「経済発展の不均衡は 恐慌と戦争によってしか均されない」by レーニン

 David N. Livingstone記者による2015-12-4記事「Stop Saying Climate Change Causes War」。
  英国のチャールズ皇太子が11-23にスカイニュースのインタビューに答えて、シリア内戦と気候変動とを結びつけていた。
 5~6年続いた旱魃が内戦の大きな原因だというのだ。
 米大統領選挙に出るつもりのバーニー・サンダースも、その数週間前に、テロリズムと気候変動は直接の関係があると語っている。彼に言わせると、気候変動こそがこれからの米国の最大の脅威なのだそうだ。
 『気候戦争』の著者グイン・ダイヤーは書く。地球平均気温が1度上がれば、失敗国家の数がそれに比例して増える。それが紛争と戦争を呼ぶだろう、と。
 こうしたセンセーショナリズムのさきがけは、2007年放映のナショナル・ジオグラフィックのテレビスペシャル番組『6度で地球が変わってしまうぞ』だったかもしれない。
 このドキュメンタリーいわく。平均気温が摂氏2度上昇すれば、ボリビア人は都市から郊外へ脱出せざるを得なくなる。なぜなら飲み水が足りなくなるからだ。平均気温が4度上がると、世界中で経済破綻と紛争が始まり、暑さから逃れようとする難民が、北ヨーロッパやニュージーランドを目指し始める。1度上がるごとにそうした現象が拡大して行く……んだそうである。
 もっとさかのぼると、1988-6にトロントで開かれたコンヴェンションが、大気変動の科学研究と国際安全保障政策をストレートに結びつけさせた。簡単に言うと、各国政府は軍事政策研究に投じている予算の一部を気候学者の給料に回してください、と訴えた。
 2007年に英国のベケット外相(♀)は国連安全保障会議にて、気候変動問題=安全保障問題だと演説した。
 軍事シンクタンクのCSISとCNASもリポートを出した。いわく。気温が2.6度上がれば、宗教とイデオロギーが社会をモラル革命におとしいれる。5.6度上がれば、終末信仰カルトが勢いを増し、移民とマイノリティは攻撃され、資源をめぐって国内外で紛争が激化しよう、と。
 今日流行のキチガイたちにはちゃんと先輩がいるので紹介しよう。1867年にジョン・ウィリアム・ドレイパーさんは『米国南北戦争の歴史』という本を上梓した。ドレイパーさんは1850年から73年にかけて、ニューヨーク大学の医学部大学院を総攬しておられた御方である。この人にいわせると、南北戦争の原因はただ一つ。南部と北部では気候が違ったから――であった。北部は気候的に奴隷を受け入れず、また気候がユニオニズムに人心を誘導するのだ。南部は気候的に奴隷農業に向いていた上に、気候が人々を分離独立志向にしていたのである……と。
 暴力や不法や反道徳が、ぜんぶ天気のせいにできてしまう。今進行しつつあるブームはこの政治的無責任レトリックに乗っている。
 正気の人々もいる。
 コロラド州立大学の研究チームや、オスロの平和研究所の研究者は、アフリカの内戦はぜんぶ気候が原因だとするきちがい理論に反論している。


ダーク・ルネッサンス

  ストラテジーペイジの2015-12-4記事「Korea: Rooting For The Assassins」。
  三代目を爆殺しようとしたプロットが露顕した――と、ここ2ヶ月間、北鮮内ではもっぱらの噂だ。
 三代目がウォンサン国際空港を視察する予定が、直前になってキャンセルされた。それは、空港建物の天井裏に爆発物が仕掛けられているのが発見されたためだという。
 十年前に北鮮では「三頭の熊」とかいう幼児用の歌謡が作曲されたのだが、さいきん、党幹部のティーンエイジャーの息子たちは、これを「熊三代のつづけて大失敗」とかいうプロテスト・ソングに改変して、その替え歌を流行らせている。
 北鮮の少年たちのあいだでは、文字も文章表現も発音もすべて韓国風にするのが流行している。世界で〈韓流〉がじっさいに存在するのは北鮮内だけのようだ。
 北鮮には結婚仲介屋というのがいるのだが、彼らマッチメイカーたちが感じていることは、いまや北鮮内の社会ヒエラルキーには革命が起こった。
 すなわち、かつては北鮮では、亭主の人気職業としてランキング1位だったのは、秘密警察幹部や外交官だった。それが女たちにとっては理想の旦那だったのだ。だが今では違う。韓国に在住している脱北済みの親戚から定期的にまとまったドル紙幣が送られてくる密輸屋の男こそが、理想の夫像に成り上がった。
 北鮮内での権力関係が逆転したのである。ながらく、北鮮国内では秘密警察がいちばん威張っており、外交官だけが外国文化にアクセスができたのだ。が、それは過去の話になった。今日では、国内では警察だろうと誰もカネモチ(闇屋のボス)には頭が上げられず、カネさえあれば外国のものは何でも手に入る。
 新興カネモチ階級は、賄賂によって、全国民が定期的に強制されているはずの農村や土木工事現場での勤労奉仕週間も、完全に免除される。この免除特権は、ほんらいは、病人と老人にしかないものなのだが。カネが法律となっている。
 2015年上半期の中共と北鮮の交易額は、前年同期とくらべて14%減少した。
 中共から北鮮への投資額は、2013年の実績とくらべて現在は2割未満に落ち込んでいる。これは2013に「核実験」があったため。
 2015-11-11、北鮮は国連制裁にもかかわらず、「防爆仕様の装甲ベンツ」を1台輸入することに成功した。三代目を狙うIEDに耐えてくれる。車内には冷蔵庫付き。
 自動車や大型液晶テレビなどは贅沢品とみなされ、国連は北鮮がそれを輸入することは許さないとしている。しかし三代目はそうした贅沢品をいろいろと輸入して特権階級に配ってやらないと、政治生命が保てない。
 ロシアと北鮮は11-26に合意。相互に、逃亡者を国籍国の官憲が追捕したり、本籍国にすみやかに連行することに、協力する。
 ただし露側から北鮮領へ逃げ込むロシア人などほとんどいないので、これは北鮮人が大量にロシア領へ脱出していることを示している。
 また2015-12-1にロシアと北鮮が合意。ロシアは北鮮に電力を売る。ロシア国内で、北鮮国境までの送電鉄塔の建設を開始する。しかし給電が実現されるのは、今から何年も後になるであろう。


