リーマンショック並の災害にみまわれた以上、「消費税」なんて無いよね。

 Kim Tong-Hyung and Foster Klug記者による2016-4-19記事「South Korea covered up mass abuse, killings of ‘vagrants’」。
  ※日本の糞メディアと違って、『星条旗新聞』や『AP』は、真剣に他国民が直面する不正義や不幸を報道する。これもそうした調査報道。
 1988年の京城五輪の準備として韓国政府は1982から数千人のホームレス狩りを実施。多くは少年だった。収容所に禁錮された当時14歳の少年が32年後の今、「毎晩看守たちにレイプされました」「五年間奴隷労働をさせられました」「看守に殴り殺された男女の死体がゴミのように荷車で運び出されていました」と証言している。ただしこの男は背中全体に刺青のあるヤクザで、警察官襲撃事件で刑務所にも居たことあり。
 そもそも施設はパクチョンヒ政権時代に造られ始め、トータル36箇所。1986年時点で収容者数は1万6000人になっていた。
 うち、釜山の施設には4000人。
 大きな孤児収容所で、内部に20もの工房があり、木工、金属細工、衣料、靴などが無給労働によって生産された。回りは高い壁で囲繞され、大型警備犬と、棍棒を手にした看守が見回っていた。
 塀の上には割れたガラスが植えられていた。
 収容所には矯正室があり、死ぬほど殴打される。
 だいたい四日か五日に1人のペースで、殴り殺されていた。
 釜山では、死体は施設の裏手にある丘陵地帯に埋められた。
 強い収容者も弱い収容者をレイプし、食い物を奪った。
 強制労働は朝5時半過ぎから日没までであった。無給。
 成人収容者は、塀の外での土工に使役されることもあった。
 児童は、ボールペン作りや、釣り針作り。
 高級品っぽいドレスが縫製され、それは欧州や米国に輸出されていた。それは「Daewoo」社の商売であり、同社から指導員が派遣されていた。
 1970年代には、釣り針にテグスを結びつけたものが日本向けに製造されていた。
 この不良品が日本から返品されてきたことがあり、そのため2人の児童が酷く殴られた。
 欧米向けのスニーカーの靴底も製造されていた。
 過去に判明しただけでも1975から1986までに513人、収容所内で死んでいる。実数はもっと多いのは確実。
 釜山の施設は1988に閉鎖された。90年代に再開発のため近辺が掘り起こされたとき、100体前後の骨が出土。いずれも毛布でくるまれていた。土饅頭も墓標も無し。すなわち闇埋葬と思われる。
 その跡地は今、高層マンション街になっている。
 しかしまだ数百体は埋まったままのはずである。
 ※中共がTHAADの半島展開に反対する理由は、それに付随する高性能レーダーについてである。このことは、「北鮮には核ミサイルなど無い」という事実を中共が公的に認めていると白状しているにも等しいだろう。


Mr. McCain, we owe you much.

 David Larter記者による2016-4-15記事「John McCain is done pussyfooting around with China」。
  ジョン・マケイン上院軍事委員長が『FT』紙に寄稿し、オランダにある国際常設仲裁法廷がフィリピンの訴えを認める判決を下す直前に中共軍は南シナ海にADI(防空識別圏)を設定する等の反噬アクションを起こすはずだから、それを米国は「海洋の自由」作戦によって打破しろと訴えた。
 中共軍は、スカボロ礁に判決前に先手を打ってミサイルとレーダーを配備してしまうかもしれない。
 いずれにしても、米軍は、スカボロ礁沖に米空母艦隊を通航させる必要があるだろう。
 ※公船によるラミングをやってくる中共のグレーゾーン侵略に対しては、比島政府はそれを逆手にとった適切な戦術を取らねばならない。すなわち、ラミング1発でバラバラになるような小型の木造船を比島海軍所属艦として多数登録しておき、そこに機雷を満載してスカボロ礁上にズラリと並べる。シナ漁船や海警船が比島軍艦に意図的にラミングすると、比島軍艦は破砕し、たちどころに無数の沈底機雷が自動的にスカボロ礁EEZ内海底に撒布され、あとは漁船だろうが公船だろうがその浅瀬に近寄ることはできなくなる。水深の深いところではこの機雷は無効だが、シナとしては最終的に「砂盛り島」要塞をパラワン島近くに造成できなければグレーゾーン侵略の意味はないので、往生するのは中共側。比島政府は主権を安泰にすることができる。脆弱さが勝利の鍵だ。この沈底機雷には、木製の「翼」等を取り付けて、ストレートに真下へは沈降しないようにしておけば、適当な撒布界を得やすいだろう。


