JSEEOの主張は、すべて『「自衛隊」無人化計画』(PHP)の中に……

 わしはついにアフガニスタン問題を根源から解決する良い方法を発見し、その雑誌原稿を書いておっただよ。
 そしたっけその間にも、言及せざるを得ねえニュースが次々に飛び込んで来やがるだよ。
▼JOHN T. BENNETT氏の09-10-7寄稿「GOP Lawmaker Blasts Obama Team’s Missile Intel, Cost Claims」。いわく……
 米議会内では、〈GBI代わりの対イランBM用のSM-3配備のためには9隻のイージス艦が必要だろう。うち2隻が前方展開としてな。1隻の新造は$25 billionだ。旧イージス艦の改修でも1隻につき1~9 billionドルだ。そんな無駄を議会が許すと思うのか。GBIより高価なものはダメだ〉といわんばかりの批判、そしてとうとう〈どうせイージス艦を太平洋から持ってくるしかないのだ〉との示唆まで飛び出したっちゅーこと。
 まさか来月オバマ氏はこれを説得しに来日する?
 次。AFPの09-10-8の驚羅大四凶殺速報。「Russia Plans Shift in Nuclear Doctrine: Reports」。
 ロシアが先制核攻撃を採用だってよ! 窮したねぇ、あの国は。
 おそらく数週間後、オバマ氏とのRe-START交渉の開始前後に全文が公表されるのだろう。
 元KGBのオッサンいわく。大量破壊兵器または、大規模な通常兵器による侵略の損害が生じたときには、ロシアは核を最初に使うぞ、と。
 これは冷戦時代の、核の先制使用はしませんぜという口公約を反転させるものだ、とAFP。
 次。JOHN T. BENNETT氏の09-10-8寄稿「Administration Pursues Early Warning Radar, Trade Treaty Approval」。
 ロシア南部、アゼルバイジャンというこれまでも出てきた、NATOとリンクさせるABMレーダーの候補地に加え、ウクライナにどうじゃという話も出てきた。
 ウクライナとロシアはハッキリいって仲は良くない。米国には好ましく、ロシアには厭らしい案ですね。
 次。アジアなんとかニュースに出ていた、09-10-8アップの記事「Strykers to Deploy to India for Exercise」。
 今月中に米陸軍は17両のストライカーをインドに持ち込む。イラクとアフガン以外では最大だ。
 2年ごしで準備してきた、米太平洋軍とインド軍との合同演習が12日から2週間、始まるのだ。
 これと関係あるのか? 次の記事を見よ。
 『ワシントンタイムズ』紙にSara A. Carter氏の09-10-8アップ記事「EXCLUSIVE: Pakistan plans ambitious blitz to rout Taliban」。
 パキスタン軍が米国から暗視装置を貰って、ヘリコプターを使って、タリバン拠点の掃蕩に乗り出す、と。
 兵頭いわく。できるわけねーだろ。関東軍が満蘇鮮国境からどうやって金日成軍を叩き出したのか、その勉強でもしやがれ。
 さもなきゃ、来月の兵頭記事を読むがよい。ヒンズークシからゲリラを根絶できないのは、装備の問題じゃなくて、道路インフラの問題ですよ。あと4万人増派したってダメ。これはオバマ氏に忠告したい。
 次もアジアなんとかコムから。「Taiwan in talks with Germany over four U- 214 SSK」という記事。
 ギリシャがドイツに4隻発注した燃料電池式の潜水艦の代金を振り込まないものだから、いままで1隻も引き渡されないでいた、その潜水艦を台湾が横から貰おうという商議をしたようだ。
 これは微妙なケースだ。じつはU214型はパキスタンも購入契約する気だと伝えられている。それが本当なら、アメリカ政府は、U214の技術情報がシナその他に洩れても問題はないと考えているのだろう。
 これに関しては、wendell minnick氏の09-10-5寄稿の「Ex-PACOM Official Convicted of Spying for China」という記事も見るべきだ。
 台湾系シナ人が1996退役の元米軍中佐を北京のスパイとしてとりこんだ。この元中佐はとっつかまり、15年の求刑に直面するだろう。
 FBIが”false flag” operation と呼ぶものは、台湾に渡すものだからといって秘密情報をとり、それを北京に渡す。組織から退職直前の男がひっかかる。
 台湾有事の際に、台湾政府と米国政府は暗号通信で相談しなければならない。その暗号は「Type 1 cryptography techniques」といい、米国が提供する。バーガーソンはその取り極めのペーパーに関与する立場だった。
 その暗号に北京は興味があった。
 しかしこの事件で台湾政府は一人も逮捕していない――と。
 兵頭いわく。
 米国は着々とプロ・シナの悪者を訴追しているのに台湾は1人もつかまえていない。台湾はもう北京からの間接侵略に屈服しているのだ。とすればドイツ潜の情報も台湾人経由で北京にダダ漏れすると懸念せねばなるまい。しかしたぶん、米国政府の前に北京政府がドイツに嫌がらせをしてこの話はチョンだろう。
 そもそも台湾はミニ潜航艇くらい国産できる資金力は十分にあったのに、これまでやる気がまったくなかったわけ。日本のバカ右翼のようになにか期待する方が間違ってるのです。


