貧者の巡航ミサイル。それがドローン。

 Rachel Zissimos & Katie Tubb 記者による2017-1-5記事「The New Administration’s Policy Should Reflect that Biofuels Cannot Meet Military Needs」。
  現役当時のマティスはオバマがくだらない燃料を海兵隊に押し付けてくるのに大反対だった。
 イラクでの治安作戦中、バイオ燃料のおしつけ統制のために作戦の進捗が阻害された。ただちに現地のマティス将軍は、燃料規制を撤廃しろとペンタゴン上層に要求したものだ。
 何がグリーン・エナジーだ。
 オバマは2011年に、海軍省、エネルギー省、農務省を指名し、3省が民間企業と共同して、レギュラー燃料に添加・混和する第二燃料としてのバイオフュールを作り出し、全米の民間輸送部門と国防総省の輸送部門に使用させろと命じた。
 これが「グリーン・エナジー・アジェンダ」であった。役人はこのアジェンダを尊重するコンプライアンスを負う。
 国防総省職員や軍人も国家公務員であるから、米四軍はそれからたいへんな時間・予算・人を突っ込んでバイオ燃料利用を増やす工夫に努めてきた。
 メイバス海軍長官が、オバマのティーチャーズ・ペットとなって奮闘した。オバマ政権2任期、ずーっと長官。これほど大統領から気に入られた海軍長官はWWIいらい初めてだが、おかげで海軍は大迷惑を蒙った。指定された艦隊は、各艦の燃料タンクにナタネ油を半分注入しろと言われた。F-18戦闘機にまで注入させられた。とうぜん、海軍の燃料コストは逆にハネ上がった。
 メイバスは「グレート・グリーン・フリート」だと胸を張っていた。
 海兵隊は省をもっておらず、海軍省の支配下にある。つまりマティスの大ボスも、この尻舐めメイバスだった。
 ※『グリーン・ミリテクが日本を生き返らせる!』を上梓したのが2010年4月ですよ。なつかしい。この時点で完全にオバマ新政権の最大のプッシュ政策になっていた。  たしかに、化石燃料の入手にまったく不安がない米軍には何のメリットもなかった政策だった。しかし自国領内で石油/ガスを安価に生産できない他のすべての国家にとっては、軍用の代替燃料の研究は、意義がある。オバマ政権時代でも、もし中共の石油消費量が順調に膨張し続けた暁には、コストもペイする可能性すらあったのである。米国はこの研究から手を引く。ならば、今こそ、日本がこの研究を引き継がねばならない。西欧はすでにディーゼル後まで考えているが、軍用車の電気化には無理がある。日本政府はまずディーゼル優遇税制をもっと強化して、日本の精油プラントで余ってしまう軽油を再度国外へ搬出して売り先を探しているという犯罪的な無駄構造を解消するのが急務だろう。
 石油は、どの国の生産分であれ、それは国際マーケットに提供される。したがって、どこでも、どこから買うことができるコモディティ商品である。
 かつて、国防エネルギー兵站部長だった退役空軍准将氏いわく。この世界にある石油の全体量は、軍隊にとって問題ではない。燃料兵站の問題とは、それを必要とする部隊に間に合うように燃料を輸送してやれるかどうかということに尽きるのだ。
 遠征先で部隊が燃料を必要としているなら、その現地で石油を買った方が早い。米国内で液体燃料がどのくらい生産されているか、あるいは消費されているかなど、関係ないのだ。
 米軍艦は、36ヵ国にある74ヵ所の港で燃料を買って給油可能である。また米軍機は、96ヵ国にある108ヵ所の飛行場で燃料を買って給油できている。
 米空母を中心とする機動艦隊の消費する液体燃料の9割は、ふつうの派遣のあいだじゅうは、海外で調達されているのである。
 国防総省全体が1年間に買う液体燃料の半分以上は、外国にカネを払って購入したものである。
 1815年、米海軍は帆船を石炭焚き蒸気動力に切り替え始めた。これにより艦隊は、海風と関係なく移動計画を立てて、予定の通りに実行できるようになった。
 ただし外洋を蒸気船が長駆移動するのに必要な石炭の量は厖大だったので、給炭港の位置と容量と政治状況に、米海軍はかつてなく縛られることにもなった。石炭積み作業には多大のマン×アワーも必要だった。
 20世紀初め、米海軍は、石炭焚きボイラーを重油焚きに替え始めた。体積あたりのカロリーが高いので、給油頻度は給炭頻度より少なくてよい。しかもホースで圧送できるので補給時の労力も要しない。
 ついで洋上給油法や、原子力推進が開発され、米艦隊は母港に戻らずに連続して長期間の遠征作戦や潜水艦パトロールを実施できるようになった。
 こうした既往の海軍エネルギー源革命とくらべると、バイオフュールは何の作戦上のメリットも米海軍に付け加えてくれなかった。単に、米軍の作戦をいちじるしく不自由に、且つコスト高にしてくれただけ。オバマのマスターベーションだった。


