生物くん。

 NEIL MacFARQUHAR記者による2016-8-26記事「A Powerful Russian Weapon: The Spread of False Stories」。
   ロシアは、スウェーデン政府がNATOと軍事同盟関係に入るのを阻止するために、偽情報のインターネット発信にドライブをかけている。
 いわく。
 ――NATOはスウェーデン国内密かに核兵器を展開して、そこからスウェーデン政府の許可なくロシアに向けて核攻撃を開始する気だ。
 ――NATO兵士がスウェーデン国内で強姦してもスウェーデン政府はその将兵を訴追することができない。外交特権で守られるからだ……などなど。
 これが国内メディアでも語られるようになったので、国防大臣が全国行脚してタウンミーティングの場に臨み、「その話はロシア人によるルーモア工作である」と打ち消して回らねばならなくなっている。
 なにしろプーチンは、NATOに加盟しようとしたジョージア/グルジアの機先を制してジョージアを武力占領してしまったというトンデモ野郎なのだ。おなじことをスウェーデンに仕掛けない保証はない。
 ロシアの通信社はスプートニクである。ロシアのテレビ番組を海外で系列地方局に放送させる輸出キー局はRT(ロシアトゥデイ)社である。この2社がスウェーデン内部に食い込んでいるので偽情報の拡散は容易なのである。
 ディスインフォメーションのことはロシア語で、「デズィンフォルマツィア」という。
 平時の偽情報作戦は、相手国の極左および極右が引用したくなるような内容にこしらえると、効果が抜群である。あとは彼らがインターネットで勝手に拡散してくれるからだ。
 こんな騒ぎもあった。ロシアのテレビ放送が、「13歳のロシア系ドイツ少女が中東系移民によってレイプされた」と報道。それが虚偽であることをドイツ警察が確認すると、ラヴロフ外相は開き直ってさらにドイツの移民受け入れ政策を非難した。
 ロシアの狙いは、西欧の極右を元気付けて「西欧の民主主義などすでに崩壊している」と内外に信じさせることなのだ。
 RTは英国内の系列局(英語放送)に、EU離脱をさんざんけしかけさせていた。このことから、ロシアが英国のEU離脱をいかに欲していたかもよくわかるのである。
 6月にNATO軍はポーランドで演習した。このときもロシア系ウェブサイトが、NATOはポーランドの許可なくポーランド等の東欧諸国内からロシアを核攻撃する気だと大宣伝した。そしてアメリカはドイツを警察官にして東欧を支配する気なのだぞとも警告した。
 チェコなど東欧圏でのロシア発ディスインフォメーションの成績は、対北欧よりも良いようである。
 ※やはりスラヴ系の言語が近くて同じレトリックがよく通ずるからだろう。もちろんすべて現地語なのだが。
 チェコ共和国内には「プロ・ロシア」のインターネット放送局は40くらいもある。いずれも、西欧とアメリカと移民はすべて悪者だと宣伝する。
 ※中共は日本国内で「移民は悪者だ」とは宣伝できない。ここが面白い。
 冷戦期のソ連の偽情報発信は、インドのメディアを利用するものだった。そこで英語によって偽情報を報道させてしまえば、それはすぐに世界が引用可能になるからだ。
 「エイズはCIAが開発した生物兵器だ」というルーモアは、この方式で拡散された。
 ロシアの工作隊は、スウェーデンの国防大臣のサインをそっくり真似して「ボフォース社はウクライナに榴弾砲を売れ」といった勧告の手紙を偽造して写真に取り、それをネットで拡散している。スウェーデンでは大臣がそんなマネをしたら違法にきまっているのだが。
 同大臣は国外で会議に出席すると、いまだにこの手紙に関する質問を受けるという。それほど、捏造名誉毀損工作は、有効なのだ。
 ロシアテレビ界の著名なアンカーであるドミトリー・キセルイェフは言った。今日では敵兵1人を殺すコストはWWII中よりもずっと高い。もし相手を説伏することができるならば、そいつを殺すことはない。プロパガンダこそ、戦争に安く勝つ戦術である。ロシアの番組がプロパガンダだというなら、西側の番組だってすべてプロパガンダじゃないか。「中立報道」の時代はとっくに終わってるんだよ。
 ※日本でもこういうガセネタがあった。いわく。〈スウェーデンの間接税は高率だが、成熟した議会制民主主義があるため、その使途についての代議士たちによる詳細なチェックが働き、有権者の満足度も高い〉、と。だが事実はこうだ。スウェーデンの有権者は冷戦終了とともに軍役の一方的な軽減だけを政府に迫り続け、徴兵制を廃止させ、国内外の安全保障については誰もが無関与をよしとするようになった。結果、複数年度にわたって軍事費の増額が禁じられる法律が可決され、プーチンのロシア軍が復活するやたちまちに、スウェーデンの領土国家主権はロシア軍から舐められ放題に蹂躙されるようになって、NATOとの同盟に救いを求めるしかなくなったのである。
 次。
 Nomaan Merchant記者による2016-8-27記事「Does China still harvest organs of executed?」。
     腎臓移植を希望していた1人のカナダ人の患者が中共に行ったら、たった3日間待たされただけで、適合する腎臓を移植してもらうことができた。
 モントリオールの「移植協会」は、中共では適合腎臓を持つ死刑囚のリストが揃っていて、顧客がやってくるとその適合囚を選び出してただちに処刑して病院に供給しているのではないかと疑うようになった。
 表向きには中共は2015-1に、刑務所を「臓器畑」扱いすることはやめた、と発表している。
 2011年時点で中共内で移植された臓器の65%は、死刑囚のものだった。これは元副厚生大臣であったシナ人医師が認めている。
 中共は、毎年死刑にしている人数を公表していない。アムネスティーインターナショナルでは、1年に1000人弱だろうと推定している。
 シナ文化では死者の臓器を遺族が同意して他人に分け与えるなどとんでもないことだと思われている。だから供給源はボランティアには頼っていられないのだ。
 政府発表によれば2015年にシナ国内で1万57件の臓器移植手術が実施された。しかし同国には闇市場があるので、誰もこの数字は信じていない。
 ちなみに政府の公式数字ではシナ国内で臓器移植を欲する患者は1年に30万人だという。
 シカゴ大学の移植外科医で、シナのあちこちの病院でそのワザを披露しているミルズ医師いわく。たしかに改善の跡があると。というのは、以前には移植病院では毎日コンスタントに一定の移植手術があった。これはドナーが囚人だからできることだ。しかし今では、あるときは1日にオペ2件が集中し、かと思うと移植の無い日が何日も続いたりする……という具合に、スケジュールが予測不能になっている。これはドナーがボランティア化しつつある証拠だろう、と。・
 臓器の闇市場は残っている。しかし、人々が疑っているほど大規模ではなくなったのだ。
 次。
 Sebastien Roblin記者による2016-8-27記事「BrahMos: India’s Supersonic Mega Missile That China Should Fear」。
       ブラモスの原型はロシアのP-800である。それはマッハ2.8だったが、ブラモスのラムジェットは少し速い。
 トマホークとくらべると、重さは2倍。速力は4倍だ。
 ブラモスは命中直前にはS字運動をする。シースキミングだけでなく。
 もし目標までの距離120km以内でリリースされたときには、最初から最後までシースキミングで飛翔する。
 狙われた艦艇が、自己のレーダーでブラモスを探知できるのは、距離30kmである。そこから命中までは30秒しかない。30秒でどんな対処が可能かという話。
 ある試算によると、アーレイバーク級イージス艦は、同時に12発までのブラモスにしか対処はできない。したがって、空母輪形陣全体では、64発のブラモスが同時に集中すれば、防禦手段が飽和されてしまう。
 ブラモスは、ロシアのオニキス・ミサイルと比べてレンジが半分。290kmである。
 この理由は、ロシアがMTCRを遵守したことにある。35ヵ国が合意したMTCRの条項のひとつが、レンジ300km以上の巡航ミサイルを、その技術を持ってない国に対して輸出してはならぬ、というものなのだ。
 だからロシアはレンジを290kmにわざわざ制限し、その代わりに速力を増してやったわけ。
 ちなみにインドも2016-6-28にMTCRに加わった。これはインドがブラモスを輸出する気満々であることを示している。
 中共はMTCRに加入していない。
 ブラモスの弾頭には、660ポンド以内の核弾頭も、理論上、搭載できる。それはあまり現実的ではないにしろ。
 ブラモスは一般的には、軍艦に8個のセルのVLSとして搭載される。
 インド海軍は2013年には潜水艦からもブラモスを発射してみた。
 インドは「スホイ30MKI」戦闘機からこの巨大ミサイルを発射するために数年努力して、成功させた。2016-6のことである。そしてこのタイプを「ブラモスA」と称する。
 40機のスホイ30MKIが、この運用機として改造される。
 陸上型は、12輪トラックから発射する。発射連隊は、この車両を5両もつ。その連隊がすでに4個、シナ国境に配備されている。
 ブラモスの「ブロック3」は、山の反対斜面を、70度の急降下で直撃できる能力がある。ヒマラヤの中共軍は、反対斜面を利用した陣地に籠もっても、無駄である。
 ブラモスはポテンシャルとしてはレンジを500kmに伸ばせるが、インドにその技術力があるかは疑わしい。
 探知されにくいように小型化した「ブラモスNG(ネクストジェネレーション)」も開発中である。総重量3000ポンド以内でまとめるという。
 と同時に、スクラムジェットによりマッハ7で飛ばす「ブラモス2」も開発したいと言っている。
 2014秋に習近平がインドを友好訪問したとき、インド国境のシナ軍はあきらかにそれに不満で、いろいろな策動を示した。中共の文民統制は不完全であることがここでもバレている。
 インドはベトナムにブラモスを売る気である。ブラモスには、マレーシア、インドネシアなども関心を示している。