「読書余論」 2015年12月25日配信号 の 内容予告

▼防研史料 軍令部臨時欧州戦争軍事調査部『第二次欧戦調査資料 戦訓及所見竝ニ参考資料 第六輯』S20-4-9
▼防研史料 柴田文三中佐『基地航空作戦ニ関スル戦訓』
▼防研史料 海軍航空本部『戦訓資料(航空)』S20-9-25
 日本の戦闘機第一主義は、「空中戦第一主義」。米のは、「戦闘機万能主義」。すなわち、戦爆であり、戦偵であり、局戦であり、夜戦もこなしたのだ。
▼防研史料 『一八九二来欧州諸国現用野山砲兵』
 原題“L’ARTILLERIE DE CAMPAGNE ET MONTAGNE DANS LES ETATS DE L’EUROPE” これをM26-9-25に訳出。
▼R・M・コナフトン『ロシアはなぜ敗れたか』邦訳1989
▼大江志乃夫『日露戦争と日本軍隊』
▼堀元美『帆船時代のアメリカ』朝日ソノラマ
 ※上巻の途中まで。
▼『海軍 第四巻 太平洋戦争への道』S56
 ※後半。
 第四艦隊が襲われたS10-9-26の三陸沖台風に匹敵するものは、S19-12-18のルソン島東沖で米第三艦隊を翻弄した台風だけだろう。
 台風の目が通過した直後に逆風によって異常な三角波が立つ。このくらいの極限状況になると、もはや乗員には1人の船酔いも発生しない。
 海軍直轄の傍受基地、東京電信所大和田受信所。S12-7-10に北京在勤の米国海軍武官からOPNAV(米海軍作戦部長)宛てのP電=緊急信を傍受した。解読してみると、当夜19時を期して宋哲元の二十九軍の青年士官が現地協定を無視して日本軍を攻撃するという。陸軍省へ伝えてやったが、陸軍省の「副官」が信じずに、握り潰された。
 S15年・海戦要務令・続編・航空機の部・草案。「開戦劈頭における第一撃は奇襲成功の算大なるのみならず、その成果は爾後の作戦の成否に影響する所大なり。先制の利を獲得し敵の不備不意に乗じ速かに敵航空部隊主力を撃破するを要す。」※国際法を破れと規定しているに等しい。作戦あって戦争なし。
▼山内進『北の十字軍』1997-9
 ※マッキンダーのドイツ脅威論を理解するのにこんなに役に立った資料は無いです。そして今日では地球気候変動原因説で十字軍運動の多くが説明できるように思います。
▼三浦權利[しげとし]『図説 西洋甲冑武器事典』2000-2
 ローマの騎兵は、馬鎧を、Cathaphractes(ラテン語で、カタフラクテース)と呼んでいた(p.199)。※これが日本語の「かたびら」の語源ではないのか? 裏をつけない布製衣類の総称として、早いのは『枕草子』33、説教の講師の服装として「かたびらいとあざやかにて」と出る。
▼藤井嘉雄『松本藩の刑罰手続』H5
 江戸時代の武家では、10歳までを「幼少」、11~17歳を「若年」という。
 庶民は、15歳未満を幼年、20歳までを少年、30歳までを若年とした。
 幕府の文書で「以下」とあるときは、現今の「未満」の意味であった。
 量刑が「遠島以下」ならば、遠島は含まれないわけである。
 伊豆七島は、近いところから開発が進んだ。そのため寛政年間には、三宅、御蔵、八丈しか流刑適地はなくなった。幕末にはその三島も取締りが不安になって、文久3年からは蝦夷地と隠岐のみに。
 遠島は絶対的不定期刑であって、受刑者をして社会復帰の期待性をもたせるというような刑罰ではなかった。ただひたすらに「赦」を待つだけ。ただし原則として20年未満では「赦」はありえない。
▼経済雑誌社pub.『国史大系第十六巻 今昔物語』M34
 ※巻第26の続き。
 利仁将軍若時従京敦賀将行五位語。※有名な「芋がゆ」のエピソード。学校の古文の教科書ではわからないが、長芋1本持参を命じられた住民たちは厭々やってるのではなくて、京都の貧乏貴族の客人の様子を見てみんなで面白がっているのである。けっきょく芋粥は彼らが平らげることになるのだから誰も骨折り損とはなっていない。おそらくこの話が古文でよくとりあげられる真の理由は、貴族の時代が終って地方を自力で開発している武士が駘頭してくる、国家社会の変わり目を、マルキスト史観によって示したいのである。前後をカットすると利仁はただの暴君で、住民もただ搾取されている存在のように見える。新興階級が新しく駘頭するのは、それが上下から歓迎されたからこそなのだ。貴族は何の能もないのに収賄によって潤い、農民も生産力余剰の恩恵を蒙っている。そこを読み取らないといけない。
▼大原 雅ed.『花の自然史――美しさの進化学』1999-3
 コウモリと蛾は、鳥よりも遅れて森にデビューした。だから鳥から食われるおそれがあり、それを避けるために夜行性化した。
 植物は、日照の長日化や短日化を15分単位で感知できる。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
 過去のコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
http://www.budotusin.net/yoron.html
 で、タイトルが確認できます。
 電子書籍ソフト対応の「一括集成版」もできました。詳細は「武道通信」で。
 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
sugiyama@budotusin.net
 へどうぞ。