過去数ヶ月だけで300人以上の北鮮漁民が遭難死している。ノルマアップと燃料不足と船外機不良のため。

 Michael Peck 記者による2017-1-3記事「The U.S. Army Fears Russia’s (And Others) ‘Helicopter-Killer’ Mines」。
   ロシアやブルガリアなどが、「対ヘリコプター用スマート地雷」を開発中だが、まだ実戦で有効だったという報告は一例もない。
 センサーと自律発射式のミサイル等が組み込まれた、待敵兵器である。
 これは将来、軍用トラックにとってのIEDと同じくらいの脅威になるだろう。
 ブルガリアが90年代後半に開発したAHM-200は、三脚に固定した迫撃砲のような外観で、全重200ポンド。
 埋設はせず、地表に置かれる。音響センサーが1500フィート以内のヘリコプターの騒音を感知すると、発射準備。
 ヘリが500フィート内に来ると、ドップラーレーダーが作動。
 ヘリが300フィートに近づいたところで、起爆。自己鍛造メタルを飛ばす他に、1個の爆薬包を打ち上げ、それが花火のように爆発して多数の鉄球を散らす。
 ロシアは2012年にその類似品を作った。彼らによると、高度300フィート未満の敵ヘリには、肩射ち式SAMが無効であるため、これを採用したとのこと。
 ポーランドも、対ヘリ地雷を開発した。
 オーストリーにも、赤外線誘導ミサイルを自動で発射する対ヘリ地雷あり。
 ISは対ヘリ用IEDを数年前に使用したが成功せず。


独潜『214』型は燃料電池AIPでなんと2ヵ月以上も潜りっぱなしが可能。水中最高速力は23ノットという。

 Bill Gertz 記者による2017-1-3記事「Chinese Information Warfare: The Panda That Eats, Shoots, and Leaves」。
  『iウォー』という新刊を出すビル・ガーツ氏が、自分でそのサワリを紹介する。
 南シナ海でシナ駆逐艦がP-8にミサイルを2発発射し、SLAM-ERで反撃したP-8は1発で駆逐艦を撃沈した。
 報復のため中共の特殊部隊が米本土で工作活動を開始。北米(カナダとメキシコを含む)全体の電力グリッドをハッキングによって破壊する。
 作戦名は「短絡作戦」。
 ペンシルベニア某所で、送電線近くの高木を重機で倒して断線させる。
 ついで変電所にマルウェアを送り込む。
 米国は数ヶ月にわたり、電力の無い時代に戻った。
 そこで北京からの通告。すべての在亜米軍をハワイまで撤退させよ。もちろん地域軍事同盟は全部解消せよ……。
 2016-5までに米国政府は承知した。中共は、グーグルサーチエンジンの結果を勝手に変える方法を駆使していると。
 ただし中共国内でアクセスした場合に限るが。
 たとえば「天安門」でサーチをかけると、最初の数ページにはまったくそれが出てこない。
 英文による印刷媒体とオンライン媒体を使った、米国および日本に対する攻撃は執拗である。最大の『チャイナ・デイリー』は海外読者90万人。放送局の「CCTV」は24時間、ケーブルニュースを流している。これらもすべてインフォメーション戦争工作なのだ。
 2015に米連邦人事局の個人情報がごっそりとデータ盗取された。これが人民解放軍サイバー部隊のしわざであることは、すでにつきとめられている。
 オバマはその報告を受けているのに、これまで何の対支制裁もしないで、だんまりを決め込んでいる。
 じつは2011-8いらい、連邦内の対諜報セクションは、サイバー工作に対する対支制裁のオプションを、3ヶ月かけて考えた。
 しかしオバマはその制裁提案のすべてを却下した。しかも却下の理由をいっさい説明しなかった。
 2015夏までに、CIA、DIA、NSAを含む対諜報部局幹部が合議し、米政府や米国法人に対するサイバー攻撃に対しては強いリアクションが絶対に必要だと結論した。
 そのDIAの長官だったマイケル・フリン中将が次の政権の国家安全保障アドバイザーになる。これでオバマ時代の悪夢はやっと終わってくれるだろう。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-1-3記事。
  コーストガードでありながら76ミリ砲を主砲とする海警の『818』型船は、シナ海軍の『54』型フリゲートの派生型である。戦時には、『818』型はそのまま軍艦に早変わりする。
 『818』型は、副火器として30mmガトリング砲×2基を備え、小型ヘリ1機も積む。
 火器管制システムも『54』型そのまま。
 32発並べられるVLSのスペースは、あけてあり、いつでも後からミサイルを追加できる。
 ※このスペースは「武警」の居住区画になっていると見るべきだろう。
 『54』型は4000トン、全長134m。165人乗り。