対人用ミニチュア・ミサイルへの一里塚

 David A. Fulghum 氏による「New Weapons Look And Act Strangely」という09-9-30の記事。
 サーモバリック・ヘルファイア!
 すなわち成形炸薬ではなく、固体炸薬と気体爆薬を組み合せ、燃焼速度を抑え、ヘルファイアが貫通した後の密閉空間内の殺傷力を増す。
 チャイナレイクでは、分子の格子状配列をカスタムしてしまうことにより、緩燃で爆発の持続時間が長く、しかもピーク圧力が高いサーモバリック炸薬も追究中。
 コラテラル被害のない誘導爆弾も、チャイナレイクで開発中。
 500ポンド爆弾でSUV×1台を吹っ飛ばして、その周りへは無影響とする。
 旧来の、弾頭と弾底に2ヶのフューズをつけるかわりに、弾長に沿った紐状の信管をとりつける。そして爆弾のどの部分が先に着地したかによって瞬時に最適の起爆を引き起こすようにすればコラテラルは減らせる。
 やはり Fulghum 氏による「/China Lake Naval Air Warfare Center」という09-9-30の記事。
 陸軍の新製品。汎用のミニ・ミサイル「スパイク」はたった2フィート。重さ5.5ポンド。
 歩兵がこれを発射するときは、バックブラストは考えないで良い。初速は時速100マイルで、ゆっくり。
 スパイクの構成は、2.25インチ径の量産品のロケット弾の先に、チープなハンディカムをとりつけたようなもの。
 燃焼時間は1.5秒。それでマッハ 0.85 まで加速され、惰性で3.2km飛翔し、終速は600マイル/時くらいである。
 地対空モードでは、たった1秒で発射準備完了。標的が30フィート以上離れていさえすれば、あたかもショットガンを使うように発射できる。肩打ちだが。なお、12ボルトのバッテリーは必要だ。
 UAVのヘルファイア・ランチャーにもとりつけられる。
 09-6-15には無人ヘリの「ヴィジラント」からも発射テスト済み。
 今年、9度テストして7度成功。そのうち一度は、小型高速ボートの吃水を狙って貫通した。
 目標が時速60マイルで横行していても命中させられる。まっすぐこちらに向かって来る敵や、まっすぐ逃げていく敵ならば、もっと高速移動していたとしても当たる。
 次の目標は、この量産品の納入価格を $5,000-6,000 per missile に抑えることだ。
 修理するなどバカらしいくらいに安くしたい。前線の部隊で簡単な作動チェックをしてみてもし不具合が分かったら、補給処の修理部隊へ後送するのではなく、その場に投げ棄てさせる。そういう兵器。これが陸軍経費の圧縮につながる。
 市販品の流用によってこのコストが実現できる。イメージCCDセンサーなどは100ドルで民生品が調達できるのだ。
 あとでもっと安い市販部品やプログラムソフトが入手できたら、それにすぐ差し替えられるようにも設計してある。
 推薬の発火は光ファイバーのレーザー信号(市販の通信用部品)による。だから静電気や迷走電圧などで勝手に暴発する危険もない。
 やがてすべてのセンサーと回路が1枚のチップに載せられる時代が来る。そうなればこの種の製品はもっと安くなる……。
 兵頭いわく。
 この調子でいけば、歩兵対歩兵の戦闘にミニ・ミサイルが湯水のように使われるようになりますよ。
 そしてこれもゲリラの手に渡るのは時間の問題です。宮内庁は早く皇居の大改造をした方がいいんじゃ……?
 ところでわたくしはテレビを視ていないのですが、シナ軍は、敵UAVのイメージングCCDを韜晦するためのAFV/ソフトスキン用の「デジタル迷彩パターン」塗装(レゴブロックみたいな模様)を、パレードで公表しただろうか? 公開しなかったとしたら、かなり本気で研究中なのに違いない。外国人の広帯域光線カメラの前に生資料を提供したくはなかったのだ。
 日本にはまともな政治家がいないので、残念ながら核武装は半永久に不可能です。ではどうやって対北京の戦略報復力を確保するか。答えはロボット/小型無人機です。ロボットはコラテラルな被害ゼロの選別的大量破壊(対権力直接アプローチ)を可能にする唯一の手段でもあるのです。しかし日本人がぼやぼやしていれば、この分野でも米国の世界支配が確定するでしょう。新刊『「自衛隊」無人化計画』(PHP研究所)をお読みください。近くに図書館のある方は、購入リクエストしましょう!
 JOHN T. BENNETTT 氏による「U.S. Could Send Army Patriot Missile Unit to Poland」という09-10-1寄稿記事。
 国務省幹部が下院(の共和党の)議員たちに語る。パトリオット部隊でもポーランドに出しますか、と。
 ポーランド政府の希望を煎じ詰めると、米軍部隊が国内に駐留し、ロシア軍の侵攻の壁になってくれることに尽きている。だから、米軍部隊なら何でもいいじゃないか。
 ブッシュ計画にはなかったセンサー複数を配備することになるかも。
 〔移動式Xバンドでもなく、固定Xバンド・レーダー基地でしょうか?〕
 GBIは1発25トン。SM-3は1トン前後。よって安いんですよ。
 そこへ共和党員たちの突っ込み。SM-3なんて “a paper missile”(空想上のミサイル)だろう。その改良はイランの長BM完成に間に合うまい。
 だいたい、あと10年も長BMを防がないつもりなのか。その間、欧州に配備されている米軍はどうやって守るんだ?――云々。
 兵頭いわく。日本の国会でどうしてこういう質問が出ないんでしょうね。東京は、1960年代からシナの核弾頭付き中BMで狙われ続けているんですが(そしてノドンは東京には届きません)。日本こそGBIを10発すぐによこせと言わなければおかしいでしょう。


「読書余論」 2009年10月25日配信号 の 内容予告

▼伊呂波会『伊号潜水艦訪欧記』2006
 日本海軍は、対艦用のロケット加速爆弾の実物資料を要求していたのではないかと思われるのだが、本書によって、それは結局届かなかったと察することができる。
 ドイツは戦時中、空襲警戒警報と同時に中波を停止していた。中波ラジオ局は、まさに敵爆撃機にとってのビーコンになってしまうのだ。※現代の敵国は日本を巡航ミサイルで攻撃するのにGPSもマップデータも必要とはしまい。東京タワーのMW周波数とVHF周波数にホーミングさせれば良いだけだ。
▼マックス・ウェーバー『都市の類型学』世良晃志郎tr.、S39
 アジアにおいては、非血縁盟約をさまたげる血縁が強く、産業同盟たる市民は生まれなかった。同じ事情から、キリスト教も不可能であった。
▼レーリヒ『中世ヨーロッパ都市と市民文化』原1964、魚住&小倉tr.S53
 ドイツの都市民主主義は、分権化からけっきょく広域防禦力の弱体化を招いて、三十年間、すべての周辺国の傭兵隊が好き放題荒らしまくり、トドメをさされたのである。〔日本もこの道を辿るのかな? 近畿地方かなりヤバイよ。〕
▼藤田弘夫『都市と権力』1991
▼原田伴彦『都市発達史研究』1984
▼季亜農『中国の奴隷制と封建制』中村篤二郎tr.S31、原1954
▼堀敏一『中国古代の身分制――良と賤』1987
▼長坂金雄ed.『美談日本史 第四巻 産業美談』S15
▼『美談日本史 第八巻 復讐美談』S16
▼『美談日本史 第十一巻 武芸美談』
▼伊藤貞夫『古典期アテネの政治と社会』1982
▼『戦記名著集 vol.11 日露観戦記 弾痕抄』S5
 所収の「弾痕抄 露軍の内幕」。独の戦時通信記者マックス・ベールマン著、斉藤鉄太郎tr.、1904-8-20。
▼中村賢二郎ed.『都市の社会史』1983
▼リクワート『〈まち〉のイデア』前川道郎tr.、1991、原1976
▼高柳俊一『都市の思想史』S50
 ベーコンいわく、「国家については実験をしない方がいい」。
▼藤田幸一郎『都市と市民社会』1998
▼谷和雄ed.『西洋都市の発達』S40
▼原田伴彦『中世における都市の発達』S17-10
▼アンリ・ピレンヌ『中世都市論』佐々木克巳tr.、1988、原19世紀
▼ハンス・プラーニッツ『中世ドイツの自治都市』林毅tr.、S58、原1944
▼ブラウンフェルス著、日高健一郎tr.『西洋の都市――その歴史と類型』1986、原1976
▼宮下孝吉『西洋中世都市発達の諸問題』S34
▼瀬原義生『ヨーロッパ中世都市の発達』1993
▼Milo Roy Maltbie著『都市発達論』M35、杉山重義ed.
▼上田正昭ed.『日本古代文化の探究・都城』S51
▼桐生政夫『都市住宅の防空防火戦術』S18-3
▼東京都総務局基地返還対策室『都内基地のあらまし』1975-12
 戦前は立川飛行場がいちばんよく整備されていたのだが、戦後、ジェット化と大型輸送機の登場でどうにも狭くなってしまい……。
▼津田素彦『射的術』M32-11
▼足立栗園『武士道発達史』M34-6
▼『國文学 解釈と教材の研究』1987-10月号所収、桑原三郎「立川文庫と少年講談の冒険譚の主題――『宮本武蔵』論」
▼『法政大学教養部紀要 人文科学編』1991-2所収、大東俊一「九鬼周造と武士道」
▼森銑三『宮本武蔵言行録』S15-2
▼石田外茂一『宮本武蔵五輪書詳解』S18-6
▼日本文化研究会ed.『日本精神研究 第四輯 武士道精神』S10-1
▼坂本辰之助『日本外戦史 附・兵器考』S10-5
▼竹本尉『日本の弓箭』S17-8
▼江口卯吉『銃剣術』S17-2
▼瓜生喬『江戸時代の武士』M33-11
▼秋山梧庵ed.『武士道叢書』M38-12
▼高橋富雄『武士道の歴史 2』S61
▼高橋富雄『武士道の歴史 3』S61-5
▼小瀧淳『武士道逸話』S15-10
▼高木武『太平記と武士道 日本精神叢書 第42』S13-11
▼『明治文学全集8 福沢諭吉全集』筑摩書房S41
 所収の「明治十年 丁丑公論」と「痩我慢の説」について。
▼渡辺世祐・八代国治『武蔵武士』大2初版、S62repr.
▼西鶴「武道伝来記」、谷脇理史校注『新日本古典文学大系77』所収
▼飛田茂雄『アメリカ合衆国憲法を英文で読む』1998
▼永積安明・島田勇雄校注「古今著聞集」『日本古典文学体系84』1996所収
 弓箭関係の説話について。
▼竹村英輔『グラムシの思想』1975-6
 グラムシは公務員なんか全部かたづけろと叫んでいたのに、日本の共産主義者は大概が公務員だもんだから、その話をスルーし、矛先を天皇制に向け変えているのだと察することのできる本。
▼小倉卯之助『暴風の島――新南群島発見記』S15-12
 戦前は「南沙」などと呼んでなかった。ちなみに著者は『初瀬』が触雷沈没したときそこに乗組んでいたという、貴重な生き証人である。
▼中 正夫『航空の書』S19-4
 本書は、イタリアの自殺飛行隊「デスペレータ」についてレイテ戦以前に紹介していた日本語文献のひとつ。ただし日本人の紹介者は、1940の「イ・ディスペラティ」と、1935~36の「ラ・ディスペラータ」とを混同していたのではないかと兵頭は思うようになった。それについて詳しく述べよう。
▼田尻昌次『元寇』S3
 武器に詳しい。
▼布施秀治『上杉謙信傳』大6
▼柴田眞三朗『航空部隊』S18-10
 著者は陸軍浜松航空隊の草分けの爆撃教官だがS18-5に急死。
 本書には、昭和4~5年に、浜松陸軍飛行学校の教官たちが、「五機一艦相撃[あいうち]主義」の航空必死隊をとなえた――という興味深い証言が……!
 それが本当なら陸海軍を通じても最も早い特攻隊の発案。もちろんイタリア人よりも早い。
 S18前半にすでに離陸時から自爆覚悟で爆弾の風車安全装置を外し、実際に敵艦に突入している飛行機があるのだという見解披露。
 特攻史研究者ならば、この資料は必読。
▼『東京・横田基地』1986
 1970前後の東京からの核の傘撤去に関する米支密約について推理するためには、米空軍の核攻撃機F-105Dおよびその後継F-4部隊の移駐の跡を辿る必要があるだろう。
▼東京都昭島市pub.『基地とあきしま』S47-3
 これもヨコタの話。
▼『続 基地とあきしま』S50-3
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は200円です。
 バックナンバーも1号分が200円で、1号分のみでも講読ができます。
 2008年6月25日号以前のバックナンバーのコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
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潜水艦輸出とイラン危機のおかげでドイツは「P6」入りを成し遂げる