米国務省が攻撃型ドローン輸出規制枠組みを作って各国に合意させようとしている。

 ストラテジーペイジの2016-8-26記事。
  イスラエルは、南米麻薬カルテルが10年以上も前から密輸出に多用している「簡易潜航艇」が、近々、イスラエル沖の天然ガス掘削リグ攻撃のために使われると予測し、その潜航艇を見つけ出すためのセンサーを配備・展開しつつある。
 これら簡易潜航艇の発見の仕方についてイスラエルは、米国のコーストガードなどから情報を貰った模様。
 米コーストガードの場合、船艇とヘリの数が足りないので、センサーで遠くから探知した「不審船」が本当に麻薬カルテルのものか確認せずにいきなり発砲して停船させるわけにはいかない。しかしイスラエルは、沖合いの不審船ならば何でも発砲してOKだから、長距離センサーが役に立つ。
 ※原文中には明記されてないが、この書きぶりからして、SOSUSの簡易版を設置したっぽい。あるいは、日本の海保が小型漁船にも取り付けを推奨している「簡易AIS」のようなものなのかもしれないが……。誰何電波に対するレスポンドがなければ、すべてそれは敵性ゲリラ船だとして対処すればいいのだ。
 「シーガル」という無人ロボット警備艇(USV)は、水中の潜航艇に対して、有線誘導魚雷を発射することもできる。
 麻薬密輸用潜航艇は、エクアドルやコロンビアなどの南米沿岸の河口のジャングルに隠れたガレージでギャングの手によって製造されている。木骨+ファイバーグラス船殻。全長は大きいもので20m。
 エンジンはディーゼルで、乾舷はほとんどなく、ごく低い覘視塔だけが水面上に出ている。これに最大で5人が乗り組む。
 荒天時や、米コーストガードが接近したときには、深度10mくらいに潜水して脅威が去るまで堪えることができる。
 航続力だけは長大だが、水上航走速力はごく微速で、ウェークもできないのでコーストガード等の持つレーダーでは探知ができない。
 最初に登場したのは1990年代前半。おそらく最初は米国の遊園地用もしくはカネモチ遊覧用のレジャー向き潜航艇の設計ノウハウを持つ技師が小遣い稼ぎをしたのではないかと疑われている。
 2000年になるとこのグラスファイバー潜航艇は長足の進歩を遂げ、いちどに10トンものコカインを運搬できるものや、大西洋を横断してスペイン海岸まで片道航海できるものが登場した。
 しかしこうした本格型タイプはいまのところごく少数しか確認されていない。どうも値段の割に「成績」はよくないようである。悪天候によって沈没、もしくはエンジン故障によって自沈したときに、積載量が大きいほど、ギャングにとって打撃になってしまうからだ。
 安価に多数のミニ潜航艇を造ってどんどん近距離へ送り出した方が、取締り側を「アウトナンバー」して、警戒網をすりぬけてしまいやすい。
 米国は2000年から中南米諸国を糾合して、米軍がセンサーで探知した不審船を地元国家の海軍に取り締まらせるようにしている。
 麻薬密輸潜航艇はこれまで100隻以上がそうした官憲によって「撃沈」または拿捕されている。
 発見されずに密輸に成功して密かに「自沈処分」したものはその5倍以上あるだろう。
 密輸潜航艇は決して南米とメキシコ(2008年以降はしばしば直接に北米海岸)の間を「往復」することはない。常に片道ミッションなのだ。
 コロムビア警察によれば、2010年以降、麻薬ギャングだけでなくて、左翼ゲリラのFARCも、兵士の極秘移送用にこの「自作潜水艦」を使うようになっているという。
 コロムビア海軍は1970年代に、西ドイツ製の『209』型潜水艦を2隻、保有していた。その当時の乗員が除隊したあとで、コカイン・ギャングに再就職して、こうした密輸潜航艇の運用に携わっているらしい。これは逮捕者の訊問で分かってきた。
 ※CSディスカバリーチャンネルで放映している『How Do They Do It?』という英国製の番組があるのだが、できるならこの麻薬密輸潜航艇の造り方……は無理だが、市販されているレジャー用潜航艇の工程を紹介してくれぬかと思う。それによって何がハッキリしてくるか? 台湾政府がこれまで潜水艦や潜航艇を国産しなかったのは、意図的(国策的)な「サボタージュ」以外の何物でもないということだ。台湾人くらい信用ならぬ連中はない。じぶんたちでつくれるのに、それを保有できない理由をずっと米国や西側諸国政府のせいにしてきた。このたびも、わざわざハードルが高い本格潜水艦をこしらえるとか元首が言っているが、まさにその宣伝こそが、潜水艦を永久に持たないためのサボタージュ戦術に他ならないのだ。おめでたい日本人たちよ、彼らの巧言に騙されるな! 彼らの半数はいつでも戦わずに逃亡するつもりであり、残りの半数は、いつでも中共に吸収される用意ができているのだから。
 次。
 Kim Gamel記者による2016-8-25記事「Pet-cloning lab in S. Korea starts military dog program」。
  京城の南郊に「クローン犬」を生産する「Sooam社」があり、顧客(デュバイの皇太子など)が1匹につき10万ドル払ってそれを納品されている。すでに800匹の実績あり。
 このたび同社は、韓国軍および警察のために、優秀な警備犬を「クローン量産」することになったという。
 この会社の経営者(63)は、10年以上前、幹細胞の画期的研究について捏造発表をした人物である。
 捜索や犯人逮捕に抜群の成績を残した親犬が老衰したとき、その遺伝子を保存しておいて、クローンを複数、こしらえるのだという。いちどに複数匹得られるので、何匹かは依頼主以外に売ることにすれば、会社は儲かる。
 ペンシルベニアの警察犬訓練機関も3匹、受け取った。
 軍犬のトレーニング商売は楽ではない。200匹を「入校」させても100匹はものにならずに「放校」される。つまり歩留まりが50%しかない世界なのだ。
 しかしクローン犬にすれば、この歩留まりは100%になるわけである。
 クローニングは、優秀犬の体細胞(生殖細胞ではない細胞)を、てきとうなメス犬の卵子細胞から細胞核をとりのぞいたもののなかに突っ込み、電流刺激で一体化させる。その試験管合成卵子を、代理母犬の子宮に挿入する。1996に最初にこの技法でクローン羊「ドリー」が生み出されたが、ドリーは短命で死んでいる。
 この経営者は、3000回失敗したあとに、2005年に最初のクローン犬を作り出したという。
 仔犬は帝王切開で取り出さねばならぬこともある。代理母犬とは、似ても似つかない「優秀犬のコピー」が出てくる。
 経営者によれば、死んだばかりの犬の体細胞からでもクローンは可能である。ただし注意。勝手に遺骸を「冷凍」しないでくれ。まずは連絡して欲しい。
 老衰した愛猫をクローン再生してやるというビジネスも、かつて存在した。しかしペット猫の需要は、犬ほどは無かったそうで、その会社は2006に倒産している。
 Sooam社は先ごろ、シナのBoyaLife社と、「高級クローン牛肉」の生産工場をつくるJVも結成している。