28日の第七師団の催しに出かけることにした。中島公園近辺で前泊します。17日の試験艦『あすか』は風邪が治って且つ気温が高ければ見学したい。

 Jonathan Kaiman記者の記事「China’s military has a new enemy: Disney’s ‘Zootopia’」。
  中共軍の発行している新聞が、ディズニーの新作3Dアニメ『ズートピア』はアメリカのプロパガンダだと非難。
 すでにこの映画は中共内で2億3000万ドルを稼ぎ出しているのだが……。
 南京にある政治研究所は中共軍がスポンサーである。その所属者が非難記事を書いた。
 どうぶつの町からオオカミのような肉食獣が消えてしまった。それをウサギ警察官とキツネの岡っ引き(二足鞋)が捜査する。意外な犯人は羊であった。
 ウサギにすら反撃はできる。どんな細民にもアメリカの夢は実現できる。これがメッセージだ。造反有理。悪の権力を打倒せよ。
 2015-1にシナ教育省は、西洋の価値観を肯定評価するものを大学のテキストとして使ってはいけないと示達した。
 2016-3にはシナ内務省は、街路、橋、ビル、不動産物件に、西洋風な名前を付けることを禁じた。
 2015-3には『ニッカンペキスポ』(Global Times)が、2014のウクライナ戦争、およびその前のアラブの春は、いずれも西側の価値が引き起こしたもので、西側の価値観はシナにとって「地獄への切符」だ――と吠えた。
 人民解放軍は、アメリカ製ゲームの『コール・オヴ・デューティ8』と『バトルフィールド4』に描かれている中共の風景が、遅れた原始的なものであることにも、たいへんにご不満なご様子である。
 ※要約すると阿呆らしい記事になってしまうけれども、このシナ人論説者が推定していることはなかなか深いのである。ハリウッドにとって中共はいまや世界第二のコンテンツ市場である。ところが米国の凄いところは、メジャーに頒布される作品の製作と輸出を決してレッセフェールにはしておかない。この方針は、第二次大戦前から一貫している。たとえばシナ人を悪役に描かないという中共ルールは呑んでも、それとは独立に、米国の敵(現今は中共、ロシア、イラン等だが、中共以外はコンテンツ市場としてほぼ度外視されている)を内側からひっくり返すような価値観メッセージを、枢要ないくつかの「大作」の中に、カットしようがないような方法でビルトインさせる。このテクニックは、今後さらに、ますます巧妙になるだろう。シナリオライター集団の技倆が高いので、高等な「検閲くぐり」が可能なのだ。


