最新刊『日本の武器で滅びる中華人民共和国』は、地方書店では週末以降に店頭に出ます。

ストラテジーペイジの2017-1-19記事。
 2015年後半にインドネシア高官の贈収賄スキャンダルが起きキャンセルになった「AW101」ヘリコプターのVIP輸送バージョーン。こんどは純然軍用のAW101が複数機、インドネシアから発注された。
 2013年前半、12機のAW101のインドへの売り込みをめぐり、贈収賄容疑が濃厚になって、キャンセルされた。
 英国のアグスタ=ウェストランド社(AW社)を保有するイタリアのフィンメカニカ社の幹部が、インド軍将官や国防省高官に贈賄していたのだ。
 フィンメカニカ社は総額で3000万ドルも贈賄のためにインド人に支払うつもりであったことが、捜査過程で判明している。
 AW101は英国製で自重15トン。A.D.2000から英陸軍と英海軍がこれを運用中。エンジン3基でシングルローターを回す。荷物5トンもしくは兵員20名を運搬できる。最高時速300km〔自衛隊の公称値は278km/時〕。滞空4時間可能。
 VIPタイプは、AW101の売り上げの15%を占める重要商品。
 AW101の単価は3000万ドルから6000万ドルまで幅が生ずる。こうしたヘリコプターの売値には、訓練費用や、数年範囲のサービス提供がコミになっているので、1物1価にはならない。
 現在まで世界には220機のAW101が売られている。


ひょっとして本日、書店に並んでいやすかい?

 うかつでした! 月末25日以降だとてっきり思い込んで余裕ぶっこいてた。昨日、届けられた見本の奥付を見たら、発行日が1月19日と書いてある。ということは今日が売り出し日なんですかい?
 ふつうは見本が来た翌週くらいの店頭発売ですけど、今回は年末年始進行で特別だったんでしょうね。オバマ政権の最後の日にリリース。兎も角、結構!
 急いで自己宣伝します。講談社のプラスアルファ新書『日本の武器で滅びる中華人民共和国』。タイトルのまんまの内容です。中共が滅びれば、その5秒後に北鮮も消えるしかないんですよ(みんなその逆を考えているから埓が開かない)。韓国人以外の全アジア人はハッピーになる。そういう内容です。スカッとしますよ! たぶん外務省の中の人以外は。
 この本の内容を補足する、トランプvs.中共軍の予測記事が、月末の雑誌『WiLL』に載ると思いますので、そちらもご注目ください。明日から日本がいちばん気をつけなければならないのは、1980年代の「FS-X」の再演をやっちまうことです。トランプの反日感情は「FS-X」時代に確立したものなのです。通産省と三菱がトランプを反日思想家にしてしまったのです。このモンスターを二度と蘇らせてはいけない。亡霊たちが妄動しています。
 この本の中にいくつかヘンテコリンな字句や文辞が飛び出すかもしれません。その怪奇現象が発生してしまう事情については、前回の新書のときにこっそりご説明しました。どうか、脳内スルーしてお読みください。そこにこだわらなければ、全般に、楽しめる本です。