じつに面白い北鮮のSLBM

 5月に書き上げている原稿がどういうわけか8月下旬になってやっとこさ本になったもんだから、『白書2016』の記事が北鮮のSLBMをフォローしてなくてどうもすいません。
 補訂の意味ですこしここで書いておきます。
 北京が危なくなったという意味で試射は痛快だった。
 試射500kmが、最大ポテンシャル射程1000km以上を意味するとすると、新浦港からちょっと沖へ出たところから北京まで到達させることができるわけだ。これで、こんご中共が北鮮を先制攻撃しても、「第二撃」による報復は阻止し得なくなった。理論上は。
 つまり、米日の軽忽なマスコミがフォレンジックな物的根拠もなしに騒いでいるように本当にもし北鮮が「原爆」とやらをもっているのだとすれば、やがて中共と北鮮はMAD(相互確証破壊)関係に入る。
 これは儒教圏人としたら我慢できないでしょう。MADというのは「対等」ですからね。儒教圏内には「2者(2ヵ国)の対等」なんていう事態はあってはならないんだから。
 北鮮にはまだ実用になる核弾頭がありません。しかしダーティボムならできるはずだから、とりあえず平壌はダーティボム弾頭をとりつけたSLBMを、各艦に1発だけ搭載して、遊弋させるようにしなさい。
 そのあと、ゆるゆると(フェイクでない)核弾頭の研究と、ミサイルの飛翔力強化をすすめればいい。宣伝で時間を稼ぎながらね。
 1艦に3基も4基も積載しようとしてはいけないよ。どうせ2基目を発射する前に撃沈されるんだから。
 しかし1基目の発射だけは、米軍だろうがシナ軍だろうが阻止はできない。SLBMとはそういうものなのです。
 中共はこれからどうするか? ASW(対潜水艦作戦)能力がシナ海軍にはゼロですから、「核爆雷」を使うしかない。
 つまり北鮮の潜水艦が拠点にしていそうな港湾とその沖合いにやたらめったら水爆を連投して水中で大きな核爆発を起こし続ける。この方法しかない。
 無数の戦術核弾頭で投網をかけるわけだ。
 そこまでやられたら北鮮のボロ潜水艦では、最初の1基目の発射も難しくなる。
 日本はこれからどうするか? おめでとうございます。有人潜水艦の時代は終わりました。
 核爆雷がどんどん降って来る海域で、有人潜水艦に尾行なんかさせてられないよ。
 水中ロボット(無人潜航機)に、「平時の監視」と「有事の制圧ミッション」を、託すしかないでしょうね。