北鮮の「ベルリンの壁」はシナ国境にあったらしい。

 ストラテジーペイジの2016-4-12記事。
   北鮮でまたも金属供出運動。
 ノルマがあるので、人々は警備手薄な建設現場から鉄資材をかっぱらう。
 警備員としては退職軍人がよく雇われているが。
 高級人民の子弟の大学生がよく警備員にとっつかまって暴行されている。彼ら大学生は「動員」呼号の馬鹿らしさがよくわかっている。
 北鮮のリアルな指導層集団は、5000人くらい。
 北鮮では五体満足な男子は最低6年、長い者で10年、兵舎にいなければならない。
 しかし賄賂が横行し、平壌に近い部隊ほど腐敗高級子弟の兵隊で占められ、彼らの能力も忠誠も大いに疑問となっている。
 金日成誕生日に菓子パンを子供に配る、そのための小麦粉を、中共は今回は手続きにわざと時間をかけて、渡し渋っている。
 韓国の4-11発表。北鮮の大佐が2015に亡命している、と。偵察局の所属だと。
 偵察局は、シナおよび韓国内でのスパイを操縦する。
 任務は、脱北者の連れ戻し。シナ語が堪能。しかもシナ政府から活動許可を得ている。
 さすがにシナ当局は北鮮機関員の武器携帯まではゆるさないが。
 4-8に韓国発表。13人の北鮮人が韓国入りしたと。
 その数日後、中共がこれを公式に認めた。これは北鮮にとってショック。
 このレストラン従業員たちは、1ヶ月以上給料が遅配していたという。
 なんと給与の8割は税として北鮮政府がとってしまうという。
 つまり中共は脱北者の連れ戻しにもう協力しないというメッセージを送った。
 これが知れ渡ればますます多数の北鮮人が中共経由で韓国を目指すだろう。
 ※なるほど中共は、「東欧の壁崩壊」と同じことができるのか。脱北者をそのまま韓国に引き取らせればいいだけ。大混乱も起きずに、徐々に北鮮は衰滅して行く。
 このたび中共が輸入を禁じた北鮮の地下金属資源。これは例年、10億ドル以上の収入になっていた。
 2016-3-10に北鮮で貨物列車の脱線事故。東海岸。2両の石油タンク車がひっくりかえって中身が漏れた。
 こうした事故は漸増している。背景理由は、北鮮人民が「金属供出」のノルマを達成するためにレールの犬釘を抜いているからだと考えられる。
 次。
 Hyung-Jin Kim記者による2016-4-12記事「N. Koreans: Brutal work abroad better than life back home」。
 海外に出稼ぎに出ていた北鮮人が4人、それぞれの別な場所から韓国に亡命した。そのまとめ記事。※あきらかに韓国政府発の宣伝ニュース。
 4人のうち1人が女。
 大連の北鮮レストランで働いていた。その口は、倍率12倍だった。本職の教師を捨てて応募した。
 父は、その倍率を突破するため、70ドルの賄賂を払ってくれた。
 ウェイトレスはチップを着服すると目付け役の公安に殴られる。休日は月に1日だけ。
 客が体を触るのも我慢しなければならない。
 ※え? それのどこがシナ料理店?
 客が無理に進める酒も、飲み干さねばならない。
 ※それはウェイトレスなどというものではなくて、実質、韓国キャバ嬢なのでは?
 ノルマが果たせないときは、客とモーテルに行ってセックスしなければならない。その料金は650元=100米ドルであるという。
 この女性は客であった韓国人男性と今は韓国内で暮らしている。
 ※なんのことはない、在支韓国人相手の風俗店を北鮮は営んでいるのだ。
 北鮮からは、60000人弱が、50ヵ国に出稼ぎしている。主にロシアとシナ。既婚男性なら、まず逃亡しない。
 海外派遣労働者はだいたい3年で帰国する。そのあいだにアルバイトもする。
 シナでは工場かレストランに雇われる。ロシアでは森林伐採か建設現場。
 中東では土建。週に150ドルにはなる。
 やはり選ばれるには賄賂が必要。ある男は高級酒20瓶と、煙草30パックを賄賂にした。
 シベリアで材木をトラックで運ぶ仕事。
 伐採現場では倒木による死者が日常的に出ていた。
 死体は毛布に首から下をくるまれて、皆、小屋の中に並べられていた。低温のため、カッチンコッチンであった。
 クウェートで大工をした男は、「月120ドル」の約束が守られたことがなかったとボヤく。夜明けから深夜まで働かされた。鉄条網で宿舎が囲まれていた。しかしアルバイトもした。とにかく稼ぎたくて。
 バングラデシュやインドネシアから出稼ぎにきていた男たちは月450ドル得ていた。要するにそれだけの差額を北鮮当局がピンハネしているのだ。