ANNE MURRAYの「ア・リトル・グッド・ニューズ」を聴く。

 ストラテジーペイジの2015-11-29記事「Russia: Cold War Weirdness Returns」。
  露軍機は当初、ISを爆撃しないでいた。ISがロシア民航機に対するテロをエジプト上空で実行したのだと11月前半に判断してから一転、IS爆撃に注力しつつある。
 フランス軍機は対IS空爆に関しては露軍と同じROEを採用した。すなわち、ヒューマン・シールズは無視する。
 露軍はISのファイナンスにターゲットを絞っている。すなわち石油生産とトルコへの密輸出だ。
 露軍は米、イスラエル、フランスと戦地協定を結んでいるが、フランスとの協定は独特である。単に味方射ちを予防するという以上の協定。
 しかしフランスの方としては、あまり露骨にロシアと共闘することはできない。というのはウクライナ侵略について対露制裁中なのだし、ロシアが「ISは米国の発明品」と国内宣伝していることにも同意するわけにいかない。
 ロシアの主張。アサド政権は国連から認められたシリア唯一の政権である。そして露軍はそのアサド政権から招かれてシリアに駐留しているのだ。
 ロシアがトルコ機をSAMで撃墜できないのは、トルコと全面対決になればダーダネルス海峡を封鎖されてしまい、シリアに海からアクセスできなくなるためだ。
 そしてプーチンには分かっている。シリアで露軍はNATO軍とは勝負にもならないのだ。
 トルコ国境を支配する者は、シリア第二の都市アレッポも支配できる。
 すでに露軍機はシリアで1500人を爆殺した。うち7割は反政府ゲリラだが、3割はヒューマンシールズか、間違った時に間違った場所に居た人たちだ。
 米軍とその同盟国軍による対シリア空爆は1年強続いている。彼らがこれまで4000人爆殺したうちの間違った市民は1割未満だった。
 ISのヒューマンシールズの使い方は、たとえば市民を鉄の檻に入れてそれを写真に撮ってインターネットに公開するのである。
 ロシア国内では、失業率は5%より悪化していないと公表されているが、貧困が広まりつつある。
 ロシア政府は最近、同国のGDPは今年、すでに去年よりも3.7%縮んだと発表した。
 他方で平均家計収入は10%落ち込み、インフレが同時昂進しているので庶民の食料品購買力はそれ以上に悪化している。
 政府公式発表では今ロシアには「貧民」が15%いる。しかし実相は、その2倍だろう。
 地域によっては、住民の4割近くが貧困だと行政が認めている。
 あと2~3年は、この右肩下がりの経済力趨勢は止まらないだろう。これはロシア国内の経済学者も認めている。
 すでにロシアの経済規模は世界のトップ10ヵ国から転落しているのだ。
 住宅、交通、電気水道などインフラへの政府支出が減らされていて、メンテナンスがなされず放置されるために、年金暮らしの老人たちに生活苦が加重されている。
 ルーブルの下落は、海外の民間航空会社のロシア行きの便を減便させている。
 ロシアの対トルコ経済制裁は、効くまい。トルコはロシアとちがって他の取引相手を探せるからだ。国際制裁と単独制裁の差である。却って、トルコと取引させてもらっていたロシア企業がダメージを蒙る。
 ロシアから逃げ出した外国企業の投資を、シナ1国で埋められるか? 不可能である。中共の対露投資が増えたにもかかわらず、ロシアに対する海外からの投資は80%以上も減ってしまっている。
 露軍はさすがにシリアへは徴兵を送り込むことができず、すべて純然志願兵である。最前線の歩兵には、危険手当て加重によって、月に4000ドルが支払われている。
 ウクライナのGDPは2014からくらべて13%ダウンした。
 トルコ機は、露軍が報復を狙っていることが確実なので、11-27からしばらくそのF-16を対シリア爆撃に飛ばすことを止めている。
 西欧は現在、ロシアよりもノルウェーから、多量の天然ガスを輸入している。この逆転は2015年に起きた。
 対露経済制裁にもかかわらず西欧は今でも天然ガスの総輸入量の三分の一をロシアから買い続けている。
 タジキスタン内の3箇所の露軍駐留基地から露軍が11-15にどこかへ逃げ出した。酩酊した露兵がクリャブ市で揉め事を起こし、タジク住民と基地の間で緊張が高まったためという。
 ロシアとタジクは条約を結んでおり、6000名の露兵が2042年まで基地に駐留できる。それらの基地はアフガン国境に近い。ヘロインとテロリストの出入りを見張るのが目的だ。タジク国境警備隊も腐敗しており、アフガン人が賄賂を渡せばいくらでもヘロインの輸送を見逃してしまう。だからタジク兵の尻を叩いてアフガン人密輸ギャングと銃撃戦をさせるのも露軍将校の役目。
 ISとその係累のシリア内のゲリラがますます「反イスラエル」を叫ぶようになってきたので、イスラエル政府は、「アサド政権の方がマシだ」と考えるに至った。公式に、11-10に「中立宣言」をしている。つまりアサド政権の退陣をイスラエルとしてはプッシュはしない。
 ※ではイランが支援するヒズボラやシリアは安全かというとそんなはずもない。要するに、隣国内で永遠無限に内戦が続いてくれるのがイスラエルとしては最大の国益なのである。それだけアサドは弱り果てていていまや理想的に無害(対イスラエル用の原爆をこしらえる可能性ゼロ)だといういうこと。またイスラエルは、イランの原爆開発も当分は無い、と見ている可能性がある。