 09-9-28に『NYT』に FLYNT & HILLARY LEVERETT氏が「How to Press the Advantage With Iran」という寄稿。
 そこにこんなことが書いてありました。
 ――1969にニクソンは、チベットに関する工作を停止しろとCIAに命じ、米海軍には台湾海峡から離れろと命じた。ベトナム戦争中だったにもかかわらず。
 兵頭いわく。『属国の防衛革命』(光人社)にも書きましたが、米支核密約は1969に始まったと思います。片岡鉄哉先生すら、気付けなかったことです。新政権の外相は早くこれを暴きましょう。
 ――シナはイランから原油を輸入しているだけでなく、おびただしい油田開発をイランで実施中。さらにパイプラインをイランからシナまで敷き、原油タンカーを米海軍に妨害されないようにせんとの野心あり。
 兵頭いわく。23日の『FT』は、シナがイランへガソリンを逆輸出中だと報じていましたね。
 またウォルフォウィッツの9-27のFT論文によれば、イランはロシアに次ぐ天然ガス埋蔵量を誇り、それは米国の埋蔵量の4倍で、2/3は未開発だと。(だからといって原発の必要などないとか、原発用の濃縮ウランは安く輸入すればよいだろうとか、ナショナルセキュリティについて他国人が妄言できないでしょう。それがよい証拠には、かつて日本資本によるイランの油井開発を妨害して中断に追い込んだのは米国政府じゃないか。)
 09-9-28には Hu Zhengyue 氏が「Seek peaceful solution to Kashmir: China to India, Pak」という記事を寄稿しています。〔これはインドの新聞でしたか……?〕
 カシミア領土問題を早く解決しようという呼びかけですが、これは、イランからの原油をパキスタン領経由でカシミール峠を越えてシナまで通したいからですよね。
 AFPは09-9-29に、「Israel Takes Delivery of 2 German-Built U212 Subs」と報じ、『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』によれば、このDolphin-class は核弾頭付巡航ミサイルを発射できると紹介しています。〔わたしはこれはブラフのレベルだと思っています。理由は、イスラエルはその実戦的な発射演習をほとんどしていないようだから。核攻撃は、不確実性の高いBMでもCMでもなく、腕に覚えの航空機投下爆弾によってするつもりでしょう。〕
 湾岸戦争後、ドイツは3隻の潜水艦をイスラエルに売り、それにこの2隻が加わりました。引渡しは2010だと思われていたのが、早められた。
 イスラエルがイランの脅威にかなり真剣になっているのは間違いないでしょう。
 ドイツは核武装国ではないが、イスラエルに核兵器投射手段を売ってやることで、「P5+1」のメンバーに招じ入れられた。イランをペルシャ湾側から脅威できる――ようにいつかはなるかもしれない――この潜水艦の売却は、完全に米国の承諾下で行なわれているでしょう。実質、米国によるイスラエルへの戦略兵器システムの迂回援助のようなものでしょう。
 EU経済を一国で支えているドイツは、アフガンにも有力な空陸部隊を供出していますが、それだけじゃ「P6」扱いはしては貰えなかった。
 日本はインドに大型潜水艦などを提供すれば、このドイツに近い地位が得られるのかもしれません。日本がやらなければ、フランスが原潜技術をインドに売ろうとするだけです。早く日印武器貿易協定(第三国への技術流出防止)を結ぶべきでしょうね。
 さて10月下旬にはまた小生の単行本が出るでしょう。しかしその前に皆さんは『「自衛隊」無人化計画』を熟読して欲しい。これは惨憺たる経済状態に陥った日本社会の暗い趨勢を根本から逆転して明るくすることのできる福祉のマニフェストなのですから。