「読書余論」 2017年1月25日配信号 の 内容予告

▼東京日日新聞社会部ed.『戊辰物語』岩波文庫1983、原1928
 目明し御用聞きは、誰がなるのか。たいていは、料理屋の主人か、博徒の親分であった。彼らを、二足の草鞋という。お上からは手当は出ない。だから悪い奴ばかり。
 江戸市内は春いらいの雨で屋根が濡れていたおかげで、上野山から発射された「焼け玉」は火事を起こさなかった。三百匁の野砲。
 渋谷翁いわく。伊庭は箱根でも奮戦した。その噂が武士たちの評判だった。伊庭は百人を一太刀づつでやった、という話だった。よく刀が続いたものだと思った。敵の持っているのを奪っては使ったものだろうという噂であった(p.84)。
 ※「百人斬り」の馬鹿話のおこりは幕末なのだろう。
 「脱柵」という言葉は明治初年の御親兵からすでにあった。
 薩摩の井上良馨[よしか]海軍大将の回顧談。貴重。
 上原元帥の回顧。さらに貴重。
▼吉田 司『宮澤賢治殺人事件』1997-3
 戦後文部省により半聖人あつかいされている賢治はじつはただのろくでなしだったと初めて立証。
 山口昌男によると、田中智学の書いたものには農村への言及がほとんどない。農村の具体的イメージがなかったのだろう、と。
 ラスキン+地人=羅須地人なのである(p.200)。
▼田久保忠衛『激流世界を生きて』2007-10
 蒋介石は沖縄の財界人に署名入りの書簡を送り、沖縄の独立をそそのかした(p.92)。
 1968年に沖縄じゅうが湧いたニュースがあった。国連アジア極東経済委員会ECAFEの後援で、日本、韓国、台湾の海洋問題専門家が東シナ海の海底調査を実施し、かなりの石油・天然ガス資源が尖閣諸島周辺に埋蔵されているらしいと大々的に、新聞とテレビで報じられた(p.124)。
 SS-20は、射程5000km未満だが、CEPは400mだと言われた。
 1983時点で欧州向けに240基、極東向けには100基を配していた。ドイツには発射後5分で到達する。
 米支国交正常化の当時、ニクソンのシナリオはキッシンジャーが書いていたとよく言われるのだが、違う。キッシンジャーは対ソを任されていたのだ。対支政策は、ニクソン自身が終始、主導権を握っていた。対支に関しては、キッシンジャーはただのメッセンジャー・ボーイにすぎない(p.222)。
▼グレイ&メール共著、松田tr.『防雪技術ハンドブック』1990-2
 合成ゴムよりも天然ゴムの方が低温下での滑り抵抗は大きい。
 人がなだれにまきこまれない用心としては、斜面のできるだけ高いところをトラバースする。これしかない。しかも、横断は必ず、いちどに1人ずつとする。
 ポールもスキーも、体に縛着しない。なだれに巻き込まれたらすぐに身体からすべて離してしまえるようにしておく。
▼東中野修道『南京「事件」研究の最前線』H19-1
 西住小次郎大尉の軍事郵便。
 擲弾筒手は、中隊長の近くにいて、隊長の命令通り、榴弾(専用弾)を敵軍に打ち込む。
 8月15日の玉音放送より1時間早く、蒋介石が重慶から「抗戦勝利にあたり全国軍民および全世界の人々に告げる」という演説を放送したという。
 舩木が情報課からその放送の要旨を聞いたのは、15日の午後。演説の内容を知ったのは、17日になってからである。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
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sugiyama@budotusin.net
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1月発売の『日本の武器で滅びる中華人民共和国』(講談社プラスアルファ新書)にご期待ください

 Dave Majumdar 記者による2016-12-20記事「What’s Wrong With the U.S. Navy’s Boeing F/A-18E/F Super Hornet Fleet?」。
   ホーネット系の戦闘機はここ数年、コクピット内の酸素発生装置でトラブルが続くようになっている。
 先週、ワシントン州ウィドベイ島海軍航空基地でEA-18G(スパホベースのグラウラー、複座)が墜落したのも原因はそれらしい。コクピット内の気圧が異常に高くなった。
 本来なら、安全弁から空気が抜けるはずなのだが、それが機能しなかった。
 それで機内で空気の逃がし弁をいじっているうち、風防そのものが吹っ飛び、それによってクルー2名は負傷し、機体〔尾翼か?〕も損傷したらしい。2人ともベイルアウトしてヘリコプターで海軍病院へ担ぎ込まれた。
 原因はまだつきとめられていないが、機体を真水で洗浄するときの手順に何か問題がなかったかも調べられている。
 ※酸素発生装置に関してはF-22でも一時大騒ぎになった。ボーイングやロックマートのような航空宇宙業界の大先達にして超大手ですらも、こんなところで解決できないトラブルに直面するのだ。