インドは消滅したMMRCAをまたやりなおす気らしい。F-18とF-16Vを競わせるつもりだ。カーター氏もたいへんだな。ダッソーは怒れよ。

 Sud Korea Fahne記者による記事「Report of North Korean defector raises eyebrows」。
  ヨナップ新聞は、韓国政府密着メディアとして知られている。
 その特だねによれば、韓国内で情報収集する任務のスパイが、韓国に亡命申請したのだという。
 彼は、北が三代目になってから、二番目に高位の亡命者だという。しかしそう言っているのはこのヨナップだけなのだ。誰が信ずる?
 2015-6に、ヨナップは同じように、北鮮の化学者がフィンランドに亡命したと報じた。ところがそやつが語った「北鮮内の人体実験」とやらは、すべて嘘話であることが数週間にして判明した。『ヘルシンキ・タイムズ』の結論。
 それについてのヨナップの言い訳。平壌を貶めようとした一人のNGOの人物に騙されたニダ、だと。
 2012に平壌に初めてAPの支局を開設しているジャン・リーいわく。「韓国のメディアの質はスタンダードが非常に低いのです」。
 多くの報道はソースが匿名で、クロス・チェックを一切してません。
 ですのでわたしは同僚たちには、「韓国のメディアが北鮮について報じた内容は決して引用するな」と釘を刺しているんですよ。
 2016-4-8に似たような臭いのヘッドラインが踊った。中共の寧波で働いていた12人以上の北鮮レストラン従業員たちが、亡命して京城に向かった――というのだ。
 北鮮関係のニュースが専門のジャーナリスト、ハヨンチョイは、金曜日(4-8)に韓国の統一省が異例の(通例は月曜朝)記者会見を開くというショートメッセージを受信したので、また核実験でもやったんか、と色めきたった。
 ところがその会見場での発表は、件のレストラン従業員の亡命に関するものであった。参集した内外のジャーナリストたちは皆、唖然。
 これはとても胡散臭いのである。というのは、統一省は通常、新たな亡命者があったことについては、数ヶ月間は秘密にして、一切何も語らないものだからだ。まずそやつらが工作員(偽亡命者)でないのかどうかを訊問して見極めねばならぬためで、当然のことだ。
 チョイいわく。ほとんどの亡命事件では、一言のコメントも統一省から得ることはできません。亡命者が北に残してきた係累に災いが及ばぬように配慮しなくてはなりませんからね。
 つまりこの「亡命」劇は、政府と統一省による、間近に迫った韓国の「選挙」のためのバレバレの演出だったのですよ。――と、LAタイムズの特派員氏。
 ※ほぼすべての日本のメディアがこれにひっかかってたよな? それとも、「親北鮮の候補などに投票するなよ」と、親切に日本国内から韓国人有権者に呼びかけてやったのか? 間抜けしかいねえのか。


ズムウォルトは3隻とも太平洋に母港を定める、とカーター氏。訪印してまた大商談か?