麻薬が水を奪う! “失敗国家”寸前のイエメンの姿

 イランのニュースがいろいろ盛り上がっていますけど、あっと驚く話は無いですね。『フィナンシャルタイムズ』へのウォルフォビッツの意見寄稿とか、古いレコードの歌のようなものだ。
 今回も、中距離BMのシャハブ3改と、二段式固体燃料の「セジル」の、実際の飛距離の公表はありませんでした。
 シナ製の短BMを「二連装」で発射できるランチャー(車載機動だが地面におろして据えるようだ)の公表だけが興味深かった。固体燃料式だからできるんでしょう。
 シナ製の短BMは三種類あり、その最大のものでも300kmしか飛ばず、それではイラン領からイスラエルまでは届かないが(最低1000kmは射程が必要)、イランはなにしろレバノンのヒズボラへSSM/SSR売りまくりの前科がある。これらも密輸出されるんでしょう。米軍が地中海にイージス配備するのは、それに備えたいのか。
 ジョイントスターズやその類似機能のUAVで空からBM展開を探知されても、対地攻撃機が飛来する前にさっさとBMを発射しちまえばいい、というのがイランの高等判断なんでしょう。シナ製固体BMがその需要に応えた。輸出経路は空輸でしょう。
 そうするとセジルもシナ技術じゃないかと疑われる。ノドンと同射程なら、もう北鮮はイラン市場をシナに奪われたのですよ。
 で、果たしてイスラエルが「行動」を起こすとしたらどうなるか? 手際よくまとめてくれているのが、ANTHONY H. CORDESMAN氏の09-9-26の「The Iran Attack Plan」という記事。どこかの日本の媒体でこれをマルパク和訳しただけの解説記事が出そうな予感のするくらい要領が良い。
 まあそれよりも最近考えさせられたのは次のイエメンの記事です。
 Andrew Lee Butters 氏が 2009-10-5〔この日付は紙媒体用?〕に載せた「Is Yemen the Next Afghanistan?」という記事。
 イエメン政府はスンニ派。反政府ゲリラはシーア派で、北部国境に蟠居している。内乱は難民を生み、アルカイダ天国の土壌ができている。
 それでも2009-6までは、外国人が被害に遭うことはなかったのだが、とうとう6月に9人の外国人が誘拐され、そのうち2名のドイツ人女性、1名の韓国人女性は、バラバラ死体で発見されている。
 その後、イエメン政府は外国ジャーナリスト等の国内旅行を制限している。
 世界公認の失敗国家(failed state)であるソマリアが海賊を輩出しているのは有名だが、次はそろそろイエメンがあぶなくなっているぞ。
 イエメン領内の山岳地は無法地帯で、アルカイダも好んでいる。というか、もともとイエメンはアルカイダへの有数の人材供給国。イエメン政府とアルカイダの関係は symbiotic【共生的】である。
 ※なるほど、2002にプレデターの最初のヘルファイアの手柄首がイエメンで挙げられていたのもこういう背景があったわけね。
 ソ連がアフガニスタンに侵攻したときにもイエメン人が多数志願ゲリラになり、多数がソ連軍に処刑された。フセイン時代のイラクにもイエメンから反政府ゲリラ要員が潜入した。
 アルカイダは 2008-9にイエメンのアメリカ大使館を襲撃せんとした。
 イエメンは銃だらけ。しかも国民の教育はほぼゼロ。
 Khatという低木がある。この葉を口の中で噛んでいると、天然の覚醒剤成分が五臓六腑にしみわたる。イエメン男の90%、イエメン女の25%は、この植物麻薬の中毒患者である。
 イエメンで耕作可能な土地のほとんどが、この Khat の栽培のために利用されている。ただでさえ乏しい水は、ほとんどその畑のために費やされている。
 Khatをやめれば禁断症状が出る。だが、それを治療する方法を、イエメン政府も、米国も、持ってはいない。
 大衆は〈現状でいいじゃないか〉という態度。Khat を常習していると、なんかどうでもよくなってしまうのだ。
 そして、唯一、この現状を改革可能なのは、アルカイダの怒れるピューリタンかもしれん。やつらはこの麻薬には手を出さないから――。
 ……というのだが、本当か? 「アルカイダ=イエメン庶民」という構図があるのなら、ラリったメンバーだって多いだろうに。
 この記事には書いてないけど、ソマリアでブラックホークが墜落したとき、襲い掛かってきた住民も、この木の葉を噛んでラリっていたんでしょうね、たぶん。地域ぜんたいトリップ状態かよ!
 さて拙著『「自衛隊」無人化計画』が書店発売になってから10日を過ぎましたが、ここには日本の現状を変える方法がすべて書いてあります。
 昼間っからマリファナ吸ってふらふらしているような若者は一人も居ないといわれるニッポンのみなさま、どうぞインフルエンザにお気をつけてお過ごしください。


本土からの核撤収+不真面目MDという“現行”米支密約をこそ暴け!

 『NYT』の「Op-Ed」欄にゴルバチョフが「Two First Steps on Nuclear Weapons」という意見を09-9-24に寄稿。
 大意を摘録すれば……。
 ―― Dmitri Medvedev は昨年11月に言ったではないか。もしポーランドへのABM配備をアメリカがやめるなら、ロシアもそれに対抗した新たなSSMを配備することはやめることができると。オバマは今回これに応えただけである。
 ロシアは前から言ってきた。イランが長距離SSMをつくっている証拠が一つも無い。アメリカもとうとうそれに同意したのだ。イランは今後10年ICBMはつくれない。
 米露2国が核軍縮しないために、もし5~10ヶ国の核武装が許容されるというなら、どうしてそれが20~30ヶ国に増えちゃいけないんだ? と世界は思っているぞ。
 ゲイツは、 SM-3 missiles が将来は長距離SSMを迎撃できるようになると言った。また、米露はMD協力できるといった。然らず!
 米露のゴールは、 mutual deterrence の現状を、 minimum nuclear sufficiency for self-defense に低めることであるべきなのだ。
 兵頭いわく。ロシア人の本音を翻訳すれば、〈もともと反露で凝り固まっていて、しかも立場が強くなれば何をしでかすか分からないポーランド人なんかに危険な武器を与えるなよ。つまりポーランド人は朝鮮人と同じさ。「RD-170」エンジンを20年がかりで完成したオレ達は、イランに核ICBMをつくる能力などないことを確信しているよ〉となるのだろう。
 オマケ。きのうの「ロシアの声」は、イランがIAEAに第二の濃縮ウラン工場を申告したとか言っていましたな。
 次。同日、同じ「Op-Ed」(社説対向ページのこと)に、KENNETH ADELMAN 氏が「A Long-Term Fix for Medium-Range Arms」という寄稿。
 これがトンデモ論文だ。阿呆は日本の鳩山だけじゃないと分かって皆安心だね。世界中にいるわけだ。そういう阿呆たちは、ただ実務派からスルーされるだけなんだなぁ……と確認ができるように思います。
 以下、アデルマン氏いわく。
 ――先週オバマ氏は東欧のABMの楯計画を撤回し、より小型の迎撃手段を on ships and planes 〔艦船と航空機だと!?〕に搭載する変更案を決めた。
 しかし、提案したい。
 中距離ミサイルなんてものは全面禁止してしまえば良いのであ~る!
 1987にレーガンとゴルバチョフは intermediate-range nuclear forces treaty で中距離核を禁止した。これを世界中に適用すれば良いだけだ。
 あのとき米ソは、陸上から発射する射距離500km以上5500km以下のSSMおよびCMを相互に禁じた。
 オバマとMedvedev はこれを全世界190カ国に要求すれば良い。
 もちろんイランや北鮮は聴く耳を持たないだろう――。
 ※ここで兵頭のツッコミ。その2国だけのわけがないやろ。
 ――しかし100カ国以上がこの条約に署名し、テストと開発と配備をやめれば、幸先は良かろう――。
 以下、兵頭いわく。
 これからフランス設計の原潜を造らんとするブラジル含め、ヤル気と能力のある数十カ国はすべて除外した100カ国な。笑わせるんじゃねーぜ。
 寄稿者アデルマン氏はレーガン政権時代の軍縮担当だった人らしいが、これほどの「井の中の蛙」とは驚きだ。米露以外の何も見えんのか。
 INFは米ソ2国間だからこそ成り立ったという地政学が分かってない。
 22年前のINFではシナは局外者であった。極東ではロシアはSS-20をなくし、シナはSSMを増強した。ロシアが対支の中距離核バランスでは不利に陥っているのだが、もともとロシアにはウラル以東の都市を核ミサイルから守ろうという発想はなかったのだ。
 たとえば露支間では射程4000kmもあれば完全に戦略核なのだ。ということは、もしかりに多国間版INFができたら、シナは射程5500kmオーバーのミサイルを増やすだけだ。その結果どうなる? ヨーロッパや中東、オセアニアが、シナ本土から、大量の核弾頭で脅かされることになる。シナは戦略核の上での世界覇権国になる堂々たる口実を得られる。もちろんそれに英仏も対抗をせざるを得ない。5500km以上飛ぶミサイルが数カ国で増強されよう。実質、世界的核軍拡に終わるだけだ。
 ある後進国が、宇宙観測ロケットや長射程SAMを開発するとする。やがてそれが射程500kmを越える。どうやって区別するのだ。SM-3だってこのまま大型化すれば潜在的SSMだとイチャモンをつける国が出てくるだろう。現にロシアはGBIがポーランド軍の核SSMに化けると疑った。
 次。Schmitigal 氏と Le Pera 氏による「Army Testing Fire Resistant Fuels for Combat Vehicles」という記事。
 路上爆弾にやられて炎上する車両が増えてきたので、ぜったいに火災事故や燃料タンク爆発を起こさないディーゼル燃料やJP-8〔飛行機用じゃなくて陸上車両用〕を米陸軍がまた本腰で研究することになった、と。
 今のディーゼル・エンジンは、一部の燃料がインジェクターからまた燃料タンクに戻ってくる。それで油槽内の油温が非常に高くなり、そのために弾丸を一発くらっただけでも炎上しやすいのだ。〔いやー、知りませんでした。〕
 そこで研究されているのが、燃料の中に純度の高い水(量としては燃料に対して10~20%だという)と乳化剤を加えて混濁せしめる方法。
 この研究はずっと前からあったが、立ち消えになっていた。
 1990s末から複数のメーカーが水混濁ディーゼル油に挑戦してきた。酸化窒素などの排出微粒子を減らす効果があるのだ。
 2002に陸軍は、燃料タンク内に防爆機能のあるメッシュを入れる試験を開始。成果はかばかしからず。
 2002-10からは米環境省も、水混濁燃料油研究をプッシュ。
 欧州も2003-1からそれを製造しようと努力中。
 そして米陸軍は2006-5、イラクとアフガンの炎上に懲りて、この計画を再スタートさせたのだ。
 こんどはディーゼル(軽油)だけでなくJP-8でもやる。
 ディーゼル油より揮発しやすく着火点の低いJP-8ジェット燃料が米陸軍の戦場燃料として使われていることも問題視されている。Adding to this IED threat was the fact that JP-8 aviation kerosene, a slightly more volatile fuel having a lower flash point minimum requirement than diesel, was being used as the Army’s battlefield fuel.
 被弾貫通をうけたときに油槽内の燃料が霧状に飛び散らないようにするには、長い連鎖のポリマーが燃料中に存在すればよい。これで飛沫による初期爆発は抑制できる。
 しかしポリマーの連鎖はディーゼルエンジンのインジェクションの際に剪断されてしまう。〔兵頭いわく。だったらインジェクションのあと油槽に戻さないようにすればいいだけじゃね? ミニ・ガスタービンで燃やしたらどうだ。〕
 そこでベンチャー企業複数が、インジェクションで剪断されてもポリマー連鎖が再度くっつくような成分を研究中。これでディーゼルエンジン搭載車両の油槽の鎮火性を保てる。
 オマケ。「FBI Says Corrupt Border Officials Accepting Bribes Expose U.S. to Terrorist Risk」という、 PIERRE THOMAS 氏による09-9-24の新聞記事。
 メキシコ国境のテキサスなどの州のシェリフが腐敗しているというので、FBIが囮捜査してみたら、150ドルの賄賂で不法移民を導き入れまくりだった。テロリストだって簡単に入って来られる状態となっている。ヤバイ。
 また2008に合衆国は、シナからの不法移民2285人をとっつかまえた、と――。
 FBIという中央権力がなかったら、アメリカ合衆国とて、安全を保つことはできぬようです。
 もう移民など一人も入れなくとも、ロボットが、日本の介護保険問題と不景気をすべて解決します。移民はストを打ち、賃上げを要求し、諸手当を要求し、生活保護と老齢年金を要求し、日本社会に、さらなる負荷をかけるだけです。ロボットは、何も要求しません。
 詳細は、拙著『「自衛隊」無人化計画――あんしん・救国のミリタリー財政出動』(PHP刊)をどうぞ。すでに地方の書店でも手にとって見ることができます。