いまでも「進水式記念絵葉書」が油彩で描かれているとは、良いことを聞いた。

 Grant Newsham and Kerry Gershaneck記者による2015-11-26 記事「Saving Taiwan’s Marine Corps」。
  ※この記事に注目するのは、ニューシャム海兵大佐は陸自に送り込まれた初代のリエゾン・オフィサーだから。ほぼ同じことを陸自にもアドバイスしたのではないかとわたしは疑う。
 台湾海兵隊は以前は1万6000人だったが、いまでは9000人に減らされている。
 台湾海兵隊は、簡単にいうなら、1979年時点での米海兵隊のコピーである。
 その精神も装備も1979年で固定してしまった。それから35年過ぎ、米海兵隊の方は、はるかにヘリ化しているのに。
 ベトナム以後、米海兵隊はすっかり軽便化し、敏捷化しているのだ。
 台湾海兵隊も、米海兵隊と英国ロイヤルマリンズのハイブリッドを目指して、フットワークを軽々しくしなくてはいかぬ。
 市街戦能力を身につけなさい。台湾北部の都市化地域ではそれが役に立つ。
 もう鈍重な「自走榴弾砲」の時代じゃないから、軽便な牽引砲と、地対艦ミサイル部隊とに、更新しなさい。
 CASや艦砲射撃を地上部隊から要請する中隊、アングリコ(ANGLICO)を急いで育成しなさい。そして台湾陸軍にもその能力を普及させてやんなさい。
 LAV-25(六輪APC)を台湾海兵隊も採用しろ。
 機雷戦に習熟しろ。それは台湾防衛の役に立つ。今はスマート機雷もあるから。
 ※グァム島の米海軍基地内には「タスクフォース75」というのができた(長は大佐)。そこが装備する高速艇が「マーク6(Mark VI) 」。85フィートの現代版PTボートである。むろん雷装なし。25mmのマーク38機関砲×2門、12.7mm機関銃×6梃。さらに軽機や擲弾発射銃を増設できるマウント複数。駆逐艦がすっかり巡洋艦サイズになってしまい、雑用など命じ得なくなったので、そのギャップを埋める機動艇だ。わが陸自こそ、こいつを装備しなければならない。海兵隊なんかの真似事をしている場合じゃない。
 次。
 Thomas Grove記者による2015-11-26 記事「Russian Defense Industry Hits Speed Bumps」。
  ロシアは、最新のT-50戦闘機を100機、初期調達する気だったのに、予算がなく、12機前後に削減する。
 ボーレイ級原潜は、計画では2020年までに8隻調達の見込みだったが、どうも6隻になりそうだ。
 アルマタ新戦車は2012年時点でカネがかかりすぎるという内部批判があった。今年、プーチンが個人的に工場を訪れて激励した一方で、国防省は初期発注を止めた。
 つまりプーチンは国内向けのイメージ宣伝として軍拡を叫び続けながら、裏では国防省を通じて各メーカーに「生産の自主削減」をこっそり強要しているところなのである。ロシアにはもうカネは無いのである。
 他方でロシアの国営兵器産業は、2015年度分として政府から受注した契約分の生産が、年度末までに間に合いそうにない。年度の中間点における納品達成率は平均で38%であった。インターファクスは特に小火器メーカーのカラシニコフ社の名を挙げている。※政府が設備投資や運転資金のための融資をしてくれていないということなのか?
 シンクタンクのIISSによるロシア批判。露軍機はシリアで誘導爆弾を落として精密攻撃していると宣伝しているが、じっさいには無誘導爆弾がほとんどである、と。※コラテラルダメジなど無視してダムボムで絨毯爆撃してやった方がゲリラは弱るし人質状態の住民もそれを納得、否むしろ歓迎するのであるというイスラエル人の知恵にそろそろ耳を傾けたがよいぞ。
 モスクワのシンクタンクCASTによると、ルーブルの下落によって、ロシアの軍事費支出は、いまや世界の七位か八位にまで落ちたという。2014クリミア侵略の前は、世界の第三位だったのに。
 アルマタ戦車のメーカーは、ニズニタギル市に本社があるウラルヴァゴンザヴォド社である。米欧ではこの会社を制裁リストに加えている。ロシア最大の民間銀行アルファバンクを含めた債権者たちは、同社を裁判所に提訴している。なんと同社は870億ルーブルの借り入れ金を返せないでいるという。米ドルにして10億ドル以上である。
 同社は銀行預金として700万ドルしか置いていないことも、差し押さえ調査の過程で判明している。
 回顧すれば対独戦初年の1941年に月産1000両以上もT-34を送り出した工場が、このUVZなのだ。冷戦期にはT-44とT-62を製造していた。
 現在はT-72の近代化改修で食いつないでいる(工員は1日7時間労働)。アルマタの量産が本格化しなかったら、従業員は路頭に迷う。
 ※嘘ばかり言っているロシアも少しは本当のことを言う。そのひとつが、「アメリカがサウジにどんどん石油を量産させてイランとロシアを潰しにかかっている」というもの。仰るとおりでしょう。11-25にワシントンポストに奇妙な分析記事が載った。ISがしぶといためサウジに世論の非難の矛先が向きかけているのを必死で逸らそうという趣旨に見えた。こういうのは米政府が書かせているんじゃないかな? サウジはアメリカの役に立っているのだ。
 次。
 現代テロリストに対する「アブナクナイ師」のテレパシー説法について。
 「人を殺してはいけない。ただし、どうしてもしかたない場合には、人を射ち殺し、斬首し、大量爆殺し、焼き殺し、その動画をユーチューブにUpしてもゆるされる。」
 「異教徒からは税金を取れ。ただし、どうしてもしかたない場合には、異教徒を皆殺しにして土地財産を奪ってもゆるされる。」
 「隣人同胞には親切にしろ。ただし、どうしてもしかたない場合には、隣人同胞にいいがかりをつけて殺して財産を奪ってもゆるされる。」
 「婦人には親切にしろ。姦淫してはいけない。ただし、どうしてもしかたない場合には、犯したり殺してもゆるされる。それも、数え切れない人数を次々と。」
 「弱者や困っている人はいたわれ。ただし、どうしてもしかたない場合には、襲って殺して財産を奪ってもゆるされる。」
 「子供は愛育し、保護しろ。ただし、どうしてもしかたない場合には、誘拐し、自爆ヴェストを着装せしめて市場の雑踏の中へ往かしめ、そこで起爆させてもゆるされる。」
 「盗んではならない。ただし、どうしてもしかたない場合には、いかほど盗んでもゆるされる。」
 「外国人とは平和に共存しろ。ただし、どうしてもしかたない場合には、外国人を皆殺しにしてすべてを奪ってもゆるされる。」
 「約定は守られねばならない。ただし、どうしてもしかたない場合には、すっかり更改してもゆるされる。」
 「律法は守らねばならない。ただし、どうしてもしかたない場合には、そんなものは無かったことにしてもゆるされる。」
 「偽証してはならない。ただし、どうしてもしかたない場合には、どれだけの嘘を語ってもゆるされる。」
 そしてアブナクナイ師は言った。
 あなたがわたしの教えにそむくとしても、どうしてもしかたないと考えたならばゆるされないことがあろうか。なぜなら、わたしの上記の指導に一度でも同意したことがある者は、すでに「万能の身」にあらざるや?