朝夕めっきり涼しくなってしまいましたね

 Richard Fontaine記者による2016-8-24記事「Australia’s Ambivalence Makes It Vulnerable」。
  げんざい、豪州軍の二つ星将軍が、ハワイで、米軍部隊を指揮している。
 アンザック、カナダ、米、英は、「五つ目」と呼ばれている。情報共有同盟である。
 しかるに豪州の輸出の三分の一はシナ向けである(特に鉄鉱石は二分の一以上)。G-20諸国の中では最も対支依存率が高い。
 シナから豪州への投資も異常なレベル。最近では、ニューサウスウェールズ州(首都キャンベラが所在する)の電力網がそっくりシナ企業によって受注されている。普通の国はこんなことはさせない。
 豪州の大学や諸学校は5万人のシナ人留学生を受け入れている。豪州政府はこれを〈教育を輸出する産業〉だと称している。
 米国が追求する国際商業ルールを、豪州が平然と破るように中共が圧力をかける日が来るというのが、識者の恐怖である。
 北京は豪州の主力紙にシナ語の別刷り付録を印刷して無料提供するというスゴ技を行使中。豪州内拠点のシナ語メディアにも北京から有料広告を出してやって、それらの経営陣が北京の命令には逆らえないような関係を保っている。
 シナ系企業の在豪州の子会社も、せっせと政治献金をしている。
 国民は、じぶんたちを儲けさせてくれたシナを切ることができない。感情的に。
 豪州基地に米空軍は、爆撃機とタンカーをローテ駐留させたい。シナはもちろん反発。
 次。
 Patrick Tucker記者による2016-8-23記事「Boeing Wants to Patent a Fire-Fighting Howitzer Round」。
   ボーイング社が、山火事を消火できる「榴弾」を開発した。これを155ミリ榴弾砲から発射すれば、簡単に消火が可能。
 従来、883エーカーに燃え広がっている山火事を消火するには理論上、36万ガロンの消火剤が必要で、それを空から撒く作業には計算上、34時間以上かかってしまう。
 ところが34時間もあれば火は延焼するから、けっきょく3130エーカーが焼けてしまうかもしれないのである。
 1発の消火砲弾の中には1ガロンから6ガロンの消化剤が入れられる。射程を長くするためには1ガロンを詰める。短くていいなら6ガロンだ。
 その1発が、100平方フィートを消火する。
 3ガロン入りの砲弾を緩射し続けた場合、6時間で21万4000ガロンの消火剤を撒ける計算になる。これはヘリコプターによる消火作業の2倍の早さである。
 精度だが、射程が15マイルなら、狙った点から15フィート以内で空中炸裂する。
 2016年、全米ですでに32件以上の大山火事があり、400万エーカーが焼失した。
 ※とうとう対支抑止に関して役立たずなSPの再活用法が発見されたな!


レスリングで相手の両手がこっちの右手を掴んだら、柔術の「入り身投げ」で外せないのだろうか?

 CLYDE PRESTOWITZAUG記者による2016-8-23記事「Why the TPP Deal Won’t Improve Our Security」。
  記者を含むシンクタンク研究員たちがオバマ政権から直接にTPPについて説明を受ける機会が2009秋にあり、そこで記者は質問した。その時点で米国は7ヵ国と交渉していたが、その中には、ブルネイ、NZ、マレーシア、ベトナムという、すでに米国と自由貿易協定をむすんでいる相手が含まれている。何の意味があるんだ、と訊いた。
 答えは「地政学」だった。
 中共の威圧の前にこれら周辺国が「アメリカから放置されている」と思わないようにすることがTPPの大目的なのだ、と。アメリカから見捨てられると想像すれば、これら小国は皆、中共にとりこまれてしまうから。そう思わせてはならないのだ。アメリカの影響力の真空を作ってはいけない、と。
 そこで記者は反駁した。米軍が西太平洋域から去ったことはなかったじゃないか。第七艦隊が常駐しているし、東アジアと東南アジアには10万人以上の米兵が展開している。
 それにアジア諸国との貿易では米国は慢性的に赤字なんだから、自由貿易協定があろうとなかろうとこれら諸国が米国とはこの先何十年も関係を断つことができるわけがなかろうじゃないか、と。
 アジアに米軍がこれだけ展開していて、しかも、彼らの側に貿易黒字がありながら、それでもアジア諸国の指導者の気持ちが米国から離れるというのならば、そこにFTだのTPPだのをいまさらにつけくわえても、何の変化もありそうにはないじゃないか。
 オバマ大統領は一貫して、TPPは中共が未来の貿易のルールを決めることを阻止する道具なのだ、と語っている。
 中共は米国のTPPとは関係なしに、RCEP=地域包括経済パートナーシップ の協議を、韓国、比島、カンボジア、ラオス、タイ、インドネシア、ミャンマー、インドと進めている。
 ※インドネシアはTPP交渉に加わっていない。これはでかい。これから最も人口が爆発する有望国だから。水資源もガス資源も足りているし。
 そして中共が立ち上げたアジアインフラ投資銀行に、これらアジア諸国は皆、あらそって参加してしまったじゃないか。
 つまりTPPには中共が未来の貿易ルールを決定することを阻止する効力なんてぜんぜんないことが証明されてるんだよ。
 もうアメリカにはアジアに新たにオファーできるものは無いということなんだ。往年の「パックスアメリカーナ」時代には、アメリカはアジア諸国に恩恵的に米国市場へのアクセスをゆるしてやることで、みかえりにいろいろなものを引き出せた。米軍の駐留権だとか、米国企業による投資商売の自由だとか、外交的な対米協調などをだ。
 しかしそうした良き日々は終わったのだ。米国市場には関税はほとんどなくなっていて、残っているのは小さなハードルだけだ。米国のテクノロジーや知財も、世界を独占的に牛耳れるほど特段なものではなくなっている。つまり、いまや、米国そのものが、グローバルなサプライチェーンのひとつの環でしかなくなっている。
 いまやアメリカは、世界経済の中で、最大の消費市場、最大の借金市場としてのみ、その存在感が圧倒的なのである。結果としてアメリカ経済はカネの貸し手としての中共に依存すらしている。これが現実なのだ。
 そしてもしも米ドルが世界の基軸通貨でなかったならば、アメリカの国家財政はとっくに破綻しているのである。
 中共は、ラテンアメリカのほとんどの国、およびオーストラリアにとって、最大の投資国となっている。いまさらそれを引き剥がせるか?
 この中共の経済活動の勢いに再びアメリカが迫ることなしには、いかな歴史的経済合意(TPP)も、中共の勢力拡大にカウンターを当てることなどできはしないのだ。
 ※『NYT』にこんなオプエドが載るようでは、もはやTPPは完全消滅だね。それにつけてもなぜこういう論文が日本人の手によって2009年に書かれないのか? 日本の大学の経済学教育ぐらい無益、否むしろ人々を不幸に叩き落したものはないんじゃないか。いったい何十万人の「経済専門家」を無駄に育成してきたんだよ?
 次。
 ストラテジーペイジの2016-8-23記事。
   ロシア政府は、シリアやドンバスで戦士した将兵の遺家族には3万ドルの見舞い金を支払うと事前に約束していたのに、実際にはその支払いをしていないことがバレつつある。
 遺家族は、国家の秘密をバラせば訴追されたり、ありとあらゆるイヤガラセをされると脅されている。そこでインターネットで反撃に出た。モスクワの検閲をかいくぐって、真実が国外に伝えられた。
 むかしディスインフォメーションといっていたものは、いまはトロールという。
 ドンバス=ドネツである。しかし混同するな。ドネツクは、ドンバスの部分集合。だから「ドネツ ∋ ドネツク」である。
 ドンバスのロシア人比率は38%也。
 ※さらに余談。「ドン」とか「ドナ」とか「ドネ」「ドニ」はすべて「大河」に関係がある。ユーラシア地政学を学んだ人なら、これは基礎教養。
 ロシア政府は、外国人労働者を制限することで、国内失業率の増大をかろうじて防いでいるところ。
 殊にシベリアや極東では企業が外国人を雇用することはほぼ全面禁止されている。それだけ失業率が酷い。
 ※てことは北朝鮮人の出稼ぎもできなくなるわけか。
 8-22にイラン政府は露軍機はもうハマダン基地を使わないとマスコミリークさせたが、これはイランがロシアに高額の基地使用料を支払わせる作戦だともいう。
 ハマダン基地には「ツポレフ22M3」が10機ばかりやってきた。そこへの補給は、カスピ海をまず船で。そこから鉄道で。
 シリア内の基地のようにISから襲撃される恐れがないので、維持するのがチープで済む。
 ※バイデンがトルコを訪れる8-24の直前のタイミングで、トルコがインシルリク飛行場をロシア空軍にも貸したいとロシアに話していることを公表した。
 8-8にイスラエル政府公表。7-17にロシア製の無人機がイスラエル領空に迷い込み、これに対してパトリオットSAMが2発発射されたが、外してしまったと。
 ついで1機のF-16が邀撃し、1発のAAMを発射したが、これまた外れたと。
 そしてすぐにUAVはシリア領空に戻って行ってしまったと。
 UAVの所有者と運用者は当座は不明だったが、外交チャンネルで問い合わせて、露軍のものだったと後日判明した。
 ※これは無人機というより、超小型機や巡航ミサイルのおそろしいポテンシャルをまたしても証明したものだ。すなわち、〈ステルスは形状によって実現できるもので、サイズは関係ない〉というのは嘘で、やはり、サイズがものすごく関係する。サイズが無人機レベルに小さくなると、ただそれだけでも強度のステルスを実現してしまうのだ(熱の輻射量も小さいしね)。ファイアビーのサイズになれば戦闘機パイロットが目視で発見することはまずできないという話は『兵頭二十八の防衛白書2016』で紹介しておいた。え、まだ書店に出てない? もう私は知りません。
 次。
 「Germany mulls bringing back compulsory national service」という記事。
   ドイツ連邦の内務省が、徴兵の再開を検討中だとDPA通信社が報道している。
 郷土防衛隊のようなものらしい。つまり、対国内テロだ。
 ドイツ政府は2011年に新規の徴兵事務を停止している。しかし「兵役の義務」はドイツ憲法(基本法)に明記されたまま、変更されてはいないのだ。すなわちドイツの「徴兵制」は憲法上、今も一貫して存続しているので、国家が必要を感ずればすぐ復活できる。
 6月後半の国内連続テロを承けてバイエルンの内相も、ドイツ連邦軍を治安維持用に国内展開すべきではないかと提議した。