75歳以上には「マニュアル・コラム・シフト」で馬力と車幅も抑制したシニア規格車の乗用を義務付けるしかないだろう。

 SLOBODAN LEKIC 記者による2017-1-17記事「Germany’s Leopard tanks prove vulnerable in Islamic State fight」。
   ドイツの新聞『Die Welt』紙によれば、トルコ軍が装備する「レオパルト2」戦車のうち、すでに少なくも10両が、シリアの敵ゲリラによって撃破されてしまったという。場所はトルコ国境から15マイル南のアルバブ市。市街戦でやられたらしい。
 トルコ軍は昨2016年9月いらい数千人を投入している。
 トルコ地上軍には露軍機がCASを提供してくれているが、それにもかかわらずトルコ軍はアルバブ市の守りを突破できないでいる。
 トルコ兵の戦死者も数十人以上。
 ゲリラの対戦車ミサイルは、米国製のTOWとロシア製のコルネットの二つである。※このクラス以下の射程ではATMも非実用的だということがコンバットプルーフされたわけか。
 バイエルンのクラウスマッファイ工場は1980年代からトータル2100両の「レオ2」を独軍に納入した。しかし今ではドイツ軍には325両あるのみ。
 独軍のレオ2のうち20両は「A7」という最終改型なるも、他は「A4」型が大宗で、これがシリアでやられまくっているものと同じだもんだから、欧州NATO軍内に戦慄が走っている。
 欧州では、オーストリー、デンマーク、フィンランド、ギリシャ、オランダ、スペイン、スウェーデン、スイス等が皆レオ2のユーザーである。
 冷戦後にドイツは、余剰のレオ2を格安で輸出する政策に転じた。ポーランドなどがそれに飛びついた。
 2003年にカナダ軍のレオ2がアフガニスタンでタリバン製の大型IEDをくらったが、掠り傷しか生じなかったので、評価を高めた。
 だが、この戦車は市街戦になったら弱いだろうという疑念は、当初から持たれていたのである。
 「エイブラムズA2」や英陸軍の「チャレンジャー2」と比べて、レオ2は側面と背面の防護が薄すぎるという指摘も最初からあった。それはドイツ軍としては承知の上の選択だったのだが……。
 ※そして日本の90式戦車が装甲配分に関してはレオ2コンセプトのマルパクであることは誰でも知っている。90式装備部隊が市街戦の研究をしているという話は聞いたことがない。


フィリピンとロシアは地政学的に対立点はないので軍事同盟はいつでも可能。ただし露人から比人へのリスペクトは薄い。

 David Sharp 記者による2017-1-8記事「Navy, Trump Planning Biggest Fleet Expansion Since Cold War」。
  海軍が調子に乗って12月に揚言した355隻体制の理想。これを実現するには今の海軍予算である年55億ドルにプラスしてさらに50億ドルも余計に必要となる。
 ヴァジニア州の造船所には、空母1隻を含む47隻。
 メイン州(バース鉄工所)とミシシッピ州の造船所には、大型水上艦16隻。
 コネチカット、ロードアイランド、ヴァジニアの原潜造船所には18隻のSSN。
 他に、強襲揚陸艦、遠征作戦用海上中継ドック、支援艦船などが全米の造船所に発注されるだろう。
 水兵も増やされるから、1人あたりの年間艦隊勤務日数が短縮される。フネがドック入りするために艦隊に開く穴も埋まりやすくなる。
 海軍はいま、一線展開可能な戦闘用艦艇を274隻、持っている。本来の目標は308隻なのだが、それには足りていない。
 6000名を雇用しているバース鉄工所を保有しているジェネラルダイナミクス社の株は、トランプ当選で上がった。
 同じく、コネチカット州にあるイレクトリックボート社(原潜建造所)、加州にあるNASSCO社、ヴァジニアとミシシッピに大造船所を抱えるハンチントンインガルス社の株も。
 ※勝った官軍にはまず「恭順」しておいて、そのあとから対策を考える。
 350隻海軍の原資は当面はF-35予算の切り崩しで捻出するしかない。全米の雇用力ではさしものロッキードマーチンといえども造船所群には勝てない。となるとロビーイング反撃しても無駄だ。だからロックマートの社長は自ら「F-35を値下げする」と素早く発表し、官軍からの矛先をタイムリーに逸らした。そのうえで百般の「反論」の小理屈は、子飼いの「専門家」たちのウェブ寄稿に任せている。いくら値下げするのかは言わない。値引き幅がたったの1セントでも、嘘をついたことにはならない。これが世界に通用する政治宣伝技法だ。
 それに比べてトヨタ自動車は……。
 ショボい新工場でも合衆国内に1つ新設するとアナウンスすれば、そのインパクトはすべての悪感を払拭する。名辞が大事だ。実質はどうでもいい。そこが直感的に覚れない。
 日本にはいつまで経っても真の宣伝家が育たぬことが痛感される。コメントを期待された社長が率先して小理屈を捏ねていてどうするんだ? そんな仕事は英字新聞の社説欄に委託すりゃいいんだよ。まずはインパクトある内容の、即時的な発表で強敵の攻撃の矛先を逸らしてやる。維新時の小藩の家老と同じこと。それが大会社の社長の仕事だ。その才能がないなら、日々いつもその宣伝を考えていないなら、何のために給料を貰っているのだ?