 2016-4-9の新刊紹介記事「The Spies Who Saved the Space Shuttle」。
  宇宙からの偵察を管理しているNROは、空軍、海軍、CIAと人材がオーバーラップしている。
 彼らはNASAのスペースシャトル計画に反対であった。が、スペースシャトルを1回、救ってやっている。
 RowlとWhiteの共著、新刊ノンフィクション『Into the Black』にその秘話が載った。
 『コロムビア』号で初飛行したクリッペン操縦士は空軍とNASAの間で去就に迷ったがけっきょくNASAを選んだ男。
 じつはその第一回飛行、大ピンチ情況だった。
 そもそも1957-10-4にソ連がスプートニクを成功させたことで、大統領アイクが1958にNASA設置法案に署名している。
 有人宇宙飛行も1961にソ連が先んじ、米国は1年遅れて後を追った。
 それから有人月着陸で米国が逆転した。
 NROは有人大型偵察衛星(スカイラブの正体)から無人大型スパイ衛星キーホール・シリーズへシフトした。
 NASAのさいしょのシャトル・ミッションは1979に、スカイラブの故障を修繕するために実行されるはずだった。
 ところがタイルの剥離リスクが指摘され、1981まで日延べとなった。
 結果、1979-7にスカイラブは高度が低下して燃え尽きてしまった。
 第一回シャトル打ち上げは1981-4-12。周回高度は170マイルだった。
 その宇宙空間で、尾部のタイルが剥離しているのが視認できた。ここでNASAは難問をつきつけられた。
 機体底部のタイルも剥離しているかもしれない。しかしそれを目でたしかめる手段をNASAはあらかじめ何も講じていなかった。もちろんシャトルの底部には窓は無い。タイルがはがれていれば、再突入でバラバラになる。
 さりとて救助ロケットを打ち上げるというのものも、すこぶる難題なのだ。
 そこでNROが、キーホール・スパイ衛星の撮像機能を使ってシャトルの底部を撮影してやった。
 衛星はただちにヴァジニア地上局まで画像を電送。
 多数のハイレゾ画像によって、底部タイルは無問題だと確信された。
 空軍とNROは、シャトルはカネばかり喰う割には使い勝手が悪く、いいことは何もないと大反対の立場だった。つまりNASAとNROは限られた予算をめぐって敵対関係にあった。結局、空軍=NROが正しかった。
 NASAの当初もくろみでは、毎週1回、シャトルは打ち上げられるという触れ込みだった。しかし1981から2011までの間に、5機によって135回、飛べただけ。均すと12週間に1回にすぎぬ。
 シャトルによって重さ1ポンドの貨物を軌道投入するのに要した費用は、1万ドルになった。NASAは20ドルで可能になると言っていたのに。
 1986の『チャレンジャー』と2003の『コロムビア』の事故で、宇宙飛行士14人も死んでいる。
 このうちコロンビア号のケースは、打ち上げ時のデブリによるダメージが主翼内部を傷めていて、それが外側からの視察チェックでは確認ができず、いいだろうと思って大気圏に再突入したら、分解してしまったのだ。この惨劇は、1981の最初のミッションのときに発生していても、おかしくないものだった。
 同書が紹介していない現実。シャトル艦隊が退役した2011に、空軍は無人の小型シャトルであるX-37Bの初回打ち上げを果たしている。X-37Bも繰り返し利用ができる宇宙機体だけれども、もし空中分解しても、誰も死なない。
 ※半永久に軌道上にとどめておくこともできる。酸素と食料の補給なしで。
 X-37Bは、もちろんNROが推進しているプロジェクトだ。
 ※軌道をちょくちょく変更するので、衛星マニアもトラッキングできない。敵が予期していないタイミングで上空から撮影してしまえる。
 ※生物が進化してAIもこしらえるようになると最後はどうなるか? インナースペース、つまり究極には「実存」だけに関心が向き、アウタースペースに生身ででかけようなどという冒険には意味を見出さなくなるだろう。だから、すこぶる進化した宇宙生命は、わざわざ地球などにはやってこないのである。生物は死を恐怖し、生存の次に生殖に努力する。AIにはこの「実存」がない。ロボットには恐怖がないのである。死の恐怖や生殖の欲求がなければ、「支配」「征服」の必要も生まれない。
 次。
 ストラテジーペイジの2016-4-9記事「The Few, The Successful, The French」。
  フランスの艦上攻撃機シュペルエタンダールが退役した。
 10トンの「エタンダール4」を艦上機に改造して12トンにしたもの。兵装は2トン。
 フォークランド紛争ではアルゼンチン軍の所属機がエグゾセ空対艦ミサイルで英海軍のフリゲート×1、商船改造ヘリ揚陸艦×1を撃沈してみせた。
 フランスが1983にイラクへ貸与した5機のシュペルエタンダールのうち1機は、1984に米艦の撃沈一歩手前まで行った。
 イランの軍艦と間違えてエグゾセを発射したのだ。同艦は、大破したが、沈没はしなかった。
 けっきょく4機はフランスに返納され、4機はイランによって撃墜されている。


スーザン・ライスは習近平に「米支核制限条約」を提案する気だ

 Dan Lamothe記者による2016-4-8記事「Pentagon, top admiral deny claim of ‘gag order’ on South China Sea issues」。
 『ネイヴィー・タイムズ』紙によれば、水曜日(2016-4-6)、スーザン・ライスは、DCで開催予定の核サミットに習近平を招くのにあわせ、米軍太平洋コマンド司令官ハリー・ハリス提督をはじめとする軍人たちに緘口令を強いている模様。
 これに反発しているのはセクデフのアシュトン・カーターとハリス提督だ。彼らはオバマに自由に進言するつもりである。
 ハリスは2月にこう議会証言している。シナが東アジアの覇権をめざしていないとみなすためにはこの地球が丸くないと信ずる必要がある、と。
 カーター長官はこれからアジアを歴訪する予定。比島は訪れる。
 ※ところが今日の速報によれば、カーター氏のシナ訪問はキャンセルされた。これはライスがカーター抜きでどでかい提案を中共相手にするつもりだからだろう。オバマ政権末期の最後の大仕事としてじぶんの手柄を歴史に残しておきたいと画策することは十分に考えられる。
 次。
 Kelsey D. Atherton記者による記事「Millimeters-Thick Metal Foam Armor Obliterates Incoming Bullets」。
 M1ライフルの高速弾を表面で粉砕してしまう、厚さ1インチのとんでもないボディーアーマーが試作された。
 ノースカロライナ州立大学のラビエイ(Afsaneh Rabiei)教授(♀)が開発した。
 表層に、炭化ボロン・セラミクス。中層が、泡状のコンポジット・メタル。そして裏面は強化アルミ合金7075もしくはケヴラーの板である。あわせて厚さは1インチ。
 そこに7.62mmNATO弾を撃ち込んでも、わずか8ミリの凹痕がつくだけだという。
 ※これは表面が硬いから、そのまま防刃ヴェストにもなるわけだ。すばらしい。