小籌か、浅略か、はたまた……

 AFPの09-9-23報道。英ブラウン首相はトライデントSSBNをどうやら4隻体制から3隻体制に減らすつもりらしい。英外相は、これは予算面の考慮が理由ではないと強調。ちなみに英国保有の核弾頭数は、世界で五番目。
 兵頭いわく、おそらくSLBM用の保有弾頭数は削減しないでストックしておくのだろう。
 またブラウン氏いわく、北鮮とイランに核武装をやめさせるため、原発支援すべきだ。
 NPT精神は、核保有国の核削減も要求しているが、英国は independent nuclear deterrent【独立的核抑止力】も維持する必要があるのだ、とブラウン政権は信じている。
 兵頭の蛇足。これは、近づいた米露交渉(ReSTART)への下地づくり。
 さらに蛇足。米国はイランがシャハブの斉射でイスラエルを叩く意志を察知して地中海にイージスを出すことにした(そしておそらくサード用移動Xバンドをイラクともう一箇所、どこかに前方展開させて警報リンクをとる。トルコはイスラエル防衛のためなどには米軍に協力をしないだろうから、残る候補地はアルメニア???)。シャハブは明らかに弾頭分離型のSSMだ。というのは、発射後100秒で爆発する事故を時に起こしている。これはちょうどノドン級のSSMの弾頭を分離する直前にスピンを与えるタイミングなのだ。これに加えて「斉射」だから、ABMは何発あっても足りない。そこで〈面倒くせえ。だったら先に核攻撃だ〉とイスラエルが決心してしまうと、それを口実に世界中に核武装国とミニ核爆弾が拡散することとなり、まわりまわって米国の大都市が核テロの的にされる確率が増える。だからポーランドどころじゃなくなっているのだろう。
 次。AFPの09-9-23報道。「Israel To Supply Radar Systems to South Korea」。
 これは二件あって、ひとつは韓国が開発中のジェット戦闘攻撃機用のレーダー。米国製にはしないのだというところに、属国に甘んじているどこかの国とは違った正常な計算を感じますね。まあしかし、輸入品である限りは、あの宇宙ロケットと、おんなじことになるでしょう。
 もうひとつは、北鮮の弾道弾を早期警戒するための、「Green Pine Block-B」レーダー・システム。
 韓国内での運用開始は2012年で探知距離500kmとか言っているが、これは「北京上空までは捜索しません」というジェスチャーだけ。
 しかしこれで韓国が大きなBEAMS/PAVEPAWS を設置する予定がないことがハッキリしたんですから、日本は宮古島に最大級のXバンド・レーダーサイトを造って対米外交上のアドバンテージをとりましょうよ。
 次。kris osborn 氏による09-9-22記事。
 ジェネラルダイナミックスが5年がかりで開発していた GPS-guided 120mm 迫撃砲弾改造キットがついに完成した。
 これは在来品の迫撃砲弾の信管を外し、誘導キットをねじ込むだけでOK。もちろんキットにはフィンがついており、それで落下コースを修正する。座標データのインプットは、発射前に行なう。
 兵頭いわく。この技術が、アフガンでの不発弾回収からロシアとシナへ漏洩するのは時間の問題だぜ。そしたらどうなるか? 110~130ミリ級のロケット弾がGPS誘導弾に化けるだろう。120ミリ迫撃砲は重すぎるのでとても個人ゲリラには運搬できない(牽引トラックが必要)。ところが140ミリ未満のSSRは、簡易使い捨て単発ランチャーともども、数人で担いで機動展開することができるのだ。つまり典型的な「戦場非秩序化兵器」だ。(戦場秩序化兵器と戦場非秩序化兵器の違いについての考察は、兵頭の『日本の防衛力再考』かその少しあとの旧著を再読して欲しい。武器援助や武器輸出を文民政府が判断するときの倫理として重要な概念です。)
 支那事変中、日本軍を最も苦しめたのが、ドイツ製82ミリ迫撃砲だった。これは射程が1km以上あり、日本軍がこいつで奇襲的に乱打されたあと、発射点を特定してそこへ歩兵中隊をさしむけようとしても、シナ兵は悠々と迫撃砲を分解して数人で背中に負ってスタコラ逃げ去る余裕をかならず得られるのだった。正規軍の歩兵の「一挙躍進距離」のほんのすこし遠間から撃ち込めるというところが、ゲリラの重火器としては常に重宝するポイントなのだ。
 今、アフガンやイラクでゲリラが81~82ミリ迫を使わないのは、上空からの監視&反撃がキツいのと、正規軍がすっかり車両化されて、一挙躍進距離が数kmに伸びたからだ。しかし簡易ロケット弾との組み合せなら、話は違ってくる。かつてのシナ軍の乱撃とは違い、GPSで1発必中なんだから、深刻な事態となることだろう。
 ゲリラがこれを持ったら、米国のGPSサービスも停止するかどうにかしなくちゃいけなくなるよね。
 早く日本は、日本独自の準天頂衛星群による〈国内専用ガラパゴスGPS天国〉を構築しようじゃないですか。
 次。「韓国軍:M1・カービン小銃を米国に逆輸出」という『朝鮮日報』の記事。M1カービンだけで64万丁もストックしているらしい。
 まだ国産アサルトライフルで更新していなかったのだね。
 この記事を読んでふと思ったのですが、たしかM1カービン用の銃剣は「両刃」ですよ。ダガーナイフ類似形の。ということは、日本国内で売ってる(売っていた?)M1カービンのモデルガンやレプリカエアーガンについている(ついていた?)擬製銃剣も、とうぜん「両刃」でしょう。あれを持っている人は、みんな、処分したのかな?
 アメリカはレーガン時代、なんであんなに景気がよかったんでしょうか? 
 それは「小さな政府」のおかげではちっともない。「SDI」を推進したDODという巨大機構のおかげです。大成功した「レーガノミクス」の正体は「SDI」+「日本大蔵省の朝貢」に他なりませんでした。もちろん、それは「一回性」で、二度と再現できない。だから後継政権(父ブッシュ)がワリを食ったのです。
 そのSDIは、「アポロ計画」(JFK政権による)の経済効果面での再現を狙ったものです。
 そのアポロ計画は、「マンハッタン計画」(FDR政権による)の経済効果面での再現を狙ったものです。米軍はWWIIでたったの40万人しか戦死せず、1000万人もが復員してきたのに失業はゼロでした。しかしこれまた「一回性」の政策なので、ケネディ政権は別な手を考える必要があったわけです。(そういや夕方の横田AFNでトルーマンの再選が意外だったという話を紹介する歴史教育テープが流れてて感心しました。三沢AFNは、夜明け後から日没まで継続して聞けるようになりました。)
 この辺をわかりやすく解説しましたのが、拙著最新刊『「自衛隊」無人化計画』(PHP研究所 ¥1300-)です。
 もう鳩山内閣もできたのだし、アメリカの属国は辞め、日本人の幸せを追求しましょう。それには、ロボットの開発と「原発10倍計画」が、最も近道です。『「自衛隊」無人化計画』を、お読みください。