そうだったんですよ、川崎さん。

 Vidya Sagar Reddy記者による2015-11-25 記事「Russian Navy Reads the Art of War」。
  ※記者はニューデリーのシンクタンク勤務。
   いまのロシアの大きな狙いは、NATOの東方拡大を、押し返す。
 米海軍による海洋支配を、拡大させない。逆に海洋の不自由化を進めたい。  ※「FON」対「海洋の不自由化」の角逐する時代なのか。
 WWI前、カイザーのヴィルヘルム2世は、『孫子』を読みたがったという。
 マッカーサーは、孫子についての言及がある。
  ※どっちも初耳です。ちなみにマッカーサーが台湾を「不沈空母」と表現したことがあるのは本当です。1950年8月17日に、東京から米本土の「海外戦争復員兵協会」に宛てて、その総会で読み上げてもらうつもりで打電した「メッセージ」の中で。そこにはマックなりの地政学が披瀝されています。
  ――第二次大戦で、アメリカの戦略的な前線は、米本土の海岸線や飛び地の島嶼から、いっきょにフィリピン群島へ変わった。そして太平洋全体が、アメリカという城を守る濠になったんである。
 アリューシャンからマリアナまでの列島線を軍事的にしっかり確保していれば、アジアで自由主義国の領土を占領してやろうという〔ソ連・中共陣営の〕奇襲攻撃はありえない。しかしこの列島線をうしなわんか、戦争はもう避けられない。
 もし台湾が敵手におちいれば、そこは敵の突出陣地になる。そうなると、沖縄に対する空襲力は、シナ本土からするものよりも2倍の威力になってしまう。また、台湾からならば、大型爆撃機ではない、ただの戦闘機によっても、フィリピンを空襲できるようになってしまう。
 台湾が敵の手にあるということは、不沈空母および不沈「潜水母艦」が敵の手にあるのと等しい。沖縄とフィリピンに対して理想的な攻撃拠点になるし、われわれが沖縄やフィリピンからシナ大陸を攻撃するときにも一大抵抗拠点になってしまう。
 われわれが台湾を守れば、われわれは大陸のシナ人からは嫌われてしまうなどとと説く者がいるが、この者たちの太平洋における宥和主義・退却主義ほど、甚だしい謬論はないのだ。
 アジア人というものは、攻撃的で断乎たる動的な指導者を尊敬する。臆病で遅疑逡巡する指導者を、アジア人は、あざわらうのだ――《すべて兵頭私訳》。
 なお、トルーマンは、大統領命令をマックに与えて、このメッセージを公式に撤回させましたが、マックはその前にプレスにコピーをばらまいていました。トルーマン図書館博物館の、アチソン長官の関係のファイルに、この原文らしいものの電報受信タイプ紙が残っています。以上、長い余談。
  クリミアの切り取りでは、「ゲラシモフ・ドクトリン」が実行された。
 敵の弱点を狙え。なおかつ、直接の激突はしてはならない。
 孫子はすべての戦争はごまかしを基本とするという。
  「兵は奇道なり」。
 孫子いわく。敵が弱く見えるときは実は強い。敵が強く見えるときは実は弱い。
 孫子いわく。敵の予期せぬところへ自軍を展開せよ。そして敵の弱点を衝け。
 ロシアは欧州と中東に侵略の狙い(NATOの東方拡張を押し返すということは、西側から見れば侵略に他ならぬ)を絞っている。だからこそ、その方面には米海軍を集中させないために、バルト海や黒海や太平洋や米本土周辺などの遥か離れたアサッテの方角にて、米海軍に対して挑発行動をわざと仕掛けているところなのである。
 予算を削減され続けてきたロシア海軍には、とっくに西側海軍と正面衝突して勝てる実力は無くなっている。
 そのため今ではロシア海軍も、シナ人のマネをして、非対称戦術に賭けるしかないのである。
 さらには、シナ軍が南シナ海に構築しようとしている「A2AD」を、北極海から地中海にかけてつくりたいのである。
 米海軍のリチャードソン作戦部長は、ロシア海軍の活動は地中海の海上交通を不自由化させることを指向しているとすでに指摘した。
 ロシア海軍は、「戦わずして人の兵を屈する」を実践中である。
 米国は、「ユーラシア島」の東方における対支の「A2AD」打破と、「ユーラシア島」の西方における対露の「A2AD」打破を、両立させられるほど、国力にも海軍力にも余裕はない。今後もない。
 ※アウタルキーを既に得ているハートランド勢力(ロシア)が、リムランド勢力(EU&NATO)の海上交易を不自由化してやることで相対的に国権を高めることができるとは、まさにスパイクマンすら予測できなかった新事態だろう。これは相対的に弱い(ロシアの)海軍力によっても実行できるのだ(マハンが生きていたら驚くはずだ)。ただし日本にとって幸いにも、中共はこのロシアのマネはできない。中共はアウタルキーを捨ててしまって、輸出入にヴァイタルに依存しているから。中共海軍が今後いくら相対的に強くなっても、海上交易の不自由化で致命的なダメージを受けるのは、シナ人自身なのである。したがってアジアの反支連合が採るべき安全・安価・有利な戦術は、「機雷戦」である。その結果、シナと交易できなくなる米国の経済成長は鈍る。日本の地位は相対的に急浮上し、太平洋は静かで落ち着いた海になるだろう。
 ※さらに余談。さきごろロシアから公表された動画で最もショッキングだったのは、ISの大規模な石油精製工場と、数百両の石油運搬トラックが、誰にも爆撃されずに今まで稼動し続けていたことが明らかになったこと。ロシアの言う通り。トルコは、ISとズブズブなのだ。
 トルコは、自前の石油資源を確保したいのだろう。一方ではISを通じてシリア・イラク領内の油田を実質確保してやろうと動いているのだろう(それはもともとトルコ帝国のものだったし)。もちろん、もし隙あらば、コーカサス方面の反露諸国も支援して、ロシアからは石油・ガスを買わずにすむようにしたいとも思っているだろう。旧トルコ帝国が崩壊してすべての油田を剥奪された恨みはつのる一方なのだ。
 いま、アゼルバイジャンの石油は、ジョージアとトルコ領を串刺しにして、シリアのすぐ北の港までパイプラインで搬出して欧州へ売られている。これに将来、カスピ対岸のトルクメニスタンも、「カスピ海底横断パイプライン」を敷設して相乗りしたい。すなわちアゼルバイジャンとトルクメニスタンは、陸封国なので、トルコの擁護と協力なしには石油商売ができない。となれば半分はトルコの油田みたいなもの。トルコは、こういう支配関係を強化し拡大して行きたいのだろう。それはロシアにとっては「営業の邪魔」と映る。
 ロシアが弱れば、トルコが出てくる。プーチンは自分が老人だと意識しているはずだ。だからこそ、無理をしてでも、トルコに対しては強く出なくちゃならない。これはロシア人の宿業だ。プーチンの個人的体力が尽きかけているのだ。さもなきゃ、若さを強調するヘンな宣伝ビデオをこれほどに垂れ流しはしない。「強く見せているときは実は弱い」のである。もうじき、とりまきの戦争屋たちを抑制できなくなるかもしれない。