ブチキレ奉行 > 胴欲同心 > 与太与力

 ジェーンのDaniel Wasserbly記者による2016-8-19記事「THAAD’s capacity for intercepts in South Korea unclear」。
  米軍は韓国にTHAADを持ち込むことに決めたが、その高射大隊のランチャーを何両にするかが未定である。
 1個高射大隊は、M1075という車載式発射機を6両から9両、擁することになっている。各ランチャーは8発のミサイルをその車上コンテナに入れている。
 したがって最低定数の6両だったら全部で48発。もちろん予備弾の再装填も可能だが、ミサイルコンテナの取替えには30分を要する。
 なおこのTHAADを運用するのは米陸軍将兵である。韓国兵ではない。
 ※米軍はペトリオットなどの長射程SAMを陸軍に装備させる。しかし日本ではそれは空自の担当ということになっている。これにはいきさつがある。初期に日本ではSAMナイキの役割を、古い有人インターセプターを無人化するものだとして大蔵省に説明したのだ。
 THAADは大量生産されてはいない。2015-6時点で、メーカーのロッキードマーチン社は、トータルで100発目のTHAADミサイルを、米ミサイル防衛庁(MDA)に納品した。ぜんぜん数は足りないていない。MDAが、それを米国内外の陸軍の各高射大隊に交付する。
 げんざい、実戦展開中のTHAAD大隊は5個である。
 いずれの発射大隊も、最低6両のランチャー(=48発装填可能)を擁する。
 トータルで百数十発しか製造されてないのだから、これらの5個の大隊は定数を割り込んだミサイルを持っているだけである。
 早くとも2017年の後半にならないと、各THAAD大隊に48発づつのミサイルは行き渡らない。
 2017-4に上院軍事委員会の戦略戦力分科会にてMDA長官のシリング海軍中将が証言したところでは、FY2017においてメーカーは197発のTHAADミサイルを生産納入することになっている。※米国のフィスカルイヤー(予算年度)は10月に切り替わる。だから年の後半ということになるのだ。
 この予算案はまだ議会を通過していないし、じっさいにメーカーが約束を守れるかどうかも予断できない。しかしすべて思惑通りに進むと、4個の高射大隊がミサイル48発を満足に装備できることになる。その他に試射の分も必要である。
 次。
 日経英文ニュースの2016-8-21記事「Japan eyes fiercer fighter jets to counter China」。記者の署名なし。
 ※官庁記者クラブ経由の特種がわざわざ世間の話題にしづらい日曜日に発表されるということは、その官庁ではこの話を「はばかりある企画」「観測気球」「アリバイ広報」と認識していることを意味する。他方でこいつは英文サイトだから、シナ人インテリにはしっかりと銘記してもらいたいわけである。
 空自は200機あるF-15に吊下するAAMの数を倍化させて16発にするつもり。
 また疲労した主翼は交換して運用寿命も延ばす。
 2016-1に空自は築城基地のF-15スコードロンを那覇に移し、沖縄の空自F-15を40機に増強した。
 F-35が空自にもたらされるのは2017年度であり、しかも最初は三沢基地である。そこで米軍から稽古をつけてもらってからでないと、沖縄方面へは出せない。
 ※単機のF-35を先行空中指揮機(ISR & キュー出し任務)とし、それにミサイルキャリアーのF-15が3~4機続行して、アーセナルプレーンとして長射程のAAMをつるべ射ちする。こっちの4機で向こうの64機を屠れる。1日で60機損耗したら、第二波はありえない。でも、やろうと思えば今だって日本が独自に複座のF-15を改造してAESA搭載の空戦指揮機(兵装はぜんぶおろしてしまう)として超低空で先行させるという用法が可能なはずだ。


B-2とB-1をグァムに集めたのは、ムスダンに刺激された韓国世論が「核武装」でまとまらないようにするため。

 Seth Robson記者による2016-8-19記事「TPP opposition could affect view of US commitment to Pacific」。
    