貝取澗温泉に行ったら五十肩が治ったでござる。(あわび入りカレーはおすすめ。)

 ストラテジーペイジの2017-1-7記事。
  露軍は、古い米国製のUAVレイヴン(RQ-11)を電波ハックできる。にもかかわらず米国はウクライナにその旧型を支給し続けている。
 アナログ電波では、ジャックされるのは常識なのだ。やはり軍用品はデジタルでないと。
 さりとてデジタルレイヴンを送れば、これまた露軍に捕獲されて解析されちまうにきまっているのだが。
 デジタルレイヴンは米軍には2010からある。
 そうしなければいかんという米陸軍の認識は2008年であった。
 デジタルにすると、動画の解像度が上がり、しかも、同じ空間で同時に16機ものレイヴンを飛ばすこともできるようになるのだ。アナログだと、これは4機が限度だ。
 しかもアナログ電波はイスラムゲリラにすら傍受が可能。映像が敵と共有されてしまう。もちろん、ハッキングで墜落させたり、信号中断で「自動帰巣」を強いることもできる。
 特に智恵の働く奴らはイラン人。彼らはイラク内のシーア派民兵にこの方法を教授してやっている。
 オーストラリア、中共、チェコ共和国は、今すぐにもレイヴン級のデジタルUAVをウクライナに供給できる。それも、米国製デジタルレイヴンより安価に。
 ※日本はチェコにすら抜かれたってわけか。
 レイヴンはまず2003に米陸軍歩兵大隊が採用し、ついで米海兵隊でも採用した。レイヴン無しの歩兵戦闘など、もはや米軍では考えられもしない。この無人機は歩兵中隊の戦闘流儀を完全に変えてしまった。1コ大隊に9セットが定数である(1コ中隊あたり3セット)。1セットは、レイヴン4機+コントローラー2つ。
 最前線の歩兵中隊長が、自分専用の「ミニ空軍」を持っているようなものなのだ。
 移動するときにはルートの前路偵察をしてくれる。
 野営するときは、陣地の周りの夜間の見回りをしてくれる。
 2003年以来、2万機強が製造されている。1機は3万5000ドルくらい。1セットは17万5000ドル。
 最新のRQ-11Bは重さ2kg弱。バッテリーで60分以上飛ぶ。ふつうは高度150mで、10km以内の偵察に使う。最高300mまで上昇可。
 発進は手投げ。ゴムスリングで手投するともっと楽である。
 回収は強制エンスト&クラッシュによる。