ニヒリズムのテロ行為に利用されやすい宗教とされにくい宗教があるのは事実。前者の文化圏では現世の救済と暴力が結びついていると推測することは可能。

 Owen Daniels記者による2015-11-23記事「4 Reasons the US Should Support the Resettlement of Syrian Refugees」。
  米下院はシリア難民を受け入れる前にその身元調査を厳密にやれと11-19に決議した。
 げんざい、全米の知事の半数以上が、彼らの州内にシリア難民は受け入れないと声明している。
 オバマは1万人受け入れると発表したが、それは阻止されている。
 ただし上院は下院に同調しないだろう。そのため身元調査が法制化されることはあるまいが……。
 事実についてまずわきまえよ。
 ひとつ。米国で難民認定されるのは、かなり狭き門である。
 2001-9-11以降、合衆国は80万人近くも難民を受け入れているが、そのうちこれまでにテロ関連の罪名でしょっぴかれたのは3人だけである。つまり米国の入国審査役人は有能で、あぶないやつは見事にはじかれているのだ。
 9-11以降の手順。まず国連難民高等弁務官が難民希望者のリストを米国に知らせる。それを、米国の本土防衛庁などが多重スクリーニングする。米国にはテロリストについての重厚なデータベースがあるので、事務は他国よりも早く進む。
 難民は1年間、滞在がゆるされる。そしてグリーンカード取得にも動けるが、それには更なるスクリーニングがある。
 最短でも18ヵ月しないと、難民は大手を振って米国住民となりおおせることはできない。
 というわけでテロリストが難民にまぎれて米国に入るのはとてもむずかしいのだ。
 今のところ、パリテロの犯人に「難民」はいなかったと考えられる。フランスとベルギーの国籍取得者がほとんどであった。
 ただし、複数の犯人は、フランスやベルギーからシリア戦線へ行ってISのために戦い、それからまたフランスやベルギーに舞い戻って来ていた。
 この2国は、そういう危ない自国籍民が国内に所在することを把握していながら、互いに政府間の連絡も取らず、テロが実行されるまで何の手も打たなかったのだ。今回の犯罪実行者たちは、新来の外国人ではなくて、すでにその国の中で暮らしていた大量の元外国人の跳ね上がりどもだった。
 こうした条件は、米国にはあてはまらない。
 ※少なからぬ数の先進国では、自国民が海外で勝手に戦争してくる行為を法律で禁じ、犯した者からは国籍を剥奪するようにもしつつある。しかしフランスとベルギーにはそうした法制は無いらしい。おそらくそれは「外人部隊」制度の伝統と関係があるのだろう。
 米国はむしろ、EU市民だからという理由で、ノービザで公然と米国に入国ができるあぶないテロ志願者たちを、警戒した方がいいだろう。
 今回のパリテロの犯人たちのうち少なくとも1名は、もし観光客等を装って米国の空港にあらわれた場合、米国のテロリストデータベースにはまったくひっかからずにそのまま入国できた、と専門家は認めている。
 米国は2015末までに欧州諸国と協議し、直近5年以内にイラクやシリアを訪問した履歴のある欧州国民には、ノービザでの米国入国は認めないようにする仕組みをつくりたい。
 ISは、ISだけがスンニのプロテクターだと宣伝している。それはウソだ。
 トルコは200万人以上のシリア難民を入れた。
 レバノンは100万人以上。
 ヨルダンは60万人以上。※いちばん同情されていい国。この負担は重過ぎる。
 イラクですら20万人以上。
 ※カネも土地もあり同宗派国なのに受け入れを拒否しているGCC諸国こそ恥を知るべきだろ? コーランには困った信者を救うなと書いてあるのか?
 欧州ではドイツは80万人を2015末までに受け入れるであろう。
 フランスも3万人入れると言っている。
 かたや米国は、シリアへの軍事介入を始めてからこれまで40億ドルの人道支援金を出したが、米国内に受け入れたシリア難民は1682名である。そしてこれに1万人追加するかどうかで国内が揉めているところだ。
 次。
 Roy Abbas記者による2015-11-20 記事「Think ISIS Is Not Islamic?  Think Again」。
  ISがインスパイアされているのは、13世紀のラディカルなイスラム法学者シェイク・タキ・イブン・タイミヤと、18世紀のイスラム法学者ムハマド・イブン・アブド・アルワッハブ。
 イスラム・テロをなんだかんだと擁護する者は、英国内のインド系住民はその先祖が英国から被った苦痛に報復するために英国内でテロを起こしてもゆるされると言っているようなものだ。
 バングラデシュはパキスタンから迫害されて分離独立しているが、そんな理屈が通るなら、バングラデシュ人はパキスタンに今から報復攻撃をしかけても可いわけだ。
 偽知識人は、レッド・ヘリング(=鰊の燻製を地面にこすりつけることで猟犬が狐を追えなくする。関係ないものを持ち出すこと)をやめろ。
 ISがイスラム教に依拠してテロを繰返しているのが事実である以上、われわれがISに対抗していく唯一の道は、イスラム教圏内に存在する「カリフェイト」のコンセプトを容赦なく酷評して顰斥することしかないのだ。
 ISイデオロギーのカギとは、カリフェイトのコンセプトと、カリフェイトの預言なのである。それはアラビア語を知らないでわかったつもりになっている論筆家どもの知ったかぶった言説とは何の関係もないのだ。
 預言者ムハンマドとその教友たちの言行録を集大成した『ハディース』。そこからISイデオロギーのすべてが発出してくる。回心、納税、死……これらのIS流儀は『ハディース』に根拠があるのだ。
 ファティマ・イムラ・ナゼーが言ったように、ネイティヴのアラビア語話者でないムスリムたちは、アラビア語で書かれたコーランを暗誦しても、そこに暴力的な表現があることには気が付かない。
 もし、各信者がその母国語でコーランを聞いたならどうなるか。ほとんどのムスリムたちは、コーランの内容の暴力性に、不快さを感ずるだろう。そして、「これは翻訳が正しくない」と言い出すだろう。なぜなら彼らはコーラン以前のモラルの原則を有しているからだ。
 ナゼーいわく。少数のムスリムたちは、コーランをモラル上の究極の権威とみなす。そしてコーランの暴力とヘイトに満ちた章句を字義通りに遂行するべきだと信ずる。結果が、ありとあらゆるコミュニティを破壊するだけのISになっている。
 「ISとイスラムは無関係」と護教する連中は、かならず、コーランの「5:32」をひきあいに出す。そこにおいて、イスラムは無辜を殺すことは禁じている、という。
 どっこい、「5:32」にはちゃんと抜け穴・逃げ道がある。ISだろうと他のイスラム・テロリストだろうと、そこを利用するのは簡単なのだ。
 イスラム教を批判すると、ムスリムも西側社会も、うけいれたがらない。正当な批評も、中庸イスラム教徒からは、「イスラム恐怖症を煽っている」とレッテル貼りされてしまう。西側社会の左翼は「おまえは無神論者だ」と言い、リベラルたちは「レイシストだ」と言う。
 2014年にイスラエルがガザに侵攻したとき、ロンドン、ニューヨーク、パリ等では、西側在住のムスリムが、大デモを起こして、イスラエル大使館に抗議した。しかしISの所業がいかほど暴虐でも、西側在住のムスリムがそのようなデモを起こすことはないし、サウジアラビア大使館やカタール大使館がムスリムデモ隊から抗議を受けることもない。カタールはISへの資金提供者である。
 前のイラクのアルカイダの長、アブ・ムサブ・アルザルカウィ・ザルカウィは、7つのアジェンダを掲げていたが、それらはイスラムのカリフェイトのコンセプトからインスパイアされている。
 ドローンでイスラム暴力集団のリーダーを殺しても、敵は短期間しか弱まらない。なぜなら、西側は彼らのイデオロギーに対しては攻撃も排斥もしていないからだ。その結果、リーダー1名の死が、後継者複数を生む。
 われわれの敵は、ナショナリストではない。連中は、領土問題が解決されたならそれでおとなしくなるという手合いではないのだ。
 われわれの敵は、単なる兇悪犯罪者の群れでもない。
 われわれの敵は、暴力を行使することによってカリフェイトを建設し、さらに彼ら流のシャリアー釈義を全世界に押し付けたがっている集団なのだ。
 次。
 ミリタリー・コムの2015-11-23記事「Osprey’s Own Rotor Wash Led to Deadly Crash」。
 2015-5-17にハワイで21人乗っていて墜落したオスプレイ。海兵隊員2人が死亡した事故。原因が解明された。
 昼間で、天気は晴れていたが、自機が巻き上げた土埃で左エンジンが「コンプレッサー・ストール」を起こした。