離島では「SM-6」を地上発射式にする価値があるだろう。それ1セットで離島防衛完了かも。

  James Hasik 記者による2016-12-20記事「Future Underwater Drone Warfare?」
  騒がれた水中無人グライダーの品名は、おそらく、ウッズ・ホール・オセアノグラフィック・インスティテューション社が設計して、テレダイン・ウェブ・リサーチ社で量産中の「Slocum」であろう。
 スロカムというのは、カナダ系米国人探検家のジョシュア・スロカムからとられた名である。彼は36フィート長の『スプレイ』というミニ艇でたった独りで世界一周を果たし(世界初)、そのあと1909-11に海上で行方不明に。彼はカナヅチであり、艇だけ発見されたことから事故死したものと推定されている。
 げんざい米海軍は150機もの「スロカム」を保有している。それとは別に、リキッド・ロボティクス社製のアナログの「ウェイヴ・グライダー」もごく少数、持っている。※現今の類似製品の始祖鳥のようなもの。
 NOAA(アメリカの気象庁)も無人潜航艇を複数運用している。
 市販の民用水中ロボットでいちばん大型なのはたぶん、スクリップス・インスティテューション・オヴ・オシアノグラフィー社製の「リバーデイド」級であろう。これまた、ジョン・スロカムの生前の乗艇の名を頂戴したものだ。
 どの製品も、航進速力は1ノットか2ノットだ。しかしそのスピードで何ヶ月でも活動し続けられる。
 海軍の水中グライダーは、水面に達したときに、衛星電話でミシシッピ州セントルイス湾にある海軍の中央コントロール局へ報告を入れる。
 漁網にかかるのはしょっちゅうなので、海軍の水中グライダーには銘鈑がついており、そこには海軍グライダー・オペレーション・センターの電話番号とメルアドも記され、そこに連絡を入れてくれるようにと書かれている。※原文にはその番号すべてが紹介されている。
 記者は海軍長官の元補佐官から直接聞いたことがあるが、これら水中グライダーから得られる「秘密」はほぼ何もない。塩分濃度、水温、水質に関するビッグデータ収集の端末のひとつにすぎないから。トランプがいうとおり、返してくれなくてもいいよといえるくらい、困らない。
 ※うたがいなく中共は、中共の気象庁に命じて、全くNOAAと同じ海洋調査活動を始めさせようとしているところだろう。
 今月前半、ボーイング社は、リキッド・ロボティクス社を買収することで合意した。
 ただし加州のサニーヴェイルにある同社の施設は移転しない。すなわち、ボーイングが2008に買収している無人航空機メーカー「インスィテュ」社〔スキャンイーグルの製造元〕と同様の育て方をして行くつもりなのだろう。
 親会社のボーイングが軍との契約をとりむすび、子会社のベンチャーたちが、今までどおりの環境で、受注された斬新な無人兵器開発に専念するという、ゆるい結合のビジネスモデルだ。
 ボーイング社自身、これまで、大型の水中無人機をいくつか試作してきた。18フィートの「エコー・レンジャー」、32フィートの「エコー・シーカー」、51フィートの「エコー・ヴォイジャー」だ。
 「エコー・ヴォイジャー」は大量の燃料を搭載し、6ヶ月間自律的に7500海里も動きまわることができる。
 これはディーゼル発電機をもっていて、ときおり浮上して発電し、また潜航するのだ。まるっきり有人潜水艦のミニチュア版だが、人を乗せないので安全係数など気にする必要なく、いかなる有人の軍用潜水艦よりも深く潜れる。酸素なしでも困らないから連続潜没時間はリミットレス。
 理論上、この無人潜水艦は、中共海軍の水上艦や潜水艦を、数週間にわたって尾行できるのである。
 ※むしろチョークポイントでの待ち伏せに使うのだろうね。CAPTORと組み合わせれば、こっそり出没する機雷と同じ。そして豪州には朗報。この無人潜航艇があれば、有人潜水艦は要らないだろ? 人手不足問題は、一挙に解決だ。
 ※TVドラマの『リミットレス』の第一回で、なぜインド人は米国内のビジネスで成功できる頭脳を持っているのかという、成功できない白人青年からの疑問が反映されていたのが、なるほどと思わせた。『CSI NY』最終シーズンにもたしか、進学校のテスト集中のために覚醒系ドラッグが密売されているというエピソードがあった。こうした米国のブームが知らないうちに日本にやってきていたのだろう。そして日本の警察官は『刑事コロンボ』ではなくて『CSI NY』を視て証拠品の取扱流儀について学んでおかなくてはダメだろう。もちろんDNAは数時間じゃ解析され得ないけどね。