トヨタはニッチ車種の専用子会社を合衆国本土(たとえばマケイン上院議員の地元アリゾナ州)に新設するのが宣伝上合理的だ。

 米国市場が潜在的に求めているのに今までは供給が存在しなかったニッチがある。それは、「核攻撃を受けたときに頼りにできるファミリーカー」だ。全米の「サバイバリスト」がこれを争って買うだろう。トランプを支持している層は、サバイバリストに完全に重なるのだ。
 「自動運転電気自動車」などとは正反対の方向性こそが今、求められている。いかなるEMPをくらってもエンストしないことが肝要だ。そのためにはエンジン周りから電気部品は徹底的に排除する。
 イグニッションも使えないから、最も原始的な副燃焼室付きの多燃料ディーゼル・エンジン。それでも今日の最先端素材を前提とし最新ノウハウで一から設計すれば、かなり軽量化はできるだろう。
 コモンレールによる直噴制御が使えないのだから、とうぜん排ガスは悪くなる。欧州へはまず輸出は不可能だ(だからアリゾナ州でもいい)。しかしトランプ政権は、サバイバリストのためならば国内環境基準を緩和するだろう。
 エンジンスターターは、クランク。ただし直接に主エンジンを始動するのではない。大型旅客機の尾部APUと同じだ。まず、サブ動力の超小型ディーゼル発動機を手動でスタートする。それで主エンジンがいつでもかけられるようになる。
 フライホイールと組み合わせれば、クランクは車内で片手で回せるサイズにできる。
 このAPUが停車中のエアコン運転に重宝する。もちろんNBCフィルターが付いているのだ。
 ウィンカーすらも手動方向指示器を選べるオプションがあるとウケるだろう(昭和30年代のトラックには付いていた)。
 宣伝で大事なのはタイミングとインパクトだ。くだらない理屈をこねまわして強敵に餌を投げ与えるな。阿呆しかいねえのか。
 次。
 JOSH ROGIN 記者による2017-1-6記事「Sources: Mattis clashing with Trump transition team over Pentagon staffing」。
  マティスはトランプ以降チームが挙げてくる国防総省高官補職者リストを片端から拒絶しているらしい。マティス対トランプ側近どもの大衝突だ。
 風向きが変わったきっかけは、トランプが次期陸軍長官として、大富豪の元陸軍将校、ヴィンセント・ヴァイオラを就任させるつもりだとマティスが承知したときだ。
 マティスはこの人事案にとても怒った。
 マティスは、国防総省の関係高官は、全員、じぶん一人に忠誠を尽くすべきであると信じている。勝手にホワイトハウスと直結して事を進めそうな人物は、三軍長官等として、とても許容はできない。
 選挙期間中「トランプだけは絶対にいか~ん」と叫んでいた共和党の有力者たち。じつはマティスはそんな中からも何人か、抜擢して部下にしたいと考えている。だがこんどはトランプ側近が、そのような人選には猛反対。
 米国では国防長官の下は副長官(1名)、その下が次官(複数)だが、その軍情報幕僚格の次官のポストが焦点。
 トランプの安全保障顧問のフリンは、現役時代に、DIA長官だった。しかし、国家情報局長のジェームズ・クラッパーによって逐い出されてしまう。そのきっかけは、フリンが、軍情報次官のマイケル・ヴィッカースと口論したことだった。
 マティスが反発している、もうひとつの、トランプ側近からの人事案。ミラ・リカーデル(♀)を、国防長官の政治担当次官に据えようという案。
 とにかくマティスは、選り好みがうるさい。
 トランプ側近は、国防副長官(マティスのすぐ下のナンバー2となる)には、ヘッジファンドの経営者で元陸軍将校のデヴィッド・マコーミックを入れたがっている。
 マティスとフリンの元軍人同士の暗闘も始まっているようだ。フリンが中将でDIA長官だったとき、マティスは中央コマンド司令官の大将だった。
 マティスは主要閣僚としてNSCに連なる。かたやフリンはトランプに個人的にアドバイスできる立場。
 フリンは今、NSCメンバーの人選で忙しい。
 別報によれば、フリンはNSCのアジア部長として、マシュー・ポッティンガーを起用したがっている。
 ポティンガーの前歴は『WSJ』紙のアジア担当記者。ただし2005年に海兵隊員に入り、アフガニスタンで情報将校を務めている。そしてフリンと共著で、いかにしてアフガニスタンで情報作戦を進めるかというメモを作成し、それはシンクタンクから2010に公刊されている。
 フリンは、セバスチャン・ゴールカをNSCの核問題担当者として起用したいらしい。ゴールカは、ハンガリーから英国に亡命した両親の子で、英国籍であり、今は国際政治研究所の副所長の教授である。
 フリンはNSCを元軍人と軍事問題専門家だらけにしたがっている。
 フリンの筆頭助手であるK・T・マクファーランドは、NSCにはもっと純文民を増やさねばならぬと考えている。
 なおトランプ政権は、いま400人を越えてしまっているNSCスタッフを150人まで減らすであろう。