いま、ナヴァロ教授が面白い。

 Christopher P. Cavas記者による2015-11-19記事「Two USN Carriers in Japan?」。
   CSBAのアナリストのブライアン・クラークが、日本に常時2隻の米空母を置け、と提案している
 艦上機の陸上での置き場は厚木だけでは狭いが、岩国が拡張されているので、海兵隊と同居すれば問題は解決する。
 次。
 ?記者による2015-11-21記事「The future of sniping  Enemy at the gates  New technology is improving military sharpshooters’ range and accuracy」。
  ヴァジニアにあるシンクタンクのグローバルセキュリティによれば、世界でいちばんおそろしい狙撃銃は、ノルウェーのナモ社が作ったラウフォスMK211というモデルで、500m先で厚さ15mmのスチール鈑に30度という浅い角度でヒットしても貫通できるという。
 しかもこの弾丸には炸薬が入っていて、貫通後に爆発し、さらに焼夷剤によって内部の燃料に点火できるという。メーカーによると、1発でヘリコプターを墜とせるそうだ。 ※口径情報が皆無。何だこの記事は?
 しかるにこのたびニューメキシコ州で米軍から開発を請け負っているサンディアナショナル研究所は、狙撃銃から発射後の弾丸を空中で軌道変更させる技術を完成した。
 ライフル銃身から発射する、有翼弾。サボで包まれていて、サボは銃口を出たところで剥落する。
 射手の相棒のスポッターが赤外線レーザーで照らしつけているところを、弾丸内蔵のセンサーが検知して、フィンを操舵してコース修正する。
 操舵信号は1秒間に30回のサイクルで、発せられる。
 すべての精密メカが、発射時の12万Gの加速度に耐えねばならない。メーカーは、それをなしとげた。
 これとは別にDARPAも、EXACTOという自律誘導弾丸を開発中である。
 こちらは、フィンを使わない。12.7mm弾が旋転したまま空中で軌道修正できるという。その具体的方法は謎。
 誘導電波は銃の側から空中の弾丸(の弾尾)に対して指令される。よって、スポッターのレーザー反射には依存しない。
 サンディア社はXM25のメーカーでもある。この25mmの擲弾は無誘導だが、内部に、旋転の回数をカウントするチップが入っている。旋転数によって飛距離を知るわけだ。あらかじめインプットした飛距離に対応した旋転数を感知したところで爆発する。だから物蔭の敵兵の後頭部の上空で爆発させてやれる。
 しかしアフガンではこいつの取扱訓練中に早発/腔発事故が起き、兵隊1人が負傷している。まだまだ完成品ではなく、実戦配備は2017だろうという。
 ※爆発弾頭には常にこの「自爆事故」のリスクがつきまとう。だからWWIIの初期の英軍戦車の小口径砲には、ソリッド弾頭しか搭載させなかったのではないかと思っている。
 テキサスの会社、トラッキングポイント社は、スナイパーの仕事をおそろしく単純化した。このメーカーの新開発のシステムを狙撃銃にとりつけると、射手は、そのときの風速をインプットして、敵兵のシルエットに向けてほどほどに照準して、引き金を引くだけでいい。引き金を引いても実包プライマーはすぐには発火しない。銃身がいちばんいいところに来たときに、コンピュータが見計らって発火させる。敵兵のシルエットのどこに当てるかも、コンピュータがちゃんと最善の選択を考えてくれている。だから、いかにへたくそな射手であろうとも、もはや、外れ弾というものは、絶対に発生しないのだ。 ※アーチェリーの「クリッカー装置」からの連想だろうね。
 こうなると次に来るのは、狙撃手そのものを失業させる時代であろう。
 おそろしいのは、トラッキングポイント社の製品は、海外輸出に何の制限もない。サンディア社の弾丸とエグザントは輸出禁止品目なのだが。
 さすがにトラッキングポイント社には海外からのハッキングの試みが殺到しているそうで、同社では外部とのインターネット接続を今では完全に遮断してしまっている。
 次。
 Peter Navarro記者による2015-11-18記事「China’s ‘Carrier Killer’ Missile Strikes the 2016 Presidential Debate」。
  ※この記者は最近『クラウチング・タイガー』という、極東での米支戦争を予言する本を米国で出した。内容をざっと読んだところ、反日的な記述がひとつもない。しかも、韓国発のでたらめな情報をひとつも引用していない。反支でしかも親日、そして韓国はスルー(最低限の事実紹介だけにとどめている)。すがすがしく、じつに「読中感」がイイ。この人はすでに類似の本を2冊出している。そのなかで一貫して「シナ製品をボイコットして米国内の製造業を守れ。海外に工場を移すような米企業には高税を課せ」という正論を説き続けている。とにかく面白い人だ。
 土曜日に迫った、ニューハンプシャー州での民主党の公開ディベートのために、CNNは質問を用意した。それは、いわゆる中共の「対艦用弾道ミサイル」(米空母キラー)についての、各大統領候補の識見を問わんとするものだ。
 そもそもそんな兵器が実在していると認めるのかどうか、認めるならその有効性をどう評価しているのか。まさに、大統領としての軍事的教養があきらかになる。※ナヴァロ氏は、否定も肯定もせず、ただ、孫子の「戦わずして人の兵を屈する」を挙げるのみ。実在しないことは当然わかってるはずだ。曲者なんだよ。
 このテーマについて一般視聴者がわかりやすいように事前に知識を与える「コンパニオン・ビデオ」が用意されている。
 その中で、米海大のヨシハラ教授〔ラヴァロ氏が最新刊でいちばんたくさん所説を引用している権威。ちなみに兵頭はこの人をあまり高く買わない。ハリウッドスターの検死をやった日系医師と同じ臭いがする〕や『フリー・ビーコン』編集者のビル・ガーツ記者らが対艦弾道弾の基本コンセプトの解説をしてくれる。
 またそうしたミサイルを30ノットで走る空母に命中させるのがいかに難事かについては、トマス・X.Hammes氏〔海兵隊を三十年努めた古手の毛沢東研究家で、2006にラムズフェルドは辞任しろという声を挙げ、やはりラヴァロ教授の最新刊中には何度も引用されており、兵頭が首肯できる所説が多い〕らが説明してくれている。
 共和党のディベート大会は次はネヴァダである。そこではこういうテーマを論じたらどうだろうか。――なぜ米国との交易で得た稼ぎを、米国をやっつける邪悪な兵器システムに投入しまくっている中共のようなトンデモ国と、われわれはつきあいをし続けなければならないんだ? われわれはシナ人が米国市場にはアクセスできないようにもっと制限するべきではないのか――。
 トランプ候補はわたしに賛成である。※トランプはシナ問題で頼りにしたい専門家20傑の中にナヴァロを挙げる。しかるにナヴァロ氏はレッキとした民主党右派(市長選や連邦下院選に出た過去がある)なので、ヒラリーが当選したとしても、存在感が増すわけ。奇貨おくべし。
 テッド・クルス候補とマルコ・ルビオ候補は全くダメである。この2人は、シナ人がいくら米国を脅威しようともシナとつきあえというスタンスなのだ。
 中共政府によるアンフェアな「元」の為替レート相場操作を、クルスとルビオは容認している。
 カーリー・フィオリナ候補は、かつて某会社のCEOとして、製造拠点を米国内からシナへ移してしまうことにより、米国内の雇用を数千人分も減らした女だぞ。
 ランド・ポール上院議員は孤立主義者だから、対艦弾道ミサイルがあるのならば米海軍はハワイまで撤退しろ、と言うわけだろうな。※ラヴァロ氏は孤立主義者ではない。ミアシャイマーに私淑しているから。
 ※ここでひとつの事実を提示しておこう。ナヴァロ氏の最新刊を読んだ人なら、この意味がわかるはずだ。テッポウの弾丸には銅が必要である。銅は、「銅精鉱」の形で輸出され、消費国で精錬される。シナは世界の銅の半分を消費している。シナはチリから銅精鉱をバルクカーゴキャリアで運んで来る。毎年数百万トンもだ。民航船は最終積港と最初の揚港を結ぶ大圏航路を通る。チリから極東まで、貨物船で三十数日である。その航路は太平洋を西回りに横断するコースとなる。マッキンダーが口を酸っぱくして言っていたように、地政学を論ずる者は、ぜったいにメルカトル図を見ていてはいけない。地球儀にゴム紐を当てながら考えること。そしてもうひとつ。(株)商船三井の広報室は、とても親切だ。
 次。
 Alex Calvo記者による2015-11-18 記事「He Who Defends Everything Defends Nothing」。
  国際仲裁法廷でフィリピンはシナに対してどんな法廷戦術によって勝利できるか。
 勝ち目はある。
 スペインの古地図がある。そこにはスカボロ礁がバヨデマシンロクという名で載っている。スペインは米西戦争後にパリ条約によって比島をアメリカに渡したのだ。
 この暗礁の正確な経度と緯度が海図に載るまでには年月がかかった。
 そのため、1748-9-12に英国東インド会社所有の軍艦『スカボロー』が座礁事故を起こしてしまう。この事件からマシンロク島にはスカボローという別名が与えられたわけだ。
 1792-5にマラスピナ探検隊が、ようやく正確な座標を報告した。
 ついで1800年にカビテ湾を根拠地とするフリゲート『サンタルチア』号が詳細な測量。
 このフネはフィリピンに配備された最初の蒸気動力軍艦だった。スペインは、スル諸島のサルタンや、海賊と奴隷輸出に精を出しているイスラム教徒のモロ族と戦わねばならなかったのである。
 以上は、前口上。以下が本題だ。
 1913年、スウェーデンの東アジア会社所有の貨物船『ニッポン』号が、台風のためスカボロ礁で座礁してしまった。
 これをフィリピン政庁が救難しているから、島に対して統治行政権を行使していた証拠になるのである。
 しかもフィリピンの裁判所で海難審査されている。司法権が及んでいた証拠である。
 ※記者は名古屋大の客員教授。分野は、インド洋~太平洋の戦史と国際法。台湾の「南シナ海シンクタンク」にも所属し、現在、第二次大戦におけるアジア諸国の対日戦への貢献について1冊執筆中という。