不倫不休。

 David Hambling記者による2016-4-4記事「Raytheon’s New Radar Tech Could Realize the Pentagon’s Pain Ray」。
  アラバマ州のハンツヴィルで陸軍展示会があり、そこにレイセオンが、窒化ガリウムでレーダー波をつくるという、ペトリオット用の新システムを出品した。
 すなわちソリッドステートレーダー。
 もともとレーダー波は、真空管から生み出されていた。電子レンジの中にあるマグネトロンはその類似品である。
 その後、トランジスタ類似のソリッドステート・エミッターからレーダー波を発生させてやろうという研究が進んだ。わかりやすくたとえると、LEDチップの光の代りに電波が出てくる素子だと思えばよい。
 このような半導体としてはガリウム砒素が知られていたけれども、出力が低いのが難点であった。
 そこでレイセオン社は、2億ドルと17年の歳月をかけ、窒化ガリウムのチップをレーダー出力源にする目途をつけた。
 ガリウム砒素よりもハイパワーで、変換効率が良い。
 また意図した信号の副産物である電波ノイズも少ないので、レーダー用としてはまことにすぐれている。
 このチップを並べたフェイズドアレイを2枚、裏表に張り合わせておくことで、機械的な首振りをさせずに、360度の自在な監視ができる。
 これからの戦場ではミサイルだけでなく無人機のスウォーム(群蜂)が相手となる。それに早々と対応しようというのだ。
 開発はレイセオンが自己資金でなしとげた。過去2年、試作品を米陸軍に評価テストしてもらっている。陸軍が希望しているペトリオットのアップグレードに使えるかどうか。
 開発は、量産化移行一歩手前の段階まで漕ぎ着けた。
 窒化ガリウムにとりくんでいるのはレイセオンだけではない。サーブ社もスウェーデン軍から昨年、窒化ガリウム・レーダーの開発を受注し、その一線配備は2016年中だという。
 サーブ社の技師も、窒化ガリウムはレーダーの革新だと絶賛する。探知距離は増すのに、機器のサイズは却って小さくなるのだから。
 窒化ガリウム・レーダーは、人体の表皮神経だけを刺激して、いかなる我慢強い人間もその場にいたたまれなくしてやる、非致死性の「痛撃信号ビーム」砲の普及にも道を開いてしまう。そんな危ない道具が世界中に普通に出回るようになるという未来はすぐそこまで来ている。
 「アクティヴ・ディナイヤル」という商品名で痛撃信号ビーム砲はすでに存在するが、素子が極低温冷却を要する「ジャイロトロン」は使用開始までの準備に3時間以上もかけねばならぬ面倒なもの。しかもサイズが貨物コンテナ大なのだ。最新の「システム2」でも1セット9トン。大型トラックでないと持ち運びもできない。
 これが窒化ガリウム応用となったら、サイズは冷蔵庫なみに減る(36立方フィート)。ピックアップトラックでも運べるし、既存の装甲車の天蓋部に増設してもよい。
 準備時間はゼロ秒。車両を走らせながらでも、照射ができる。有効射程は将来は1kmを超える見込み。
 群集の中のテロリストを咄嗟に麻痺させたいときに、この痛撃信号ビームを躊躇なく使うことができる。
 また、遠い位置の敵スナイパーに、その仕事の達成を断念させることも、痛撃信号ビームなら、可能だ。
 要人を護送する車列の行く手を邪魔する大暴徒群にこの痛撃信号ビームを照射してやれば、群集はたちまち左右に逃げ散り、1本のクリアーな王道が前方に顕われるであろう。
 ちなみにアクティヴディナイヤルの初期製品は2007に米軍がイラクに持ち込んだものの、敵の悪宣伝に利用されるだけだという問題点に気付いて、一度も使われなかった。
 米軍は、AC-130ガンシップにこの新型アクティヴディナイヤルを搭載できないかと研究中である。空対地の運用だ。ドローンに搭載することも検討されている。
 いまから70年前、レイセオンの技師パーシー・スペンサーは、ポケットの中の、ピーナッツを棒状に固めたスナックが、軍用出力のマグネトロンに近づいたときに溶け出すという現象を偶然に目の当たりにした。これが「電子レンジ」の発見であった。
 次。
 Seth Robson記者による2016-4-5記事「Kevlar or plastic? New armor lighter, provides same protection」。
  とうとうケヴラーの時代が終わる。2019年、米軍の防弾衣素材は、軽量なポリエチレン(プラスチック)に代るのだ。
 今の防弾戦闘上衣よりも25%軽いのに、防弾力は等しい。これで兵隊の腰痛が軽減される。
 しかも可撓性。
 ヘルメットも、このポリエチレンになる。
 ※未来戦場はどうなるのか? まあ、〈ディープラーニングAIと結合したナノテク3Dプリンターによる無人スウォーム軍団〉――でも考えておいたら、たいがい不覚をとることもないだろう。それが「動くIED」として運用されたら? 誰もそんな戦場には入っていけなくなる。小型で、スマートで、しかも「チープ」。それによって重厚長大高額兵器が無効化され、大国の覇権を拒絶してしまう。そういう流れだね。