貧者の巡航ミサイル。それがドローン。

 Rachel Zissimos & Katie Tubb 記者による2017-1-5記事「The New Administration’s Policy Should Reflect that Biofuels Cannot Meet Military Needs」。
  現役当時のマティスはオバマがくだらない燃料を海兵隊に押し付けてくるのに大反対だった。
 イラクでの治安作戦中、バイオ燃料のおしつけ統制のために作戦の進捗が阻害された。ただちに現地のマティス将軍は、燃料規制を撤廃しろとペンタゴン上層に要求したものだ。
 何がグリーン・エナジーだ。
 オバマは2011年に、海軍省、エネルギー省、農務省を指名し、3省が民間企業と共同して、レギュラー燃料に添加・混和する第二燃料としてのバイオフュールを作り出し、全米の民間輸送部門と国防総省の輸送部門に使用させろと命じた。
 これが「グリーン・エナジー・アジェンダ」であった。役人はこのアジェンダを尊重するコンプライアンスを負う。
 国防総省職員や軍人も国家公務員であるから、米四軍はそれからたいへんな時間・予算・人を突っ込んでバイオ燃料利用を増やす工夫に努めてきた。
 メイバス海軍長官が、オバマのティーチャーズ・ペットとなって奮闘した。オバマ政権2任期、ずーっと長官。これほど大統領から気に入られた海軍長官はWWIいらい初めてだが、おかげで海軍は大迷惑を蒙った。指定された艦隊は、各艦の燃料タンクにナタネ油を半分注入しろと言われた。F-18戦闘機にまで注入させられた。とうぜん、海軍の燃料コストは逆にハネ上がった。
 メイバスは「グレート・グリーン・フリート」だと胸を張っていた。
 海兵隊は省をもっておらず、海軍省の支配下にある。つまりマティスの大ボスも、この尻舐めメイバスだった。
 ※『グリーン・ミリテクが日本を生き返らせる!』を上梓したのが2010年4月ですよ。なつかしい。この時点で完全にオバマ新政権の最大のプッシュ政策になっていた。  たしかに、化石燃料の入手にまったく不安がない米軍には何のメリットもなかった政策だった。しかし自国領内で石油/ガスを安価に生産できない他のすべての国家にとっては、軍用の代替燃料の研究は、意義がある。オバマ政権時代でも、もし中共の石油消費量が順調に膨張し続けた暁には、コストもペイする可能性すらあったのである。米国はこの研究から手を引く。ならば、今こそ、日本がこの研究を引き継がねばならない。西欧はすでにディーゼル後まで考えているが、軍用車の電気化には無理がある。日本政府はまずディーゼル優遇税制をもっと強化して、日本の精油プラントで余ってしまう軽油を再度国外へ搬出して売り先を探しているという犯罪的な無駄構造を解消するのが急務だろう。
 石油は、どの国の生産分であれ、それは国際マーケットに提供される。したがって、どこでも、どこから買うことができるコモディティ商品である。
 かつて、国防エネルギー兵站部長だった退役空軍准将氏いわく。この世界にある石油の全体量は、軍隊にとって問題ではない。燃料兵站の問題とは、それを必要とする部隊に間に合うように燃料を輸送してやれるかどうかということに尽きるのだ。
 遠征先で部隊が燃料を必要としているなら、その現地で石油を買った方が早い。米国内で液体燃料がどのくらい生産されているか、あるいは消費されているかなど、関係ないのだ。
 米軍艦は、36ヵ国にある74ヵ所の港で燃料を買って給油可能である。また米軍機は、96ヵ国にある108ヵ所の飛行場で燃料を買って給油できている。
 米空母を中心とする機動艦隊の消費する液体燃料の9割は、ふつうの派遣のあいだじゅうは、海外で調達されているのである。
 国防総省全体が1年間に買う液体燃料の半分以上は、外国にカネを払って購入したものである。
 1815年、米海軍は帆船を石炭焚き蒸気動力に切り替え始めた。これにより艦隊は、海風と関係なく移動計画を立てて、予定の通りに実行できるようになった。
 ただし外洋を蒸気船が長駆移動するのに必要な石炭の量は厖大だったので、給炭港の位置と容量と政治状況に、米海軍はかつてなく縛られることにもなった。石炭積み作業には多大のマン×アワーも必要だった。
 20世紀初め、米海軍は、石炭焚きボイラーを重油焚きに替え始めた。体積あたりのカロリーが高いので、給油頻度は給炭頻度より少なくてよい。しかもホースで圧送できるので補給時の労力も要しない。
 ついで洋上給油法や、原子力推進が開発され、米艦隊は母港に戻らずに連続して長期間の遠征作戦や潜水艦パトロールを実施できるようになった。
 こうした既往の海軍エネルギー源革命とくらべると、バイオフュールは何の作戦上のメリットも米海軍に付け加えてくれなかった。単に、米軍の作戦をいちじるしく不自由に、且つコスト高にしてくれただけ。オバマのマスターベーションだった。