 TPP=Trans Pacific Partnership は、U.S., Australia, Brunei, Canada, Chile, Japan, Malaysia, Mexico, New Zealand, Peru, Singapore and Vietnam の間で交渉されている。※韓国は入っていない。
 TPPは各国により署名された。しかしまだどこも批准していない。
 オバマ政権は、環太平洋地域がこれから最も経済成長するので、長期的にそこに軸足を移すべきだと見据える。そのための布石がTPP。
 4月、カーター国防長官は、TPP=経済は、空母の日本への1隻追加常駐などよりも、彼にとって重要だと述べている。
 シンガポールの首相は、ヒラリーもトランプもTPPに反対していることについて、7月に『WP』紙に対してこう語った。――それは米日関係を悪くする。TPPを米国が批准しないということは、対日防衛の約束だってあてにならないことを意味するからだ――。
 2012にヒラリーはTPPのことを、自由・透明・公平な貿易につながる貿易合意におけるゴールド・スタンダードだと持ち上げている。
 しかしバーニー・サンダース上院議員は2016-6-28に『NYT』にこう寄稿している。
 ――いわゆるグローバル・エコノミーなるものは、米国および世界の大衆のためになるものではない。それは経済エリートがこしらえた経済モデルであって、ただ単に経済エリートの利益にしかならぬのだ。……《中略》……わが国の労働者を、世界で最も低賃金で働ける労働者たちと競わせようとするものに他ならない。TPPは撃砕しなければならない――。
 一批評者いわく。ヒラリーが立場を180度変えたのは、大統領選挙前にTPPが連邦議会によって批准される可能性はゼロだと見切ったからである。
 在韓米軍については韓国は半額負担していると韓国人外交専門家はいう。そして韓国は、ヒラリーが大統領になっても韓国に負担分を増やせと要求するだろうと予測している。
 次。
 ロイターの Nobuhiro Kubo記者による2016-8-19記事「Japan eyes fighter drone, seeks record defense budget amid China assertiveness」。
   今月中に発表される防衛省の予算要求。その中に、無人偵察機および無人戦闘機の開発案が含まれている。まず10年で偵察機をつくり、そこからさらに10年かけて無人戦闘機を完成させるという。
 PAC-3は射程を30kmまで延伸する。
 次。
 ストラテジーペイジの2016-8-18記事。
  ロシアの新型「泥バイク」。沼地でも走れる「2×2」オートバイである。商品名は「タウルス」という。値段1100ドル。
 分解してSUVの荷台に収納できる。組み立ては5分で済む。
 このバイクにはホンダの「GX210」エンジンがついているが、もっと軽量化するために、チェーンソーのエンジンと交換することもできる。すると総重量が60kgとなり、人間が持ち運ぶこともできる。
 空中投下も簡単だし、小さなボートに積んでもいい。したがってコマンドー部隊は重宝するはずだ。
 タウルスの低圧タイヤは巾30センチ×径64センチ。これで人間の他に80kgの荷物を運べる。路上最高時速は35kmだが、湿地では人が歩くよりもずっと速く移動できるのだ。
 ローテクだけでうまくまとめてある。これはロシア人の得意分野である。
  ※これからの戦場トレンドが、有人/無人の自動2輪車であることについては『兵頭二十八の防衛白書2016』でお確かめください。
 別な記事。
   中共情報によると、この6月以降、国境を越えて逃げてきた北鮮軍兵士の体重が悲惨である。
 人数は総計十数人だが、誰も体重が50kg以上の者はいないという。あきらかに栄養が悪すぎる。
 今の北鮮では、国境警備隊員が軍人より優遇されている。それは、支給されている制服の品質や、太り方を見れば一目瞭然だという。