そのバスには乗り遅れろ!

 オーストラリアのラジオ放送が僻地同胞のために短波の英語ニュースを送信しているのは、外交戦略というより国土事情からの当然の措置だろうと思われるが、北京放送の海外向け英語報道の努力はおそるべきものだ。24時間、必ずどこかの周波数で北京発の英語版宣伝放送が聴取できるようにしている。
 太平洋地域向けのVOAはこれと勝負する気がまったく無いようだ。放送を止めている時間帯がある。また出力をケチケチしているせいか、他のノイズに負けて、感度も明度も悪い。
 BBCの東アジア向け放送が唯一、24時間体制をとっていて、極東の電波空間において北京のライバルだと言えるが、サイマルで送出している周波数の数が北京放送より少ない。(つまり、その日の電界状況により全部が聴こえにくくなってしまう確率がそれだけ高い。サイマルの少なさと出力の小ささは、端的に動員予算の困窮度の関数であろう。)また、送信所の位置の差のせいなのか、しばしば、感度・明度で北京放送の最良の周波数に負けている。
 こんなことになっているとは、新調短波受信機の性能限界を試みるまで、迂闊にも気づかずに過ごしていた。
 おそらくオーストラリア人は、この北京発の、大出力ゆえにヤケに近くに聞こえる英語版短波放送に、すっかり魅入られてしまったに違いない。
 なにしろ米国の属国でしかない日本のNHKの国際放送などとは、報道し得る内容がぜんぜん違う。シナ人がアメリカ人とだけ張り合い、ロシアやインドなど歯牙にもかけず、全世界の経営に関わっていることを、ニュースの読み上げによって印象づけることは簡単なのだ。オーストラリア人は、この英語ラジオ報道上のシナ人の国際プレゼンスを無視していることはどうしてもできないと思ったのだ。
 平壌もけなげに英語放送の努力を払っている。時間帯とサイマル周波数の多さは、すくなくもタイやベトナムの対外放送よりは多額の予算をはたいていることを間違いなく示しているが(予算に余裕さえあらば北京放送並の24時間シフトを組みたいのであろうことも想像に難くないが)、いかんせん、あの金正日宣伝を英文化すると、ほとんど精神病の放送局としか聴こえないのだ。英語圏住民に対するPR力は、ゼロだろう。原稿書きの労力、アナウンサーの才能も含め、せっかくの国家資源をドブに捨ててるようなもの。おなじ平壌発でも日本向け日本語放送の方がまだ正常に聞こえる。
 意外だったのは、韓国の国際英語放送のショボさ。時間帯も限られ、サイマルも少ない。出力も低い。内容には、北鮮を含む他国と張り合おうという目的意志のようなものが感じられない。下手な発音でお国自慢をしても英語圏に対しては逆効果だと悟っているのか?
 さて夕方の三沢のAFNの聴こえ方だが、函館では、15:45くらいから、17時頃まで聴こえ、その後しばらく混信で聴こえないが、なぜか22時台前半頃に、また聴こえることを確かめた。ラジオは、ICF-EX5で、外部アンテナなどはつながずに、だ。
 夕方の横田のAFNは、同じくICF-EX5で、17:00前後から聴くことができるものの、17:43にはもう聴こえなくなってしまう。19時頃には、また聴こえるようになるが、それから徐々に混信がひどくなって聴き続けられなくなる。
 DE1103でまた気づいたこと。フリーズしてリセットをかけても、いちど入力してある周波数メモリは不揮発である。(もちろん、全消去も可能。)
 もうひとつ。シナ製のニッケル水素電池は定格が1.25ボルト。日本製電池の規格は1.2ボルト。この違いは何? 電圧が不安定なので規格に「余裕係数」の下駄を履かす必要があるのか?
 1.25ボルトを4本直列につなぐと、5ボルトになるはずだろう。ところがラジオの裏面には〈4本の単三電池で8.0V〉と表記してある。どういうこっちゃねん?
 附属の英文オペレーションマニュアルにも、〈外部電源はDC8V〉だと書いてある。しかるに、輸入業者で附けてくれている日本国内用アダプターは6V。
 この辺りがどうにも不安であるので、電池は日本製のニッケル水素電池(パナソニックHHR-3XPS、2400ミリアンペア)にして、パナソニックの充電器を別に買ってきて充電しつつ使うことにした。いまのところそれで何の問題もない。


