルモヴィクは82ミリ径ロケット弾×8発、もしくは132ミリ径ロケット弾×4発も吊るしたこともあるが、これらは弾道がばらけすぎるので効果は乏しかった。
 それよりも「PTAB」が著効があった。これは3ポンドの成形炸薬弾子を200個、翼下から撒布する装置で、長辺70m×短辺15mの地域内の敵AFVを破壊できた。
 37ミリ機関砲(15発弾倉)×2門を吊るしたタイプは、3500機だけ製造された。あまりにも命中精度が悪いので、これはダメだと分かって量産は打ち切られた。
 ※ドイツの場合は超低速で急降下というところがミソだったのだろうね。イリューシンは緩降下だから、薄い天板でもはじかれやすい。その違いに気付くのが遅れた。
 クルスクでは、イリューシン2の編隊は、戦場上空で環を画いてロイタリングするようにした。こうすれば互いに後方をカバーできるのでドイツの戦闘機に食われずに済む。地上に攻撃目標を見つけたら、その環からいちどに1機づつ飛び出して攻撃し、すぐまた環に復帰するようにした。
 クルスクにおけるシュトゥルモヴィクの戦果報告は当てにならない。ドイツ第3機甲師団と第17機甲師団は、それぞれ90両、67両の戦車を擁していただけなのに、シュトゥルモヴィクのパイロットたちは、それぞれ270両と240両を破壊したとフカしている。
 WWII中の航空兵による戦車撃破報告は、世界中、どこでも大げさであった。地上から確認されているところによると、すべての戦車の損害のうち、航空機によるものは、1割未満だった。
 ある推測統計によれば、ドイツの戦車を1両やっつけるまでに、イリューシン2は、5機から10機、損なわれたという。単価は航空機の方が高いのだから、困ったもんだろう。
 1943年に、「イリューシン2M3」が仕上がった。やっと、後席銃手のために厚さ13ミリの防弾鈑が設けられた。主翼には15度の後退角がつけられて、後席増設によって後方にずれて狂ったままであった重心にマッチさせた。これでようやく、パイロットの操縦はマシになった。
 エンジンもAM38からAM-38Fに強化された。
 ベルリンをめぐる4日間の戦いには、数千機のイリューシン2に、全金属製の「イリューシン10」も150機加わった。外見は類似するが、空力的にもっと洗練されており、エンジンもAM-42で強力、したがって高速であった。「イリューシン10」は、1954年まで量産されている。
 ※朝鮮戦争では全く活躍できずに、もはやこのコンセプトでは役に立たないことが理解されてしまったため、休戦と同時に製造中止。
 ソ連の記録では、WWII中に戦闘で失われたイリューシン2は、1万1000機だったという。しかし共産圏では「嘘2倍」の原則があるから、じっさいは2万2000機だったとも疑える。
 シュトゥルモヴィクはWWII後に、モンゴル、ユーゴスラビア、ポーランドにも供与されている。
 朝鮮戦争の緒戦では「イリューシン10」が93機投入されたものの、米軍機によって70機以上が撃墜/地上撃破されてしまうと、以後、二度と戦場には姿を現していない。
 中共は1972年まで254機の「イリューシン10」を持っていた。1955年には金門島を、1958年にはチベットを爆撃している。