過去数ヶ月だけで300人以上の北鮮漁民が遭難死している。ノルマアップと燃料不足と船外機不良のため。

 Michael Peck 記者による2017-1-3記事「The U.S. Army Fears Russia’s (And Others) ‘Helicopter-Killer’ Mines」。
   ロシアやブルガリアなどが、「対ヘリコプター用スマート地雷」を開発中だが、まだ実戦で有効だったという報告は一例もない。
 センサーと自律発射式のミサイル等が組み込まれた、待敵兵器である。
 これは将来、軍用トラックにとってのIEDと同じくらいの脅威になるだろう。
 ブルガリアが90年代後半に開発したAHM-200は、三脚に固定した迫撃砲のような外観で、全重200ポンド。
 埋設はせず、地表に置かれる。音響センサーが1500フィート以内のヘリコプターの騒音を感知すると、発射準備。
 ヘリが500フィート内に来ると、ドップラーレーダーが作動。
 ヘリが300フィートに近づいたところで、起爆。自己鍛造メタルを飛ばす他に、1個の爆薬包を打ち上げ、それが花火のように爆発して多数の鉄球を散らす。
 ロシアは2012年にその類似品を作った。彼らによると、高度300フィート未満の敵ヘリには、肩射ち式SAMが無効であるため、これを採用したとのこと。
 ポーランドも、対ヘリ地雷を開発した。
 オーストリーにも、赤外線誘導ミサイルを自動で発射する対ヘリ地雷あり。
 ISは対ヘリ用IEDを数年前に使用したが成功せず。


独潜『214』型は燃料電池AIPでなんと2ヵ月以上も潜りっぱなしが可能。水中最高速力は23ノットという。

 Bill Gertz 記者による2017-1-3記事「Chinese Information Warfare: The Panda That Eats, Shoots, and Leaves」。
  『iウォー』という新刊を出すビル・ガーツ氏が、自分でそのサワリを紹介する。
 南シナ海でシナ駆逐艦がP-8にミサイルを2発発射し、SLAM-ERで反撃したP-8は1発で駆逐艦を撃沈した。
 報復のため中共の特殊部隊が米本土で工作活動を開始。北米(カナダとメキシコを含む)全体の電力グリッドをハッキングによって破壊する。
 作戦名は「短絡作戦」。
 ペンシルベニア某所で、送電線近くの高木を重機で倒して断線させる。
 ついで変電所にマルウェアを送り込む。
 米国は数ヶ月にわたり、電力の無い時代に戻った。
 そこで北京からの通告。すべての在亜米軍をハワイまで撤退させよ。もちろん地域軍事同盟は全部解消せよ……。
 2016-5までに米国政府は承知した。中共は、グーグルサーチエンジンの結果を勝手に変える方法を駆使していると。
 ただし中共国内でアクセスした場合に限るが。
 たとえば「天安門」でサーチをかけると、最初の数ページにはまったくそれが出てこない。
 英文による印刷媒体とオンライン媒体を使った、米国および日本に対する攻撃は執拗である。最大の『チャイナ・デイリー』は海外読者90万人。放送局の「CCTV」は24時間、ケーブルニュースを流している。これらもすべてインフォメーション戦争工作なのだ。
 2015に米連邦人事局の個人情報がごっそりとデータ盗取された。これが人民解放軍サイバー部隊のしわざであることは、すでにつきとめられている。
 オバマはその報告を受けているのに、これまで何の対支制裁もしないで、だんまりを決め込んでいる。
 じつは2011-8いらい、連邦内の対諜報セクションは、サイバー工作に対する対支制裁のオプションを、3ヶ月かけて考えた。
 しかしオバマはその制裁提案のすべてを却下した。しかも却下の理由をいっさい説明しなかった。
 2015夏までに、CIA、DIA、NSAを含む対諜報部局幹部が合議し、米政府や米国法人に対するサイバー攻撃に対しては強いリアクションが絶対に必要だと結論した。
 そのDIAの長官だったマイケル・フリン中将が次の政権の国家安全保障アドバイザーになる。これでオバマ時代の悪夢はやっと終わってくれるだろう。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-1-3記事。
  コーストガードでありながら76ミリ砲を主砲とする海警の『818』型船は、シナ海軍の『54』型フリゲートの派生型である。戦時には、『818』型はそのまま軍艦に早変わりする。
 『818』型は、副火器として30mmガトリング砲×2基を備え、小型ヘリ1機も積む。
 火器管制システムも『54』型そのまま。
 32発並べられるVLSのスペースは、あけてあり、いつでも後からミサイルを追加できる。
 ※このスペースは「武警」の居住区画になっていると見るべきだろう。
 『54』型は4000トン、全長134m。165人乗り。