「読書余論」 2016年4月25日配信号 の 内容予告

▼料治[りやうぢ]花子『子子挺身記』S19-9
▼古川隆久『戦時議会』2001
▼『海軍中攻史話集』つゞき
 ※またしても途中まで。内容濃すぎ……。
▼防研史料 『飛行機用各種弾薬効力基準表』
 独、英、伊、米の爆弾の諸元あり。
▼防研史料 『爆弾要目表』 〔ハコ27〕
▼『連合艦隊 海空戦 戦闘詳報 17 特別攻撃隊 戦闘詳報 I』アテネ書房
▼『連合艦隊 海空戦 戦闘詳報 第18巻 特攻 II』
 ※『大和』の詳報。
▼『日本海軍航空史(1)用兵篇』時事通信社 S44pub.
 ※この時代で1冊5000円、初版1000部というすごいモノ。
▼『日本海軍航空史(2)軍備篇』時事通信社 S44pub.
 ※本書では爆弾の生産総数のことは分からない。
▼『日本海軍航空史(3)制度篇』時事通信社 S44pub.
▼土肥一夫・他ed.『海軍 第一三巻 海軍航空 航空隊 航空機』S56-9
 ※途中まで。つゞきは次回。
▼『今昔物語』つゞき
 巻第28末尾~巻第29の途中まで。
▼フュージョン・エネルギー財団著、矢沢事務所tr.『ビームディフェンス』1984-6、時事通信社pub. 原1984、原著副題 An Alternative to Nuclear Destruction.
 ※ふたたびレーザー砲の時代がやってきたようだ。第二期レーガン政権が1983にブチあげたSDIでは、ビーム兵器はすぐにも実用化するようなことを宣伝していた。それがじっさいはどうだったか、われわれはその後の経緯と照合することができる。今、往時の資料を熟読すると、とても興味深いことに気付く。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
 過去のコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
http://www.budotusin.net/yoron.html
 で、タイトルが確認できます。
 電子書籍ソフト対応の「一括集成版」もできました。詳細は「武道通信」で。
 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
sugiyama@budotusin.net
 へどうぞ。