日本最初の「リヴォルビング・ドア」開拓者による新刊

 中央の官僚がエリートコースの国家公務員を辞め、民間でシンクタンク職員等となったあと、その研究や経験をひっさげて、ふたたび官衙で以前より低くないポストを得ることを「回転ドア」と称し、米国では野心的秀才のキャリアパスとして一般的だ。
 彼らは修士や弁護士から出発してこの回転ドアをなんども通交しながら次第に総合スキルを磨き上げて行政権力(最終的にはホワイトハウス中枢職)に近づく。
 しかし日本では官公署の次官・局長・課長・課長補佐についてのポリティカルアポインティ制が無いのと、「中央官庁そのものがシンクタンク」という構造もあるために、回転ドアの余地はこれまでなかった。
 ところが伊東寛[ひろし]氏は新例をつくった。
 近年急速に専門家需要が増しているサイバー戦争分野。どの官庁内にも「人材は間に合ってます」と胸を張れるほどな既製部署は存在しない。
 まして、身元がしっかりしているナショナルセキュリティ系の元公務員のハッカーとなれば超稀少である。
 そして政府は東京五輪の警備準備をいまから立ち上げねばならない。
 というわけで、陸自の電子戦部隊を率いていた伊東氏が、政府から頼まれてサイバー防禦の面倒を見ることになった。
 日本政府の仕事を請け負っているサイバーセキュリティの業界は狭い世界(おそらくほぼ全員が顔見知り)だ。伊東氏の身元保証によってリヴォルビングドアをくぐる人材は、これからも続くのだろうと想像される。
 快挙はいくつかの偶然のなりゆきにたすけられた。既存のセクションではなく、新設機関(室)であること。五輪のためとなれば財務省もケチなことは言わないこと。サイバーの戦場は高速に「進化」し続けているので、「官庁内新人育成システム」がこれからも当分は人材を供給し切れないこと。
 そんな伊東氏が原書房から新刊を出した。『サイバー戦争論』という。
 サイバー戦はもう平時から始まっている。しかも「守っているだけだと必ず負ける!」(p.98)と第一人者が言うのだから、読者のわれわれもぼやぼやしてはいられない。
 有効な報復策を考えねばならない。
 これについて有意義なヒントがある。『兵頭二十八の防衛白書2016』の277ページにおいて、ピーター・ナヴァロ教授が、――〈シナ製品不買運動〉は悪い保護主義ではない、正しい「自衛」である――と主張していることを紹介しておいた。
 私(兵頭)は、テロ戦争や経済戦争やサイバー戦争で「これは自衛だ」と言えるアクションはほとんどありえまいと想像する。たとえば「放火犯罪」に対する「自衛」って、聞いたことないでしょ? 「のぞき」(軽犯罪)に対する「自衛」も一般には起こり難いものだ。
 サイバー工作は、「のぞき」や「放火」に累次している。もし「予防」に失敗した場合、あとは社会による「報復(復仇)」があるのみなのではないか。
 イスラエル人やロシア人がしぜんに備えているような「永久に果てしなく続けられる報復活動」についての想像力が、庶民から政治指導者に至るまで、必要である。このセンスを持った者が「戦争のプロ」である。
 ナヴァロ教授は、米国が中共に報復できないのは、経済成長をシナ市場に依存するようになってしまったからだ、と論難している。
 しかしほんとうにそれだけだろうか?
 文学者の伊藤整が昭和28~33年に道破した如く、「善の強制の考え方」が、キリスト教圏人にはある。
 そのゆえに、いかに異質な文化圏であれ海外市場との関係を切れないのだ。イスラム圏や儒教圏から遠ざかるのではなく、かかわろうとする。乗り込んでアメリカ風に改造しようとする。それが可能だと考えている。
 しかし伊藤整が指摘したように、我々日本人は、他者から距離を置き、他者に害を及ぼさない状態をもって、心の平安を得る。他物の影響を物理的にも感覚的にも断つことによって安定環境を得たいと願っている。
 すなわち隣国との断交である。日本人にとっては、断交は善なのである。
 日本人は、「他者を自己と同一視しようというような、あり得ないことへの努力の中には虚偽を見出す」(伊藤整)。
 だから、国交断絶も苦しくはない。むしろ、そこにこそ平和がある。日本人にとっては、正直な道徳的発想だ。
 このことが、米国政府にも不可能な「対支オフセット報復エスカレーション」が、日本政府にのみ、容易に遂行可能であることを意味するのである。
 もちろん、全世界を「上下関係」でしか把握できず、強者から特権をちょうだいすることが自己承認だと心得ている儒教圏人にも「断交」されることは打撃だ。日本人だけが、断交を苦痛としない。むしろ快楽と考える。したがってシナ人は日本の断交戦略には対抗不能だ。
 日本政府は、中共発の違法サイバー工作を受けたと思ったら、フォレンジックな証明を待たずに、オフセット報復を発動することだ。具体的には、シナ人へのビザ発給を停滞させる。留学ビザも逐次に絞り込む。
 もちろん北京は報復する。それに対してはこっちも報復を段階的にエスカレーションさせる。徹底的に関係を減らして行く。大使もとっとと召還する。大使館は相互に閉鎖してもらって構わない。それでこっちは何の不都合もない。最後は日支交流ゼロとなることがまさに理想である。我々は儒教圏人の正体を知った。地理と気候が変わらない限り、彼らのビヘイビアも変わることはない。
 交流が制限されればされるほどに、シナ人の対日違法工作もそれだけやりにくくなって、我々が隣人からわずらわされる度合いは着実に減って行く。国交断絶に近づけば近づくほどに日本人の心は平穏になる。これが日本人の強みだ。強みを活かすのが戦略だ。
 どこの国家でも罪人は罰せられている。社会から罪が憎まれているからである。罪に対する社会のヘイトは正義である。
 われわれも人を憎まず罪を憎む。他者を上下関係の中に組み込もうとする儒教圏人のビヘイビアは罪である。他者の心の中まで踏み込んでくるキリスト教圏人のビヘイビアは罪である。
 罪の方から近づいてくるのならば、日本社会は反撃しなければならない。それを遠ざけねばならない。
 われわれが「断交戦略」を明確に保持してノートレランスでそれを発動したときにのみ、われわれの敵は怯み、サイバー攻撃を控えるであろう。すなわち、報復の脅しが攻撃予防に直結するのである。
 次。
 JENNIFER McDERMOTT記者による2016-8-18記事「US Air Force to change fire foam due to water contamination」。
  航空機のクラッシュ炎上を急速に鎮火させる泡消火剤として米軍は、PFOSとPFOAという二つのケミカル薬を使っているが、これが土壌に染み込むと地下水を汚染して住民のあいだに睾丸癌、腎臓癌、奇形児、肝臓病などの健康被害が出るおそれがあるというので、まず米空軍が率先して、これからは別な消火剤に切り換えたい方針。
 これらはすでに消火訓練でもさんざん使われてきた。
 代替する新消火泡剤は、PFOS(フッ素に、硫黄が化合している)を全く含まず、PFOA(フッ素と酸が化合している)もほとんど含まないものにする。
 PFOAは、民生品にも使われている。汚れがこびりつかないフライパンとか、シミのつかないカーペット、などにだ。またこの薬剤を製造している工場の近くの水道水からも検出されるという。
 ※この夏休みには嬉しい発見と悲しい発見があった。ニセコヒルトンホテル(昔はプリンスホテルといった)に隣接したニセコヴィレッジの「ツリートレッキング」は、最高である。あの金具とワイヤーケーブルのシステムを考えたスイスのメーカーに勲章を上げたい。身長110センチ以上の小学生から「初級」コースに参加でき、身長140センチ以上だと「上級」コースに参加できる(金具もハーネスも異なる)。上級コースでは、距離は短いが高度だけは十分の「ジップライン」もどきを体験できる。もしオンシーズンの休日に行くのなら9時台の前半から乗り込みたい。待ち時間が減るだろう。そして提案だが初級コースの中にボルダリングの垂直壁トラバースも取り入れたらいいんじゃないか? 樹木伝いにこだわらずに、左右の人工懸崖のキャニオン渡りだけでコース構成したっていいわけだよ。残念だった発見は、尻別川の混雑だ。ゴムボートだらけじゃねえか! あんなのラフティングとは言えんぜよ。まあ、一生に一回しかやらないという人たちは、すべてが珍しいので満足してくれましょうけどもね……。