中共は戦時のマラッカ海峡利用を諦めた。代わりにスンダ海峡を確保すべく、インドネシアに対してはあらゆる譲歩をしても、スンダ海峡を機雷で封鎖されないようにしたい。

  Eric Haun記者による2015-11-13記事「Canada to Ban Oil Tankers on Northern BC Coast」。
   カナダの太平洋岸にあたるブリティッシュ・コロンビア州は、その北部海岸の近くを原油タンカーが通航することを暫定的に禁止すると決めた。
 これで、カナダ西岸に原油輸出港を確保して、そこまでのパイプラインを通そうと目論んでいた産油地のアルバータ州の計画は、ますます実現から遠ざかる。
 エンブリッジ社は、内陸のアルバータ州のエドモントン市郊外のオイルサンド採掘場からの原油を、「ノーザン・ゲイトウェイ」というパイプラインで、太平洋岸の良港「キティマット」(水深大なので大型タンカーが接岸しやすい)へ送り、そこからタンカーで対外輸出して儲けようと考えていた。この構想が、不可能になる。
 米国へ陸送するパイプライン構想であったキーストーン社の「XL」は先日にオバマの反対で潰されたが、どちらの構想も、沿道と沿岸の住民が、環境汚染を非常に心配していた。
 トルドー首相は選挙前から、パイプライン反対を公約していた。
 アルバータ州は大ピンチに陥るであろう。オイルの生産量はどんどん増えているのに、それを州外に売るパイプラインが増えないというのであるから。
 残る希望は、トランスカナダ社の計画である「エナジー・イースト」。すなわち、アルバータ州から原油をカナダの東海岸へ陸送しようというパイプライン企画である。しかしこっちも見通しはまったく暗そうだ。
 ※マラッカ海峡にインド海軍がインド洋側から機雷を撒こうとするのを、中共海軍には阻止する手立てはない。まして沿岸国のマレーシアも海洋権益をめぐって中共とは必然の敵対関係にあるから、マラッカ海峡の戦時利用など、まったく諦めるしかないという結論に、北京は到達したのであろう。スンダ海峡ならば、インドネシア1国さえ籠絡しておけば、なんとか確保ができると睨んだのだろう。
 次。
 Daniel L. Byman記者による2015-11-16 記事「Why ISIS might regret the decision to go global」。
  この記者はブルッキングス研究所の中東テロ専門家で、記事は『フォーリン・アフェアーズ』に載ったものである。
 ISに参加した外人兵のうち150人は米国から渡り、3000人は西欧から渡っている。
 だからISは単にフランスでテロが容易だったからフランスでテロをした、というのにすぎないかもしれない。
 イラクとシリアでは25万人が内乱で死んでいるが、パリで125人が死んだというニュースの方が世界のマスコミでは大きく扱われる。よってISにとっては良い宣伝になり、落ち込んでいる新兵リクルートがまたはかどるかもしれない。
 なぜグローバルなテロ活動は今では流行らないか。そんな組織を運営していたら、米国その他の通信監視網にかならずひっかかり、各級指揮官がリーパーで爆殺されてしまう。
 ISが、在外の協賛集団に勝手をやらせることにするとどうなるか。その群小集団は必ず乱雑に暴走し、弱者を殺して国際的な不評判を招くだけ。
 キミがISの大蔵大臣だったら、どこに軍資金を分配する? 世界中の敵を攻めていたら、どのひとつにも勝てず、しかも持続不能だろう。
 アルカイダは9-11をやったために米軍を呼び招き、アフガン内の聖域を失った。こんどはISが仏軍のためにラッカを制圧されるだろう。
 ローレンス・ライト記者によれば、アルカイダはアフガニスタンの2001の最後の数ヶ月でメンバーの8割を殺されてしまったそうだ。
 テロリストがいつも犯す勘違い。世界(あるいは敵国政府)は彼らに対して現状でもう最大の反撃努力を払っているのだ、と判断してしまうこと。じつは、世界(あるいは敵国政府)は彼らに対してまだ予告編をチラ見せしているだけ。本編の地獄変はこれから封切られるのだ。
 次。
 2015-11-15 記事「Confessions of an ISIS Spy」。
 デイリービーストがISの新兵教育係にインタビューできたという超貴重情報。
 ISに参加しようとやってきた者には、人の憎み方の教育を2週間ほどこす。シャリアのIS風解釈を教えるのだ。異教徒はISの敵であるがゆえに、殺さなくてはならない。
 非アラブ圏から馳せ参じてくる新兵たちの半数は仏語話者。半数は英語話者である。だから新兵教育も、通訳を同時に2人使う。
 ISのかかわる内戦では、死者の2倍の数の重傷者が出る。彼らは二度と戦場へは戻れない身体になっている。ISの戦死者はこれまで4500人以上出た。
 いちばん勢いのあった日々には、まいにち3000人もの新入りが海外から到着していたものだ。今は50人強である。
 この50人をシリア戦線で消耗させてしまうより、そのまま外地のスリーパーとして海外で騒ぎを起こさせる方が、リクルート戦略の上からは得なのではないかと、最上層部は考えるようになった。
 IS内部では、誰も戦友のパーソナル・ヒストリーを詮索しない。名前すらも訊ねない。全員、「アブなんとか」にきまってるんだから。誰かが他人の細かな詮索をしはじめたら、それは究極のレッド・フラッグ。スパイ査問なのである。


友好は金とひきかえには達成されない。「友好」を売ることに成功した側は、さらに「友好」を買わせることができるからである。

 Daniel L. Byman記者による2015-11-15記事「Five things to know about the Paris attack」。
  ISは2014に登場した。それ以前には存在しない。
 あきらかに今回は末輩のローン・ウルフが思いつき的にやらかした反抗ではない。欧州を襲った初めての組織的かつ計画的な、同時多発大量殺戮テロである。
 過去数週間で何が起きているか。まず、ISはイラクのSinjar市をクルド部隊のために追い出されてしまった。たいへんな不面目である。
 他方、ベイルートのシーア派居住区(おそらくヒズボラの司令部所在地)で自爆テロがあり、40人以上死亡。ヒズボラはISの不倶戴天の敵である。
 またシナイ半島上空ではロシア民航機が空中爆発して224人死亡。※この爆弾は貨物室内の気圧変化で安全装置が解除され、携帯無線で起爆されるものではなかったかと思う。あるいはデジタルタイマーで安全装置が解除されて、気圧がトリガーになるものか。
 フランス政府は1980年代にはテロリストに甘いところがあった。しかし1990年代にアルジェリア人がパリでしきりにテロをやらかしたので、以来すっかり対テロ闘士に変貌して今に至る。
 フランスは「世俗政治」(脱教会)を堅持する国体であるのが誇りである。たとえば女の「ヴェール」着装は許容しないし、他方で下品な宗教攻撃漫画を擁護する。
 ISは義勇兵をすこしでも欧州からイラク+シリア戦線に多く結集したいと思っているのであり、わざわざ兵隊を欧州へ送り出したりはしていない。
 せっかくできたすばらしい「カリフェイト」から異教徒圏へ逃げ出すような「難民」どもは、宗教的に大罪を犯しているのだとISは宣言している。
 ※つまり今回の犯人はシリアから派遣されてきたものではない。
 こういうテロを事前に警戒しようとしても、封殺は無理。フランスはちゃんと警戒してましたから。
 米国内にはもともと反政府的なモスレム人口はほとんどいないので、フランスのケースが米国にすぐ波及するとは思わん方がいい。
 ※日本で警戒するとしたら、アルミ蒸着の袋に水素を充填して導電性ワイヤーで相互に結束した多数の風船を、山の中の原発送電線の真下で放球する対物破壊テロ。2015-11-4に河南省鄭州市で起きた事故は、はからずも、アルミ蒸着水素風船は多数が結束されると高圧送電線を破断させられるだけの威力があることを立証してしまったから。
 次。
 Bob Owens記者による2015-11-10記事「Military Wants On-Base Concealed Carry, Will Likely Get It」。
  テネシー州のフォートフッド基地内で2009にイスラム信者兵による乱射事件があったことはいまだに米軍の心掛かりである。この種のテロの再発をふせぐために、基地内では、有資格の将兵に「拳銃」を常時携帯させてはどうかという意見がある。米陸軍内ではその意見は強く、連邦議会内でもこれを支持する人々がいる。
 ※パリ事件は、この法案の追い風になるだろう。海外の米軍基地でも、みんな拳銃を常時携帯するようになるかもよ。ダッジ・シティかよ!
 ※余談。 Bill Hayton という国際法に詳しい人が 2014年に『The South China Sea: The struggle for power in Asia』という参照価値の高い解説書を出してくれているらしい。スプラトリーの問題はそもそも台湾の国民党政府が最初に種を播いたんだという経緯も正確に詳しく紹介されているようだ。これは訳刊されないのだろうか?