「読書余論」 2017年1月25日配信号 の 内容予告

▼東京日日新聞社会部ed.『戊辰物語』岩波文庫1983、原1928
 目明し御用聞きは、誰がなるのか。たいていは、料理屋の主人か、博徒の親分であった。彼らを、二足の草鞋という。お上からは手当は出ない。だから悪い奴ばかり。
 江戸市内は春いらいの雨で屋根が濡れていたおかげで、上野山から発射された「焼け玉」は火事を起こさなかった。三百匁の野砲。
 渋谷翁いわく。伊庭は箱根でも奮戦した。その噂が武士たちの評判だった。伊庭は百人を一太刀づつでやった、という話だった。よく刀が続いたものだと思った。敵の持っているのを奪っては使ったものだろうという噂であった(p.84)。
 ※「百人斬り」の馬鹿話のおこりは幕末なのだろう。
 「脱柵」という言葉は明治初年の御親兵からすでにあった。
 薩摩の井上良馨[よしか]海軍大将の回顧談。貴重。
 上原元帥の回顧。さらに貴重。
▼吉田 司『宮澤賢治殺人事件』1997-3
 戦後文部省により半聖人あつかいされている賢治はじつはただのろくでなしだったと初めて立証。
 山口昌男によると、田中智学の書いたものには農村への言及がほとんどない。農村の具体的イメージがなかったのだろう、と。
 ラスキン+地人=羅須地人なのである(p.200)。
▼田久保忠衛『激流世界を生きて』2007-10
 蒋介石は沖縄の財界人に署名入りの書簡を送り、沖縄の独立をそそのかした(p.92)。
 1968年に沖縄じゅうが湧いたニュースがあった。国連アジア極東経済委員会ECAFEの後援で、日本、韓国、台湾の海洋問題専門家が東シナ海の海底調査を実施し、かなりの石油・天然ガス資源が尖閣諸島周辺に埋蔵されているらしいと大々的に、新聞とテレビで報じられた(p.124)。
 SS-20は、射程5000km未満だが、CEPは400mだと言われた。
 1983時点で欧州向けに240基、極東向けには100基を配していた。ドイツには発射後5分で到達する。
 米支国交正常化の当時、ニクソンのシナリオはキッシンジャーが書いていたとよく言われるのだが、違う。キッシンジャーは対ソを任されていたのだ。対支政策は、ニクソン自身が終始、主導権を握っていた。対支に関しては、キッシンジャーはただのメッセンジャー・ボーイにすぎない(p.222)。
▼グレイ&メール共著、松田tr.『防雪技術ハンドブック』1990-2
 合成ゴムよりも天然ゴムの方が低温下での滑り抵抗は大きい。
 人がなだれにまきこまれない用心としては、斜面のできるだけ高いところをトラバースする。これしかない。しかも、横断は必ず、いちどに1人ずつとする。
 ポールもスキーも、体に縛着しない。なだれに巻き込まれたらすぐに身体からすべて離してしまえるようにしておく。
▼東中野修道『南京「事件」研究の最前線』H19-1
 西住小次郎大尉の軍事郵便。
 擲弾筒手は、中隊長の近くにいて、隊長の命令通り、榴弾(専用弾)を敵軍に打ち込む。
 8月15日の玉音放送より1時間早く、蒋介石が重慶から「抗戦勝利にあたり全国軍民および全世界の人々に告げる」という演説を放送したという。
 舩木が情報課からその放送の要旨を聞いたのは、15日の午後。演説の内容を知ったのは、17日になってからである。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
 過去のコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
http://www.budotusin.net/yoron.html
 で、タイトルが確認できます。
 電子書籍ソフト対応の「一括集成版」もできました。詳細は「武道通信」で。
 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
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