ビリー・ミッチェルは1935年に、アラスカこそは世界で最も戦略的な場所なのだと言った。

 Gordon G. Chang 記者による2016-12-16記事「Beijing Commits Act of War, Obama Does Nothing」。
  ミススペルをあげつらっている場合か。オバマは何をやっているんだ。
 これは海賊行為であり戦争行為である。その代償を奴らにキッチリ支払わせよ。
 この水中ロボットは「リトラル・バトルスペース・センシング・グライダー」という名前であった。
 奴らの常套手口を学習しよう。
 ブッシュ(子)政権が2001-1にスタートした3ヶ月後、早くも奴らは戦争挑発を開始する。
 2001年4月1日の海南島沖空中衝突事件だ。乗員とEP-3の機体は11日間抑留された。
 これに対してブッシュ政権はどうしたか。なんと逆に大統領がシナに対して謝罪し、事実上、乗員と機体の身代金を支払ったのだった。
 それでシナ人は反省したか?
 奴らは敵が下手に出ればますます挑発をエスカレートさせるだけなのだ。
 2002-9に中共の漁船は黄海で『ボーディッチ』に意図的にラミングしてソナーを破壊したと中共メディアが主張している。
 事実は、衝突は起きておらず、しかし公海上での危険なイヤガラセがあった。
 次はオバマ政権だ。
 2001-1に新政権が誕生すると、やはり2ヵ月しないで奴らは戦争挑発を繰り出してきた。
 南シナ海の公海上での『インペカブル』曳航ソナー切断未遂事件は2009-3であった。
 ついで、姉妹船の『ヴィクトリアス』も2009-3に激しいイヤガラセをシナ船から受けた。
 ところがオバマはそんなイヤガラセ事件の翌月に、中共海軍創設60周年式典に駆逐艦『フィッツジェラルド』を参加させた。しかも海軍作戦部長の訪支付きであった。阿呆ではないのか。
 その報いとして2009-5にすぐにまた『ヴィクトリアス』に対するシナ船のイヤガラセ事件が再発した。シナ人を罰しなければ連中は増長するだけなのである。
 巡洋艦『カウペンス』に対する前路横切り衝突未遂事件は2013-12だ。
 こうした不正攻撃に対する報復を米政権が何もしてこなかったから、シナ人は調子に乗る一方なのである。
 今回もオバマは中共に対する何の懲罰も命じていない。
 2016-12-16の記者会見ではオバマは中共の海賊行為に一言も触れなかった。『NYT』のマーク・ランドラー記者がわざわざ質問をぶつけたのに。
 ※シナ人にいちばんこたえる懲罰は「在米資産凍結」だろう。その前段階としてトランプは「輸入規制」をすぐにも打ち出したくてたまらぬはず。どうやら北京も戦争したくてたまらないようだし。
 次。
 ストラテジーペイジの2016-12-18記事。
  水中ロボットはしばしば、漁網に捕らえられてしまう。
 2016-11にはフィリピン漁民が米軍のAUVをひっかけている。それは2016年において二度目であった。
 初期型は長さ2m。重さ59kg。
 この種のAUVは、1日に30kmか70kmしか移動しない。
 すでに米海軍はこの種のAUVを2000機以上も運用中なんである。
 ※空中偵察用ドローン、陸上ロボットに続いて、海中無人潜航艇でも、日本の防衛省は絶賛無策発動中というわけだね。
 標的ドローン「チャカー」の漂流物としての発見は、2013と2015で、別の事件だ。これは2012年後半にグァムで海に落ち、そのまま沈むことなく2000km漂流した。浮くように設計してあったから。
 次。
 COREY DICKSTEIN 記者による2016-12-19記事「Trump taps billionaire West Point grad for Army secretary」。
  こんどの陸軍長官に指名されたヴァイオラ氏は、退役した元陸軍少佐。
 イタリア移民の子としてブルックリンで育つ。
 父はWWII中に陸軍でトラックを運転していた。
 1977ウェストポイント卒。現役を経て、予備役。そして除隊。
 NY商品取引市場でトレーダーとなり、2008に電子取引会社を設立。2015に上場。
 2013にはNHLチームのフロリダパンサーズを買収している。2億4000万ドルで。
 ヴァイオラ氏の資産は18億ドルで、アメリカの最もリッチな400人の中に入る。
 2002にウェストポイント内に対テロ戦争センターができた。その資金集めに彼はOBとして協力している。
 生徒のために、デジタル教科書をくれてやった。戦術の教科書。
 陸軍長官は上院の承認が必要。現職は2016-5就任のエリック・ファニング。共和党優勢の上院は半年もその承認を拒んだ。グァンタナモ閉鎖方針に反発して。
 今、米陸軍の予算は1250億ドルくらい。
 現役陸軍将兵は47万5000人。州兵は34万3000人。予備役は20万人。雇用している軍属は24万5000人。
 トランプは現役をあと6万人増やすと公約している。
 次。
 ストラテジーペイジの2016-12-19記事。
  11-9に長征11の二段目ロケットがビルマ北部に落下。
 衝撃波をともなった落下音のあと地面に激突し、50mほど高々と跳ね上がってから、再び泥の中に突っ込んだ。場所は翡翠の廃鉱付近。
 長征11はそこから1600km離れたところから打ち上げられた。
 第二段に固体燃料ロケットを使用している長征11の打ち上げは、これが2回目であった。いちどに5機の衛星を放出した。
 二段目の長さは4m半。
 長征11は、低軌道に対してならば700kgまでのモノを投入できる。
 長征11は、有事に急速に多数の衛星を追加投入するために開発された。
 ふつう、二段目も大気圏突入時に燃え尽きるものだが、なんで無傷で落下してきたのかは、謎である。
 長征11は、長征ファミリーのなかでは最も小型で全重58トン。
 2016-9-1に失敗した長征は11型ではなく、液燃の古いタイプ「4C」である。その前の長征の打ち上げ失敗は2013にあった。
 その9月にオシャカになったペイロードは「廻返10」写真スパイ衛星であった。
 失敗の詳細を公表できないのは、打ち上げ保険料が高騰するのを恐れているからである。
 長征ファミリーの最も大きなものは「長征3」で全重は400トンを超える。低軌道へなら12トンを投入し得、静止トランスファー軌道へならば5トン半を送り込める。
 「長征11」の前の急速偵察衛星投入用ロケットは「長征6」という。2015後半に仕上がった。全重103トン、高度700kmに1トンを投入できる。しかも機動発射車両からも打ち上げられる。まるっきりミサイル感覚。軍から要求されてから7日以内に、偵察衛星や通信衛星を打ち上げられるのだ。
 次。
 J.R. Wu 記者による2016-12-16記事「As Trump riles China, Taiwan tallies defense costs」。
  台湾はGDP5000億ドルの2%未満しか国防に投じていない。
 台湾の経済成長率も、近年は2%を切っている。
 台湾は武器を国産してもそれを売るマーケットがまず無い。
 次。新刊紹介のそのまた紹介。
  Kenneth D. Alford氏著『American Crimes and the Liberation of Paris: Robbery, Rape and Murder by Renegade GIs 1944-1947』。
 1944年にフランス本土にフランスに進駐した米軍の悪い分子は仏ギャングと提携して密輸業に精を出していた。
 タバコ、ガソリン、自動車が大きな儲けになった。
 著者がこの研究にのめりこむようになったきっかけ。米陸軍の司法システムを調べていたら、米軍の黒人兵が関与したレイプ犯罪事件の資料が不自然に不足していることに気がついた。
 1944年から47年の間にフランスに駐留した米軍将兵によって15万件のレイプ事件が起こされている。
 そのうち著者が精査し得た150件のケースのうち、130件が黒人兵によるもので、また、こうした強姦事件関与で絞首刑にされた29人の米兵のうち25人も黒人であった。つまり黒人率が異常に高い。欧州に遠征した米軍に占めた黒人の比率は10%だったのに。