地方書店でもそろそろ売ってますよ:『「自衛隊」無人化計画』

 09-8-27にAFPが大意こんな速報を伝えました。
 〈ポーランド人は察した。アメリカは別な基地案を探している。軍艦か、イスラエルかトルコにABMを置くつもりだ。バルカンも候補だ。〉
 この記事は、「U.S. to Scrap E. Europe Missile Shield Bases」というタイトルで、ディフェンスニュースかどこかに、短く掲載されていました。
 なんとまあ、正確な速報だったことでしょう。ポーランド政府のリークなしでこんな速報は飛び出しません。いかに同国政府が憤激したかが分かります。
 この「トルコ」というのは露領コーカサスのことで、米軍の移動式Xバンド・レーダーをロシアが受け入れるという話らしい。
 09-9-17のAmy Butler氏の記事によると、ゲイツ長官およびカートライト統合参謀次長の結論として、〔計10発のGBI配備を予定していた/私註〕2015までにイランは欧州を攻撃できるミサイルは持てまいが、〔イスラエルに対する/私註〕一斉SSM攻撃はあり得る。それを迎撃するには安価で展開弾力性もあるSM-3系の方がふさわしい。GBI×1発は $70 millionもするけど、SM-3の Block IA なら $10 million だし、IB でも $15 millionだからねぇ、――と、東欧人にとっては納得のできない理由を挙げています。
 イラン政府は前々から、〈俺たちはイスラエルを攻撃できる中距離SSMは開発するけど、欧州まで届く射程は追求しない〉と表明していたわけです。それを今からアメリカは信ずるのか。
 バトラー氏の記事は、ロシアがGBIに核弾頭が載ることを懼れていたことも教えてくれます。
 ロシア人とポーランド人は永遠に和解できないでしょう。
 しかし短距離SSMではない高速の中距離SSMを確実に迎撃しようと考えれば、ABMの方もどんどん大型化・長射程化するのは、過去のABM史に鑑みても当然な趨勢でしょう。SM-3系だって軍艦というプラットフォームの枷が外されれば、どこまで大型化してもおかしくない。小型の核弾頭は直径が15センチあれば収納できてしまうものです。ロシアのいいがかりは、そっくり明日のシナも採用できることを、日本人は認識しておくべきでしょう。
 オバマ民主党政権がイスラエルと比べてポーランドなどは優遇しないという態度を明白に示したことに対し、朝野を挙げて怒りを表明しているポーランド人の態度は、小国民の手本です。
 これに対してチェコ人は、同じ小国民でありながら、ポーランド人とは対極的なヘタレっぷりをまたしても遺憾なく発揮しているようです。
 APのVanessa Gera記者による「U.S. missile defense shift a betrayal」という記事によれば、チェコ外相は今回の決定変更を承けて、次のことを米国に頼みました。 一、NATOメンバーである中欧諸国のため、ウェストポイントの分校を建てちくり~。 二、チェコの科学者をスペースシャトルで国際宇宙ステーションへ連れて行っちくり~。
 ……こら、あきまへんわ。
 william h. mcmichael 氏の09-9-17記事によれば、ロシアが南部の Armavir に独自に配備している防空警戒レーダーも米軍情報網に組み込まれるだろう、とのこと。
 あのへんは米国のグローバルなBEAMSにとっての大きな穴になってきたので、カートライトは早く埋めたくてたまらないのでしょう。「ゲイツ=カートライト」コンビのBEAMSに対する優先順位はかなり高いと見た。
 だったら、日本の民主党政権は、早く〈宮古島のレーダーサイトを国産の超強力Xバンド・レーダーで建て替える〉、と表明することです。そして〈十勝平野にはOTHを建設する〉とも表明することです。これで米国に対して弾道弾実験追跡情報の恩を売ることができる。その一方で「海兵隊は沖縄からすぐ出て行け。あとは知ったこっちゃねえからそっちでどうにかしやがれ」と要求してもカートライトは呑むでしょう。海兵隊のカートライトが参謀次長であり且つXバンド・マニアである今のうちが、大チャンスだと言えましょう。
 フィンランドも小国ですが、米国のために巨大Xバンド・レーダーの常設基地を提供したことで、たいへんな厚遇を蒙っています。参考とすべきでしょう。
 さて、ソニーが1985年に完成している遠距離中波局受信ラジオICF-EX5の底力について、わたくしは日々、発見を続けております。
 先回、810キロヘルツの横田基地AFNを昼夜ともに函館からではICF-EX5で受信できない、とリポートしましたが、撤回します。
 夜のうちはダメなんですが、夕方と朝は明瞭に受信し得ることを確認しました。(ひさびさにオン・ズィ・アワーのAPレディオ・ニュースを聴きました。)
 コツは、ICF-EX5本体の長辺を「南東←→北西」の方位に固定すること。そして、室内の照明器具やら電気製品を極力OFFにしてノイズを拾わせないこと、のようであります。室内のどこにラジオを据えるかによっても、感度・明度が画然と変わります。
 この「方位」とノイズ抑制のコツを掴んだあとは、「DE1103がAFNを受信できるときにICF-EX5がそれを受信できない」ことはまったく無いことが確かめられました。その逆はアリ。ですから、中波受信に関しては、ICF-EX5がやっぱり最強なのだ。
 1575キロヘルツの三沢AFNも、夜の間はダメなんですが、薄明時から朝7時半くらいまでの間、ICF-EX5で聴くことができました。こちらの局の場合は、ラジオ本体の長辺を「北東←→南西」の向きに合わせると、良好です。次は夕方に確認してみます。
 ちなみに09-10-18に三沢航空ショウ。日米曲技飛行の競演だそうですけど、みなさん、どうしますか?
 ところで、安物のラジオでも受信できる「ロシアの声」の先日の欧州MD政策変更についてのニュースで、フランスとドイツとEUもこんどのアメリカの決定を大歓迎しているぞ、と、大いに宣伝をしていましたね。
 しかしインターネットを見れば、ポーランドだけでなく、リトアニアもハッキリと失望感を表明しています。そういうことはロシアの国際放送では一切報道しない。わかりやすすぎる宣伝ラジオ局だ。
 あと、北京からの日本語放送によれば、09-10-1のパレードでは五十数種類の兵器が登場し、そのうちいくつかは初披露ですと。ナンチャッテ「早期警戒機」も出てくるらしい。
 まあ、マニアが見れば、どれとどれがハリボテで、どれとどれが劣化コピー品かってことは、分かるのでしょうけどね。
 沿海州から樺太、千島、カムチャッカにかけては、インターネットや衛星放送が普及しているとは到底、言えますまい。彼ら住民のラジオ依存度は、かなり高いと見た(長波ラジオ局まである。きっと離島僻地と漁船向けでしょう)。
 そこでわたしは民主党新政権の総務大臣にご提案したい。稚内と羅臼に、国内のいくつかのAM/FMラジオ放送を中継して出力100kwくらいで送信する施設をつくったらどうですか。(もちろん国際短波放送サービスのあるNHK第一は不必要でしょう。)これで、圧倒的な日本の存在感が、北方領土全域を覆うことになるでしょう。またその放送塔が、北方領土から望見できるランドマークにもなるでしょう。


樋口幹さま、ありがとうございました!