トランプの他者攻撃キーワードはfailedという修飾語のようだ。

 JEFF HORWITZ and DESMOND BUTLER記者による2016-8-17記事「Trump’s campaign chairman tied to undisclosed foreign lobbying」。
  トランプ陣営の選挙事務所大幹部、ポール・マナフォートがプーチンの回し者である可能性が浮上してきた。
 米国の連邦法は、米国人ロビーイストが外国指導者や外国政党のために働く場合には、詳細な報告を司法省に提出することを義務付けている。この法律は、FARA(Foreign Agents Registration Act)という。
 FARAは外国代理人ロビーイストに次の登録を要求する。自宅住所、すべての領収金、支払い金、政治的な寄付金、電子メールやパンフレットやプレスリリースによってレクチャーしたことの詳しい内容。
 その記録は、連邦上院において保管される。
 違反すれば、最高で懲役5年だ。
 トランプは水曜日(2016-8-17)にベテランの共和党の保守戦略家×2名をアドバイザーに据えた。しかし選挙キャンペーンは依然としてマナフォートに仕切らせ続けている。
 マナフォートと、これまたトランプ選挙事務所の幹部であるリック・ゲイツは、2012年に、ウクライナ大統領ヴィクトル・ヤヌコヴィッチの政党の代理人としてロビー活動をしていた。ヤヌコヴィッチはプーチンに籠絡されてしまったため結局、民衆から追放された人物だ。
 マナフォートのロビー活動の焦点は、ヤヌコヴィッチが投獄している政敵を釈放しろという圧力を米議会がかけないようにさせることであった。
 関係した米国内のロビー会社は2つだが、うち1つは、民主党やクリントンとのコネが強力である。
 ポデスタ社の社主は、民主党の戦略家のジョン・ポデスタの兄弟なのだ。ジョンは今はヒラリーの選挙参謀である。
 もうひとつのマーキュリー社の経営者、ヴィン・ウェーバーは共和党の元連邦議会議員。ミット・ロムニーのアドバイザーも勤めた。
 上院に預けられているロビーイング公式記録によれば、上記2社は、113万ドルを、2012-6から2014-4の間に欧州から受領している。ロビー工作した対象は、議会、NSC、国務省など。
 ウクライナ政府は間接的に2社にカネを渡したようである。
 FARAにもとづいて訴追がなされることは稀だ。
 その稀な例がひとつ。ミシガン選出共和党代議士のマーク・シルジャンダー。スーダンのハルツーム事件に関して米議会にて違法なロビーイングをしたことを2010-7に司法当局に対して認め、1年間、刑務所で暮らしている。
 ポデスタ社はじつに手広い。日本、韓国、ベトナム政府も同社を利用している。
 マーキュリー社の顧客には、トルコ、カタール、UAE、ケイマン諸島政府などがある。
 ※韓国が利用しているロビー屋に日本の宣伝を頼んでいるとは、日本外務省は頭がおかしいのではないか?
 次。
 『兵頭二十八の防衛白書2016』の間違い。
○59頁4行目
 る。炸薬の
  ↓
 る、炸薬の
○73頁
 J-TAG
  ↓
 J-TAC
○161~163頁
 ドゥアルテ
  ↓
 ドゥテルテ
○182頁
 P-2
  ↓
 US-2
○302頁3行目
 無いことする特
  ↓
 無いことにする特
○323頁と418頁のキャプション
 ※チヌークは、3つあるフックのうち中央のを使えば、最大12トン吊れる。したがって軽装甲機動車も吊れる。ちなみにCH-53Eスーパースタリオンなら、ストライカーも運べる。受油プローブ付きの型もあるから、それで尖閣までかなりの重量物を空輸できる。
○341頁のルビ
 しやが
  ↓
 しやか
○381頁のルビ
 よし
  ↓
 ゆえ
○394頁
 このポット苗を畑に定植する時期は、
  ↓
 このポット苗を畑に定植する作業は、
 ――――以上、まだ発売されていませんが、お詫びして訂正します。


くっさいあきみつけた。

 Guy Plopsky記者による2016-8-2記事「How Russia Is Bolstering Missile Defense in its Far East」。
  ロシアがカリニングラードのSAMを大強化しおえたのは2016-1であった。
 2015年夏。カムチャツカ半島のペトロパヴロフスク基地、イェリゾヴォ基地、そしてSSBN基地のあるヴィリュチンスクを覆うべく、同地の海軍SAM連隊にS-400が行き渡った。
 露軍のSAM連隊は、3個の高射大隊から成る。
 2012年、ナホトカ港に近いプリモルスキークライに駐屯する第589SAM連隊の高射大隊のうち2個がS-400を受領している。
 2015年11月には、ウラジオストックに近い航空宇宙軍の第1533SAM連隊がやはりS-400を受領。太平洋艦隊司令部防空のため。
 2009-8の参謀総長の説明では、北鮮ロケットの逸れ弾や破片に対する防備としてナホトカにS-400を置いたという。
 北鮮が馬鹿騒ぎをくりかえすと地域の米軍が強化される。これがロシアの最も心配するところ。
 2016-5に露支は、合同でコンピュータ図上ミサイル防空演習している。ロシア側は中共と合同でBMDを構築してもいいと思っている。
 しかし道は遠い。S-400であってもICBMは迎撃できない。まして中共はS-400そのものも手に入れていない。まだS-300の段階。
 ロシアはS-500というものを開発中で、これは一層高性能なABMだというが、ICBMに対処できないことは変わらない。
 ロシアはBMDシステムを構築したくてもそのカネがないはずだ。※だから中共から開発費を引き出したい。PAK-FA/T-50の開発費をインドから引き出したように。
 ロシア内のシナ専門家たちはしきりに露支協同をそそのかす。しかし政治的にはそれはまったくリアリティがない。
 2015-3に「40N6」ミサイルの大気圏外迎撃テストが実施された。最大交戦距離は400kmで、射高は180kmと報じられる。
 ※ロシアはハイパーソニック長距離ミサイルを迎撃することに高い優先順位を与えているので、この「40N6」はS-400を対ハイパーソニックに用いるためのオプションなのだろう。
 S-500とやらは、最低でもこの「40N6」を発射できるシステムなのだろう。
 S-500は、モスクワやウラルのまわりに2020年までに38個大隊を展開する計画。
 「23560号計画」駆逐艦(リーダー型)には、艦対空システムとしてS-500を搭載するともいう。
 この計画艦は排水量17500トンで、ひょっとして核動力にするかもしれない。
 1号艦の竣工は早くて2023年だろう。
 短射程SAMである「Tor-M2U」は南千島に展開しつつある。
 2015-9以降、アラート任務についている。
 射程は12km、射高は6000mである。
 ハバロフスククライのゼムギ航空基地(第23戦闘飛行連隊)には2014から、スホイ35S戦闘機が配備されている。「フランカーE」ともいう。定数24機。
 しかし2015-12後半からそのうち4機は2016前半にシリアで作戦。
 ウラジオストックのツェントラルナヤウグロヴァヤ航空基地の第22戦闘飛行連隊には11機のスホイ35Sあり。
 ※この記者はポーランド系らしく、しかも台湾に留学したロシア通。
 次。
 ストラテジーペイジの2016-8-13記事。
   北鮮三代目はこれまで33発の弾道弾を発射した。これは二代目時代のすでに倍である。
 げんざい北鮮は年に50発以上、BMを製造中である。
 いまの保有総数である1000発を維持するには、そのくらいの量産を続ける必要があるのだ。
 北鮮製BMの8割は液燃。これは長期貯蔵に向かない。製造したBMは、10年か20年で使えなくなるので、その期限切れの前に試射で消費してしまう必要があるのだ。
 2012年以降、海に落下した破片を回収して分析し続けた結果、判明していること。北鮮のBMは2012以降ほとんど技術の改善がなされていない。各部品の設計は古いままで、ひたすら量産だけが続いているようなのだ。まさに社会主義工業の面目である。
 33基のBMの製造コストは、ひっくるめても3000万ドルであろうと見積もられている。つまり1発=91万ドル。1億円しないのだ。
 ※これに対してTHAADは1発が18億円。誰がそんなものを日本に買わせようとしているんだ?