トランプはキッシンジャーの面子を潰してやるためにわざとやったのか。

 TARA COPP 記者による2016-12-16記事「China seizes unmanned US research submarine」。
 『USNS Bowditch』が公海上で海洋調査させていた無人潜航艇を15日に『Dalang III』級のシナ船が勝手に水中から捕獲して持ち去った。彼らはボートを使用した。
 場所はスビック湾から50海里北西の公海上。
 無線で返還を要求したがシナ船は無視した。
 国防総省は中共にただちに変換するように求めている。
 『ボーディッチ』の乗員は、国防総省と契約している軍属。船の所属は軍事輸送コマンドである。
 この無人潜航艇は人が乗っていなくても国際法上、米国主権の及ぶ艦船である。
 この無人ロボットはマーケットで15万ドルで買えるもので、秘密システムは搭載されていない。
 ※日本の巡視船は76ミリ自動砲ではなく、特別な砲座に「81ミリ迫撃砲」を据えた方がいい。その砲座を上甲板よりずっと低いところに設ければ、外目からはまったく見えない。もしドローンで上空から撮影されても、上甲板の「暗い穴」か、上甲板とツライチの「天蓋」しか見えない。よって挑発的にもならない。すでに各国で完成されている「誘導砲弾」や、有翼の大射程弾を発射できるので、不審船にも、また、島に上陸して射撃してくる武装勢力にも、コラテラル・ダメージ(側杖被害)なしでの柔軟精確な対処が容易である。もちろん砲座そのものをジャイロで自動安定させることもできるだろう。照明弾や信号弾の打ち上げ用としては76ミリ砲に勝る。もやいも発射できる。なにより、中型以下の巡視船であっても、その船体重心をほとんど悪化させない。値段もはるかに安価で済む。
 次。
 ストラテジーペイジの2016-12-16記事。
  『クズネツォフ』の搭載機がシリア沖で2機うしなわれた原因は、アレスティング・ワイヤーか、それを捉えるフックの欠陥らしい。
 2005にはバルト海でやはり同艦にスホイ33×1機が着艦しようとしたときにアレスティング・ケーブルがはねて、同機は海没している。
 着艦事故を防ぐためには経験が必要。2011年において『エンタープライズ』は40万回の着艦を記録していた。就役から半世紀のうちに。
 他にも着艦40万回を記録した空母は米海軍に3隻ある。1991退役のエセックス級の練習空母『レキシントン』、1998退役の『インディペンデンス』、2009退役の『キティホーク』。
 米空母は2007からARCという着艦コントロールシステムを実用化している。アレスティングケーブルを張る位置等を、デジタル制御で正確に最適化してやろうというもの。これによって機体の傷みも減る。システム自体のメンテナンスは簡単。
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 今年最大の収穫。水城徹氏著『太平洋における電子と情報の戦争 1935-1945』2016-8-14風虎通信pub. ISBN無し。ヨコ組一四六頁。値段不明。
 さる人から貰って読んだが内容の新しさにブッ飛んだ。参照された資料が最新とかエクスクルーシフだというわけじゃないのだ。その逆である。人々が何十年間もまるで気付かず理解もしていなかった、しかし米英では戦前から深く理解されて且つ戦後に公開されていた話を、この著者が日本人として初めてサラリと理解して1冊にまとめてくれたわけ。これを偉業と呼ばずにどうする。
 できるだけ多くの人が、この書冊に目を通されることを祈念する。特に軍事系・歴史系の出版社の人。