 先般、函館から130kmも離れた三沢基地から送信されている、出力わずか0.6キロワットの中波米軍放送(1575kHz)が聴けそうな、性能に定評のあるMW受信用ラジオの喜捨を呼びかけましたところ、さっそく1台の差し入れを賜りまして、わたくし感動をしております。
 頂戴したお品物は、ソニーの「ICF-EX5」。中波受信用の内臓バーアンテナの長さが、他社製品の追随を許さぬ18センチもあり、さらに混信回避用の高度な機能まで備わっていて、これで受信ができなかったら、まず諦めなさいと言ってもよさそうな、電池式ポータブルラジオ中の最高機種です。
 で、結論ですが、昼間はまったく聴こえません。日没後になりますと、確かにうっすらと聴こえて参ります。強度が低くて、混信のひどいときはロシア局や、どこかの「NHK第二」にマスクされてしまいますが、混信がひどくないとき、神経を集中すれば、音楽やアナウンスを聴き取れるだけの明度があります。さすがだと思いました。
 夜が更けるにつれ、聴こえなくなり、未明にまたスイッチを入れてみると、弱いながらもハッキリと聞こえます。夜明け前の混信がないときの状態は恐るべきものと思いました。
 他方、810キロヘルツの横田からのAFNは、出力が50キロワットあるはずですが、昼、夜を通じて、函館からICF-EX5では聴くことができません。ちょうど方位的に正反対にあるロシア局からの混信がひどすぎるようです。
 通信の世界では、「某町からは某局は普通に受信できぬ」という情報も、大いに貴重で役に立つのであります。
 そういう書き込みがインターネット上に不足しておりますために、みんなで無駄をやってしまうわけでありましょう。
 そこでわたしはここに書き込んでおきたい。
 北海道地区にお住まいの皆様、「ひょっとして1万5000円前後のラジオで三沢や横田のAFNを昼間から快適に聴けるのでは?」と希望的想像をたくましくするのは、御止しになったほうが善さそうですよ。
 なおちなみに、百均ショップで買ってきたテレビ用5mイヤホンをバラして10m線とし、室内に張りわたしてICF-EX5の外部アンテナ端子へ螺子止めしてみましたが、その効果は、FMおよび日本短波放送の受信で僅かにあるような気がする程度。
 ネットでダウンロード&印刷できたICF-EX5のマニュアルを読みますと、外部アンテナがMWにも効くように読めるのですが、ICF-EX5のMWの感度にはなんら影響がないようです。(なお我が家は木造で、近くに3階建て以上の鉄筋構造物もありません。)
 これにてキッパリと見極めもつきましたから、「ラジオ喜捨のお願い」は只今をもちまして終了といたします。あらためまして樋口様には深く御礼申し上げます。もちろん、この貴重な高級ラジオは、末永く情報収集に活用いたします。
 ところでわたしは皆様からの喜捨が待ちきれず、ひょっとしてグアム島の短波のAFNが受信できるかもしれぬと思い、DEGEN(徳勁)社製の「DE1103」の輸出仕様機を、新品送料コミ¥9400-ほどで買い求めてしまいました。
 こちらの使用感報告もしておきましょう。
 この製品はシンセン市のシナ企業製で、がんらい「愛好者3号」と称し、短波受信の性能の高さを誇り、中波もかなりの感度で受信できると、無線マニアの間で熱い評判になっていたものであります。(内臓バー・アンテナの長さは13cmのようです。)
 そして、インターネット上のリポートによりますれば、回路の心臓部品は日本製のようです。
 この「DE1103」は、発売されてから数年にもなるようですが、いまだにこの価格でこの性能を上回る短波受信機は出ていないんだそうです。
 つまり、〈性能自慢なシナ製品〉。これって珍品ですよね。おそらくはシナで唯一なのじゃないかなと思います。それでこの際ついでに確かめてみたくなったという次第です。
 ソニーの「ICF-EX5」は、短波帯は「日本短波放送」(NSB、旧名「ラジオたんぱ」)だけが固定水晶で受信できるようになっており、それで価格が1万5000円前後に抑えられてあったようです。もちろんそれですと、ハワイやグアムにあるAFNの短波局は、受信はできません。
 わたしの「DE1103」は、注文してから配達されるまでに9日かかりました。梱包には、日本国内の100Vから6ボルトへ変圧してくれる交流アダプターと、外部アンテナ端子にジャックで差し込める10mワイヤー・アンテナと、FM聴取用のステレオイヤホンが附属していました。
 結論を先に申しましょう。「愛好者3号」は、短波AFNの受信用機としては、期待はずれです。
 ハワイやグアムの短波は、電源を電池のみとして、夕方、夜、そして早朝に、複数の周波数を順番に試してみましたが、それらしき信号の兆候すら、聴き取ることはできませんでした(SSBに切り替えてもダメでした)。
 もはやこれらを受信するためには、庭に高い鉄塔を建てて巨大アンテナを設備する必要があるのかもしれません。わたしはさすがにそこまでする気は無いのであります。
 VOAなどの日本向けの英語放送、それから台湾や北鮮などからの日本語放送を聴くだけでしたなら、どこのホームセンターでも2000円台で売られているオールバンドラジオ(もちろん、短いロッドアンテナのみ)でも十分に受信はできます。1万円の投資をわざわざする価値はどこにもありますまい。
 ところが、驚くべき発見もありました。これは、あくまで電源として電池を使用している時だけに限られるのですが、「愛好者3号」は、むしろ中波受信力が凄いのです。
 なんと一時的にですが、昼間、三沢のAFNらしき中波を拾うことができました。(夜はまったくダメ。また、MW受信時に附属の外部アンテナを差し込んでいると、余計な電波を拾いすぎてノイズが甚だしくなり、むしろ有害のようです。)
 また、横田のAFNも、昼間、激しい混信ノイズの陰にかくれがちながらも、時々聴こえるようです。日没後は、方位正反対のロシア局が強烈で、まったくマスクされてしまいます。が、夜明け前の810キロヘルツ横田は強く入ります。
 韓国のソウルのAFNらしい中波放送(1530kHz)も、昼間、瞬間的に聴こえることがあります。
 大したものです。
 しかしAFNを聴く価値はそもそもどこにあるかと申せば、それは普通の番組の途中に挿入される軍の広報テープ(これはVOAなどで流されることはない)や、臨時番組や、臨時のアナウンスなんであります。
 それは、何時何分に放送されるか、予期することができません。
 ですので、常時途切れなしに漫然とBGM状態にして聴いていられるくらいの受信感度と明度が、一日の随時に得られないのであるならば、その受信機は、初めから使えないのと同じようなものであります。
 夜中の3時によく聴こえる、とか、昼間は途切れ途切れにかすかに聴こえる、という程度では、よほどのヒマ人でない限り、役立てようがありません。混信ノイズが多すぎますのも、聴き苦しく、すぐに疲れてしまいます。
 もし函館から見て方向的に真後ろに位置するロシアの中波局や、同一周波数の国内局がなければ、三沢のAFNをもっとクリアに受信できるのかもしれません。
 まあ、1万~数万円ていどの投資では、快適な受信は無理だったのだなぁと察しがついただけでも、今回は有意義な収穫があったと思っております。
 あと一点、驚きのリポートを付け加えましょう。「愛好者3号」によって初めて、わたしは青森の民放FMを受信できました。(昼間です。夜はなぜかダメ。)「ICF-EX5」でも、この局は(昼夜ともに)聴けません。
 オフ・ザ・シェルフ(ありあわせ)の要素部品の組み合せで、ソニーやパナソニックをも凌ぐオリジナル機能を叩きだしたとは、DEGEN、なかなかやりますわ。
 ひょっとして、英国サリー大学に留学してアマチュア無線を極め、2000-6-28にロシアのコスモス3Mロケットで「清華-1」衛星をうちあげた技術者たちのお仲間が、同社には集っているのかな?
 ただし「DE1103」には、大きな不便もあります。やはりシンセン市の徳勁[DEGEN]電子有限公司で製造されている容量1300ミリアンペアの単三電池×4本に充電中のとき、AMの受信性能が、ホームセンターの2000円級の最低価格ラジオ(非充電電池式)よりも低下してしまうことです。
 インターネットには、ACアダプターをつないだ状態でもノイズを拾わない――とか書いて褒めちぎってあるのですが、みんな回し者ですか? うそをつけよといいたい。充電ならびに電池節電のためにACアダプターをつないだ状態では、ローカル局以外、ほとんど受信ができなくなってしまいます。
 ビデオカメラのリチウム電池のようにすぐに充電が済んでくれるのなら、2時間ぐらい待てばいいので文句もありませんけども、このラジオはニッケル水素の1300ミリアンペアを一杯にするのになんと13時間もかかりやがるのです。つまりその間は、DEGENが売りとしている遠距離局受信の目的には、まったく使えぬわけ。しかも、1晩中充電したはずなのに、4時間くらいでバッテリー切れとなったりします(これはひょっとするとニッケル水素の学習特性に固有の問題で、何度も放電させているうちに次第に改善される可能性があるのかもしれません。またリポートします)。
 要するに、本体とは別に、外部で充電できる専用の充電器でも買えということかもしれません。
 台湾あたりのメーカーが、こうした点を改良したもっと使い勝手の優れた製品を出してくれることを期待します。手回し発電機付きとかね。
 ついでに、マヌケな感想。BBCの日本語放送って、いつの間にか、無くなっていたのですね。では、シンガポール中継局からの英語放送しか、今はないのか。これもインターネット発達の結果ですね。ジョン・ニューマン氏よ、いずこ。
 それから、夕方のモンゴルの日本語放送と、朝のイランの日本語放送は、「愛好者3号」でも受信できない。要するにこれらは、庭に鉄塔アンテナを建てているBCLマニアだけが聴いている特殊放送ということ?
 それと、平壌放送は、むしろ2000円級の安ラジオの方がよく聴こえてしまうのは何故なんだ?
 いずれにせよ、5000円前後級の中途半端な機能の日本製ポータブルラジオは、もう商品の生命がなくなったと理解しました。
 また、ロシア、シナ、北鮮の3カ国からの中波放送が受信できるICF-EX5に、海外短波局の受信機能が省いてある措置は、妥当なのだということも納得ができました。