浜松に投下されたという「缶詰爆弾」についてのリサーチ報告。

 3月26日の会場で「罐詰爆弾」について訊ねられましたが、遺憾ながら「わかりません」としかお答えができませんでした。
 わたしがその名称からすぐ連想をいたしましたのは、一種の謀略兵器です。つまりわざと食品の缶詰に似せた物を落としておいて、それを拾う人間を殺傷しようという、悪意に満ちた兵器。1980年代のアフガニスタンの山村に、ソ連軍がヘリコプターからバラ撒いたとされる「玩具の人形爆弾」「文房具爆弾」みたいなものですね(子供が拾うと爆発する)。
 本当に米軍がそれに類するものを第二次大戦中に敵国に落としたのか? 世界に公表されたら米国の名誉が傷付くだけと予見できるのに? ……すいません。わたしの先入観のフィルターがそこで働いてしまいました。
 じつはそういった過去のさまざまな謀略兵器については、今日ではインターネットの普及のおかげもありまして、ほとんど、史実は白日のもとに曝されているのであります。まして、現物を落としたのであれば、何十年も隠し通し続けることは不可能であろうと思われます。
 もし「かんづめ爆弾」が米国内で製造されたのであれば、大概、資料がヒットするはずだ。
 そこで「tin can」(ブリキ罐)をキーワードに挿入して、英文ネットをあれこれ捜索してみましたところ、ある事実を承知することができました。
 バタフライ・ボム(蝶々爆弾)と綽名された対人用クラスター爆弾があり、それを第二次大戦末期に米海軍が使っているようなのです。この外見が、罐詰に見えなくもありません。
 蝶々爆弾の開発者はドイツで、1940年に英本土を空爆するときに「SD2」という子弾を集束投下したのが初使用です。
 子弾は1個が2kg。集束コンテナ内に6個から108個を詰め、コンテナごと投下し、それが空中でバラけました。
 子弾SD2は、長さ8センチのシリンダー状で、外殻は鋳鉄製。
 落下中に展開翼が反時計廻りに風圧でスピンし、10回転すると信管がアームド状態になる。
 缶形の爆弾本体には225gのTNTが充填されていました。
 信管には三種類あって、アームド状態になってから5秒で空中炸裂するか、もしくは着地のインパクトで起爆するもの(どちらかを選ぶスイッチ式)。
 最大30分までセットできる長延時時計信管。
 そして、着地後、動かそうとすると起爆するブービートラップ信管。
 なんでそんなものを考えたのかというと、敵の航空基地にバラ撒いて、その基地機能をできるだけ長時間、妨害してやるためのようです。
 翼が錆びて失われると、ブリキの缶詰のようにも見えたそうです。
 英国ではこの子弾による被害を報道統制しました。ドイツに、有効な兵器だと知らせないためです。
 しかし英国人は、回収した不発弾のリバースエンジニアリング(分解模倣)を早くも1940年から実施していたようです。
 おそらくそれが、真珠湾攻撃後に英国に進出してきた米軍関係者から着目され、技術情報が譲渡されたのでしょう。あるいは北アフリカで米軍も現物を取得したかもしれません。
 地中海のマルタ島ではこの不発弾を金槌代わりにしていた男が1981に爆死しているそうです。
 そしてウィキペディアによれば、米軍もこのドイツ製のSD2をコピーし、第二次大戦中に使いました。それを「M83」子弾と呼ぶそうです。
 そこで、米海軍が1944年5月31日に制作したマニュアル『NAVORD OCL AV14-44』を見てみましょう。ネット上にあります。
 M83子弾は、重さ4ポンドである。これを、100ポンドクラスター爆弾、または、500ポンドクラスター爆弾の殻に詰め込んで投下する。
 子弾にはTNTが7オンス入っている。
 径は3インチ。長さは3.25インチである。
 100ポンドクラスターには子弾が24発入る。
 500ポンドクラスターには子弾が90発入る。
 信管には、三種類ある。
 クラスターから放出されたあと2秒~2.2秒で空中爆発するか、さもなくば着発させる、切り替え信管。
 クラスターから放出されたあと3分~30分で爆発する時限信管。
 着地したところでアーミング状態になり、それから誰かが動かせば起爆するブービートラップ信管。これはM131信管である。
 この三種類の信管をまぜこぜに装着して投下することを推奨する。
 ただし、エアバースト・モードは使わぬこと。
 また、味方地上兵が進出する予定地へはM131信管をつけては投下しないこと。
 投下高度は、5000フィートより低空、2000フィートより高空とせよ。5000フィートならばクラスターはリリース後8秒でばらけるように。2000フィートならば、リリース後5秒でばらけるようにする。
 このマニュアルの添付写真は1944年1月に撮られています。米海軍は昭和19年6月以降ならいつでもこの「罐詰爆弾」を対日戦で使用できたと考えられるでしょう。
 昭和20年に浜松の陸軍飛行隊の飛行場を狙ってM83を落としたのだとすれば、納得もできます。
 どうやら、謀略兵器ではなく、当時としては合法的な爆弾のひとつであった――と、考えていいのではないでしょうか。
 おかげさまで、またひとつ勉強させていただきました。