それは本当に潤滑油だったのか?

 Fred Barbash 記者による2016-12-12記事「How the Navy secretary’s baseless claim helped lead to the WWII internment of Japanese Americans」。
 近々、C.D.オサリバンというサンフランシスコ大学の歴史家がノックスの評伝を出す。それによると……。
 フランス・ノックスは、若いときテディ・ローズヴェルト率いる「ラフライダーズ」の一員として米西戦争に参加し、『シカゴデイリーニューズ』を発行するようになり、1936大統領選挙では共和党のアルフ・ランドンの副大統領候補として選挙を戦ってFDRチームに負けている。
 ノックスは1933年3月時点ですでに、非常時にはハワイの日系人は隔離しなければならないと信じていた。※満州事変で日米関係はいきなり大緊張した。
 それが挙国一致内閣でFDR政権の海軍長官になっていた。
 ノックスは海軍長官に就任するとすぐに、陸軍省や司法省と、在米日本人と日系米人を強制収容する施設をつくることについての相談を始めていた。
 彼は1941年12月4日に政府高官を招いての私的な夕食会で、わが海軍が昼寝中を日本軍から襲われるなんてことはない、と演説していた。
 1941-12-5の緊急閣議の席上で、ノックスはFDRに対し、日本艦隊はオアフ島の近くにはいない、と請け負っていた。
 日本の船団がマレー半島に接近していることは主要閣僚なら皆知っていた。
 しかし11月26日に空母機動艦隊が単冠湾を出撃したことは分かっていなかった。
 真珠湾空襲直後、議会メンバーはノックス海軍長官の引責辞任を求める空気になった。FDRも、ノックスを解任するつもりであった。
 海軍がドジを踏んだのはあきらかだったからだ。何の準備もできていなかったのに、準備ができているとノックスは吹聴していた。
 12月8日にノックスはすぐにハワイへ飛んだ。そして責任者は誰なのかを探そうとした。
 ノックスが現場を視察したとき、湾内の海面には半インチ厚の重油が漂っている状態だったという。そして身元判別不能な状態の死体が海岸に並べられていた。
 しかしノックスは、この空襲の真相も、アメリカ人の誰がしくじったのかも、解明できずに、12月15日にDCに帰着した。
 そして記者会見場に臨んで、ハワイに暮らしている日系米人たちは日本の第五列である、と、何の証拠も挙げずに非難した。
 「第五列」という用語は、ナチのノルウェー侵攻のときから、米国内ではよく使われていた。
 しかしFBIと陸軍情報部は、奇襲の前もさなかもその後も、ハワイの日系人によるサボタージュ活動はなかったと把握していた。
 しかし公的には誰もノックス発言に異議を唱えなかった。新聞はノックスの言葉を派手な見出しにした。UPIもノックスの表現をそのまま使って、「日本人スパイが日本機にハワイの致命的な場所はどこかを教えた」と報じている。
 ノックスは、大衆が聞きたかった話をしてやったのである。
 こうしてノックスは馘をまぬがれ、代りに、米西海岸の日系米国籍市民12万人(うち7割が市民権あり)の強制隔離収容が実行される。
 ところでハワイの日系人は、じつは強制収容されていない。多すぎて施設など造れなかったし、彼らの労力なしではハワイは機能しなかったからだ。
 強制収容されたのは、西海岸州の日系人だった。
 1982年のレーガン政権下でこの問題の調査を託された委員会は、これら12万人がスパイであった証拠はなかったと最終的に結論を出している。
 ノックスは1944年に、何の説明責任も果たさずに、70歳で死んだ。
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 Lara Seligman 記者による2016-12-11記事「Trump Slams ‘Out Of Control’ F-35」。
  トランプの12-12のツイート。F-35計画とコストは制御不能になっている。数十億ドルの予算は、わたしが大統領に就任したあとは、他の軍事支出に使えるだろう。
 トランプは12-11のFOXテレビのインタビューでも同様のF-35批判をしている。そこでは、数千億ドルが際限なくつぎこまれていると言っている。※フォックスは選挙期間中、唯一、ヒラリーに不当に加担しなかった局。
 ペンタゴンの最近の試算。F-35部隊を60年間運用すると、そのトータルコストは1兆ドルを越える。
 トランプはFOXに対して語った。元将校で、ある特定の兵器開発を担当していた者が、退職後2年か3年したらそのメーカー企業に就職しているなんて、許されない、と。そのような「回転ドア」は、一生、禁じられねばならん、と。
 トランプはこの主張を、先週、バトンルージュで最初にしている。
 その発言のタイミングは、昨年まで空軍参謀長だったマーク・ウェルシュ大将がノースロップグラマンの重役に天下るという企業からの発表の数日後である。
 ウェルシュは次期ステルス爆撃機の開発メーカー選定(ノースロに決まり)には直接かかわっていなかったと主張しているが、そのまま大口契約獲得企業の重役の座をあてがわれるなんて、ゆるされていいわけあるか。


久慈の地下原油タンク群は東日本震災でも無傷だった。なぜこの方式をもっと普及させないのか?

 ストラテジーペイジの2016-12-6記事。
  土嚢のことは英語でサンドバッグという。
 サンドバッグが急に進化したのは1980年代だった。
 特に中東で活躍したのがHESCOバリアである。
 折り畳まれたワイヤーメッシュの容器。丈夫なプラスチックで裏打ちされている。
 それを展張して、重機のバケットローダーで土砂を投入してやる。
 大型トラック爆弾からも歩哨を守ってやるのに十分な障壁がたちどころにできあがる。
 折り畳まれている出荷初期状態では、兵隊たちが人力で持ち上げて移動させることが可能。
 しかしひとたび土砂やガレキを詰め込めば、もはやコンクリートブロックに等しい防護効果を発揮してくれるのだ。
 HESCOはもともと1980年代に、同名の英国企業が、護岸や洪水制御の資材として発明した。水害時に短時間で胸壁を構築できるようにと。
 だがあまりに便利だったので2001年にはもう防弾・防爆用途で米軍その他から愛用されるようになった。
 従来のサンドバッグに円匙で土砂を詰める作業は、兵隊1人がいくらがんばっても1時間にせいぜい20個というところで、そんな調子では急な増水に対処できたものではない。
 そこでバケットローダーで一挙に巨大な土嚢壁が構成できるように、HESCO社が創案したのだ。
 人気が出たので軍用の商品バリエーションも増えた。いずれも、充填状態で何段も積み上げることが可能。急設用「塹壕キット」もある。
 壁厚が60センチの土嚢ならば、ライフル弾や榴弾破片を阻止できる。
 RPGを防ぎとめるには、厚みが1.5メーターになるように積む。
 たいていの自動車爆弾に備えるには、厚みが1.2m以上あればよい。
 このHESCOのラインナップに触発されたイスラエル企業が2010年に開発した製品は、ホイールローダーもフォークリフトもないところで、兵隊の人力だけでサンドバッグ壁を急設できるようにした。
 出荷状態では折り畳まれている。展張してスコップで土砂を入れると、1m×1m×1mの立方体土嚢になる。1個の重さは22kgくらいになる。だいたい1時間で胸壁ができる。
 専用パネルを使えば、この土嚢箱で「屋根」を構成することもできる。すなわち天蓋付きの3D土嚢陣地ができあがるのだ。
 1個のサイズが小さいので、陣地を撤収するときには、中身の砂を捨ててまた折り畳んで車両に積めばよいだけだ。
 民間用の鉄製の貨物コンテナ。これの周りをHESCO土嚢で覆うと、ミニ司令部要塞ができる。
 その便利さが各国軍に知れ渡ると、2005年までに、最初から軍用に設計された、寸法だけはシッピング・コンテナとまったく同じ、「アーマー・コンテナ」が製作されるようになった。
 ただの鉄板ではなく、防弾スチールのボックスなので、HESCOによる防護補強工事の手間は省ける。最初からエアコン等も備わり、そのまま野戦手術室にもなる。
 移動はトラックで簡単にできる。場合によっては輸送用大型ヘリコプターで吊るして移動することもできるのだ。